旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

日本敗れる時 其の壱

2006-06-15 14:47:13 | 歴史
■残念至極と言うべきか、予想通りと言うべきか、何とも脆(もろ)い負け方をしたジーコ・サムライ日本でしたなあ。「全勝だ!」「優勝だ!」などと、テレビ局の制作費を無駄にしたくない業界の人は空元気で暴言を吐いていましたが、旅限無はF組「日本対オーストラリア戦」の前半20分から観戦しつつ、先の日米戦争の歴史を復習していたのでした。サムライ日本の曽祖父が太平洋を舞台にして戦った4年半の激闘が、ドイツのサッカー場に再現されたような気がして仕方がありませんでした。これは日本の精神風土や歴史的な宿命のようなものなのかも知れませんなあ。

■サッカーは人類が背負っている戦争文化の最終的な型だと考えれば、国際連合に加盟している国や地域よりも多い207の国や地域がFIFAに加盟しているという現実も納得できるというものです。そんな中に紛れ込んだ日本は、やはり、良くも悪くも戦う時の癖が出るのではないでしょうか?ところどころ、少々強引な解釈も使いますが、大東亜・太平戦争のアナロジーで対オーストラリア戦を振り返って見ましょう。


前半1分、ゴール正面左から中村俊輔のFK。壁に跳ね返される。

前半6分、FWビドゥカに左サイドを破られ左右のシュート2本を放たれ、GK川口が好セーブ。

1940年1月26日、日米通商条約破棄。
 同年9月23日、日本軍仏領インドシナに進駐。
 同年9月27日、日独伊三国同盟条約調印。
1941年4月16日、日米交渉開始。
 同年7月25日、在米日本資産凍結。
 同年8月1日、対日石油禁輸措置。
 同年11月22日、日本海軍機動部隊択捉島に集結。
 同年11月26日、ハル・ノート提示。

■太平洋戦争は米国政府が対日開戦を密かに決定した段階から始まっているわけで、大陸での戦線が広がり続けて収拾が付かなくなっている日本に対して2年間に亘って米国は、外交交渉という名目で無理難題を押し付ける様子が、FWビドゥカが放った右足と左足の両方を駆使したシュートにちょっと重なりますなあ。こういう時には、相手は本気なのだと日本は早く気が付かねばなりません。先制点を取られないように頑張ったGKの川口君は右に左に大活躍で、これ以降も最後の10分間を迎えるまでは、まるで彼1人がワールドカップに挑んでいるかのようでもありましたなあ。零式艦上戦闘機のような、ミリ単位で調整した特製スパイクと機能性の極地を究めたグラブを使っていたそうです。それに加えて奥さんとお子さんの名前を刺繍したというのですから、「千人針」や国旗の寄せ書きみたいですなあ。


前半13分、福西が中央から放ったミドル・シュートはゴールの枠外。

前半22分、ゴール前中央でMF中村がボールを受けて左にドリブル、切り返して相手DFを振り切る。右足ミドル・シュートはゴール左に逸れる。

前半25分、FWブレンシアーノの右足シュートをGK川口が左に跳んでクリア。

前半26分 右サイドMF中村の左足から40メートルのアーリークロス。FW高原と柳原がゴール前に疾走。GKシュウォーツァーが飛び出し、DFニールとムーア、合計5人がペナルティエリア中央で交錯。高原とシュウォーツァーが接触して転倒する間にゴール! 

1941年12月8日、日本陸軍はマレー半島上陸開始。海軍機動部隊が        ハワイ真珠湾を奇襲。香港とフィリピンへの攻撃        開始。
 同年12月10日、マレー沖開戦で英海軍東洋艦隊主力艦撃沈。
        グアム島とフィリピンに上陸開始。
 同年12月16日、ボルネオ島上陸作戦開始。
1942年1月15日、ビルマ攻略開始。
 同年1月18日、ビスマルク諸島ラバウルに上陸。
 同年2月4日、ジャワ沖海戦でオランダ海軍を破る。
 同年2月8日、シンガポール上陸作戦開始。
 同年2月15日、シンガポールとスマトラのパレンバン占領。
 同年4月3日、ルソン島バターン半島の米軍を攻撃。
 同年4月5日、コロンボ空襲。

■攻守ともに絶好調!机上プランが予想よりも早く実現して、国民(サポーター)は根拠も無いのに勝利を確信してしまいます。虚を衝かれた相手側は、右往左往しているように見えても、必勝の態勢を整えようと裏でも表でも知恵を絞って日本の隙を探している時期に、「タナボタ」得点にすっかり気分が昂ぶって相手を見くびって舐めてかかるのが日本の悪い癖なのかも知れませんなあ。正直に言って嬉しい「タナボタ」得点ですが、外信には納得が行かない疑惑を指摘する声も有りましたし、審判はオーストラリアに対して密かに「誤審」を謝罪していたという話が翌日の新聞には出ていましたぞ。もしも、1対0で試合が終っていたら、相当に大きな問題になって尾を引いたのではないでしょうか?まるで卑怯な真珠湾奇襲で遅れた最後通牒手交みたいに……。

ただ今、新築中

2006-06-15 14:45:54 | 日記・雑学
■集中豪雨に襲われた沖縄では、斜面に盛り土して建設したマンションが崩壊の危機を迎えているそうです。裏金はしっかり抜き取って天下り先と手を結んだ上で、政治家の依頼を受けて選定した建築業者さんに注文する公的建築物には、世界で一番売れていて、一番安くて一番物騒なエレベーターが据え付けられているそうですなあ。大金持ち御用達の脱税天国スイスに本社を置くエレベータ-会社の名前が「シンドラー」で、他国ではカネで静かになるのに高校生がたった一人死んだだけの日本では大騒ぎになってしまったと、渋々出掛けて来た社長の名前がヒスさんとは、ナチス物やらユダヤ物を読んでいる本好きの皆さんは笑ったのではないでしょうか?

■そう言えば、6月11日の日曜日、田原総一郎さんの『サンデー・プロジェクト』は妙に大人しかったような印象が有りましたが、やっぱり、「世界一を目指します!」と亀田兄弟みたいな事を具志堅さんが宣言しながらシャドー・ボクシングやら走り込みをして見せる、とても威勢の良いCMが突然無くなったからでしょうか?あの会社は「SEC」というのでしたなあ。エレベーターのメンテナンスと製造をしている会社だそうです。今回高校生を圧殺した殺人エレベーターのメンテナンスを落札していた会社と同じ名前ですなあ。『サンプロ』というテレビ朝日の看板番組は、わざと怪しげな企業をスポンサーに選んでいるとしか思えないような不祥事が起こります。

■ヒューザー事件が起こるまでは番組のスポンサーになって貰っていたそうですし、アスベスト犯罪のクボタもスポンサーだったような記憶がありますなあ。地方のテレビ局は「SEC」の宣伝時間を地元企業のCMで埋めたようですが、メイン司会のウジキ君は、相変わらず周囲の空気が読めないハイ・テンションのままドイツに乗り込んで、空疎で情報量の乏しい「現地報告」などをしていたようですが、スタジオでの番組自体も暇そうな国会議員を並べて実りの無い口喧嘩をしたり、総裁選に出るのか出ないのかまったく分からない与謝野さんを引っ張り出して、どうでも良い話をしていたようですなあ。村上ファンドの事件も取り上げていたのに、何故かシンドラー問題は扱っていなかったようです。来週に回したのでしょうか?いつまでも視聴者をバカにした事をやっていると、一度死んだTBSの二の舞になりますぞ!筑紫さんと手をつないで田原さんも引退というシナリオも悪くはないのですが……。

■枕が少々長過ぎましたが、「新築」しているのは人間ではなくて、燕の若夫婦です。昨年に続いてやって来た第一組は6月始めには一家で旅立って行ったのですが、その後、燕が来ないなあ、と思っていたのです。ガキンチョ燕が飛行訓練を始めると、朝の4時半からギーギー、チーチーと庭先が喧しくて仕方がないのですが、居なくなると妙に寂しいものです。第一陣が4羽の子燕を立派に育てて南の空に飛んで行った後、軒先に並んだ5つの燕の巣はヒューザー物件みたいに空き家になっていました。梅雨前線が活発化して東日本も梅雨入り「した模様」と気象庁が発表した頃、偵察するように燕が何羽も飛来して軒の下でホバリングしたり壁にしがみ付いたりしていました。

■燕に限らず鳥類はどれも同じ顔をしているので、前日に偵察に来たツガイと、本日来たツガイが同じなのか違うのか、さっぱり分からないのが玉に瑕ですなあ。デザインも声も仕草も同じなので、あとは性格で区別するしかないのですが、本能に従った行動しかしないので、これもなかなか難しいようです。巣を掛ける燕というのは、前年に来て子育てに成功した燕なのだそうで、空き家のままにシーズンが過ぎたら、ツガイの身に何か有ったと考えねばならないそうですなあ。3日ほど軒先を偵察していた燕が、少し間を空けて巣が並んでいる壁にしがみ付いて考え事をするようになりました。垂直の壁にしがみ付いて考え事をするのは大変だろうと思うのですが、チーチー、ジージーと離れの屋根に停まっているもう一羽と相談しているようでしたが、翌日には見事に二つの巣の中間に位置する場所で基礎工事を開始しましたぞ。

■言葉は使えないはずなのですが、立地条件やら生活環境やら、それに加えて安全性や同居することになる人間の性格など、しっかりとリサーチした上で、夫婦で話し合っているような気がしてなりません。あれが新居の相談ならば、どちらが雄でどちらが雌かは分かりませんが、決断は早かったですなあ。基礎工事は近くの田圃から口で加えてきた小さな泥団子を貼り付ける作業から始まるのですが、どうやって水平を割り出すのやら、何度観ても分かりません。上半分がない綺麗な半円を描いて泥団子が貼り付けられると、それが乾き切る前に今度は草や藁(わら)を一本ずつ咥えて飛んで来ますなあ。自分の体よりも長い植物の茎を咥えて来るのは大変なのでしょうが、文句も言わず、嫌な顔もしないで黙々と作業を続けていましたが、よくよく考えて見れば、この藁運びは人間の建築作業の「鉄筋打ち込み」に相当するわけです。

■軒下の壁にちょっとした草叢(くさむら)が生え出したように見えるほど大量の藁やら雑草の茎を貼り付けていますぞ。経営コンサルタントから「経済設計」を教えて貰うこともなく、コンピュータ・ソフトを操作して数値を偽装することなど考えもせずに、何年経っても絶対に落下しない基礎工事をしている燕の若夫婦は、本当に偉いなあ、と思います。昔の日本人も、せっせと竪穴式住居を自力で造ったり、巨大な丸太を組み合わせて立派な茅葺屋根を葺(ふ)いていたのですから、燕に負けずに偉かったのです。火災にさえ遭わなければ石造りの建物に負けない耐久性を持つ傑作も多いのですからなあ。

■拘置所に放り込まれている姉歯さんや小嶋社長は元気なのでしょうか?拘置所の係官も気を利かせて燕の巣作りが間近に見える部屋に入れて上げて欲しいものです。アシジのフランチェスコが小鳥の生き方を観て「回心」したように、燕の巣作りを見て二人が「改心」してくれる事を念願します。「安くて広い」マンションを造ったと鼻息の荒かったヒューザーの小嶋社長も、燕が見栄を張って不必要に大きな巣を作らないのを見れば、少しは考えも変わるのではないでしょうか?

■せっせと藁運びをしていた燕の若夫婦がひと息入れていると、ふいにカラスが舞い降りて来て庭先が大騒ぎになりました。産卵した後に意地悪なカラスや雀が略奪に来ることも有るようですが、夫婦は協力して撃退しますが、その時の必死な様子などは、秋田県や神奈川県で子殺しをしてしまった女性達に見せて上げたい風景ですなあ。先日のカラスを撃退した空中戦を見ていた時、ふいに木村建設を犯罪者に仕立て上げたコンサルタント爺さんの顔が浮かびましたぞ。「そんなにたくさんの藁は要らないよ。もっと楽な巣作りの方法を教えて上げようか?安くしておくよ。」とカラスが言いに来たような気がしたのです。カラスはカラスで必死に生きているのですから、口先三寸でカネを巻き上げて犯罪に引きずり込むような悪徳コンサルタントのような悪人とは違うのですが、一生懸命に手厚い基礎工事をしている燕の若夫婦の剣幕と、ほうほうの態で逃げて行ったカラスの姿を見ていましたら、そんなアテレコを思い付いたのでした。

■自然はいろいろと人間に教えてくれますなあ。

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1.25は他人事? 其の伍

2006-06-15 12:35:40 | 社会問題・事件


松本篤さん(27)が東京・丸の内の日本郵船で海外部門に配属されて間も無く、航路の改変が始まり、月の残業が100時間を超えた。……関西の彼女とはなかなか会えず、結婚を考える余裕はまったくなくなった。長時間残業が3箇月続いた頃、突然、労働組合から呼び出された。残業の理由や今後の見通しを聞かれ、産業医の受診を勧められた。上司も、会社の人事部門から事情を聴かれた。動いたのは「時間の達人委員会」。労使双方からなる組織で01年にできた。残業が月80時間を超す「異常残業者」のリストを会社側が労組に渡し、労組が当事者から、人事部門がその上司から話を聞き取り、改善を促す。……松本さんは業務を減らされ、「異常残業」状態は半年で終った。「定時に退社して太陽が沈んでいない有楽町を歩いたとき、うれしくて涙が出ました」……遠距離恋愛だった彼女と結婚した。共働きなので、子どもが生まれたら社内の保育室を利用するつもりだ。

■「格差社会」が激しく進みそうな証言です。青春のすべてを賭けて一流大学の卒業証書を手に入れて、何が何でも大企業の東京本社に就職しなければ、結婚も子育ても不可能だからです。こんな労働組合も日本に存在しているのか?!と、毎月、無意味なのに問答無用の組合費を天引きされて「異常残業」を続けている労働者がどれほど居ることでしょう。労働組合の無い中小企業、有名無実の労働組合しかない会社の正社員になるのも大変なのに、そこの労働組合は頼りにならず、経営者側も社員の「異常残業」を食い物にしてしまう場合が圧倒的に多いのではないでしょうか?この他にも、三菱重工業の例が出ています。

仕事と子育ての両立を支援する制度自体は、大企業では整ってきた。04年度の厚生労働省の女性雇用管理基本調査によると、育児のための短時間勤務や就業時間変更などを制度化している事業所は、従業員500人以上で89%に達した。従業員規模が小さいほどその割合は減り、30~99人では58%、5~29人では39%だった。


しかし、「中小企業庁の調査で、女性正社員1人当たりの出生数は、従業員規模が小さくなるほど多い傾向が有った」のだそうです。資料を見ると、20人までの企業では0.92人なのに、51人以上は全部0.42人なのだそうです。これは統計のウソかも知れません。男と同じ出世競争をしている大企業の女性社員は出産などして「男に負ける」わけには行かないでしょうから、大企業の女性社員を一律に扱って計算するのは無理が有るような気がします。中小企業の奇跡のような物語が紹介されていますが、これは本当に稀な例でしょうなあ。


繊維の染色などを手がける朝倉染布(群馬県桐生市)は、従業員約120人のうち50人近くが女性、出産を迎えた女性の8割以上は1年間の育児休業を取る。2回使った岡部恵美さん(35)は「職場に復帰した後も、子どもが熱を出して保育園から呼び出されたら、『帰ってあげな』とみんなが言ってくれる。子どもか会社かどっちを取るかど迫るような職場だったら、つらいですよね」という。男性の育児参加も促進しようと、有給休暇を1時間単位に分割して取れる「時間休」も4月にできた。朝倉剛太郎専務取締役は「経営状況は厳しいので給与では応えられないが、働きやすい職場を目指すことはできる。キャリアを積んだ人材が働き続けてくれる事が会社の利益にもなる」

■この朝倉専務の意見が正しいのは誰でも分かっているのに、ほとんどの企業は他人事として無視しているのでしょうなあ。


……中小企業庁の調査では、育児休業制度はあるがあまり利用されていない企業や、制度もなく柔軟な対応もしていない企業が、どの従業員規模でも4~6割あった。

疑うわけではないのですが、この数値は相当に粉飾されているような印象が有りますぞ。微妙な言い回しで、自分の会社の非人間性を誤魔化して回答している困った経営者が沢山いると考えれば、8割以上が少子化を他人事と思っていることになるでしょう。特集の最後には、世界初の試みとして「ファミリー・フレンドリー」という投資ファンドが出来たという話が出ています。少子化問題を真剣に取り組んでいる上場企業に投資を集中して経営感覚を改善しようという話です。たった40億円規模の市場だそうですが、上場していない中小企業にとっては他人事でしょうなあ。

■トンデモない人手不足になって、職場環境で就職先を選べる「売り手市場」になれば、「異常残業」だの「消極的少子化増進」だのを放置している企業は淘汰される可能性は有りますが、「文句を言うなら、さっさと辞めろ!東南アジアから雇って穴は埋めりゃあ良いんだ!」と叫ぶ経営者の方が多くなるのでしょうなあ。社会主義革命幻想でも、自由経済市場主義原理でも、この少子化は解決されないような気がします。だとすれば、国会の不毛な議論(怒鳴り合い)では駄目だということになります。欧米の例を研究しても、戦後の人口大移動という日本の特殊な歴史現象を忘れた研究では役に立たないでしょうし、世代間の文化ギャップや核家族の再考など、年金制度や介護制度の見直しにも直結する研究課題が山積しています。まずは賢くて体力の有る企業から率先して良い例を作ってもらって、徐々に世間の常識を変化させて行くしか無いのでしょうなあ。

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