そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

災害に弱い”近代化”された畜産業、疾病に停電にTPP

2019-09-13 | 農業と食

千葉県での長期にわたる停電によって多くの被害が産まれている。毎日搾乳する酪農家では、多くの乳牛が被害にあっているようである。ネットに投稿された最悪のものは、3頭死んで数十頭が廃用に出されるようである。風で飛ばされた鶏舎の経営者は再開を断念している。
日本の”近代”畜産業は、大型化と高生産を際限なく広げてきた。大型化とは文字通り頭羽数を増やすことである。高生産とは、鶏ならば夜をなくしていつも昼状態にして大量の輸入穀物を与えて7日間に7個以上産卵させることであり、豚では分娩後100日でお肉になり、肉牛は18か月で4トン以上の穀物を与えられ豚同様に成熟以前にお肉になる。
乳牛は1年に1万キロ以上を泌乳させるために、3トンの穀物を与えられて2産で淘汰することになる。こうした大型化と高生産を支えているのが、”近代化”された巨大な施設と輸入穀物である。背景には、飼料メーカ、飼料輸入業者、建築業者、施設建設業者、畜産販売業者に農協が支える。これを政権が資金を提供して支える。このような国家が支えるコルホーズ型農業は前世紀に破たんしている。

豚コレラが留まるところがない。これは早期にワクチン対策をするべきであったが、清浄国のメンツが潰れ輸出が出来なくなるとの官僚判断で、淘汰を中心にやってきた。それでも広がる一方なのは野生のイノシシが拡散の原因だと、経口ワクチンという薬品効果も投与効果も不明な対策に固執し続ける。その結果今日は関東にも豚コレラが発生が確認されている。
数年前のPED(豚流行性下痢症)のだ流行で30万頭ほど発生したりしている。
鶏は相も変わらず、鳥インフルエンザの発生が止むところがない。。通常の採卵鶏は、卵を産むようになるまでに、延べ30種もワクチン投与がされる。知人たちが飼養する大地で遊ぶような養鶏ではワクチンなど無関係である。近代化とは脆弱で不健康な家畜を発病寸前まで追い込む経営スタイルである。
毎日搾乳しなければならない酪農では、停電は命取りにもなりかねない。放牧を主体に飼う酪農家では、停電による実害は乳業メーカーが買ってくれなかかったことくらいである。それも大きな損害であるが、大型農家が散々な目にあっているのを見ていると、この程度ならいいかといえる。
日本はアメリカとどのような貿易交渉をしたかはわからないが、大型農業は原発と同じで一見、事故がなければ安価に見えるが、大量の外部資本と資源に依存する姿は生産費も高くつくばかりか、疾病も含め危機管理に極めて弱いことが解る。TPPなどによって、大型不健全農家は存在価値をなくすだろう。
家畜の生理を無視した頭数羽を飼い大量の穀物を給与することによる、家畜のストレスと不健全さこそが”近代化”の正体であり、生産者のものでもなければ消費者のためのものではない。

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