旅限無(りょげむ)

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小泉劇場の幕の裏地 其の壱

2006-06-27 13:52:41 | 政治
■目出度く小泉総理大臣は任期中にイラクに派遣した自衛隊を撤収させる命令を出せました。何故かそれと同時に米国参牛肉の輸入が解禁される事がほとんど決ってしまったのも小泉さんらしい幕引き最後っ屁でしょうな。あとは大好きなプレスリーのお墓参りをしてホワイトハウスの偉い人達とイラクを見捨てる「あとは野となれ山となれ」晩餐会を開くだけです。是非とも晩餐会のメイン・ディッシュには米国産のぶ厚いステーキをぱくぱく食べて見せて欲しいものです。それまでに撤収作戦中の自衛隊が爆弾テロの犠牲にならなかったら小泉さんは本当に強運だったと言えるでしょう。

■6月16日の朝日新聞に最近めっきりマスコミ露出が減ってしまった竹中平蔵さんのインタヴュー記事が掲載されました。親方の小泉さん自身が嬉しそうにポスト小泉競争を高みの見物しているのですから、実質的に竹中先生の仕事は疾(と)う昔に終っています。ですからインタヴュー記事の題名が「小泉改革の5年とは」になっていても全く違和感が有りません。記事の前半は「官僚問題」で埋め尽くされているのですが、新聞の通常の記事ではほとんど書かれない政治の裏側が体験談として語られています。素人目には自民党の派閥政治と官僚主導政治の両方を撃破しているように見えたのは政権の前半だけで、道路公団民営化にしても郵政民営化にしても官僚の天下り利権が消滅したとはとても思えません。郵政民営化については首相直轄の「5~10人の、いわばゲリラ部隊」が断行したんだ、と竹中さんは言っています。

■妥協の産物としか思えない「改革」ですが、現場の官僚達からは意外なほど怨まれている様子が分かる話が出て来ます。


星……最近の竹中さんへの国会質問を聞いていると、与野党の一部の質問は役人が作っている感じがします。

竹中 確かに、与野党広く、役人の力が行き渡っているという印象を受けます。行政・政策は高度な知的集約産業ですから、官僚の知識集約力を借りないと活動できないというのは事実です。官僚のもくろみを見破り、彼らに匹敵する知恵を出せる人材はごく限られているから、それに対抗して改革を立案・実行するのはたいへんなことなんです。

質問者は時々テレビ朝日に顔を出す編集委員の星浩さんです。竹中さんの答えに出て来る「知的集約産業」の産業はテープ起しの時に「作業」と聞き間違ったのでしょうなあ。何だか新聞記事までテレビと同じような「入力ミス」や「変換ミス」が増えているような気がします。そんな体質を放置して、日本語問題などを語っては行けませんぞ!

■官僚は個人ではなく組織体として生きているものですから、その「目論みを見破る」人材を集めて官僚に「対抗して立案・実行」するのは不可能なのではないでしょうか?竹中さんご自身は成功した!と言いたいのでしょうが……。


やりたかった事は今のところ、できているんです。一番やりたかった不良債権処理、そして郵政民営化。……不良債権を処理せずに放っておいたら、いま200数十万人の失業者が、たぶん400万~500万人になっていた。所得ゼロの人がそれだけいたら、格差はもっと拡大していたでしょう。

後半部分は「格差社会」の問題に関する発言ですが、竹中さんは不良債権処理が上手く行ったと言い続けています。この成功話には2つの意味が有って、1つは銀行の貸し剥がしによる企業の倒産が最小限に防げたこと、2つ目は赤字国債などの財政出動をまったくせずに「景気回復」に成功したという意味です。この2つが合わさって大量失業の発生を防いだという話になるのですが、どうもこの説明には裏が有るようなのですなあ。