旅限無(りょげむ)

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煙幕の陰で 其の壱

2006-06-25 19:41:08 | 社会問題・事件
■世はワールド・カップの空騒ぎも息切れで、次の話題に事欠くかと思いきや、秋田県の子殺し事件に関連する「どうでも良い事」をあれこれとほじくり出して方向違いの悪趣味報道に入り込んでしまっています。そこにシンドラー社の殺人エレベーター騒ぎも加わってしまいましたなあ。これでは、平屋の集合住宅に住んでいても高層住宅に住んでいようと、まったく安心して暮らせません。秋田の事件は「町おこし」政策の陰の部分から発生していますし、シンドラー騒動は公共事業の経費削減政策から出て来た事件です。どちらも根本的な問題を解明しないまま、予算をいじくってお茶を濁すお役所の悪い癖が主要な原因と言えましょうなあ。

■そんな八方塞りの重苦しい空気が澱んでいる中で、矢継ぎ早に更なる大問題の「逃げ切り」が密かに進んでいるのは感心しませんなあ。6月14日の新聞紙面は日銀総裁の恥知らずな「濡れ手に粟」事件に大きくスペースを割きましたから、これも煙幕に利用されたようなものですぞ。


社会保険庁は13日、国民年金保険料の不正免除・猶予問題の新たな調査結果を発表した。本人の意思確認がないまま手続きをした違法な事例が新たに10道県で見つかり、前回調査まで10都府県約8万2千人分だった違法事例は、計20都道府県で延べ16万2159人と2倍近く膨らんだ。……新たに違法事例が見つかったのは、北海道、青森、宮城、千葉、新潟、兵庫、島根、愛媛、鹿児島、沖縄。

■北海道、宮城、島根の前回調査では「不適切な事例」は無い!と大見得を切っていたのに沖縄では9000件以上、愛媛では5000件弱、青森では3400件余が新たに発見されました。お役所の命である書類をぱらぱらと捲れば済むだけの話なのに、たった半月でゼロからこんなに増えるというのは、どんな仕事をしているのでしょう?


……同庁は05年度に申請があった免除・猶予の申請書類約274万人分をすべて点検し直す作業に着手しており、9日から全国の47事務局に実地調査に入った。今回の結果は、これに先立って全国の社会保険事務局長、事務所長に再度の確認書を提出させる中で判明した。さらに同庁は、再発防止策として職員による不正事業の告発を受け付ける「法令違反通報窓口」を14日に設けると発表。……朝日新聞

■始めから「告発制度」を作っておけば、274万人分の書類をひっくり返す必要など無かったでしょうなあ。「お役所の掟」に従って、切り捨てられるトカゲの尻尾当番を決めて、その人に全責任を押し付けてさっさと偽造書類の束を提出して責任者がハゲ頭を並べて、「誠に申し訳ありませんでした」セレモニーをやる陰で、トカゲの尻尾さんにはちょっとした天下り先を世話して黙らせれば、内輪の調整に時間が掛かっても3日も有れば処理できたでしょうなあ。最初に8万件などというトンデモない数値を出しておいて、その後に同じ8万件を積みましてもアホな国民は腹を立てないだろうなあ、と誰かさんが計算していますぞ!

■その後も、事務所に保管しているハンコをぺたぺた捺していただの、ハガキ1枚出して返事が来ない人は「行方不明者」扱いにするという書類上の「殺人事件」まで起しているのが判明しました。もともと、取りっぱぐれの無い厚生年金制度という巨大なドル箱を確保しているお役所は、最初から国民年金制度が破綻するのは時間の問題だと知っていたとも言われています。制度を作ってからも周知徹底に努力した形跡も無いし、発足後20年くらい経過した80年代には受給者が増え始めたためか、新規の加入者を増やさないように画策した事も有りましたなあ。盗人に追い銭と言われても仕方が無い盲腸のような旨みの少ない国民年金が予想以上に巨大化したのは、社保庁にとってはお気の毒様でしたなあ。

■ポスト小泉を狙う人達の中からも年金制度を完全に修理出きる妙案を持っている候補者は出て来ていませんし、社保庁自体が「大き過ぎて潰せない」組織になっているのですから、野党の民主党だってうっかりした事は言えないようですなあ。また「公的資金」で救済するしかないかも知れません。でも、営利事業をしていない社保庁に公的資金を注入しても、自力で「返済」など出来ませんし、無駄遣いしてしまった積立金の返還も無理です。税金の「裏金」になっている特別会計の伏魔殿を開ける勇気と実力の有る政治家が出て来ない限り、増税して穴埋めするか制度自体を消滅させるしか方法は無いのではないでしょうか?

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