計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

続・2024年1月は少雪傾向

2024年02月02日 | 山形県の局地気象
 前回の記事「2024年1月は少雪傾向」の続きです。

 今度は山形県内の5地点における12月と1月の降雪量に関して、平年値(1991~2020年)と今季の比較を行いました。この結果、いずれの地点も今季は平年値を下回っていました。特に、朝日連峰にある肘折では「平年値の5~6割程度」と顕著な少雪となっています。水不足など、今後の影響が気になる所です。



 また、上記5地点の平年(1991~2020年)の月降雪量の変動は次の箱ひげ図のようになります。このグラフと比べると、今季は平年の「第一四分位点」以下となる所が多く、下方の「外れ値」の水準となる所さえありました(平年の変動範囲の25パーセンタイル以下)。



 上空にも目を向けてみましょう。平年(1991~2020年)と今季(2024年)1月の850と500hPa面における気温分布(秋田)を「箱ひげ図」の形で比較しました。今季は、一時的な寒気南下もありましたが、全体的に「上方シフト」の傾向でした。


 そこで念のため、1月の850hPa面気温の平均値について統計的仮説検定(z検定)を試みた結果、有意差(今季>平年)が見られました。この上方シフトは「偶然ではなく必然」と言うことです。


 やはり「1月は暖冬・少雪だった」と言うことですね。
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2024年1月は少雪傾向

2024年01月31日 | 気象情報の現場から
 この冬は暖冬・少雪の傾向にあるため「雪のイベント」にも開催規模の縮小など、影響が出ているようです。

 以前(2019年)、「開催直前の気温上昇のリスク」を想定した「天候デリバティブ」を検討したことがあります(その論文)。これは、山形県米沢市の「上杉雪灯籠まつり」を念頭に、「1か月アンサンブル予報」を応用して天候リスクの評価を試みたものです。


 しかし、現実問題としては、そもそもの原材料となる雪が少ない「少雪のリスク」をヘッジするケースも検討した方が良さそうですね。対応策としては様々なアイデアが思い浮かびます。もし、「天候デリバティブ」のプランを想定すると、期待された利益や効果が得られない場合に、そのダメージを最小限に抑えるというアプローチが考えられます。

 また、天候デリバティブで得られた補償金を元手に、降雪装置などを稼働する方向もあるかもしれません。その場合は諸々のコストと比較して検討する必要があると思われます。


 さて、新潟県内にも目を向けてみます。ここでは上越・妙高・十日町における12月と1月の降雪量に関して、平年値と今季の比較を行いました。棒グラフからも明らかなように、12月の高田を除くと、今季は平年値を下回る傾向が現れています。



 ここで、平年値とは過去30年間(2024年の場合は1991~2020年が対象)の平均値です。そこで、この30年分の「平均値」ではなく「変動の範囲」で比較してみましょう。そこで、平年(1991~2020年)の12月と1月の月降雪量の変動を箱ひげ図に表してみました。


 この箱ひげ図において、この冬の12月、1月の値がどこに来るのかを見てみると・・・12月の高田・安塚を除いては、今季は第一四分位点以下の水準となりました。やはり、この1月は「雪の少ない冬」と言えそうです。
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2023年12月の傾向(山形県)

2024年01月05日 | 山形県の局地気象
 先日の記事「2023年12月の傾向(新潟県)」と同様に、山形県における「2023年12月の平均気温と降雪量の推移」を25日まで調べてみました。

 概ね5日~17日頃までは平年より高温傾向で推移しました。その後、平年より低温傾向に転じると顕著な降雪となりました。4地点のグラフからは、17日頃を境に傾向が大きく変わっているのが見て取れます。





 
 過去の記事「2023年12月の傾向と背景」でも述べたように、12月前半は偏西風のリッジ位相が卓越したものの、後半はトラフ位相が進んできたことで寒気の南下が顕著に現れました。

 そこで、平年(1991~2020年)と昨年(2023年)12月の高層850hPa面における気温分布(秋田)を「箱ひげ図」の形で比較しました。箱ひげ図は4つ並んでいます。左から順に、平年の09時、21時、昨年の09時、21時です。この結果、昨年12月の気温は09時、21時共に「平年よりも高めの傾向」が見られた一方、その範囲は「平年の変動の範囲内」に収まっていました。



 続いて、850hPa面気温の平均値について統計学的検定を試みました。まずは、平年と昨年の各々について、09時と21時を一まとめにして「2標本(2群)検定」に持ち込みます。ここで、各標本(群)ともに標本の大きさは十分に大きいことから「大標本」と見做すことができます。

 従って、標準偏差σを標本標準偏差s(不偏分散の正の平方根)で代用した「z検定」を行いました。この結果、有意差(2023年>平年)が見られました。

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年明け早々の地震

2024年01月02日 | 何気ない?日常
 新年早々に「2024年能登半島地震」が発生しました。まずは、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げます。

 1月1日は私の住む市内でも「震度6弱~震度4」程度と大きく揺れました。海側ほど震度が大きいように見受けられました。

 さて、今はインターネットを通して、様々な情報を得ることが容易になりました。しかし、SNSなどで拡散される情報は玉石混交です。事実とは異なる情報も含まれているようです。まずは、気象庁や自治体をはじめとする公的機関の発表など、出所が信頼できる情報を優先しましょう。また、地震発生のメカニズムについては「専門家」に任せましょう。

 情報収集という観点では、コミュニティFMラジオを聴くのも一つの方法です。身近の被害状況・避難指示や避難所の案内など「地域に根差した情報」は、コミュニティFMラジオでも放送されています。インターネットのサイマルラジオ経由はもちろん、インターネットをお使いでない方でも携帯ラジオで視聴可能です。

─有事の際にラジオを聴いてもらえるよう、平時は楽しい番組をお届けしている─

 以前、コミュニティFM放送の中で聞いた言葉です。自然災害や事故・火災など、地域における「有事」の際に、身近で役立つ情報を提供するメディアが「コミュニティラジオ」です。

 しかし、日頃からラジオに親しんでいないと、「いざ有事」となっても「ラジオを聴く」ことに思い至らない・・・ということにもなりかねません。そこで、「平時から」ラジオに親しんでもらうために、楽しい番組を放送するのです。

 今は「有事」です。放送スタッフの皆さんをはじめ、リスナーの皆さんも、今、自分にできる事から始めていきましょう。
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2023年12月の傾向と背景

2023年12月27日 | 気象情報の現場から
 前回の記事で述べたように、今年(2023年)の12月は「17日頃」を境に「暖冬」から「寒冬」に転じました。これに伴い、新潟県では21~22日を中心に大雪に見舞われました。

 大気の循環場を見ると、前半は偏西風のリッジ位相が卓越したものの、後半はトラフ位相が進んできたことで寒気の南下が顕著に現れました。さらに冬型の気圧配置と日本海上の収束帯の影響も重なり、一気に冬の景色に染められたようです。



 続いて、12月21日は冬型の気圧配置となりました。日本海上では北風と西風に伴う収束帯(JPCZ)が形成され、付近では対流も活発になりまそた。上空では湿潤域が広がる他、顕著な寒気南下も重なって大気の状態は不安定になっており、大雪や強風なども予想されました。



 12月22日も冬型の気圧配置が続き、その上空では非常に強い寒気も南下しました。また、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が北陸地方にかけて延びており、その付近では対流活動も活発になりました。また、JPCZの動向に加えて、その北側に広がる「Tモード」の雲域の広がりが、平野部中心に積雪の増加に寄与したようです。

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2023年12月の傾向(新潟県)

2023年12月27日 | 気象情報の現場から
 新潟県における「2023年12月の平均気温と降雪量の推移」を25日まで調べてみました。

 概ね5日~17日頃までは平年より高温傾向で推移しました。その後、平年より低温傾向に転じると顕著な降雪となりました。4地点のグラフからは、17日頃を境に傾向が大きく変わっているのが見て取れます。






 一口に「暖冬」とは言っても、必ずしも「高温状態が続き、雪が降らない」と言うわけではありません。もちろん「高温」の時もあれば、「低温」の時もあるのです。そして、トータルの平均を取ると「高温」の側に偏るのです。

 実際の間隔としては「高温の時期と低温の時期の振れ幅が大きい」という所でしょうか。
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「あんまん」にハマる

2023年12月09日 | 何気ない?日常
 いよいよ寒くなりました。「コンビニエンスストア(コンビニ)」のレジ付近に「中華まん蒸し器(スチーマー)」が登場する季節となりました。

 しかしながら、「中華まん」は何年も(少なくとも十数年)食したことがなかったのです。おそらく学生時代?に「肉まん」を食した・・・誰かから分けてもらったものを食した?・・・のが最後だったように記憶しています。当時、私の周囲は「肉まん」派が多く、「あんまん」派は私の他には皆無のようでした。

 子供の頃は「あんまん」と言えば、母に専用(?)の「蒸し器」で蒸してもらったように記憶しています。子供ながらに「手間が掛かる(=何やら難しそう)」と認識していました。

 それから年月が経ち、アルバイトで1年近く「コンビニ店員」として従事しました。スチーマーにスタンバイしている商品が少なくなると、奥の冷蔵庫から新たな「中華まん」をスチーマーの中に補充します。スチーマーに入れた後、一定時間が経過すると販売可能となるのです。

 レジで「中華まん」のオーダーが入ると、スチーマーからトングを使って取り出して、袋に入れて渡すわけです。袋と言っても「直ぐに取り出して食べることが前提」の簡易な袋です。その当時も「専用のスチーマーが必要(=気軽には手が出せない)」と認識していました。

 要は「あんまん」は好きでも「手軽に食せる存在ではない」と認識していたのです。そもそもこの20年近く、コンビニでは「お弁当とデザート」を買うのが定番となっていたので、わざわざそこに「中華まん(あんまん)」を追加するという発想自体ありませんでした。お弁当はコンビニのレンジで温めて貰い、そのまま家に持ち帰って食することになります。

 最近、その生活スタイルも少しずつ変わってきました。最大の要因はやはり6月の「引っ越し」です。旧居ではスペースの都合で設置できなかった「冷蔵庫」と「電子レンジ」を、新居では設置することができました。



 実は冷蔵庫の下に床を守るための「専用マット」を設置しています。また、冷蔵庫自体も電子レンジを上におけるタイプを選びました。これらの家電製品を自分で選んで購入するのは初めての経験でした。

 そしてふと、近くのコンビニで「電子レンジ用の『あんまん』」見つけました。思わず衝動買いしました。おそらく十数年~20年近く振りとなる「あんまん」がこんなにも手軽になるとは。



 後日、近くのスーパーでも「電子レンジ用でも調理可能な『あんまん』」を見かけました。お皿に乗せて、軽く水を掛けて、ラップして、電子レンジで温めるだけで良いのですね。



 ・・・と言うわけで、電子レンジ手軽な「あんまん」にハマりました。
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引っ越しのその後

2023年11月18日 | 何気ない?日常
 暦は11月なので、1年を振り返るには未だ早いかも知れません。しかし、現時点で私の2023年を振り返ってみると「引っ越し」「猛暑」「牛タン」の3つのキーワードが浮かんできます。

 最初の「引っ越し」は6月下旬の引っ越しの事です。7月にアップした記事「引っ越しました」にその話題を記載しております。記事でも触れましたが、新居に入居早々「洗濯機に関するトラブル」が相次ぎました。

 給水ホースの漏水に始まり、蛇口の漏水とパッキン交換、その後は洗濯機本体の漏水・・・結局、洗濯機の買い替えを余儀なくされたのでした。新しい洗濯機や関連する品物が到着するまでの、約1か月に渡り「手揉み洗い」で乗り切りました。

 そこで、洗濯機の新旧比較写真です。左が交換前・右が交換後です。交換の際は洗濯機の下にトレイを置き、かさ上げ台の上に洗濯機を設置する形としました。排水口が床面ではなく、横の壁面から出ている形なので、スムーズな排水を実現するために考えました。



 10月上旬、キッチンの換気扇を回していた所、突然「ブオォォォォォォーーーー!!」と牛の呻き声のような異音が響き渡りました。慌てて換気扇を止め、時間をおいてから再び回すと・・・今度はピタリと動きません。そのまま少し経ってから、おもむろに羽根が回り始め、低速で回りながら「ブオォォォ・・・」と異音を立て始めました。どうやら、寿命のようです。こちらも不動産会社を通して大家さんに報告し、交換して頂きました。

 羽根を付けた状態はこんな感じですが・・・



 羽を外すと・・・年月の長さを彷彿とさせる光景がそこにはありました。



 その後、「牛タン」こと「仙台での学会発表」が終わった辺りから、次第に寒くなってきました。長く続いた「猛暑」や「秋らしくない暑さ」が続いた日々はどこへやら。折しも、天気図上では雪の目安とも言われる「上空1400m付近(850hPa面)で-6℃以下の寒気」も見られるようになりました。



 そろそろエアコンも暖房に切り替える時期がやって来ました・・・と、その矢先に「衝撃の事実」が発覚しました。新居に設置されているエアコン(1993年製)は、型番が古く「冷房専用エアコン」だったのです。夏の猛暑では重宝しましたが、「暖房」の機能は無かったのです。

 そこで急遽「電気ストーブ」を購入しました。見た目は小型ですが、それなりに暖まります。ちなみに、床の上にはジョイントマットを敷いています。



 季節は進み、天気図上ではいよいよ「上空5000m(500hPa面)で-30℃以下」の強い寒気も見られるようになりました。


 そのような時期になっても、裏起毛のタイツを穿くと足元が暖かいのです。
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5年ぶりの仙台にして、初めての牛タン

2023年10月27日 | CAMJ参加記録
 今回は前回の記事の続きになります。但し「難しいお話」は無しにして、単なる「旅行記」として記載します。

 10/23(月)~26(木)の日程で、仙台国際センターを会場に「日本気象学会2023年度秋季大会」が開催されました。

 今大会は「会場(仙台国際センター)とオンライン(テレビ会議システム:zoom)の同時開催」であり、これまではWeb上のオンデマンド形式だった「ポスターセッション」や会場で行われる「口頭発表(オーラル)セッション」も、zoom(ズーム)を介してオンラインで聴講できるようになりました。

 パンデミック以降の学会は、会場に集まる状態(三密:密集・密閉・密接)を避けるため、リモートベースがメインでした。しかし、コロナ5類移行を受けて、少しずつ以前の賑わいが戻ってきているようです。

 私は、1日目~3日目の午前までの部をオンラインで参加した後、仙台へ移動して4日目を会場にて参加しました。そして、4日目に用意されたセッション(専門分科会)にて口頭発表に臨みました。

 ちなみに、前回の訪仙が「日本気象学会2018年度秋季大会」の口頭発表(パンデミック前)だったので、ちょうど5年ぶりの仙台になります。


 10月25日(水)の夕方に仙台駅に降り立ちました。この景色を見る度に圧倒されます。大きなビルに、広い道路、歩いている人の数・・・どれをとってもスケールが違います。


 そして、大きな「SENDAI」の文字。5年ぶりの光景です。駅からそのままビジネスホテルに向かい、重い荷物を置いて街中を歩きます。

 現代にいたる仙台の基礎を築いた伊達政宗公は、和歌などの文化・芸術にも精通した教養人でもありました。街中に出ると、一瞬「ここは東京か!?」と錯覚してしまうような、お洒落な光景も見られました。今もなお仙台の地には「政宗イズム」が根付いているように感じます。


 特に「クリスロード」の賑わいを見ると、かつて歩いた「中野ブロードウェイ」の光景がダブって見える瞬間があります。そして、仙台駅の地下1階のレストラン街へ赴きます。


 今回のお目当て「その1」。人生初の「牛タン定食」です。これまで、何度も訪仙の機会はありましたが、「牛タン」を食する機会はありませんでした。そこで今回は、仙台に来て最初に行うべき事項として「牛タン定食」を予定していました。翌日には学会発表を控えているので、「ひとり壮行会」も兼ねております。肝心の「牛タン」は、食味は「牛肉」でありながら「独特の食感」を堪能しました。なるほど!これが「牛タン」というやつか!


 一晩明けて、26日の朝を迎えました。仙台市営地下鉄に乗って会場の最寄り駅に到着。そう、仙台市には地下鉄が走ってる!!!(感動)


 会場に入ると、目の前にはレッドカーペットの階段が広がっています。その割には人の気配がしません。ちょっと早く来過ぎたようです。口頭発表のセッション開始は午前10時からですが、9時位に会場入りしたのです。まあ、遅刻するよりは良いでしょう。



 今大会の口頭発表は大きく分けてA,B,C,Dの4つの会場があり、各会場が期間中毎日、午前と午後で別々のセッションが用意されました。この他にポスターセッションもオンラインで開催されました。

 ちなみに、私の参加したのは、日本気象予報士会(CAMJ)が企画した「専門分科会3」で「4日目午前のC会場」です。C会場はパッと見でも「140~150席近く」が用意されており、壇上から見た感じでは40~50名位の参加と言った感じでしょうか?とは言え、これは「かなりアバウト」な印象で語っているので、正確な数字は公式発表(あるのかな?)を待ちたい所です。

 ただ、会場に足を踏み入れた瞬間、余りの部屋の広さに圧倒されました。出入口の扉は大きくないのですが、一歩中に入ると、目の前には広大なスペースが広がっていました。多数の椅子がズラリと並んでいたのは圧巻です。やはり、学会発表の舞台ともなるとスケールが違います。

 今回はテレビ会議での同時配信の都合上、指示棒やレーザーポインターは使わず、代わりに「パワーポイントのポインタ機能」を使用するように、と当日指示がありました。実は、パワーポイントのポインタ機能・・・使ったことがありません。この時はさすがに「やばい!」と思いました。結局、「ポインタ無し」で強行突破しました。

 とは言え、発表自体は「全力で挑み、持てる力を出し切った」ので、悔いはありません。今の私はもう「抜け殻」そのものです。

 セッション終了後にCAMJの参加者で記念撮影をしました。後々「てんきすと」に掲載されるのでしょうか?


 昼休みに会場の外に出てみると、秋の晴れた空が仙台の地に彩を添えていました。午後は他のセッションを色々と覗き見て回りました。


 その夜は、また仙台駅のレストラン街で「そば御膳」を頂きました。前日が「ひとり壮行会」なら、こちらは「ひとり打ち上げ」です。


 今回のお目当て「その2」。仙台と言ったらこれでしょう、と言っても過言ではない「萩の月」。土産品として売られていますが、これは「自分用」です。訪仙の度に記念として購入するのが恒例です。後で仙台の思い出と共に美味を楽しむのが至福の一時なのです。
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この秋は「学会の秋」

2023年10月04日 | 計算・局地気象分野
 あの「記録的な猛暑」から一気に秋めいてきました。秋になると「あっという間に日が暮れてしまう」様子を「釣瓶落とし」と言いますが、最近は気温についても「釣瓶落とし」の感があります。

 さて、食欲の秋、読書の秋、芸術の秋…など、色々な秋がありますが、私の場合は今年は「学会の秋」となりそうです。10月23日~26日の日程で「日本気象学会2023年度秋季大会」が仙台を会場に開催されます。

 この中の「専門分科会」の一つで「GSM地上を用いた新潟県内における降雪量ニューロ・モデルの開発」と題した発表を予定しております。

 昨年10月の記事「学会誌9月号届く」で述べた通り、学会誌「天気」9月号にて調査ノート「ニューラルネットワークを用いた山形県内の気温および降雪量の予測実験」が掲載されました。これは7年振り・2報目の「ニューラルネットワーク論文」です。

 そこで、このニューロ・モデルによる「山形県」の降雪量予測の手法を「新潟県」にも適用して実験を試みました。その取り組みについて、学会の場で報告します。



 ついでに「仙台」と言えば、銘菓「萩の月」を買うのが定番です。
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帝国は戦争によって発展し、戦争によって衰退する

2023年09月27日 | 何気ない?日常
最近(8月から)少しずつ読み進めていた本です。


山﨑圭一 先生, 2018:一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書.SBクリエイティブ,351pp.

 膨大な内容をコンパクトに圧縮しつつも、歴史の流れが掴みやすく解説されています。各章の初めに歴史全体の流れ図が掲載され、また文章の途中にも判りやすい解説図が挿入されるなど、著者である山﨑先生の豊富な経験に基づいた工夫が随所に見られます。

 また、本の記述に加えて「映像授業」を平行して受講することで、理解を深めました。
高校 世界史 映像授業 Try IT(トライイット)新里将平 先生

 こちらは「372本」の動画で構成されています。動画は1.5倍速で視聴すると丁度良いスピードです。詳細な部分についても、ユーモアも交えつつ丁寧に解説されています。このような動画を手軽に受講できるのはありがたいですね。

 世界史(通史)の範囲を「何とか一巡しただけ」なので、まだ語句や名前を覚える所までは達しておりません。ただ、とりあえず歴史の大まかな流れは掴めました。

 振り返ってみると、世界の歴史上、様々な帝国が興亡を繰り返しています。そのプロセスに目を向けると、一つの法則(のようなもの)が浮かび上がってくるのです。それが、今回の記事のタイトル「帝国は戦争によって発展し、戦争によって衰退する」です。

 強大な力を持つ「帝国」は戦争を繰り返すことで「領土」や「植民地」を拡大し、多様な民族を内包して発展します。しかし、ある程度(限界)を超えると、戦争を繰り返す度に国内は疲弊し、財政を圧迫し、さらには内政もぐらつき始めます。やがて、敗戦もしくは国内の革命勃発により、政権の崩壊を迎えるのです。但し、帝国そのものが滅亡するとは限りません。しかし「存続」はしつつも、その影響力は衰えてゆくのです。

 さて、労働組織については「ピーターの法則」が良く知られています。これは、簡単に言えば「能力の限界まで出世すると、そのポジションで無能化する」というものです。

 帝国の発展と衰退についても、ピーターの法則のような「歴史の法則」があるのかも知れません。そういえば、平家物語にも「盛者必衰の理」「たけき者もつひには滅びぬ」とありますね。
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波形の重ね合わせ

2023年09月12日 | 計算・局地気象分野
 ニューラルネットワークで多く用いられるシグモイド関数を組み合わせると、三角関数のような波形を作り出すことができます。次の図のように、基準となるシグモイド関数(黒)を、x軸方向に正の方向()と負の方向()にそれぞれ平行移動して、その両者を線形結合(重ね合わせ)することで、新たな単発パルス波形()が得られます。



 さて、「フーリエ級数展開」で知られるように、一般的に「任意の関数は三角関数の線形結合で表現(近似)できる」ので、上記のシグモイド関数()の波形でも同様のことができるかも知れません。そこで、三角関数の波形シグモイド関数の単発パルス波形の重ね合わせにより、それぞれ矩形波の近似関数を作ってみました。


 左が三角関数を5つ重ねた波形、右が単発パルス波形を5つ重ねた波形(シグモイド関数は10個に相当)です。右(シグモイド関数)の場合は、左(三角関数)ほどではないにせよ、それなりに「矩形波」を表現(近似)しています。なお、適用区間は「-2≦x≦2」に限定しています。

 ここで、重ね合わせに用いた波形(成分)を列挙してみましょう。まず、三角関数については、下記の5種類の関数を重ね合わせました。


 続いて、シグモイド関数については、下記の5種類の単発パルス波形を重ね合わせました。



 従って、シグモイド関数を幾つも重ね合わせることで(線形結合)、近似関数を作り出すことができます。

 ニューラルネットワークでは、多くのシグモイド関数を段階的に重ね合わせることで、その関数近似能力を高めているのです。しかも、機械学習のプロセスにおいては、個々のシグモイド関数の重みを「自動的に」調節しているのです。
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今年(2023年)の8月は「記録的猛暑」だった。

2023年09月05日 | 山形県の局地気象
 先日(8月25日)の記事「今年(2023年)の猛暑を甘く見てはいけない」でも述べましたが、今年の8月は「猛暑日」が頻発しました。

 山形県内4地点(酒田・新庄・山形・米沢)における8月の日最高気温の推移(1976~2023年)を調べました。日最高気温は「猛暑日」「真夏日」「夏日」「夏日未満」の4階級に分け、各々の出現回数を表示しています。今年(2023年)は「夏日」が各地とも「1日だけ」ありましたが、残りは「真夏日」と「猛暑日」でした。






 ちなみに、8月の山形県内の熱中症による救急搬送状況は下記の通りです。今年(2023年)の8月の暑さの影響の大きさがうかがえます。

・2023年:523名 (7/31 - 8/26) ※速報値
・2022年:139名 (8/ 1 - 8/31)
・2021年:238名 (8/ 1 - 8/31)
・2020年:387名 (8/ 1 - 8/31)
・2019年:447名 (8/ 1 - 8/31)
・2018年:196名 (8/ 1 - 8/31)
・2017年:103名 (8/ 1 - 8/31)
・2016年:177名 (8/ 1 - 8/31)
・2015年:142名 (8/ 1 - 8/31)
・2014年:167名 (8/ 1 - 8/31)

【出典】総務省消防庁のホームページ(2023年09月05日・閲覧)
救急搬送状況 令和5年の情報
過去の全国における熱中症傷病者救急搬送に関わる報道発表一覧


 続いて、山形県内4地点(酒田・新庄・山形・米沢)における8月の降水量の推移(1976~2023年)を調べました。年毎にバラツキはありますが、「今年(2023年)の降水量が少なかった」ことは明らかです。前年(2022年)とのコントラストが顕著です。また、各地の今年(2023年)8月の降水量を平年値と比較してみると、次のようになります。

・酒田:13.0mm (平年値:205.6mm,平年比: 6.3%)
・新庄:53.0mm (平年値:196.4mm,平年比:27.0%)
・山形:60.5mm (平年値:153.0mm,平年比:39.5%)
・米沢:57.5mm (平年値:151.4mm,平年比:38.0%)

 今年(2023年)8月の降水量は、平年の4割に満たないことが判ります。



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エネルギーと質量の等価性

2023年08月31日 | 物理学の基礎
 前回の記事では「ローレンツ変換」を導入しました。今回はその続編として「エネルギーと質量の等価性」を導いてみます。

 ここでも、前回と同様に2つの慣性系としてK系とK'系を導入し、それぞれに観測者A、Bが存在すると考えます。また、K系は静止する一方、K'系は(K系に対して)一定の速度vで運動する状況を想定しています。


【等速運動する慣性系における物体の衝突】

 今回は、等速運動する慣性系(K'系)の中で2つの物体を衝突させてみます。この2つの物体は同じ質量を持っており、互いに同じ速さ(向きは逆向き)で等速運動して衝突に至ります。



 この場合、K'系の観測者BとK系の観測者Aでは、現象の見え方(認識)が異なります。まず、観測者Bから見ると「同じ質量m'の物体が、同じ速さu'で逆向きに運動して正面衝突し、衝突直後は静止状態に至る」と認識します。

 一方、観測者Aから見ると「物体1と2は互いに同じ向きに、異なる速さu1,u2で等速運動しており(u1>u2)、物体1が物体2に追いつくように衝突し、衝突直後は(慣性系K'と同じ)速度vで運動する」と認識します。

 また、観測者Aから見ると、ローレンツ変換によってK'系内の時間と空間が変化しているので、2つの物体の質量m1,m2についても「互いに等しい」と認識できるとは限りません。



 そこで、K系の観測者Aの視点で、K'系内の2物体の運動量保存則、および各物体の速度のローレンツ変換の式と立て、2物体の質量比(m1/m2)を導きます。

 本来、2つの物体と同じ慣性系に存在する観測者(この場合はB)から見れば、質量比は「もちろん1」となるのですが、異なる慣性系の観測者(この場合はA)から見ると「必ずしも1とは限らない」と考えるのです。


 ここで、この質量比(m1/m2)2の式は、運動量保存則とローレンツ変換の式から「u'とvを消去する」ことで導かれるのですが(教科書には「この記述」しかなかった)、このやり方には「コツ」があります。当初、独力ではなかなか導けなかったので、ネットで調べて漸くそのテクニックを見つけました。


 (※予め「1-u12/c2」と「1-u22/c2」を計算しておいて、後からまとめて代入するのです。)


【相対論的質量】

 続いて、K系とK'系のそれぞれに物体を置いた場合を考えてみます。今度は、物体1はK'系において静止状態にあり、物体2はK系において静止状態にある状況を考えます。

 この場合、観測者Bから見ると物体1は静止状態として認識されます。一方、観測者Aから見ると物体1は(K'系と同じ速度)vで等速運動していると認識されます。



 さて、そもそもの前提として、物体1と物体2は同じ慣性系においては同じ質量を持っています。そこで、物体2を物体の本来の質量m0、物体1をK'系において変化したかも知れない質量mと考えて、質量比(m1/m2)を求めてみます。


 この結果、K'系内における質量はmは、本来の質量m0のγ倍に変化していることが判りました。この変化した質量mを「相対論的質量」と言います。


【相対論的力学】

 古典力学における「運動量」は質量と速度の積で定義されます。また、「ニュートンの運動方程式」は、「運動量の時間微分が外力に等しい」という形で表されます。

 これを踏まえて、相対論的質量と速度の積を「相対論的運動量」と言います。また、「相対論的運動量の時間微分が外力に等しい」という形で表される方程式を「相対論的運動方程式」と言います(次の式では速度と外力をベクトルで表記しています)。



 ここで、エネルギーの変化は外力による仕事によってもたらされると考えると、エネルギーの微小変化(dE)は微小仕事(F・dr)で表されます。後はひたすら数学の問題です。



 両辺を速度0からvまで積分すると、エネルギーの変化と質量の変化の関係(エネルギーと質量の等価性)が導かれます。



 ここで「右辺」の積分には、これまたちょっとした「コツ」が必要となります。こちらもネットで調べて漸くそのテクニックを見つけました。


 (※要は「(1-v2/c2)-3/2=(d/dv)(1-v2/c2)」を発想できるかどうかがポイントです。)
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ガリレイ変換とローレンツ変換

2023年08月31日 | 物理学の基礎
 先日の記事でも述べましたが、この夏の暑さは異常です。外に出るのも儘ならず、インドアで過ごすことが多くなりました。

 そこで、この8月中はスキマ時間に「特殊相対性理論」の解説を読み返しておりました。工学部(機械系)で特殊相対性理論を履修したのは、約四半世紀前の大学1年(教養部)の頃です。使用された物理学の教科書では僅か「10ページ前後」の記述でしたが、なかなか難解でした。あらためて理解したイメージを「メモ書き」として記事に残しておきます。


【異なる2つの空間(K系とK'系)】

 まずは一連の話の前提として、異なる2つの空間を導入します。一方の空間をK系、もう一方の空間をK'系と呼ぶことにしましょう。

 K系は静止状態にあり、この中には観測者Aが存在します。また、K'系は一定の速度で動いており、この中には観測者Bが存在します。K系が駅のホームだとすると、K'系はホームを通過する新幹線のようなイメージです。



【慣性系】

 ここで、K系とK'系のそれぞれに座標を設定します。これらの座標系は「慣性系」と呼ばれます。慣性系とは、慣性の法則が成立する座標系の事です。慣性の法則は「静止している物体は静止し続け、運動している物体は一定の速度を保ちながら運動を続ける」と言う法則です。

 つまり、座標系は静止しているか等速運動をしているため、その加速度は常にゼロであり続けます



【ガリレイ変換】

 K'系内における点Pに着目し、この点Pの位置を観測者A、Bのそれぞれから見た場合の見え方について考えてみます。点Pの位置(座標は)は、観測者Aからはxの位置に見えます。そして、この位置xは時々刻々変化します

 一方、観測者Bからはx'の位置に静止しているように見えます。観測者Aの立場から言えば「観測者Bもまた点Pと共に同じ速度で動いている」のです。

 この関係を等式で表し、時間微分を施すと、位置の関係から、速度や加速度が導かれます。その結果、運動方程式はK系、K'系で同じ形となります。


 すなわち、一つの座標(慣性系)で成立する力学の原理は、これと等速運動する他の座標系(慣性系)についても成立します。従って、力学現象の基礎として絶対速度を測定する方法は無く、ただ相対速度のみが測定できる、と言うことです。これを「ガリレイの相対論」と言います。


【非慣性系と慣性力】

 ここで、もしK'系が慣性系ではなかった場合を考えてみましょう。つまり、K'系が一定の「加速度」を持って運動している状況です。この場合、K'系は「非慣性系」と呼ばれます。



 先ほどのガリレイ変換と同様に、K'系内における点Pに着目し、この点Pの位置を観測者A、Bのそれぞれからの見え方(位置)について式を立ててみます。時間微分を施すと、位置の関係から、速度や加速度が導かれます。


 その結果、K'系の運動方程式の中に「-ma」と言う項(慣性力)が現れました。非慣性系の運動では、座標系自身の加速度に伴う「みかけの力」が新たに加わります。


【K'系における光の往復(1)】

 ニュートンの運動方程式と慣性系の関係を概観した後は、マクスウェルの電磁方程式と慣性系の関係を見てみましょう。ここでは、運動する座標系(K'系)の中で光(電磁波)を往復させ、その様子を外部の静止系(K系)の観測者Aの目線で考察してみます。

 まずはK'系の中で、光を(K'系の)進行方向に沿って、距離lだけ往復させてみます。



 K'系では「光源から反射板までの光の速度はcであり、また反射板から反射される光の速度もcと認識される」と考えられます。

 一方、K系では、K'系自体の速度vも加わるため、「光源から反射板までの光の(相対)速度はc+vであり、また反射板から反射される光の(相対)速度もc-vと認識される」と考えられます。

 この結果、K系の観測者Aから見た場合の光の往復に要する時間t1が求められます。



【K'系における光の往復(2)】

 続いて、K'系の中で、光を(K'系の)進行方向とは垂直に、距離lだけ往復させてみます。

 K'系では「光源から反射板までの光の速度はcであり、また反射板から反射される光の速度もcと認識される」と考えられます。

 一方、K系でも「光源から反射板までの光の速度はcであり、また反射板から反射される光の速度もcと認識される」と考えられます。


 ただし、K'系自体の速度vの影響で、「光の進み方は『真っ直ぐ』ではなく『斜めに傾く』と認識される」と考えられます。

 この結果、K系の観測者Aから見た場合の光の往復に要する時間t2が求められます。



【2種類の光を合わせると】

 ここで、上記の2つの光(1)(2)を合わせた場合を考えてみます。

(1) K'系の進行方向に沿った方向(往復時間:t1)
(2) K'系の進行方向に垂直な方向(往復時間:t2)

 当初、2つの光は時間差「Δt = t1 - t2」に相当する干渉を生じる(時間差がある=光路差がある)と考えられました。しかし、実際には観測されなかったのです(あれっ?)。

 K系とK'系との間で「ニュートンの運動方程式」は変わらず適用できますが、「マクスウェルの電磁方程式」の場合はちょっと勝手が違うようです。そこで、次のような要請(アインシュタインの要請)が基本原理に組み込れました。

(1)1つの慣性系で成立する物理法則は、これと等速運動する他の座標系(慣性系)に対しても同じ形で成立する。
(2)真空中の光の速度は、光源および観測者の運動とは無関係に、常に一定である(光速不変の原理)。

 つまり、光速が変化するのではなく、K'系の空間が歪む(縮む)ことで「Δt = t1 - t2 = 0」、つまり「t1 = t2」となる(←辻褄が合う)と考えます。この時、K'系の空間は元の長さlからl'に変化すると考えます。この結果、「t1 = t2」が実現すると考えると、次のような式が得られます。


 このように、慣性系の速度に応じて内部の空間が縮むことを「ローレンツ収縮」と言います。


【ローレンツ変換】

 ローレンツ収縮の概念を拡張してみます。 

 改めて、K系(静止)に光源を設置し、K'系(運動)の中にある点Pに向かって光を発射する状況を考えてみます。

 ここで、K系とK'系の時刻をそれぞれt,t'と表すことにします。また、K系とK'系の座標をそれぞれx,x'と表すことにします。

 初期状態(t = t' = 0)の時、K系とK'系は重なっており、この瞬間にK系の光源(x = 0)から光を発し、同時にK'系は速度vで動き出すものとします。



 ある程度の時間(K系ではt、K'系ではt')が経過した後の様子を考えてみます。ここからは、座標系の取り方とは無関係に一様に流れる「絶対時間」という考え方を捨てて、各慣性系毎に異なる時間を考えます。

 改めて、光の経路上に点P1、点P2、点P3を置いて考えてみます。P1~P2間はK系のみ、P2~P3間はK系とK'系が重なっている区間となります。



 ここで、K系に固定された光源(点P1)から発せられた光は、点P2を経てK'系内に入り、点P3に到達したとします。

 観測者Aの視点に立って、P1~P3間の距離を考えてみると、P1~P2間の距離は「時間tにおけるK'系の移動距離」であり、P2~P3間の距離は「K'系内を通過した距離」となります。

 一方、観測者Bの視点に立って、P2~P3間の距離を考えると、やはり「K'系内を通過した距離」となります。

 ここで、P2~P3間の距離について、2人の観測者の認識が異なります。観測者BはP2~P3間の距離をx'と認識しています。しかし、観測者Aはx'からローレンツ収縮した長さを認識しています。K'系内は空間そのものが収縮しているので、観測者Bも一緒に収縮していることになります。もちろん、観測者Bは自らの収縮を認識できません。

 従って、観測者Aの認識をベースに、観測者Bが認識する空間x'と時間t'を表現すると、次のようになります。


 つまり、K系とK'系では「空間の大きさが変わるのと同時に、時間の長さも変わる」ということです。この変換を「ローレンツ変換」と言います。また、この逆変換は次のようになります。



 ここで、ローレンツ変換の式を基に、空間と時間の微小変化を考えてみましょう。



 時間と空間の微小変化を基にして、速度成分のローレンツ変換の式を導くことができます。



 この続きとなる「エネルギーと質量の等価性」は、こちらです。

 ちなみに、現実の世界で身近な物理現象を考える際は、運動速度vは光速cよりも圧倒的に小さく「古典力学(ニュートン力学)」で十分対応できます。ローレンツ変換の式で「(v/c)→0」の極限を取ると、ガリレイ変換の式と一致します。

 一方、「光速に近い速度で運動する、または天体のような巨大な質量を扱う」ような物理現象を扱う際には、この知識は必要になると学びました。今後の人生において、そのような現象を扱うことが「全く無い」とは言い切れないので、念のため勉強しておきます。
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