旅限無(りょげむ)

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学習効果か自主規制か? 其の弐

2006-06-06 15:02:08 | マスメディア
■オウム真理教が起した松本サリン事件で大間違いを仕出かした反省は何処のマスコミも忘れていないでしょうし、『週刊文春』は「疑惑の銃弾」騒ぎで失敗していますから、さすがの『週刊新潮』も「慎重」にならざるを得ないのでしょうなあ。でも、モノクロ・グラビア頁には、畠山鈴香さんの全身写真と彼女が手作りしたチラシが掲載されているのです。畠山鈴香さんは左太腿のところに烏賊(いか)だか蝶だか分からない大きな刺繍が入ったズボンに先の尖った靴。モノクロ写真なので全身黒づくめに見えますし、茶髪らしい事も分かります。この週刊誌が発行された後、髪を黒く染め直しているような気がするのですが……。

■後になってみたらこのグラビア写真が撮影された瞬間というのが、通常の?茶髪ネエちゃん丸出しで、「ッザケンジャねえよ!」「ウッセエンだよ!」などなど、貧困なボキャブラリーを強調する全国共通の怒号を発していたのでした。でも『週刊新潮』のグラビア頁のキャプションにはまったくそんな話は見当たりません。だた、中途半端に開いた口元と険しい目付きから、読者は敏感に察して上げないと行けなかったようですなあ。ウソを暴くと自負するテレビはどうだったかと思って古新聞のテレビ欄を確認しました。先ず、5月29日の番組予告です。


日本テレビ『スッキリ!!』 激白90分 独占・彩香ちゃん母が語った胸中①女手一つで…母娘の9年 ②虐待疑惑に反論

TBSテレビ『きょう発プラス』 独占!秋田小1殺害で彩香さんの波頗が重大新証言“私は不審者を見ました”

フジテレビ『とくダネ!』 秋田連続死解けぬ謎…彩香ちゃん法要で母が告白

テレビ朝日『スーパーモーニング』 彩香ちゃさん母悲痛激白
     『スクランブル』 彩香ちゃん実母激白

■何かを放送しなければならない苦しい現場の立場も分かりますが、実家をカメラでびっしりと取り囲んで置いて、「反論」だの「激白」だのを放送しなければならないのでしょうか?まあ、本当に冤罪であったら、作り笑いやウソ泣きなどしている余裕は無いでしょうし、事件が解決したら即座に「損害賠償」を請求する為に傍若無人なマスコミ各社や各人の姿と名前をせっせと記録したり、弁護士と電話で相談したり、忙しいのではないでしょうか?無遠慮に24時間体制で覗き見監視している不倶戴天の憎むべきテレビを、わざわざ家に引き込んで弁解する事自体が考えて見れば不自然ですなあ。その不自然さを視聴者に知って貰うつもりでこんな番組を放送しているのでしょうか?だとしたら、たかがテレビと軽々しく考えていたら大変な事になりそうですから、漫然とテレビを眺めるのは慎むべきですぞ。翌31日のワイド・ショーはサッカーやら絵画の盗作騒ぎなどを扱っていたようですが、日本テレビだけはしつこく第2弾を放送しています。


日本テレビ『スッキリ!!』 緊急中継 彩香ちゃん母独占告白①犯人疑惑に徹底反論 ②事故死ではない根拠

■前日にはTBSと一緒に「独占」番組を放送した日本テレビは、今度こそ正真正銘の「独占」になる「緊急中継」を行なったのかも知れません。こういう場合、出演料を支払っているのでしょうなあ。「謝礼」であろうと「協力費」であろうと、真犯人だったら払い戻しを請求するわけにも行かないのでしょうし、初めから「盗人に追い銭」を覚悟の番組制作をしている事になりそうです。テレビが事件をどんどん大きくしてしまったり、方向違いの疑惑に視聴者を誘導してしまったりする危険はどんどん大きくなっているような気がします。

学習効果か自主規制か? 其の壱

2006-06-06 15:01:09 | マスメディア
■6月4日の日曜日、問題の?ジーコ・ジャパンの対マルタ戦が放送されているテレビ画面に、奇妙なニュース速報のテロップが流れました。日曜日には大きなニュースが少ないものなのですが、この日曜日は変でしたなあ。朝のニュースで、秋田県能代市の小学1年生殺害事件の容疑者が任意同行を求められて警察署に入った!という第一報が繰り返し流されたのですが……

豪憲ちゃんの実家の近所に住む女

という持って回った言い方で、朝のニュースから続く各局のニュース・ショーも同じ第一報を放送しているのが奇怪でしたなあ。それがサッカー試合で盛り上がっている最中、午後11時に問題の速報テロップが流れたのでした。


33歳の女

■それは畠山彩香ちゃんの母親の事でしょうに!と全国のサッカー・ファンはテレビ画面に怒鳴っていたに違いありません。それから30分後には、「畠山鈴香(33歳)」の速報テロップが流され、CMに拘束されない皆様のNHKはその地位を存分に利用して特別番組を放送したのでした。「NHKが独自に取材した」と前置きして流されたのは、それまで後姿や手しか映さなかった畠山鈴香さんの顔でした。モザイクも掛けずに晒された顔が、自分以外の犯人の存在を臭わすような発言をしていましたなあ。同じような映像を封印している民放各社は地団太踏んで悔しがった事でしょう。深夜の歌番組やらスポーツ番組を潰してワイド・ショーを始めるわけにも行かないでしょうし、誰が見ているのか分からないにしても、テレビ・ショッピングは大切な広告費を稼げる「情報番組」ですからなあ。

■5月25日発売の『週刊新潮』6月1日号に「犯人はわかっている!」という思い切った先行記事が出ています。同日発売の『週刊文春』も「報道陣が取り囲む捜査線上の近隣住民」という記事を掲載して対抗しておりました。どちらを買おうかなあ?と迷いますが、「ここまで語るか細木数子「わが生涯」」も負けずに大きく掲載している『週刊文春』は落選です。それに秋田県の事件に関しても、特集の小見出しを比べれば『週刊新潮』の方が背水の陣を布いているように思えましたなあ。中でも、「悲劇の両家」の間には「トラブル」が起きていた!とか、豪憲ちゃん「捜査不参加」で漏れた「疑われるかも」の言葉、「子供は苦手」でほったらかしだった「彩香ちゃんの母親」と書き進めているのですから、これは本当に犯人は分かっているのかも?と誰でも思います。

■ところが、特集記事は、「和歌山カレー事件」とそっくりなマスコミ陣の過熱状況を挟んで、最終章になると「動機・物証は…」誰もが口にする「真犯人の名前」と小見出しを付けているのに、


……現地で取材をするテレビ局や新聞各紙の記者が口を揃えて「真犯人」を名指ししているのだから、これほど不可思議な事件現場もなかろう。

と他のメディアを引用してしまっているのです。あらあら?と思っていると、「真犯人の名前」を口にする記者達にしても警察の捜査本部にしても、確たる証拠は持っていない、犯行動機も「推測」の域を出ないのだと書いています。


「犯人はわかっている!」そう誰もが口にする前代未聞の事件現場において、確かなことは意外なほど少ないのだ。無辜(むこ)の児童の命が奪われたこと。遺族が悲しみに暮れていること……。そして、こうしている間も、児童を殺めた犯人はのうのうと日々を送っている――。

■こんな締め括り方では、「いかにも週刊誌みたいだ!」と怒った読者が沢山おられたのではないでしょうか?