軌道エレベーター派

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なかなか興味深い北の「衛星打ち上げ」

2012-04-12 23:17:24 | その他の雑記
 世間を騒がせている北朝鮮の自称「人工衛星」打ち上げ、きょう4月12日は実行されなかったそうです。
 今回は一部情報公開し、公開すればするほどツッコまれていますが、けっこう興味深く注視しています。「深く考えているのか、単なる無知なのか判断できん!」と思えることが多いんです。はじめに断っておきますが、本当に衛星打ち上げだと信じてはおらず、あくまで仮定の話で、またあの国を支持する気は毛頭ありませんので、念のため。

 さて、「あの衛星はハリボテだ(渋谷のNHK放送センターのミニチュアに見えるよ)」「ロケットが発射台にあるのに今から衛星を積むのか」などなど言われていますが、私が一番気になったのは、このロケットを真南に向かって打ち上げるという点でした。
 日本は種子島からロケットを東の方角に打ち上げますが、理由をご存知でしょうか? 太平洋が広がっていて安全だから、というのは偶然で、これは地球の自転をスタートダッシュとして利用しているためです。
 通常、衛星の打ち上げは(1)まず「パーキング軌道」などと呼ばれる低軌道に乗せる (2)遷移軌道に移行し、高度と傾斜角を変更する (3)最終目標の軌道に乗せる──と、大まかに3段階を踏むのですが、(1)は秒速8km程度まで加速する必要があります。地球は東に向かって回ってますから、東に打ち上げるとこのうち4分の1くらいを稼げます。ただし発射地点の緯度が高いほど、稼げるスピードは小さくなります。
 で、北朝鮮の話に戻りますが、真南に発射すると、このスタートダッシュがまったく稼げません。これは勿体無い、かといって不合理とも言い切れない。真南に発射するということは極軌道周回衛星であり、百万歩譲って本物の観測衛星なら、地球全土をカバーできます。
 でもって方角が真南なので、ロケットに充分な推力さえあれば、軌道面変更をせずダイレクトに軌道投入できる。上記の(2)を省けるので、衛星の軌道制御の経験を持たない国には、案外合理的な選択かも、なんて気もするんですよね。衛星打ち上げたこともないのに、極軌道に投入しようなんてこと自体が無謀なのですけれども。

 一方ミサイルとして見た時、海が広がる真南に向かって撃つのは、落下の危険を考えた配慮としか思えません。大口叩いている割には結構他国に気を遣っているじゃん。ちなみに本来は、事前の通告義務を守れば、ミサイル実験をするのはどの国も持つ権利なのですが、北朝鮮の場合は国連安全保障理事会決議で止められてしまいました。
 かつて平和利用の衛星だの有人飛行だのと言ってはロケットを打ち上げ、せっせとミサイル開発をしていたのは、ほかでもない米ソ(露)など安保理常任理事国であり、北朝鮮は同じことをしているだけだと言いたいかも知れませんが、国際法上、安保理決議は加盟国を拘束するとみなされる。また国連憲章で制裁措置を決議する権能も認められているので、数少ない罰則を持つ国際法なんですね。制度としては諸問題あれど、今回はこの決議に従ってもらいたいものです。
 ついでに言うと、数日前公開された管制室、貧相さがこれまた笑いを誘っていますが、本当に簡素化できているのなら、かなりの技術水準かも? 見たところディスプレイばかり目立って、どうも操作系の機械が見当たらない。。。

iPadと同じタッチパネルか! これは進んどる(゜∇゜*)

 まあヨタ話として書いてますけれども、「見方によっては合理的では?」などと思えてしまう諸点を見るにつけ、あの国の行為、深い思慮に基づくものなのか、単なる空気が読めない無軌道がたまたま正鵠を射ているように見えるだけなのか? なかなか見ものですね。やはり謎だらけだ。こうした疑問も、打ち上げによってはっきりすることが多いでしょう。しかし本来なら打ち上げて欲しくはないわけで、真剣にも、笑いのネタとしても、何かと目を離せない問題です。
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