股間の解放記

普通の社会人PEKOの、日々思うことをつづっていきます。

2023年10月15日 00時47分42秒 | 映画評論タ行

製作年:2023年
製作国:日本
日本公開:2023年10月13日
監督:石井裕也
出演:宮沢りえ,磯村勇斗,鶴見辰吾,高畑淳子,二階堂ふみ,オダギリジョー
10月13日公開、映画「月」オフィシャルサイト

堂島洋子(宮沢りえ)は、作家として成功を収めていたがスランプに陥ったことを機に重度障害者施設で働き出す。陽子(二階堂ふみ)、さとくん(磯村勇斗)といった同僚と共に入所者たちの対応にあたる洋子は、自分と生年月日が一緒の入居者きーちゃんと親身になっていく。そんな中、ほかの職員による入所者への冷淡な扱いや暴力を知ったさとくんが、自身の抱く正義感や使命感を増幅させるあまりに、ある行動に走る。
辺見庸の小説「月」を実写化したドラマ。重度障害者施設で働く元作家の女性が、同僚の男性が抱く正義感や使命感が思わぬ形で変容していく様子を目の当たりにする。メガホンを取るのは『アジアの天使』などの石井裕也。『湯を沸かすほどの熱い愛』などの宮沢りえ、『ビリーバーズ』などの磯村勇斗、『虹色の朝が来るまで』などの長井恵里のほか、高畑淳子、二階堂ふみ、オダギリジョーらが出演する。

相模原の障がい者施設で起きた事件をモチーフの小説「月」を実写化した本作。「ロストケア」「PLAN75」を重い内容だったが、本作はそれ以上に重かった。そして観終わったあと少し気分が落ち込んだ。でも観て良かったと思った。色々と考えさせられた。
森の奥にある重度の障がい者施設で起きていること。洋子が目の当たりにしたのは職員が入所者にしている虐待の数々。そして一緒に働く職員のさとくんの心境にも変化が現れていきます。自分がもし重度の障がい者と接することになったら、何の偏見や躊躇もなく接することが出来るだろうか?もちろんさとくんがした事は決して許されることではない。しかし、まるで正論のように思想を次々と投げてくるさとくんのような人間に対して、言葉で反論できる自信はあるだろうか。「私は認めない」としか言えない洋子。心がないから人間ではない、寝たきりで体も動かせないのは生きている意味がない…。じゃあ何故生きているのか、人間は何のために生きるのか。綺麗事ではない答えを出せるか。観ている観客一人一人に問いかけられている気がしました。さとくんが言っていた3.11の話に共感してしまった。津波の映像が流れると悲しい気持ちになる。でも数年たつと「あれは現実だったのか?」「夢だったのか?」「あれが夢だったらいいのに…」と思う感覚。そして記憶から“見たくないこと”“嫌なこと”“自分には関係ないこと”を勝手に排除してしまう感覚。人の命を奪うことは許されないが、見て見ぬふりをすることも同じように罪なのかもしれない…。そういえば過去にどこかのアホな女性議員も言っていた“生産性のない人間”発言。生産性のあるなしで人間を2つに分けることは間違っている。
主人公の洋子が、過去に重い障がいを持って生まれた我が子を早くに亡くし、再び妊娠したことで苦悩するストーリーも同時進行で描かれています。自分の子供が生まれる前に障がい者だとわかったら…。生きるとは何かと同時に、幸せとは何かを考えさせられました。堂島夫妻の愛がこの映画で唯一救われるポイントでした。
差別はしてはいけないと分かっていながらも、自分には関係ないと思っていたり、自分に不都合なことは見て見ぬふりと、無意識にしてきた気がする。相模原の事件が起きた原因は“臭い物に蓋をする”日本社会の悪い風潮なのかもしれない。当事者だけの問題ではなく社会全体で考えていかなければいけない問題はたくさんあるのだと再認識させられました。

宮沢りえ、磯村勇斗の迫真の演技は素晴らしかったです。

この作品の評価・・・・★★★★★★★★☆☆(満点は★10)
コメント
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