旅限無(りょげむ)

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似ているのは絵ばかりではない 其の壱

2006-06-11 09:03:12 | 社会問題・事件
■6月4日の夜に秋田県の小1男児死体遺棄事件の容疑者が逮捕され、翌5日には村上ファンドの村上世彰さんが逮捕されました。両方の逮捕劇に共通しているのは、テレビ局が逮捕前に記録した映像と音声が繰り返し放送されて、逮捕を挟んでウソが続々と指摘されている事です。村上さんは逮捕直前に東京証券取引所の一室で長時間の「独演会」をやっていて、ウソは翌朝からバレ始めましたが、秋田の事件では女児の死亡事故?の直後からテレビ朝日がアリバイ工作に利用されていたとのことで、数週間分のウソがビデオ映像としてストックされていたようですなあ。

■この大騒ぎに紛れて、ちょっと変わった絵描きさんが、突然有名になってテレビ業界は嬉しい悲鳴を上げているとか、いないとか……。その人の名前は和田義彦さんというのだそうで、日本とイタリアを股に掛けた「盗作」疑惑の主人公の割には、マスコミに追い回されるのが嬉しいような、神経が常人とは違っている雰囲気を持った人のようです。薄笑いを浮かべてマスコミから発せられる質問に対して、まったく答えになっていない奇怪な問答を繰り返す様子に、日本中が困惑しているのではないでしょうか?この違和感と不快感には覚えが有ります。それはヒューザー社長の小嶋さんが唐突にマスコミの玩具になって出現した時の感覚とそっくりなのです。

■和田画伯は東京芸大の大学院を出てから「国画会」という組織に加わり、イタリア政府の給費留学生になって欧州の美術館で「模写」やら絵画の修復の修行をして帰国。名古屋芸術大学の教授まで務めているそうですから、高校卒業以来ずっと世の中の裏街道を歩き続けたようなヒューザーの小嶋社長とは似ても似つかない、広々とした表街道のど真ん中を歩んだ人のように思えます。それなのに、この2人がとてもよく似ているのは何故でしょう?「盗作」としか思えない物を「素人には絶対に分からない」創造作品だと言い張る和田画伯、耐震偽装の手抜き欠陥建築物を「経済設計」の傑作だ!と言い張る小嶋社長は似ているように思えますし、和田画伯の盗作疑惑が表面化したのは「匿名の投書」が発端で、ヒューザー騒動の切っ掛けは指定確認検査機関の「イーホームズ」の通報だった事。

■そして、盗作疑惑については告発を受けた文化庁が密かに職員をイタリアに派遣して内輪で事を解決してしまおうとした節が有る一方で、耐震偽装事件では所管の国土交通省は通報を黙殺して責任逃れを計った事も、構図がそっくりですなあ。まるでアルベルト・スギさんの作品と和田画伯の作品のように……。どうせウヤムヤにされて終るのでしょうが、ヒューザーの小島社長が伊藤公介・元国土庁長官の色紙やら小泉純一郎・元首相とのツーショット写真やらを仕事場に飾っていたように、和田画伯も複数の政治家と非常に仲良くしている写真が多数存在しているのだそうですなあ。「経済設計」は「違法な手抜き工事」と断定されて、オジャマモンは正真正銘の詐欺師として起訴されてしまいましたが、「私なりの空間、造形性を技法と絵肌で盛り込み、独自の世界を創造」した作品が「盗作」と断定されるかどうかは、もう少し時間が必要なのかも知れません。

■見事に逃げ切った国土交通省に比べて、芸術選奨を与えた文化庁はお役所としては驚くほど迅速に授賞撤回の方針を発表しました。高邁な芸術論争で国民の目を誤魔化せるとは思えなかった文化庁は、古墳の壁画を台無しにした前科も片付いていない身ですから、和田画伯の一般社会から遊離した屁理屈に付き合って、抱き合い心中などは御免被りたかったのでしょうなあ。