裏日記「B面」

工房しはんが日々、ふと感じたり、しみじみとふけったり、ぴんとひらめいたり、つくづくと考えたりしてること。

死んだらどうなるか?問題・20

2022年04月15日 17時01分36秒 | 死んだらどうなるか?問題

死んだらどうなるか?を考えていたのだと、ふと思い出すわけですが(いつも忘れます)、ずいぶんと回り道をしているものです。
ただ、その目的地にたどり着くまでに、まずは「生命現象」という途方もない道のりをゆかねばなりません。
そして、死を語る前に、どうしても誕生を考え詰める必要があるのでした。
あなたが生まれた話ではなく、生命そのものが生まれた話を、です。
ダーウィンは「生ぬるい小さな池」あたりから生命は発生したと考えていたようで、確かにその環境だと、有機的なスープが凝縮され、温められたり日を浴びたり濡れたり乾いたりを繰り返すうちに、生命の素のようなものがころりと生まれそうな予感があります。
実際に、太古の地球上に存在し得た物質を煎じて電気を流す(カミナリの代わりに)、というバカバカしい実験で、アミノ酸が生成された事実があります。
さらに、干潟の満ち干で細胞膜がつくられ(これも実験ずみ)、その中に収められた有機的なスープがうまい具合いに循環すれば、ダーウィン的進化の初手になり得るという研究もあるようです。
ところで、今さらの感はありますが、生命誕生には必要最低限の三つの条件があります。
すなわち、
1、閉じた系である(細胞膜などに覆われ、外界から独立している)
2、自分の体を自分で維持管理できる(養分を摂取してエネルギーをつくり、新陳代謝をする)
3、自己複製ができる(自分の形をした子孫を残す)
というものです。
上に紹介した「スープにカミナリ説」は、「まずは膜の中に材料を入れてしまおう」という順序なわけです。
一方で、ぼくはこちらの方がオススメなのですが、「生命現象をつくったのちに、それをカプセルに入れて環境から独立させよう」という考え方もあります。
それが、現時点で最も有力な生命発生理論である、「深海底熱水噴出口生命起源説」です。
地球が出来たての頃、大気には酸素がなく、当然ながら、海洋にも二酸化炭素が充満していました。
その深海底に、地底のマグマで熱せられた水が噴出する穴が空いていた(現在の深海底にも存在します)ところから、物語ははじまります。
この熱水は数百度もあって、文字通りにアッチッチなわけですが、その周囲に、比較的穏やかな温水噴出の口があると想像してください。
そこからは、硫化水素が主成分の(つまり、二酸化炭素の海水とはpHが違う)水が噴き出しているのです。
温水には硫黄やら鉄やらといった重金属も含まれているために、その成分が積もり積もった噴出口は、まるで煙突のようになっていまして、見た目通りに「チムニー」と呼ばれます。
さて、チムニーには非常に微細な孔がたくさん開いており、スポンジのような内部構造になっています。
その入り組んだ迷路のような孔に、都合よろしく、前生命物質が安定的にひそむことができそうなのですね。
現代のような酸素たっぷりの海の中に水素が飛び込むと、両者は安定を求めて水(H2O)になりますが、当時の二酸化炭素の海では、メタン(CH4)になります。
C!なんとなんと、この記号はゆうきの証です(有機物とは、炭素=C混じりである、ということです)。
ただ、メタンで生命が創造できればいいのですが、その後に誕生したわれわれの肉体は、極めて雑な言い方をして、「メタンになりきる前の中間物質」である、ホルムアルデヒドからメタノールあたりの「雰囲気」でできています。
つまり初期生命は、安定した水素と二酸化炭素の壁は化学変化で飛び越えたが、メタンに到達してしまうほどには変化しすぎなかったようです。
その中間の不安定な物質に留まって、生命は創造されたわけですが、こんな難しい作業を魔法で実現させてくれるのが、チムニーの多孔質な壁面というわけです。
チムニーを形成する素材である鉄と硫黄の化合物は半導体で、電子が都合よく通過できるようになっています。
そして、水素を噴出させるチムニー内と、外界である二酸化炭素の海との間に、前章でミトコンドリアの構造を例にして説明した電荷の勾配(「陽子=+」と「電子=-」の濃度による電荷の差)が存在するのです。
要するに、内と外とで陽子の数が違うために、浸透圧により、陽子も電子も多い方から少ない方に流れたがります。
この勾配(理論上の坂の角度)により、噴出してくる水素まじりの熱水から、二酸化炭素の海に向かって、半導体であるチムニー内を電子がほとばしります。
電気の発生です。
このエネルギーを獲得し、チムニー内で眠っていた無機物が有機化され、多孔質な小部屋のひとつひとつに、生命の素とも言うべき初期物質(単純なアミノ酸など)が濃縮されてたまっていくと考えたら・・・あなた、興奮しないでいられますか?

つづく

東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園

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