トム・ロビンズ、『香水ジルバ』

 『香水ジルバ』の感想を少しばかり。

 “およそビートくらい強烈な野菜はない。ラディッシュになるともっと熱狂的だが、ラディッシュの炎は冷たい炎、情熱ではなく不満の炎だろう。トマトもまた色欲旺盛の観なきにしもあらず。とはいえ、その根底にはどこかしら軽薄なものが流れている。ビートはその点、あくまでも生真面目なのだ。” 11頁

 ふふふ、面白楽しかった! 世にも得難き香りをめぐる、淫らな狂騒曲にどっぷり…。ビート礼賛お風呂礼賛。生きる歓びが溢れだし、不老不死の論議に傾れ込む。兎に角とんでもない話で、わくわくと気持ちが幾度も飛び跳ねる。なんて素敵に変梃りんなの…と、のめりこみめりこみ読み耽ったことよ。

 今を去ること千年の昔、金髪の部族を統べていたアロバー王は、一本の白髪が見付かったことから老衰の咎を負い、伝統に則って処刑されることになった。だが、王としてではない、個人としての人生に執着したアロバーは、己の死から辛くも逃れ、そこから驚異の長い長い(長過ぎる…)遍歴が始まる。あるときは王、あるときは農奴、王になること二度め、そして“個人”へと…。
 アロバーは、あるとき牧神パンと出会い、信仰されなくなった神の衰弱を目の当たりにするが、パン一族の流儀に心を動かされる。やがて流れ着いたラマ僧の寺院では、再会した未亡人カドラの逃避行のいきさつを知り、同類の絆を得る。そして少しずつ、不死の知識へと手を伸ばしていくことに。

 物語は時空を超え、広がる。アロバーとカドラの章と、さらに三つの現代の章(シアトル、ニュー・オーリーンズ、パリ)とに分かれ、どう繋がるのかがなかなか見えてこないまま進んでいく。至るところに置かれた血のように赤いビート“マンゲル-ワーゼル”と、たった一つの香りを希求する思いとが、各々の物語を結び付けていく。その見事な絡繰りといい、目を丸くさせる奇想といい、最後の最後まで堪能した。とりわけ、「ダニーボーイの理論――われわれはどこにいこうとしているのか それはなぜそういう臭いがするのか――」にたどり着いたときは、その内容にのけ反ったことよ…。
 狂騒曲に浮き立つ読み心地、格別だった。
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8月23日(金)のつぶやき(読んだ本、『ブラウン神父の秘密』)

@rinakko 07:09
【ブラウン神父の秘密 (創元推理文庫)/G.K.チェスタトン】を読んだ本に追加

 好きだったのは「大法律家の鏡」、「ヴォードリーの失踪」、「マーン城の喪主」。とりわけ「ヴォードリーの失踪」は、“その顔は〇っています”から先の展開が、ぞくっと怖くて素晴らしい
 

@rinakko 07:28
注文した文庫本ラックが昨日届き、二個一組だったのか…! と。ふふふ。おはよございまず。

@rinakko 07:33
文庫本ラックでも、1架、2架…なのかな。ちょっとぴんと来ない。
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