旅限無(りょげむ)

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小泉劇場の幕の裏地 其の参

2006-06-28 10:19:56 | 政治
■バブル時代に「経済ヤクザ」という新語が業界用語から日常会話に入って来たのですが、日本経済は「ヤクザ経済」だ!という言い方もされましたなあ。資金がだぶついた日本の銀行は貸す相手に困って堅気も極道も区別無く莫大な融資を重ねたのは有名な話で、銀行は怖い所には返済を求めず、弱い所から理不尽な取り立てをし続けたのも周知の事実です。『金融腐食列島』という小説が映画化されましたが、あそこにも「ヤバイ融資先」が出て来ましたなあ。この記事に出て来る「飛鳥会」には、傘下の「飛鳥人権文化センター」の名義で大阪市の職員を抱きこんで不正に社会保険証を入手した犯罪が有って、大阪市人権室参事が逮捕されています。銀行救済のゼロ金利政策を採り続け、社会保障費が不足するから「痛みを我慢しろ!」と言っていた小泉政権は、こうした日本の経済の根を腐らせている事件を放置しているのですから、どうも正直者だけがバカを見る仕組みが「小泉改革」の本性だったようにも思えますなあ。

■『週刊現代』7月1日号には、「『弱者斬り捨て恐慌』はすでに始まっている」という町田徹さんの記事が掲載されています。最初の小見出しは「世界同時株安というウソ」で、「改革なくして成長なし」の御題目は真っ赤なウソだったと怒っています。その証拠となる数値として世界主要国株式市場の本年最高値からの下落率が列挙されていますので、抜き書きします。


……ニューヨーク証券取引所のダウ平均株価はマイナス5.9%
……ナスダック市場のナスダック株価指数は マイナス9.2%
……ロンドン証券取引所の株価指数は    マイナス7.0%
……東京証券取引所1部の日経平均株価は  マイナス16.7%
……東京証券取引所マザーズ株価指数は   マイナス54.4%
……インド証券市場            マイナス26.3%
……ロシア証券市場            マイナス18.9%

6月16日に閉幕した東京で開催された「世界経済フォーラム・東アジア会議」でも、中国とインドの経済成長に比して日本経済には危うさが有る!との指摘が出ていたそうですなあ。まともな経済統計を発表しない中国や、まだまだ巨大な貧困層を抱えて強固な身分差別制度に縛られているインドに比べて心配される日本経済には、何か決定的な欠陥が潜んでいる、と世界中の経済人が心配しているという事なのでしょう。


…不良債権問題は終っていない。地銀や第二地銀のなかには、これから経営破綻をしてもおかしくないところがいくつもある。日本経済は大きな爆弾を抱えている。株式市場はその不安を先取りしているのだ。……米国系の大手投資銀行の幹部は明かす。「日本株に投資してきた海外の投資家は、銀行株の動きを警戒しています。ずばり言えば銀行の不良債権処理が本当に終ったのか、という懸念があるのです」

■小泉改革の置き土産として、危なくて住めないマンション、命懸けで乗るエレベーター、目を瞑って飲み込まねばならない米国産牛肉、大金持ちと元官僚しか参加出来ない泥棒ファンド、せっせと個人蓄財に励んでいる日銀総裁などなど、貧乏で正直な庶民は命の危険にさらされる日本を象徴するような物ばかりが残りますが、先の竹中平蔵さんが自画自賛している「不良債権処理だけは終った」という大きな勲章を持って退陣する心算の小泉さんは、何か大きな勘違いをしているのか、悪意をもって国民を愚弄しているのかも知れませんぞ。


2006年3月期決算で、三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループなど大手行が合計3兆1000億円の連結最終利益を稼ぎ出したことは記憶に新しい。この稼ぎは、バブル期を上回る過去最高の記録だ。……この銀行の立ち直りこそ、5年に及んだ小泉純一郎政権の経済政策における「最大の功績」とされてきた。

竹中さんや木村剛さんなどが強引に進めた「金融再生プログラム」の副題は「主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生」というのだそうで、正直に大手銀行しか相手にしない!と断言しているのですなあ。


今年4月…大分県に本拠を置く第二義人の「豊和銀行」が、業績見通しを下方修正し、西日本シティ銀行との資本提携とあわせて、金融庁に対して公的資金注入を申請した、と発表……豊和銀行は預金量が5200億円。全国的には名前は知られていないが、大分県内では預金量第2位の大手金融機関……金融庁はこの5年間で3回も検査に入りながら、豊和銀行のお化粧を見破れなかった。こうした決算が、他の地銀・第二地銀ではびこっている可能性がある。

■この『週刊現代』の記事には、九州の地銀について特に危険を強調しているのですが、姉歯物件に関わった木村建設も九州熊本の業者でしたなあ。以下は九州のある地銀の支店長の言葉です。


豊和の融資先は、不動産、建設、流通が多い。これは他の地銀も同じです。しかし建設、不動産は公共事業の減少や公取委の談合摘発強化、下げ止まらない地価の三重苦に苦しんでいる。流通もIT革命で合理化を迫られる構造不況業種になっている。そこへきて、不良債権処理を終えたメガバンクが、安い金利を武器に、優良融資先を奪う例も出てきている。……

地方の「シャター商店街」は有名ですが、それは地方経済の「皮膚」みたになもので、経済の動脈である「金融」がずたずたになったら命は絶たれるでしょう。税金で息を吹き返した大手銀行だけが不良債権処理を済ましたからと言って、日本経済は大丈夫だ!などと能天気なことは言えないようですなあ。


1998年以降、金融機関経営の早期安定化や金融機能の安定化の名目で約12兆4000億円の公的資金を投入したが、これまでに回収できたのは、6兆4000億円弱に過ぎない。しかも、返済したのは三菱UFJ(1兆円)、みずほ(9600億円)などメガバンクに偏っている。多くの地域金融機関は返済のメドがたたないのが実情だ。

■美味しい融資先が少ない地方の金融機関は、せっせと国債を買い集めてしまったので、金利が上がったら含み益資産が激減するのは目に見えているとも言います。全国ニュースとして流される経済動向には、このように地方と都会とではまったく逆の意味が有るというわけです。大分県の経済人の証言も恐ろしいものです。


内閣府が3月に発表した大分の実質経済成長率は5.1%と都道府県別では全国1位でした。でもそんな指標は見せかけですよ。大分市にあるキャノンの工場などは好調ですが、大企業は正社員の採用が少なく、大半は派遣や契約社員です。派遣をのぞくと有効求人倍率は0.6倍くらいというのが実感ですよ。

■昨年の4月に、既にペイオフが解禁されているのですから、何処かで本当に取り付け騒ぎが起こったらエライことになりそうです。それこそ大規模な将棋倒しが起こって地域経済が壊滅する危険が有るようです。賢くてエライ人達はコネとインサイダー情報を駆使した「金融技術」で売り抜けたり、安く買い叩いて転売したりしてどちらに転んでも大儲けするのでしょうなあ。


メガバンクも安泰ではありません。りそな銀行のように2兆9000億円の公的資金のうち、2500億円あまりしか返済できていないところだってあるんです。

これも米国系投資銀行幹部の発言だそうです。気楽にバブル時代の風俗を懐かしんでるような人も居るようですが、あの狂気の時代に開いた大穴は、そう簡単に埋められるような代物ではりませんぞ!まだまだ歴史にも思い出にもなっていません。本来なら堅気の人に渡すべき利息分を経済ヤクザさん達が開けた穴埋めに回して生き長らえた大手銀行は、恥も外聞も無く本格的にサラ金商売を始めて笑いが止まらないほど儲かっているようです。庶民の知らない経済の裏側では、ドシロウトでも1500万円ぐらいの利益は簡単に上がって、その世界ではこれくらいのものを「ハシタ金」と呼ぶのだそうですなあ。

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