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もやもや日記

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『Dr.パルナサスの鏡』

2011年01月13日 | 映像

2009年 イギリス/カナダ

出演:クリストファー・プラマー/リリー・コール/ヒース・レジャー/トム・ウェイツ/アンドリュー・ガーフィールド/ヴァーン・J・トロイヤー
監督:テリー・ギリアム



《あらすじ》
2007年、ロンドン。パルナサス博士が率いる旅芸人の一座が街にやって来た。博士の出し物は、人が秘かに心に隠し持つ欲望の世界を、鏡の向こうで形にしてみせる「イマジナリウム」。博士の鏡をくぐりぬけると、そこにはどんな願いも叶う摩訶不思議な迷宮が待っている。
しかし、1000歳になるという博士には、悲しい秘密があった。それは、たった独りの娘が16歳になったときには悪魔に差出す約束をしたこと。タイムリミットは三日後に迫った娘の誕生日。一座に加わった記憶喪失の青年トニーとともに、博士は、鏡の迷宮で最後の賭けに出る。彼らは娘を守ることができるのか――?





パルナサス博士は人里離れた山奥の寺院で、世界を存続させるために、終わらない物語を語り続けている。物語をやめてしまったら、世界が終わってしまうと信じて。そこへ悪魔が現われて、パルナサス博士たちの口を封じるのだが、それで世界が終わることはなかった。博士たちの行為の無意味を証明して勝ち誇ったように嘲笑う悪魔を前に、博士は言う。「そうか、やはり、そうではないかと思っていたが。…我々のほかにも居るのだ! 物語を語りつづけている誰かが……!」。

借りて来たDVDで観たために、そしてその時にメモを取らなかったために、上の引用は正確ではありませんが、私はこの場面でかなり感動したことは書いておきましょう。語られ続ける物語がある。今も、誰かが、どこかで、この世界の為に、物語を語り続けている。そう思うだけで、私の胸は一杯になり、目には涙が溢れるのです。私はこの場面で、むせび泣きたかった!! そのくらいに感激したことをいつまでも覚えておきたい。


そんな感じで当時私は激しく感激したものの、この映画を観てからもう1ヶ月ほど経ちますが、ちょっと感想を書けないでいました。できればもう一度観てから書きたかったけど、私はいまのところこのDVDを持っていないので、とりあえず思い出せるところだけでも書いておきましょうかね。

さて、この作品は、テリー・ギリアム監督作品としては、個人的には久々の衝撃的映画でした。私はこういうのが好きだ。こういうのが大変に好きだ。

映像の美しさはもちろんですが、この映画の中には、観客の心を震わせるような真からのメッセージがあったのではないかと思います。公式サイトによると、ギリアム監督は「なかなか思い通りの映画を作る予算が捻出できずにいた状況を、誰も自分の物語に聞く耳を持たなくなったパルナサス博士に重ね合わせた点で本作を“自伝的な映画”と位置づける」と書かれてありました。なるほど。「誰も自分の物語に聞く耳を持たなくなった」と思ったら、その嘆きを嘆きながら語って欲しい。とにかく諦めずに語りつづけて欲しい。多くの人が耳を貸さなくなったとしても、どこかに必ず居るはずなのです。語られ続ける物語を聞きたいと思っている人々が、語り手の心の底から発される物語を、世界を形作ってくれる物語を探し求めている人々が、どこかに、しかも大勢存在しているはずなのです。

だから諦めずに語りつづけて欲しい。そうすれば、いつか誰かが、私が、必ずそれを見つけますから。この世界のすべてを、美しさと醜さ、豊かな色彩と暗闇を、深さと広さを、幻想と現実の狭間を、この世界のすべてを語り尽くすつもりで、夢と情熱のすべてを語り尽くすつもりで、諦めずに語りつづけて欲しい。その世界を、その本当の言葉で語って欲しい。私はそういう物語を聞きたい! 私は、そういう物語を聞きたいんだ!!

聞きたがっている聞き手のもとへ、物語は必ずや届くようになっているのです。こういった美しい世界の真相への、この映画はひとつの証明になったのではないかと私は思うのでありました。ああ、ちょっと思い出しただけでひどく感情が爆発してしまいますね。面白かったなぁ!


ところで、キャストについてですが、ヒース・レジャーが急逝したために「トニー」の役を別の何人かが代役したことは聞いていましたが、ジュード・ロウには全然気がつかなかった! 不覚! 梯子をのぼっていたあの男か~。うーむ、少しも気がつかなかったぜ…。ジョニー・デップは「あ、なんか急にこの人、ジョニー・デップみたいになった!」とか思っていたら、その通りデップさんだったようです。あともうひとりコリン・ファレルが「トニー」役で出ています。レジャー氏の死は残念ですが、このめまぐるしく変化する「トニー」という役柄は、素晴らしいものでした。

あとは、パルナサス博士が素敵。侘しい、頑固そうなおじいさんなのですが、その存在が全面的にファンタスティックで素晴らしい。さすが主役!(←でも最終盤まではほとんど空気)! 悪魔と契約して、うっかり不死を手に入れてしまうあたりがご愛嬌。結末では、心温まるようでいて少し寂しいような悲しいような感じがしますが、ギリアム作品にしては相当明るい終わり方だったのではないかと思いますが、いかが。私はこの終わり方も非常に気に入りました。素晴らしいエンディングですわ!

あー、面白かったなぁ! 面白かった! やっぱりもう一度観たい。