旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

学習効果か自主規制か? 其の四

2006-06-07 12:10:14 | マスメディア
■離婚の原因に関しては母親の発言が引用されているのですが、その話から時間を遡って結婚に至った事情を想像すると、少々心配になります。母親はこんな事を言ったのだそうです。

……離婚の原因は、相手の方が仕事をせず、女をつくってパチンコもして……いろいろあったんです。仕事を辞めたのはパチンコ店の終業が遅かったから、小学生を育てるには酷だと思って。自立しようと頑張ってましたが、昨年には卵巣の腫瘍を取る手術で入院したり、実家で療養したりもしました。学校の行事に顔を出せないのは、そんな理由があったからです……

■不運な女の半生を見る思いですが、逮捕の報道が有ってからは、複数のサラ金から追い回されて職場にも取り立てに押し掛けられたのが退職の理由だとか、借金を踏み倒している一方で携帯電話の毎月の使用量は6万円以上だとか、あちこちから溜め込んだ悪い噂が一斉に流れ出しているようですなあ。この『週刊朝日』が律儀に書き起こした内容は、今にして思えば先行した週刊誌の記事を丹念に読んで、一つ一つの疑惑を潰してしまえるストーリーを創作したようにも思える「合同記者会見」の記事なのです。黙って聞いているマスコミ関係者を舐めていたとしか思えませんが、「不審な車」を目撃したという妙に詳しい話も出て来ますし、何だか好き放題に喋り散らしていたようですなあ。

■マンガであろうと雑誌であろうと、はたまたテレビ・ドラマであろうと、殺伐とした物語が溢れているのですから、この程度の可哀想な母娘の物語を作るのは素人にも簡単な世の中になったのかも知れません。しかし、語るに落ちるのも素人の悲しいところでもあります。


……豪憲君がいなくなる前日も、その当日も家に行きました。行方不明になった日は、午後2時から午後4時くらいまでひとりで家にいました。……買って来た花をドライフラワーにするために洗濯ばさみにつるしたり、彩香のことで覚えていることを思い出して書き留めたりしていました。……午後4時くらいに家を出るとき、近くの親子が歩いて帰ってくるのを見ました。挨拶はしてません。……

■豪憲君が失踪したのは5月17日の「午後3時半頃」と分かっているので、午後4時まで家の中に居たという主張は重要なのですが、午後3時半頃に白い軽自動車のトランクを閉める姿を目撃している人が居たのが逮捕の決め手になったという話です。人から無視される事に慣れていると開き直った心が、誰も自分も見ていないだろうと思う油断を生んだのでしょうか?こんな発言もしています。


(豪憲君側の)隣の家は母子家庭でお母さんは日中は仕事をしているはず。反対隣も確か共稼ぎで子どもを幼稚園に預け、いなかったと思いますけども……。

■まるで引っ越して来て間も無い人が言いそうな話ですから、近所付き合いの実態がはしなくも露になっているような気がします。お互いに母子家庭で頑張っている隣同士の女性なら、あれこれ茶飲み話やら助け合いが有っても良さそうなものと思うのは大きなお世話なのでしょうか?問題の『週刊新潮』の記事には豪憲君の捜索に姿を見せなかったのが怪しい、との話が有ったのが気になっているらしく警察に邪魔されたと主張しています。


捜索も手伝いましたけど、そのあと、藤里の自宅で9時か9時半から警察の方に事情を聴かれ、朝方の2時半過ぎまで続きました。……同じことを何度も聴かれました。聴かれる相手も代わり、能代警察署の人だったと思いますが、入れ代わり立ち代わりで常時3人くらいいました。……その後、実家にまっすぐ戻りました。翌朝は5時くらいに起きて、母と2人で藤里に行って7時くらいまで家の近辺の水田とか川の方を捜しました。弟もあとから加わったけども、報道陣が多くて、私たちがウロウロするのが捜索じゃまになりそうだったので、藤里の自宅で待機しました。……

■警察の事情聴取の様子が詳しく述べられているのに、「同じ事を何度も聴かれた」割には、聞かれた内容を問われても答えられなかったのだそうです。警察がしつこく聞いていたのは、午後3時半と午後4時との間に生じている辻褄の合わない空白だけだったはずなのですが、この点にはだけは触れられたくなかったのでしょうなあ。警察やマスコミを上手に邪魔者にして組み立てられている話のように思えますが、アリバイを証言できるのは母親と弟だけという筋立てには不自然な物を感じますなあ。その弟の怒りの言葉を引用する前に『週刊朝日』は少々情に流されてしまったようです。


……豪憲君が連れ去られた現場が限られ、しかも自宅にいた住人が極めて少なかったという状況が、不幸にも鈴香さんに疑いの目を向けさせているのかもしれない。だが、弟はマスコミの責任をこう追及する。「……私たちは被害者かもしれないが、皆さんに詰め掛けられることで、一般の人が『あっ、あそこが犯人のウチなんだ』って思わせるんじゃないでしょうか。それによって憶測、噂が流れて、それを記事にしている雑誌もある。噂や憶測じゃなく、どうか本当の事をだけを書いて下さい」……

■この後には、畠山鈴香さんと豪憲君一家とは仲が良かったエピソードが並んで、49日だけど鈴香ちゃんに豪憲君を待っていてあげてと言っているとか、毎日、夜に念仏を唱えながら、豪憲君の分もいっしょに祈っています。という話で記事は終ります。藤田知也さんという署名が入っている4頁の特集でしたが、発売中に鈴香容疑者が逮捕されてしまったのは残念でしたなあ。初期捜査を誤った疑いの濃い山県の警察がもたもたしている間に、マスコミも一緒になって右往左往しながら妙に腰が引けた報道をだらだらと続けている間に、畠山鈴香さんの過去やら内面やら、有ること無いことがどんどん溜まってしまったような印象が強い事件でした。これでは警察を責める資格をマスコミ自身が失ってしまっているのではないでしょうか?

-------------------------------------------
■当ブログの目次
どこから読んだら良いか迷ったらここをクリック

■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い
------------------------------------------

学習効果か自主規制か? 其の参

2006-06-07 12:09:46 | マスメディア
■母から生まれてテレビに育てられたような世代の中には、自分からアイドルという名の被写体になりたい!と熱望する人達が大量に発生しているようなので、芸能学校や児童劇団などに通わなくても、カメラの前で芝居をするのも簡単なのかも知れません。そうなると、テレビ・カメラを前にして猫をかぶり通せる神経が日本人に埋め込まれている事になりますから、人の内面さえもテレビには映ってしまう、という神話は崩壊している事にもなります。ドキュメンタリーとドラマがますます区別し難い時代になってしまいましたなあ。

■そんな風に舐められている一方で、マスコミ各社のカメラが、互いを写さないようなアングルを確保していたのは、視聴者や読者を愚弄しているとしか思えません。「こちら現場です」と始める実況中継が、予め画面を意図的に切り取って演出しているのなら、テレビ画面に映っているのは「現場の一部」でしかないわけです。スタジオならば撮影用のセットと物置との区別が有るでしょうが、事件や事故が起こった現場からの中継でも、恣意的に画面を切り刻んでしまっては、その場で何が起こっているのかが分かりません。そんな歪んだ演出の中に「独占 激白」が紛れ込んで来たら、何が何だか分からなくなってしまいます。

■『週刊新潮』『週刊文春』に続いて『週刊現代』も6月10日号で「快楽殺人列島ニッポンの深層」というおどろおどろしい特集を組んでいました。偶々、『週刊文春』が掲載した細木数子さんへの「超ロング・インタヴュー」で名指しされた!と発奮した溝口敦さんが生々しい暴力団による妨害圧力を暴露して反撃に出ていたのでこの『週刊現代』を購入したのですが、神奈川の猟奇5遺体殺人事件の岡本千鶴子、母殺しの山地悠紀夫、奈良小1女児惨殺の小林薫、広島の悪魔憑きトレス・ヤギ、京都学習塾教え子殺人の萩野裕、こうした人の皮を被った鬼達の先頭に、『彩香ちゃんの母親と「ネグレクト」』という記事が出ていました。その中に次のような文章が有ります。


……それも特定の男性じゃなく、2~3人かわるがわる。そんな時、彩香ちゃんは家にいられず近所で遊んでいることが多かった。一度なんて、夕食時に『カップラーメンでも食べときな』と小銭を持たされて家を出されたようなんですが、お店にはお湯がなかった。家に戻ろうとしても鍵がかかっていて入れず、彩香ちゃんはフタの開いたカップラーメンを持って途方にくれていたそうです。不憫に思った近所の人が、家に上げて食事をあげたことがあった。……

つるべ落としの秋の夕暮れか、日没の早い冬だったとしたら、こんな悲しい風景を想像すると、誌上に載っている彩香ちゃんの遺影は余りにも可哀想です。本当に。

■5月27日、49日法要の後、家にマスコミを上げて「最初で最後の合同記者会見」を行なったのだそうです。その時の映像をテレビ朝日の『TVのチカラ』という番組で放送したのだそうですが、新聞のテレビ欄で確認して見ると放送可能なのは5月29日だけなのに、予告されているのは「超能力電撃発見……」というトンデモ番組としか思えない文字しか並んでいません。失踪中の人をテレビのチカラで見つけ出そうとしている番組のようではありますが、「超能力」で解決するのなら、警察も裁判所も要らないような気がしますなあ。この時の発言は、『週刊朝日』6月9日号の「私は犯人じゃありません!」という特集記事になっています。

■これも偶々、「日本版カーン博士」と政治家たち、中国バブル崩壊の予兆、などというSAPIOの目次と見間違いそうな記事が掲載されていたので購入したのでしたが、事情聴取、逮捕、と聞いて読み直してみると、なかなか面白い所が有りますぞ。


……「週刊新潮」の記事に、私が「豪憲ちゃんのお父さんが彩香と豪憲ちゃんが遊んでるホームビデオをくれたけど、あんまりだと思わない?」と怒ったと書いてます。でも、こんなことを言った覚えはありません。…ビデオをもらったときは涙を流して「ありがとうございます」って、豪憲君のお父さんに感謝しました。

確かに『週刊新潮』の記事にはこの話が出ていますが、これでは『週刊文春』の立場が無くなってしまいますなあ。更に『週刊現代』はちゃんとタイトルを打っているのに、雑誌名を出さずに反論しています。


(子どもを放置する「ネグレクト疑惑があった」との報道も)それもぜんぶウソです。…彩香が生後半年のときに離婚してから、親ひとり子ひとり。仕事しなければ食べていけないので、彩香を実家に預けて仕事をしたことはあるけれど、彩香が学校に上がるころに仕事を辞め、その後はどこへ行くにも彩香といっしょでした。……

■「彩香ちゃんが小学校入学してからは、生活保護を受けながらパソコンやヘルパーの資格取得に励んでいたという。」との解説が付いているのですが、「励んでいた」かどうかは分かりませんぞ。


……同郷の男性と21歳で結婚した。それから3年を経て出産し、半年後には離婚。……