旅限無(りょげむ)

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煙幕の陰で 其の参

2006-06-26 09:37:04 | 社会問題・事件
■NHKと同じように、世間の目が秋田県やドイツに向いている事を喜んでいるのが文化庁のようです。日銀総裁が村上ファンドに1000万円拠出して大儲けしていた実態が連日、国会の財政金融委員会で吊るし上げられている間に、第9回目の「委員会」が開かれたのだそうです。高松塚古墳がカビだらけになった経緯を調査する馬鹿馬鹿しい委員会なのですが、今更どんな手を打ったところで、失われた古代の彩色は回復などしません。骨董屋さんにでも「鑑定」してもらって被害総額を出して貰えば、国民の耳目を集めて大騒ぎになるのでしょうが、ろくな歴史教育も受けていない国民には、「昔の墓」が腐ろうと潰れようと、大した問題ではないのかも知れませんなあ。

高松塚古墳を管理する文化庁の担当部署は2課ある。古墳(特別史跡)は記念物課、壁画(国宝)は美術学芸課。……カビ大発生の一因となったと言われる、取り合い部(墳丘内にある石室前の開放空間)の崩落止め工事(01年2月)……10日間の工事では、業者が防護服を着ないで作業したことなどが問題となったがヒヤリングの結果、工事を発注・担当した記念物課の調査官は期間中、現場に一度も行っていないことが明らかに。代りに石室へ通じる施設の鍵を管理する美術学芸課の調査官が立ち会ったが、記念物課から「仕様書などの工事に関するデータが一切渡されなかった」ため、工事の進行のチェックもできなかったといわれる。…当時の担当官が「自分は鍵を開けに行っただけ」と言い切る……

■文化庁の仕事は「文化」とは何の関係も無いという単純な事実が明らかになっております。この「鍵を開けに行っただけ」の美術学芸課主任文化財調査官の誰かさんが、壁画の傷に「土を水で溶いて塗る補彩」を勝手に決定してぺたぺたとあちこちを「補修」して下さったのだそうです。


この調査官は、上司に具体的な報告をしないまま、絵の色が消えていたり、防カビ剤で白くなったりした部分に、同じように着色していた。しかし、この補彩については文化庁に詳しい記録が残されていなかった。どの場所かさえ分からず、職員が壁画の写真を見比べたり、調査官が私有パソコンに保存していた写真を調べて特定した。……文化財保護法では、国宝を修理する場合、着手30日前までに文化庁長官に届けるよう定めている。だが当の文化庁の調査官は補彩を「日常の管理業務」と言い、「修理」とは考えていなかったようだ。……

この役人言葉の蟻地獄に落ち込んでしまったら、有識者が呼び集められた委員会など何の役にも立ちません。委員長を押し付けられた上智大学学長の石澤良昭先生も、ため息しか出ないのだそうです。誠に御苦労様なことであります。

■秋田県で犠牲になった子ども達も掛け替えの無い存在ですが、別の意味で貴重な歴史的文化財も掛け替えのない物です。しかし、文化庁の職員にとっては、もっと大切なものが有るのですなあ。日銀の総裁が自分の老後の財産を増やす事に熱心なように……。嗚呼

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