旅限無(りょげむ)

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似ているのは絵ばかりではない 其の参

2006-06-12 08:10:40 | 社会問題・事件
■ニュース映像に使われている授賞風景にしても、気を失っているような顔をしている爆笑問題の2人組の横で、見も世も無いほど嬉しそうな顔でにやにやしている和田画伯の表情が怪しげですぞ。爆笑問題というテレビ・タレント?にも与えられる芸術選奨なのだという事はよく分かりますから、授賞も剥奪も、どうでも良いことなのかも知れませんなあ。そんなどうでも良いものなら廃止してしまった方が良いでしょう。

同部門は、絵画、彫刻、写真、デザイン、建築などが対象と幅広い。05年度は、美術評論家、建築史家ら選考審査委員7人と推薦委員10人が計11人の候補者を推薦、投票で決められた。美術部門の調査は、文化庁の専門調査員が1人で担当。同庁によると、「審査委員から質問が出たときに答えられるように、経歴などを知らべる」という。審査会では履歴や図録が提供される程度。和田氏の場合、巡回展の担当者や、所属団体などに聞けば、疑惑の存在を事前に知ることも可能だった。……

■この「1人の担当者」の名前が公表されることは永久に無いでしょうし、文化庁は飽くまでも「善意の被害者」だと言い続けるのでしょうなあ。和田画伯は美術界の「陰謀」や「悪意」の罠にはめられたような、まるで『ダビンチ・コード』の主人公みたいな事を言っているそうで、自分の作品を「盗作」呼ばわりする美術評論家は断固として認めないそうなのですが、選考委員になっていた美術評論家だけは「審美眼を持つ人」だと判断しているのでしょうなあ。同じ朝日新聞の記事には美術評論家の瀬木慎一さんのコメントが載っています。


「これほど酷似した作品を自作として発表したケースは世界的にも珍しい」……「他人の設計図で家を建てるようなもので、自分の画風への転換がほとんど見受けられない」

と、素人にも納得できる分かり易い説明をしてくれていますし、銀座の大手画商からは、和田画伯は人気作家でもないし、無名の絵描きだと、これまた素人にも分かり易い話をしていますぞ。アルベルト・スギさんも欧州では有名でも日本では無名に近かったそうですから、文化庁が何の意味も無い余計な芸術選奨などを与えなければ、誰も知らない地味な盗作事件で終ったのかも知れませんなあ。

■可哀想なくらいに似ていない物真似芸で頑張っていた片岡鶴太郎というゲイニンさんがいましたが、いつの間にか本職の画家になって結構な商売をしているそうです。物真似と絵画に造詣が深いでしょうから、是非ともコメントを寄せて欲しいものであります。非常に盗作し易いと言われる不思議な画家になっているジミー大西さんのコメントも知ろうとしては興味が有ります。そんな冗談半分の感想しか湧かない馬鹿馬鹿しい騒動ですが、専門家の間では熾烈な足の引っ張り合いが始まっているような気配も有りますぞ。


5日、選考審査員7人のうち4人が欠席した。1月の審査会で和田氏を推した美術評論家の瀧悌三氏までが欠席。これまで和田氏を弁護していたが、委任状には「和田君のオリジナリティーの考えは矛盾」し「通らない」と、授賞撤回の考えを示した。

■こんな好い加減な選考審査員を任命したのは文化庁でしょうに!?それでも、また来年も芸術選奨は選考されるのでしょうなあ。授賞辞退者が続出したら、文化庁はどうするのでしょう?特定行政庁が行なっていた建造物の確認検査業務を、大量の天下り役人を送り込んだ「民間検査会社」に委託した国土交通省の轍を踏んで、「官から民へ」の小泉改革を断行しますか?

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似ているのは絵ばかりではない 其の弐

2006-06-12 08:10:26 | 社会問題・事件
■そこで、時代を35年ほど遡ると面白い事に気が付きます。

1971年 和田氏はイタリア政府給費留学生となって渡欧。

1972年 奈良県明日香村の高松塚で極彩色の壁画古墳発見。

1976年 高松塚古墳の壁画にカビの増殖が確認される。

1989年 壁画保存処理終了。

1990年 和田氏の「盗作」が目立ち始める。

2001年 高松塚古墳の石室入り口の崩落防止工事でカビの大量発生。

2002年 和田氏が東郷青児美術館大賞を受賞。

2005年 文化庁の壁画の杜撰な管理と隠蔽工作が発覚。

2006年 文化庁の芸術選奨(美術部門)を和田氏が受賞。

■和田画伯が欧州で磨いた「模写技術」は間違いなく超一流だったのだそうですから、「素人には盗作としか思えない独自の技法」などというややこしい事をしないで、1980年代に高松塚古墳の壁画の模写を作ったり、カビ対策と修復作業をするチームに和田画伯に入って貰って勲章でもあげれば良かったのではないでしょうか?そうすれば、一石二鳥で文化庁は二つの恥を晒さなくて良かったはずなのです。世の中はそんなにうまくは行かないのでしょうなあ。

■6月6日の朝日新聞によると、文化庁の授賞理由は、2005年に三重県、東京都、茨城県で開催された「ドラマとポエジーの画家、和田義彦展」に出品された作品群が優れていると認められたからだそうです。何でも、茨城県つくば美術館で回顧展を開催していた昨年11月に、美術関係者に告発文が送り付けられたので、つくば美術館では急遽、和田氏から「スギ氏からの手紙」のコピーを展示した上に、二人の友好関係を強調する文書を掲示したのだそうです。

■告発者はこのつくば美術館の動きに不満だったらしく、今度は「国画会」や文化庁に対して告発を重ねて行ったのだそうですから、相当に熱心な恨みか怒りを持った人なのでしょうなあ。日本テレビなどは和田画伯の高尚な芸術談義を熱心に電波に乗せているようですが、著作権法違反やら下手をして絵の購入者から詐欺罪で訴えられたりしたら、勝手に喋らせて記録した映像や音声を繰り返し繰り返し使って和田画伯の生き恥をどんどん大きくして商売するのでしょう。ヒューザーの小嶋社長のように、怒りに任せてテレビ・カメラを忘れて怒鳴ってしまうようなヘマはしないのは、高級な芸術活動に勤しんでいたからなのでしょうか?

■事件が発覚してから電車の中で女性とややこしい所業に及んだと週刊誌に書き立てられたのは小嶋社長で、名古屋芸術大学を退職した原因は受験した女子学生に言い寄ったからだと言われ始めたのは和田画伯です。村上世彰さんは自分のことを「証券取引法のプロ中のプロ」と放言しましたが、和田画伯は「凡人には理解できない高度な芸術作品」を主張し続けています。芸人の中には形態模写や声帯模写を得意とする人がいますし、役者は実在の人物や歴史上の人物に扮して演技します。芸術の世界でも裏の稼業として「贋作家」は大活躍しているようですが、勿論、そういう人に勲章を授ける間抜けな国家は存在しません。否、今までは存在しなかったのですが、日本がその先陣を切って見せたというわけですなあ。

■国際問題に発展しそうな風向きですから、今頃は外務省あたりから文化庁に「恥を掻かされたぞ!」と苦情が寄せられているのかも知れませんが、外務省は山ほど恥を掻いているのを自覚していない役所ですから、相手にしなくても良いでしょう。しかし、社会保険庁よりも必要性に疑問が有る文化庁こそ、早く解体して民営化した方が良さそうですなあ。


芸術選奨は、演劇、映画など10部門で、過去1年間の活動が対象。美術部門では受賞しても、作品の価値に跳ね返ることは少ないといわれるが、権威や名誉は認められてきた。

この朝日新聞の書き方も奥歯に物が挟まったような、煮え切らないものです。「作品の価値」が上がらないのなら、この賞は誰にも相手にされていないということでしょうに!