そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

ペラペラの殻からぺちゃんこの卵黄がヌルっと出る玉子なんて

2023-03-01 | 農業と食
日本中で鶏卵が上がっていると大騒ぎである。かつての、「物価の優等生」はいよいよ姿を露わにした感がある。本ブログで10年以上前から言い続けていることであるが、大量の穀物を、アメリカ産の遺伝子組み換えで肥培管理も何も明らかにされない、アメリカ産のトウモロコシを大量に給与し、大量に飼育することで卵価の上昇を押さえてきた。
上の表はフードマイレージ資料室の表であるが、この50年で食料一般が、3.5倍になったが、物価の優等生の卵価は1,7倍である。この間日本は玉子を下地にしたお菓子やパン類や揚げ物など、ほぼあらゆる食料品の加工に使ってきた。それは安いからである。
万羽の採卵鶏たちは、生まれるとすぐに嘴を切り落とされ、卵を生むまでに幾度となくワクチンを投与され、日光から完全に遮断され、昼夜も季節も人工的に作り出され、トレイに流れ来る食べものをひたすら食べるだけで、羽根を伸ばすことも大好きな砂遊びも水遊びもさせてもらえず、中空に浮いたままのケージで飼育される。あらゆる栄養を産卵に向け、発病寸前で皮膚病を患っていても、骨折していても、肺炎になっていても玉子を産まなくなるまでは、延命される。
ペラペラの玉子の殻からは、割るとぺちゃんこで弾力のない卵黄がヌルっと出てくる。それが鶏たちが生命と賭して生産した玉子の実態である。それが安いというだけで、市場に大量に出回る。消費者は安いというだけで、生産の実態を知らず、鳥インフルエンザで大量の補助金が出されることも知らず、優等生のレッテルを貼る。

日本の家畜には約2万千トンの穀物が給与されている。ほぼアメリカ産のトウモロコシである。人と競合する穀物(現在の穀物は食べることはできない)の、カロリーを玉子と牛肉は90%減らして生産している。輸入穀物は生産形態が問われず関税もかけられていない安価なものである。安価な穀物を給与する大型畜産は、高価な畜産物に変換する畜産加工業に過ぎない。
家畜を不健康にするだけではなく、世界の食料事情を単に悪化させるだけである。先進国の畜産は多かれ少なかれ、こうした実態の中にある。(下の表は10年前の農水省作成のである)
EU諸国では、前述のような飼養が禁止されている。アニマルウエルフェアという考え方であるが、こうしたことがバレては困ると、鶏卵業者は大臣に賄賂送って蓋をした事件がある。牛も豚もあまり変わるものではない。
穀物生産のために、多くの畑や森林が開発され環境悪化に貢献している。今や中国がこうした形態に加わり、穀物生産の4分の1は家畜用である。特に世界で生産される大豆の90%は家畜に給与されているのである。
コロナ禍、温暖化、ウクライナ戦争、円高のクワトロショックは、農の原則、循環を無視した矛盾の露呈に過ぎない。旧に復することなどない。

コメント (1)
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