郁(津商業2年)がやって来た!
「先生、明日から塾に来て勉強教えてください」
「試験はいつからや」
「来週の火曜日」
「あ、おまえ、眉毛剃ったやろ」
「剃ってへん! 前からこんなんや」
「おまえ、化粧してるやろ!」
「してへん!」
「おまえ、高校生になったからていうて親泣かせてるやろ!」
「泣かせてえへん! じゃあ、明日から来ます!」
少なくとも明日からは退屈しなくてすむ。
中2に目標点の設定をしていく。
「健、今まで取った点数で一番いい点数は?」
「480点です」
「じゃあ、それで行こうか」
今年の中3は戦力的にみて非力だ。
中3で400点以上を叩いているのはこなつとあいだけだ。
麻悠は中1の中間では400点以上取ったというが、前世紀の遺物のような参考点でしかない。
あとは400点に手が届いたことがない。
こんなメンバー達をだましだましのピッチングで、なんとか440点にまで辿り着ければと目論んでいる。
そこで中2の奮起を期待するわけだ。
全塾生の平均点は440点以上・・・これが最低ラインだ。
玄太がやって来る。
「おまえさ、今まで一番良かった点数何点やった?」
「ええっと、494点です」
「じゃあ、おまえは495点担当や」
そこへ密航してきた里歩(津高1年)の弟がやって来る。
「オマエさ、今までで一番良かった点数は何点やった?」
「・・・448点です」
「それって前世紀の遺物か」
「えっ・・・」
「ああ、中1の1学期中間試験か」
「ええ」
「じゃあ、450点取れ」
今日は目標点を決めることだけで一日が暮れていく。
悠人が「これやっていい」と、過去の国語の試験を差し出す。
去年の久居東の問題だ。
過去の試験問題を入れてあるトレイから探し出してきたのだろう。
悠人は変わった・・・以前はこんな積極的な姿勢はなかった。
「かまへん」
そして自己採点して持ってきた答案・・・ミス3。
「これなら初の400点越えも可能性があるって思ってるだろ、おまえ」
うれしそうに頷く。
確かに初めての400点越えは可能、しかし悠人の目標点は440点だ。
400点なら保証できる、しかし430点を巡る攻防・・・正念場はこれからだ。
もしかしたらギックリ腰?
動けねえよ・・・おいおいおい。
慌てて奥さんから征希に連絡・・・留守電。
くそっ、・・・これも郁だ、郁が現れたからだ・・・いてててて。