春のやさしい風に吹かれながら,MTBに乗って金沢駅へ向かった.
武蔵が辻を抜けると駅まで一直線.
ここからは,まだ駅舎は見えない.
でも,街のざわめきに混じって,遠くから野外ステージのブラスバンドの音がぼんやりと聴こえる.
やってる,やってる.
駅に近づくにつれて,だんだん音楽がはっきりしてくる.
きらびやかな金管の輝くような音.
迫力のあるパーカッションの地鳴り.
柔らかな木管のささやき.
今年もラ・フォル・ジュルネの季節がやってきた.
金沢のGWの風物詩のひとつ.
今年のテーマはシューベルトとウィーン.
シューベルトの曲はあまり馴染みがないかも.
知っているシューベルトと知らないシューベルトを天秤にかけたら,知らないシューベルトの方が圧倒的に多い.
今日は知らないシューベルトを聴こう.
邦楽ホールでピアノ・トリオ第2番.
このコンサートの演奏者の顔ぶれが凄い.
庄司紗矢香(Vn),タチアナ・ヴァシリエヴァ(Vc),ミシェル・ダルベルト(p).
世界的に活躍しているソリストたち.
Vnの紗矢香ちゃんは小柄で,まだ何となくあどけない.
Vcのヴァシリエヴァさんは両腕の筋肉がターミネーター並み.
紗矢香ちゃんとヴァリシエヴァさんは仲良しコンビだと公式ガイドブックに載っていた.
これは意外な発見.
ダルベルトさんは俳優のダスティン・ホフマンにちょっと似ている.
弦の2人の若手をサポートする渋いベテラン・ピアニストって感じ.
この曲は知らないシューベルトだったので,事前にこの曲のCDを買って1~2度聴いてみた.
う~む???って感じ.
でも,やはりこのメンバーのライブは凄い.
ほぉ~っ!って感じ.
目からウロコ.
第1楽章はのびやか.
バイオリンが伸び伸びしている.
庄司紗矢香ちゃんは,小さな巨人.
ヴァシリエヴァさんのチェロは,張りがあって正確.
見た目はターミネーターだけど,音も精密器械のようにキリリとして,迷いがない.
はつらつとした弦の2人.
ピアノも迫力ある.
ダルベルトさんの楽譜は文庫本くらいのサイズのミニチュア・スコア.
時折チラリと楽譜に目をやるが,ほとんど楽譜は見ていない.
暗譜.
シューベルトの音楽が体にしみついているかのよう.
さすがベテラン.
第2楽章は一転して,しんみりとチェロが歌う.
冬の旅みたい.
いかにも歌曲が得意なシューベルトの雰囲気.
ウルウル.
スケルッオは秋の木枯らし.
ヒュル,ヒュルと風が泣いている.
チェロが泣いて,バイオリンが泣いて,ピアノも泣いている.
フィナーレはこの曲のいろいろな動機の再現.
歌ったり,泣いたり.
この楽章はうんざりするほど長い.
シューベルトのグレート・シンフォニーのようだ.
でも,3人の掛け合いが緊迫感をもたらす.
長いからと言ってダルな雰囲気はない.
むしろ一瞬の隙もないスリリングな印象.
体を張ってシューベルトやっている.
これぞプロの意地と技デス.
すさまじいフィナーレでした.
演奏会が終わって邦楽ホールを出たら,出口でサクソフォンのアンサンブルやっていた.
柔らかな音色と振幅の大きいビブラート.
弦楽器も脱帽のビロード・サウンド.
サックス四重奏はアンサンブルの王様かも.
うっとり.
最後にラ・フォル・ジュルネ限定の特製パンをゲット.
あまり音楽を聴き過ぎるとグッタリ疲れるので,今日はこれで帰宅.
日付入りのクリーム・パン(↑).
とろけるような柔らかさと控えめの甘さ.
とても美味しかったデス.