計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

今年の梅雨の特徴として感じる事

2020年07月26日 | 気象情報の現場から
 今年の長引く梅雨の特徴について色々な解説を拝見し、また実際にデータも見ながら考察してみました。通常の梅雨と今年の梅雨の特徴を図にまとめてみると、以下のようになります。





 この図を比較すると、大きく分けて3つの特徴があるように感じています。

(1)インド洋の海面水温が平年より高い

 インド洋の海面水温が平年より高くなると、この付近で対流活動が活発になります。この影響で、フィリピン付近の対流活動が弱まり、日本付近への太平洋高気圧の張り出しも弱まります。インド洋で対流活動が活発になると、この付近で生じた上昇流は、フィリピン付近で下降流となります。

 一方、フィリピン付近はもともと対流活動が活発で上昇流が生じやすい地域です。従って、インド洋からやってきた下降流と、フィリピン付近のもともとの上昇流が互いに弱めあう形となり、フィリピン付近の対流は弱まります。

 通常であれば、フィリピン付近の上昇流は日本付近で下降流となり、太平洋高気圧の張り出しをアシストします。しかし、今年はこのアシストの効果が弱められました。この結果、太平洋高気圧がなかなか張り出して来ず、梅雨が長引いているようです。


(2)日本の北側の上空を流れる偏西風が、朝鮮半島付近で南側に蛇行した

 偏西風が南下すると、これに対応する前線も南下します。このため、梅雨前線が北上しにくい状態にあったことが考えられます。また、蛇行が顕著となりブロッキング現象を生じると、同じような気圧配置が長続きます。


(3)黄海付近の海面水温が平年より低い

 海面水温が低いと言うことは「その付近では気圧が高くなりやすい」と見ることもできます。天気図を見て数えたところ、「高気圧」として描くほどの顕著なものではなかったようです。しかし、海面上のごく限られた高さの範囲で「高気圧もどき」となり、前線付近よりも気圧が高い状態が続いていたとすれば、梅雨前線の北上に抑止に寄与した可能性も考えられます。
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