本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

その先の道に消える

2021-08-21 07:39:39 | Weblog
■本
67 その先の道に消える/中村 文則
68 考えることこそ教養である/竹中 平蔵
69 秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本/J・ウォーリー・ヒギンズ

67 中村文則さんによるハードボイルドな警察小説です。小説ならではの細やかな仕掛けが随所に施され、面白くて一気に読みました。ストーリー展開のエンターテイメント的な要素と、純文学的な人間描写の掘り下げの融合が非常に巧みです。縄を題材にトリッキーなかたちで、日本という国の成り立を、シニカルに掘り下げている点もいかにも中村文則さんらしいです。主人公の一人である富樫がとても魅力的なので、続編も期待したいところです。長男も中村文則さんの大ファンなのですが、本作は性描写が過激過ぎて、気楽に勧められない点だけが悩みです。

68 引き続き敵を知るという意味(笑)と、山口周さんが帯で推薦されていたので、今度は竹中平蔵さんご自身の著書を読みました。ところどころ挿入される、小泉政権時代のおべっかや自慢話が鼻につきますが、ものごとの本質をとらえストーリー立てて考える、など、書かれている内容は真っ当で、「考える」ということについてわかりやすく説明して下さります。高校生、大学生あたりをターゲットに書かれている本ですが、社会に出てから役に立ちそうな方法論も紹介されていて有益ですし、DVDのケースがCDと違ってなぜ縦長か?や牛乳パックはなぜ紙でできていて四角いのか?、など、思考の実践問題として引用されている事例も興味深いです。こういう人が成功する社会が、望ましいかどうかはさておき、少なくとも今の日本社会でそれなりに評価されようと思うと、世の中がどういうルールで動いているのかを知るという意味でも、こういう「成功者」の意見に耳を傾けることも時には必要だと思います。

69 先日読んだ続編がとても興味深かったので、こちらも手に取りました。6,70年前の日本の鉄道や街並み、人々の生活を切り取った写真とその解説で構成されています。乗り鉄の私としては引き続き大満足の内容でした。鉄道がない屋久島や沖縄の写真も収録されていて、屋久杉の切り出し作業用軌道の写真が興味深かったです。さまざまな鉄道写真はもちろんのこと、天草や高知、新橋の裏通りの素朴な街並みや、山口や秋田の田舎の小さな駅舎と近隣住民が移った写真が特に気に入りました。道路が舗装される前の時代に、路面電車が大きな役割を果たしていたこともよくわかります。私も日本全国をいろいろと鉄道で旅しているのですが、まだ行ったことのない地域がたくさんあることにワクワクしました。今のうちに乗っておきたいので、今後廃線されそうな路線ばかりに注意が向きがちですが、過去に廃線となった路線についても一度細かく調べてみたいと思いました。

■映画
62 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)/監督 長崎 健司
63 アイネクライネナハトムジーク/監督 今泉 力哉

62 週刊少年ジャンプで毎週愛読しているので映画版も観てみました。ストーリー的には、名探偵コナンシリーズでよくあるような、高層ビルのパニックものです。コナンは知恵で対抗しますが(最近はアクションシーンも多いですが)、こちらはヒーローなので特殊能力でさまざまな危機を克服していきます。原作を読んでいることを前提に、映画オリジナルキャラクターのみの紹介に留めて、速やかに本題に入る展開はよかったですが、内容が既視感たっぷりな点が少し残念でした。とはいえ、おなじみのキャラクターが存分に活躍するので、原作ファンにとっては楽しめる内容だと思います。原作のコアなファンでなくても楽しめる、名探偵コナンシリーズのクオリティの高さをあらためて認識しました。

63 原作小説を読んだのが5年前なので、あまり詳細は覚えていませんが、ずいぶん違った印象を持ちました。原作はさまざまな登場人物が複雑に絡み合う、先の読めない展開と、トリッキーな性格を持つキャラクターが魅力だった気がしますが、こちらは、「恋愛模様」を軸にした群像劇となっています。三浦春馬さん、多部未華子さんがメインキャストなので、とても爽やかで安定感があります。一方で、伊坂幸太郎さん作品に特有の癖の強いキャラクターは、友人役を演じる矢本悠馬さんが一身に背負っている印象です。原作小説のきっかけとなった斉藤和義さんの「ベリーベリーストロング」という曲が大好きなので、この曲が登場しないのが少し残念でしたが(「ベリーベリーストロング」というワードは、登場人物のセリフとして印象的に用いられています)、斉藤和義さんが制作された音楽は随所にこの作品を彩っています。タイトルがなぜ「アイネクライネナハトムジーク」(原作では作品のテーマである、後からあの瞬間がその人との運命の出会いだったと気づくことの象徴として用いられています)なのかを表す、肝心のセリフがカットされている点も残念でした。ただ、総じて好感の持てる、楽しくも穏やかな気持ちになり、ささやかな勇気が湧いてくる作品です。三浦春馬さんの不在が惜しまれます。

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