本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

推し、燃ゆ

2023-08-06 10:21:21 | Weblog
■本
63 推し、燃ゆ/宇佐見りん
64 アナログレコードにまつわるエトセトラ/山中 明

63 2020年度下半期の芥川賞作品です。ずっと読みたかったのですが、文庫化に伴い手に取りました。ありきたりですが、時代の空気感を見事に切り取っている、というのがまず浮かんだ感想です。推す側、推される側の「生きにくさ」を、アイドル業界特有のコミニティを描きつつ、適応障害の問題とも絡めて、クールに表現されています。中年男性の読者としては、もう少し親側の視点の描写も読みたい気がしましたが、毒親とまではいかない存在でも、子どもを損ない得るし、逆にその子どもから傷つけられる(親としては若干の後悔の念も芽生えていそうです)という残酷な現実が突きつけられた気がします。人間は衣食住が足りるだけでは決して満足できず、それを埋めるために推すアイドルが存在し、その存在に救われるが、その関係性は全ての人間関係と同じように永遠には続かない、という構造が、生命のあり方の理不尽さにも繋がっているのかもしれません。鋭い感性を持つ人の表現に触れらたという満足感の高い読書体験でした。

64 最近CDよりも販売枚数が上回ったとされるアナログレコード、特に、希少盤を含む中古盤市場について書かれた本です。ディスクユニオンの店長さんが書かれた本だけあって、レコードに対する愛情がこもった、詳しすぎるくらい詳しい内容です。レコード盤の品質や市場に出回っている枚数だけでなく、プレスされた順番などまで考慮されて(原盤を物理的にコピーして制作されるアナログの性質上、プレスされる数が増えるにつれて溝などが摩耗し音質が劣化する、そしてその原盤自体もなぜか市場に流通している)、価格が決定されるという構造に驚きました。そういう点では初版本が重視される中古本市場と構造が似ているのかもしれません。個人的には雑な性格ですし、希少性よりも網羅性の方を重視するので、取り扱いに注意が必要で入手が困難なアナログ盤よりも、CDの方を今後も集めていきたいと思っていますが、マニアのこだわりポイントとその差別化への飽くなき探究心は、興味深かったです。要は、どの程度のこだわりが自分にとって心地よいか(こだわり過ぎると精神的にも財政面でも苦しくなりそうです)、を見極めるのが、コレクターとしての正しいあり方なのだと思いました。つくづく人間は衣食住が足りるだけでは決して満足できない、業が深い生き物だと思いますし、だからこそ、喜びも得られるのだと思いました。


■映画
52 パリで一緒に/監督 リチャード・クワイン

 執筆に苦しむ映画脚本家とオードリー・ヘプバーン演じるタイプライターが、脚本執筆場面とその脚本内世界の空想シーンを行ったり来たりしつつ、パリを舞台に愛を深めるラブ・コメディです。三谷幸喜監督が好みそうな設定ですが、三谷監督作品よりも流れが悪く、ギャグの切れ味も弱いです。一方で、無垢な表情から脚本内の悪女役まで、オードリー・ヘプバーンのいろいろな表情が存分に堪能できます。1964年公開の作品で、この時代のハリウッド映画を観るといつも思うのですが、中年男性に都合の良すぎる展開が笑えます。いくらなんでも、オードリー・ヘプバーンのような魅力的な女性(しかも全盛期)が、お金を持っているのかもしれませんが、こんなアル中の中年男性と数日一緒に過ごしただけで、恋に落ちるとはとても思えません。などと思わず嫉妬心も芽生えるほど、まさに彼女を観るためだけの作品で、その観点からは成功していると思います。
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