そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

「振り返れば未来」と言った山下惣一の予言した時が始まる

2023-05-24 | 農業と食

昨年7月亡くなられた農民作家山下惣一さんの最終本であるが、山下さん自身の著作ではなく。彼をよく知る編集者による発言や著作を集めたものである。
「振り返れば未来」に、サブタイトルのように付け加えられるように。「明日を切り拓くヒントは 未来ではなく 人々が歩いてきた跡、つまり人類の歴史の中にある。」と書かれている。
佐賀県唐津の百姓(山下さんは農民という言葉を嫌い百姓という言葉をこのんでつかっていた)で、中学卒業してからの70年間、この国の農政を百姓として見てきた。日本という国が食を捨てるそうした真っ直中で、農政を厳しく非難してきた。山下さんが農業を引き継いだ10代に国の事業で植えたミカンを、数年後切るという理不尽な政策転換を射強い怒りを持って受けとめた。
一昨年食料自給率が80%を切ったと、中国は大急ぎで農業政策を見直している。しかも、生産量ではなく土壌の有機的保全を打ち出している。
日本農政は、生産過剰になると、生産を抑制した農家に金を出す。足らなくなれば、生産基盤に金を出すというような、農家の持つ農業の抱える勤勉さや生産の循環などお構いなしの、金による生産調整を繰り返し、農村も農業も農民の心さえ疲弊させてゆく。
実体を無視した食料自給率でさえ、37%まで落ち込んでいる。鈴木宣弘東大教授は実質10%程度と危機感を訴えている。山下惣一さんは、懸命の一百姓として抗ってきた。
唯一留飲を下げたのが、国連の家族農業の支援に拍手した。俺が長年言い続けてきたことを国連は打ち出したというのである。今や世界は家族型の小農と有機農業にシフトを切っている。
大量投資の大量生産は、循環を無視した金計算で食料を計算した結果である。今だけ、金だけ、自分だけ政策の結果が自給率37%の日本である。山下さんは十分日本の農業政策を毒づいい兵士生産基盤をなくしてきた。てこの世を去った。為政者はいまだに、生産しなければ金を出す減反政策を続けている。そのぶり返しを繰り返し、農村も農業も農民の心も疲弊し、食料生産基盤はなくなってきた。本書はその本質を長年の経験をもとに書かれた本である。

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