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もやもや日記

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『ソポクレス オイディプス王』

2005年12月07日 | 読書日記ーその他の文学
藤沢令夫訳(岩波文庫)


《あらすじ》
オイディプスが先王殺害犯人の探索を烈しい呪いの言葉とともに命ずる発端から恐るべき真相発見の破局へとすべてを集中させてゆく緊密な劇的構成。発端の自信に満ちた誇り高い王オイディプスと運命の逆転に打ちひしがれた弱い人間オイディプスとの鮮やかな対比。数多いギリシア悲劇のなかでも、古来傑作の誉れ高い作品である。


《この一文》

”禍になおいやまさる禍が この世にもしもあるとせば、
 それこそはこのオイディプスのもの。    ”



『アポロンの地獄』という映画を観たのがきっかけで興味を持ったオイディプス王の物語です。恐るべき物語です。なるほど傑作でした。
まず何と言っても、物語の展開が凄いです。大昔にこんなにも手の込んだ物語が既に生み出されていたとは、驚くばかりです。登場人物たちは、アポロンの御神託に翻弄されるわけですが、彼等が神託を受け、そのような運命を逃れようとしてとった行動が結局は自身を破滅へと向かわせてゆくクライマックスは圧巻です。オイディプスもよかれと思って、先王の殺害犯人を捜そうとするのですが、実はかつて先王を殺したのは自分であり、しかもその先王というのはオイディプスの実の父親、さらに現在の妻は先王の后でもあり、つまり実の母親であったことを知ることになります。冒頭では優れた支配者として登場したオイディプス王は、物語の終わりでは神々にさえ呪われた存在に転落します。物語の悲劇性というのは、このような意外性や落差から生じるのかもしれません。まさかそんな、考えられない、と思いつつもないとは言い切れないような状況が巧みに構成されていました。すごいなソポクレス。
というわけで、まさに傑作でした。あまりに面白かったので、つづいて、オイディプスの娘『アンティゴネー』の物語を読んでいます。こちらもなかなか読みごたえがありそうです。ギリシアの物語はあなどれないのでした。