本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

季節のない街

2024-06-16 06:26:21 | Weblog
■本
53 人生・キャリアのモヤモヤから自由になれる 大人の「非認知能力」を鍛える25の質問/ボーク 重子
54 季節のない街/山本 周五郎

53 この本の筆者の言う「非認知能力」は一般的な定義とは少し異なるような気もしますが、自己肯定感、自分軸、成功体質、主体性、オープンマインド、共感力といった「非認知能力」を鍛えて、人生やキャリアを切り開いていこうというコーチング本です。認知行動療法的な手法も用いたワークシートを使って、これらの能力を鍛えるための具体的な方法を教えてくれます。以前に流行った「EQ」を焼き直しているだけなような気もして、さほど目新しい発見はなかったのですが、筆者も仰っている通り「プランド・ハップンスタンス(計画された偶然性理論)」を重視している点は、今風でユニークだと思いました。要するに不確実性の高い世界では、事前に綿密に計画を立てるのではなく、鍛えた「非認知能力」を元にまずは行動してみて、その結果に応じて素早く改善していくことの大切さが強調されています。書かれている内容は賛成できることも多いのですが、アメリカの競争社会を勝ち抜いてきた人特有の、ハイテンションで過度の自己肯定感ときれいごとにまみれた文体が、個人的にはあまり合いませんでした。「何を語るかよりも誰が語るか」を重視する私の偏った視点からすると、実践する気があまり起こらない、行動に繋がらない読書でした。

54 宮藤官九郎さん脚本のテレビドラマを観て興味を持ったので、その原作を読みました。テレビドラマとの違いを確認しつつの楽しい読書体験でした。どぶ川と崖で区切られた貧しい街に住む人々の生活を描いた短編集です。人間の欲と弱さ、そして、ささやかな気高さが、存分に描かれています。落語的な教訓話もありますが、よくわからないまま終わる話や共感できない話も多く、人間の複雑さを複雑なまま提示する姿勢がとても印象的です。1962年に新聞に連載された小説なので、まだ戦争の影響が残り、生活レベルはかなり低いですが、切羽詰まると気軽に逃げ出せるフットワークの軽さが少しうらやましくもあります。個人的には、たんば老人が発した「男というものには、女房子にも云えないような悩みにぶっつかることもあるもんだよ、女房子を抱えて、こんな荒い世間の波風を乗り切ってゆくのはたいへんなことだからね、本当にたいへんなことなんだよ」と言う言葉に励まされました(今の価値観から言うと偏った発言ではあるのですが、それでも)。日々サバイブすることの大変さと、それが故の尊さを教えてくれるやさしい本です。この本が原作の黒澤明監督の「どですかでん」も観てみたいと思いました。


■映画 
51 地獄の7人/監督 テッド・コッチェフ

 ベトナム戦争で捕虜となった息子を助けるために、ラオスの捕虜収容所を襲撃する父親をジーン・ハックマンが演じた1983年の作品です。息子の戦友や、同じく戦闘中に行方不明となった父親を持つ若手軍人などを仲間に加え、米国政府の妨害を受けつつも、7人+現地の中国人支援者のみで作戦を実行します。ベトナム戦争の戦後処理についての米国政府に対する批判的な視点が印象的です。内容はかなり主人公の視点に偏っていますが(身内の命は尊重するのに、ラオス兵の命はとても軽く扱われています、そして、現地の支援者は1名しか生き残りません)、アクションシーンの描き方は普通に優れていると思います。救出には成功しつつも、苦みの残るエンディングは戦争の悲劇を伝える上で効果的です。アジア人としては素直に楽しめませんでしたが、努力、友情、勝利といった少年ジャンプ的要素が備わった王道の作品だと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする