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半透明記録

もやもや日記

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『2012』

2010年07月27日 | 映像

《あらすじ》
ジャクソン・カーティスが子供2人とイエローストーンに旅行中、偶然干し上がった湖底に建てられた巨大なリサーチ施設を発見する。そして政府が隠蔽している、「世界が滅亡へ向かっている」という秘密を知ってしまう。
ジャクソンは自分の家族、自分自身の身を守る為に必死で生き残る術を模索しはじめるが、大地震、火山の噴火、津波など次々と恐ろしい天災が地球を襲ってくる…





この映画を「クソだ!」と一言で片付けてしまおうかとも思いましたが、せっかく観たのにそれはあんまりだと思いなおし、2日間かけてじっくりと考えてみました。


 *** 以下、ネタバレ注意報 ***
    (閲覧にご注意下さいませ)


正直言って観終わった直後には、このあまりにメチャクチャなストーリーに唖然茫然とし、「よくこんな映画に大金をかけたものだな。その点はすごい」という評価だったのですが、その後2日経ってもある種の気分の悪さが抜けず、それが何かを考察してみようと思うに至ったのです。最初はひどい映画だと呆れましたが、何か人の心に残るものがあったことは否定できません。


では、私の心に残っているのが何かというとそれは「主人公一家の厚かましさ」です。あまりに厚かましくて、恐怖を感じるほどなのです。彼らは生き残りを賭けて必死になりますが、そこには美談も英雄的精神もなにもあったものではありません。彼らが生き残るために、犠牲になるのはいつも近くにいる(親切で優しい)他の誰かなんですよ。で、結果的に一家は生き残り「よかった、助かったー☆」という表情を浮かべて劇終。このあたりの描写はいやにリアルですね。
それにしてもゴードン、可哀想すぎるぜ……(/o\;)


世界の終末には、正義も道徳もあったもんじゃない。

というか、世界の終末という局面に至っても、やっぱり金と権力だ! 他人を押しのけても生き残る、それこそが正解! 残念ながら現在の人類はそれほど立派でもなければ美しい存在でもないんだ!! そんな人間の惨めな姿をまざまざと見せつけてくれる、大層皮肉のきいた映画であったとみることもできるでしょう。

劇中にはもちろん、こういう人達も登場します。自分の職務を全うするために避難することを拒む大統領(もちろんアメリカ合衆国大統領)とか、自分だけ助かることに良心の呵責を覚える善良な心根をもった若い科学者とか、崩壊が迫っていると知って家族の関係を取り戻そうとする老人とか、そういう人達が。でも、わりと印象に残りません。主人公一家の浅ましさが勝っています。金も権力もないけど、ゴリ押しで○○(一応ネタバレ自重)に忍び込む強引さ。このくらいの厚かましさがないと生き残れないということですよね。生命が生き残るというのは闘争なんだ。うんうん。



この映画を観て後味が悪いと感じるのは、こういう夢も希望もない現実感を嫌という程味わわされるからかもしれませんねー。いやでも、まあ実際のところ人類は突然の危機に直面すればこうなると思いますよ。そういう観点からは、非常によくできた映画だったと思います。ただのパニック映画、映像だけが見所、というわけでもなかったかなと思い直しました。

ちなみに、何十万人だかの人々がこの大災厄を逃れて生き延びることになりますが、私はこの後の世界でこの人々はまた性懲りもなく戦争を始めるだろうなと空想しています。だって、わずかの国家指導者と科学者、世界各国の金持ちがほとんどすべてを占めるという残された人類に、新しい世界を開拓する力があるとは思えない。土壇場で中国の労働者たちが潜り込んだにしても、労働力が足りなすぎる。地球上で人類が獲得してきた資源も財産もみな押し流された世界で、どうやって文明を再興するんですかね。惨めな覇権争いに突入した挙句に全滅……。そういう展開もあるのではないかと、しみじみと考えてしまいました。もしこの映画の最後でそんな展開になっていたら、私は熱狂しただろうになぁ。惜しい。



というわけで、後々まで楽しむことができたなかなか面白い映画でした!