半透明記録

もやもや日記

『イヴァン・イリイチの死』

2008年02月12日 | 読書日記ーロシア/ソヴィエト
レフ・トルストイ 川端香男里訳(「バベルの図書館16」国書刊行会)

《あらすじ》
イヴァン・イリイチはつねに具合良く愉快に生きてきたが、あるとき体調を崩し、3か月の苦しみの後、死んだ。


《この一文》
“結婚……幻滅は何とも思いがけないものだった、妻の発する口臭、肉欲、欺瞞的行為! そしてこの生気のない勤務、金銭についての苦労、そしてこうして一年、二年、十年、二十年とたったが、何もかも同じだった。先へ行けば行くほど生気が失せて行く。自分では山をのぼっていると思っているのに、実はきちんきちんと山をくだっていたのだ。事実はそうなのだ。世間の眼からすれば自分は山をのぼっていた。だがまさしくその分だけ生命が自分の足もとから逃げて行ったのだ……そして今や用意はできている、死ぬがいい!
 これはどうしたことなのか? 何のためなのか? こんなことってあるか。人生がそんなに無意味でけがらわしいなんてことがあり得るのか? 人生が本当にそんな汚らわしい無意味なものであっても、何ゆえに死なねばならないのか、苦しみながら死なねばならないのか? 何か理屈が合わない。  ”



本当は、読むつもりはなかったのですが、うっかりして読んでしまいました。読むべきではなかったと思えば思うほどに、それはつまりどうしても読まなければならなかったということを証明するに過ぎないということを、痛みをもって私に知らせるのでした。なんということだ。

虚無。という言葉があって、私はそれを震えるほど恐れているのですが、この物語はその虚無の真っ黒な大きな穴でした。あんまり恐ろしかったので、私は半日ほどすっかり言葉を失ってしまいました。今はどうにか浮上できましたが、作品について考えたいのに、心が真っ黒になるようで、うまくいきません。恐ろしい。

あの結末は救いだったのでしょうか。そうかもしれない。でも、私には。






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6 コメント

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ばべる (manimani)
2008-02-13 04:53:10
そう聴くと読みたくなりますねえ(笑)
真っ黒な心。
トルストイは全く読んでないので導入はこれで決まり。

バベルの図書館なつかしい。うちにも何冊かあります。10年以上積んどくですけれど。。。
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Unknown (ntmym)
2008-02-13 18:16:41
manimaniさん、こんばんは!

いやー、恐かったです。
ひょっとしたらとってもポジティブなお話だったのかもしれませんが、私にはもう闇雲に恐ろしくて…。
manimaniさんはトルストイをまだ読んでらっしゃらないのですね。私もまだトルストイを読むのは早いと思っていたのに(根拠はないです;)、つい読んでしまいました~。
ほんとはこの本に収録されている『ラザロ』だけを読むはずだったのですけどね。トルストイ、恐るべし。


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Unknown (piaa)
2008-02-13 22:57:51
私はこれと「クロイツェル・ソナタ」が収録された光文社古典新訳文庫で読みました。
いやこれは確かに怖いです。「クロイツェル」のほうも相当怖いのでぜひ読んでみてください。
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へ~ (ntmym)
2008-02-13 23:19:04
piaaさん、こんばんは!

やっぱり怖いですか、これ。
『クロイツェル・ソナタ』って、響きが美しいと思ってましたが、そんなに怖いのですか………。うーむ。読みたい。でも、うぅ…!
トルストイって、もうちょっと明るいのかと思ってたのですが(またしても根拠はないです;)、かなり深刻だったのですね~。
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停滞どころか ()
2008-02-19 02:45:40
最近、自分が退化・堕落しているとの焦燥感にかられていたので、ちょっと読んでみたいかもです・・・。落ち込むときはとことん落ち込め!と言うし。それとも安吾ちゃん読んだ方が元気でますかねぇ。
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そうですね (ntmym)
2008-02-19 19:42:30
葵さん、こんばんは!

まあ、人生はただ上昇あるのみ。退化も堕落もしませんよ。と、私は思います!(言い聞かせ)

この作品は、落ち込む、というよりも何と言うか、「どうしよう…」という感じですね。「生きるとは…」「こんな人生の価値とは…」とか? わー、思い出すとまた恐ろしい~!

ところで、私は恥ずかしながら安吾はまだ読んだことがなくて; そのうち読みたいと思いつつ…。エヘヘ(/o\)
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