本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

岸辺のアルバム

2024-02-03 10:12:35 | Weblog
■本
8 ひらめかない人のためのイノベーションの技法/篠原 信
9 思わずクリックしたくなる バナーデザインのきほん/カトウ ヒカル
10 岸辺のアルバム/山田 太一

8 タイトル通りイノベーションのハードルを下げようという本です。農業研究者としての立場から、仮説と検証の繰り返しプロセスが強調されています。価値基準をずらすこと、他人や異分野から学ぶこと、事象をしっかり観察すること、知っていることと知らないことを区別すること、などがTIPSとして紹介されています。個人的には、イノベーションを起こす上での、マネジメントの重要性に多くの紙面が割かれている点が印象に残りました。確かに、自由に発言できる雰囲気を作り、それを傾聴することにより学ぶ姿勢は重要だと思います。また、哲学や思想を学ぶ理由として『「固定観念の破り方」を学ぶため』と説明されている点も有益な学びでした。昨今ビジネス界でも哲学や美術を学ぶことの重要性について語られることが多いですが、その理由として最も腹落ちしました。その当時の時代背景では「常識外れ」だった考えを、そのように思いつき、それがなぜ現在では受け入れられているのか、を学ぶことから多くの気づきが得られるのだと思います。なぜ、偉い人が「古典を読め」というのかの理由もわかりました。この本で学んだ内容をアウトプットに活かしたいと思える良い本です。

9 タイトル通り効果的なバナーの作り方について教えてくれる本です。「めりはり」や「あしらい」といったポイントごとに、修正前後のバナーを並列表示して、どのような点に注意するとより効果的なバナーになるかを丁寧に教えてくれて参考になります。また、その事例もさまざまな業種の多様なシチュエーションを示してくれているので、実務でも役立ちそうです。カラフルなバナーを眺めているだけでも楽しいです。クライアントから支給されたありものの素材を用いても、これだけの工夫の余地があるということを知れたことは有益でした。

10 昨年に亡くなられた巨匠脚本家、山田太一さんの代表作です。さまざまな本で引用されることが多い作品ですが、きちんと接したことがなかったので読みました。想像以上に素晴らしい内容で圧倒されました。映像で観ていたら、さらに打ちのめされて、後を引いたと思います。特に子育てが終わりつつあるアラフィフの身としては、父親の心情を思うとやるせない思いが募りました。一方で、長男は私の少し上の世代ですが、大学受験時の不安な気持ちや周囲の大人に対する思いなど懐かしい感情も蘇りました。4人家族の様々な視点から、家族の崩壊と再生(の兆し)が描かれている作品ですが、どの視点にも共感できる点が、やはり素晴らしいと思います。どの登場人物も、基本的には善人で自分の考えをしっかりと持っているにもかかわらず(その固定観念に縛られているからこそ)、些細なすれ違いからどんどんと不幸になっていく様子が恐ろしいです。そうした不幸な状況で混乱しつつも、誰も打ちのめされたままにはならず、ファイティングポーズを示し続けているところも、同種の作品にはない魅力になっています。ポール・トーマス・アンダーソン監督の「マグノリア 」のように、各人の不幸がこれでもかと描かれ、そのストレスが頂点に達した時点でカタストロフィを迎えるのですが、その後、底を打った反動でのやけくそのパワーで立ち上がろうとしているエンディングの後味も心地よいです。人生のままならさと、そのままならさを経験した人でした得られない人生の秘密のかけらを示してくれるかのような素敵な作品です。まだ、打ちのめされています。


■映画 
9 PERFECT DAYS/監督 ヴィム・ヴェンダース
10 ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生/監督 デヴィッド・イェーツ
11 ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密/監督 デヴィッド・イェーツ

9 学生時代にはまったヴィム・ヴェンダース監督の、しかも日本を舞台にした作品ということで観ないわけにはいきません。難解な印象の強いヴィム・ヴェンダース監督作品ですが、電通の高崎卓馬さんが脚本に参加されていることもあってか、メッセージはかなりわかりやすかったです。役所広司さん演じるトイレ清掃作業員のプロ意識に満ちた仕事ぶりと、その淡々とした日常が、抑制の効いたトーンで描かれています。作品名と同じルー・リードの楽曲など、主人公が車中でカセットテープで聴く名曲の数々が絶妙のアクセントになっています。エンディングでニーナ・シモンの「Feeling Good」をバックに見せる、役所広司さんの泣いているとも微笑んでいるとも取れる絶妙の表情は圧巻です。カンヌ国際映画祭で主演男優賞を獲得されたのも納得です。反面このわかりやすさは、映画通にとっては作品の深みという点で減点要素かもしれません。資本主義やマーケティングとは縁のない生活を送っている主人公が、役所広司さんがCMをされているBOSSのコーヒーを毎朝購入するといった大人の事情のわかりやすさも、少し気になりました。個人的には、もっとストーリー的に起伏のない作品をイメージしていたので、想像以上にドラマティック(といっても過度な演出はなされていませんが)な内容で最後まで楽しめました。海外の巨匠の作品を、観客の敷居を下げて提供しているという意味でも、なかなか意義深い作品だと思いました。

10 「ハリー・ポッター」シリーズからスピンオフした、「ファンタスティック・ビースト」シリーズの2作目です。昨日3作目がテレビで放映されていましたが、そういえば1作目しか観ていないなと思い慌てて観ました。1作目を観てからずいぶん時間が経っていたので、なかなか話についていくのに苦労しましたが、ネットで1作目のあらすじをざっと眺めてから観ると理解が深まりとても楽しめました。魔法が飛び交う世界観がしっかりしているので、安心して作品世界に入っていけます。2時間を超える作品ですが、全く苦にならず時間があっという間に流れていきました。魔法を使えない人間たちを支配しようとする、ジョニー・デップ演じる闇の魔法使いグリンデルバルドと、それを阻止しようとするダンブルドア校長とその弟子の主人公という構造もわかりやすかったです。魔法界や魔法動物の映像も素晴らしく、ワクワクしました。高い魔法能力を持つグリンデルバルドとダンブルドアが直接対決できない理由も説得力がありました。各キャラクターやそのエピソードも考え抜かれていて、ダークながらも、娯楽要素の多い素晴らしい作品だと思います。

11 2作目を観終わってもさほど疲れていなかったのでこの3作目も一気に観ました。スキャンダルの影響でジョニー・デップが降板したことを知らなかったので、冒頭でグリンデルバルドを違う役者さんが演じていたのは、魔法で変身しているのかと思ってしまいました。ジョーカーは役者さんが変わっても顔が白塗りで統一されているように、せめて顔色、髪色、髪型は統一して欲しかったです。未来予知能力のあるグリンデルバルドに、偶然の要素を意図的に作り対決するという構図は斬新だと思いましたが、今ひとつその展開の妙がはまり切っていない点が少し残念でした。とはいえ、予想外のキャラクターが活躍するなど、先の読めない展開で観ていて全く飽きませんでした。2作目も含めて4時間以上続けて観て退屈しなかったのは、やはり優れた作品だからこそだと思います。シリーズの継続が危ぶまれているようですが、個人的には満足度の高いシリーズです。
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