旅限無(りょげむ)

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不毛な喧嘩 其の弐

2006-06-23 12:25:47 | マスメディア
■渡辺芳則さんは山口組5代目を継ぐ前は、武闘派で有名だった山健一家の2代目組長でしたから、山健組系列の元気者が跳ね返ったのでしょう。竹中正久4代目は、前代未聞のNHK特集に出演したこともある全国的に顔も肉声も知れ渡った不思議な親分さんでしたが、それが白昼のマンション前の路上で4人のヒットマンに銃撃されて殺害されたのですから、全国的な大ニュースになりました。その後の「仇討ち」騒動は複雑な組織の構成の中で日本全国に飛び火しました。

……山口組の4代目組長に端を発する両組の全面対決は1987年2月山口組が抗争終結を指示するまでの2年余の間に2府19県で317件の抗争事件が発生し、死傷者は95人に達した。件数、死傷者数ともに戦後最大規模である。……同書149頁の朝日新聞記事引用箇所

■イラク戦争後のテロ騒動に慣れてしまった者には、死傷者95人と聞いても、「何だバグダッドの1日分かあ」とうっかり思ってしまいそうですが、それぞれの抗争事件の背景とその後の影響を詳細に解き明かす『五代目山口組』を読みますと、ヤクザ稼業も大変だなあ、と改めて考えさせられますぞ。2年間の大騒ぎの後、結局、竹中正久4代目組長の仇討ちは不発のまま抗争は終焉して、構成員の規模では山口組の3分の1にも満たない関東の稲川会が最終的な後始末をした上に、渡辺芳則5代目襲名まで取り仕切って話は終るのです。要所に挟み込まれた渡辺さん本人へのインタヴュー記事が、その人柄を上手に浮かび上がらせてくれるので、時代が変わって山口組の様変わりした事が良く分かるのです。昔通りのヤクザを通したい人が著者の溝口さんに八つ当たりしたくなる気持ちも分からぬでは無いのですが、物書きやその家族を標的にしたら、古くからも任侠道にも、現代ヤクザの経営学にも反するのは明らかです。

■その溝口敦さんが細木数子さんを取り上げたのですから、以前から噂が出ていたヤクザさんとの交友関係に触れない訳はないのです。『週刊現代』6月10日号には、連載を中断しての現状報告が掲載されてしまいまして、そこで標的にされた『週刊文春』の方が旗色が悪いらしく、『週刊現代』6月24日号の連載第6回で、細木センセイの商売道具である「六星占術」はインチキだ!とぶち上げれば、『週刊文春』6月22日号では、もう一つの売り物になっている安岡正篤大先生との関係を「告白」する読ませどころの筈が、何故か巻末の156頁の掲載になっています。溝口さんが暴露したのは、細木数子さんが知り合いのヤクザさんに記事の連載中止をお願いして、溝口さんに圧力を掛けて貰ったという話でした。


どうやら細木数子は本誌連載『魔女の履歴書』にいても立ってもいられなくなったようだ。弁護士4~5人の名を連ねて2度にわたって抗議書、警告書(連載中止要求書)を講談社と編集部に送ってきたばかりか、何を血迷ったか『週刊文春』6月1日号市場に「『魔女の履歴書』週刊現代への大反論ここまで語るか細木数子『わが生涯』」と題するインタヴュー記事を掲載し始めた。

■フジテレビの『トップキャスター』とか言うテレビドラマで、インチキ占い師が登場して「地獄に堕ちますよ!」とご本人のカリカチュアとしか思えない台詞を叫んでいたそうなのですが、そんな番組は未見なので作品の質は分からないにしても、そんな学芸会レベルの悪ふざけ番組に目くじら立てて怒らなくても良さそうなものなのに、「金持ち喧嘩せず」という世間の常識の外に居るのか、細木センセイはフジテレビを強迫したとかしないとか。ホリエモンに大金をちょろまかされる程度のテレビ局での内輪揉めですから、どうでも良い話なのですが、溝口敦さんに加えられた圧力は、少々度が外れている犯罪行為すれすれ?の悪質なものだったようですぞ。


……もちろん細木には、連載開始前の4月21日、編集部を通じて取材を申し込んでいる。だが、細木側は4月24日、まず細木事務所の職員が「取材拒否」を電話で回答し、同日、細木の顧問弁護士と名乗る阿部鋼弁護士から、やはり電話で「取材は受けない。ノーコメントと理解して欲しい」と編集部へ回答があった。……細木が取材に出て来ないなら、出て来ないでいい。細木リポートを書く上で、細木の直接取材が必須なわけではない。逆に会ったがため、しがらみに搦(から)め取られる危険さえ出る。細木が最初は取材を拒否していても、連載を重ねるうち、タヌキのように燻(いぶ)り出されて穴から出て来るだろうと、筆者は呑気に構えていた。と、別の穴から今回飛び出したわけだ。

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