退屈日記

とりあえず日々のつれづれを。

「ピュアであること」について

2012-10-26 02:31:39 | Weblog
晴れ。日差しが暖かい。

須藤斎「海底ごりごり 地球史発掘」を読む。

今は海底から7000mのところまで掘削できるのだという「事実」に驚く。
そこから手に入れたコア(筒状の土壌)を調べることでさまざまなことがわかる模様。

「微化石」を調べるのが仕事の著者の専門は「珪藻=ケイソウ」。
ガラスでできた殻=結晶シリカで包まれているせいで化石になるとのこと。

大きさは10μm(マイクロメートル=100万分の1m)から1mmまでぐらい。
報告された種数は2万ほどだが化石種を含めると50万種以上もあるらしい。

中でも半数は葉緑体を持っていて光合成するものの
もう半数は捕食もするという「渦鞭毛藻(うずべんもうそう)」が興味深い。

深海には硫化水素を栄養源として生きると言われているチューブワームもいることだし
いわゆる「生物多様性」を「実感」できる内容。

地上に暮らすわれわれは「凶悪犯罪者」や「モンスターパレント」に驚いたりするのが常だけれど
「生物の世界」からすれば何ほどのものでもないか。

本書の大枠は「閉ざされた環境で外国人と暮らす体験記」という形になっていて
「内気な主人公」が「日本人」に目覚めつつ「世界の楽しさを知る物語」としても読めるのがポイント。

素人にとっての「煩雑さ」を和らげる工夫が好ましい一方
そこそこの専門性を維持するだけの内容も含まれているバランスもグッド。

「示準化石」や「示相化石」、「アルゴン・カリウム法」や「カーボン14」による年代測定の話も出てきて
おそらく中学で習った地学分野の知識があれば(なくとも)十分に楽しめるはず。

「生物」と「科学」と「世界」に対する「センス・オブ・ワンダー」を感じさせる作品なので
興味のある向きは是非。

「好奇心は猫を殺す」というのはいささか物騒な英国のことわざだけれど
ここには「透明感のある素朴な喜び」があるのだと言っておく。
コメント
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