ロベルト・コトロネーオ、『オートラント綺譚』

 『オートラント綺譚』の感想を少しばかり。

 “悪魔たちが姿を現わす決心をする、あの正午の時間をもう知っていた、と言っておこう。” 5頁

 タイトルから興味津々になった。ウォルポールの作品との繋がりが気になるところで。観念小説で幻想譚。夢とも現ともつかぬ境地へいざなう、不思議な話だった。
 運命に忍従し大生贄となり、凄まじいやり方で殺害されたという殉教者たちの都オートラント。大聖堂のモザイク修復の為にやって来た主人公は、虐殺命令を出した高官と同じ名の男を始め、姿を現す幽霊たちと交流する。なぜオートラントなのか。語り手とオートラントを結びつけたのは何だったのか…。その答えは、繙かれる母の家族の歴史にあった。
 オートラントを彷徨い、オートラントに捕り込まれる悪夢めく眩暈感。ダイヤモンド研磨術を修得した先祖のこと、盲目のオルガン奏者、アーサー王の王冠…と、謎めいた作風は堪能した。
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