本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

「ない仕事」の作り方

2016-05-21 10:22:13 | Weblog
■本
39 「ない仕事」の作り方/みうら じゅん
40 言ってはいけない/橘 玲
41 「意識高い系」という病/常見 陽平

39 「ゆるキャラ」の仕掛け人としても有名な、みうらじゅんさんの仕事上のノウハウを惜しげもなく教えてくださる本です。「ゆるキャラ」だけでなく、「マイブーム」、「見仏記」といった、これまでになかった概念を提示し、ビジネスにしていくためのノウハウが満載です。「らくがお」、「シベ超」といったこれまでにある事象を巧みなネーミングで広げていく手法も参考になります。ご自身が「一人電通」とおっしゃるように、企画、デザインから協力先への営業活動、さらにはその実施や社会への啓蒙活動まで、全て一人でやられているので、おっしゃっていることに説得力や凄みがあります。世の中にない事象を仕事にするので、成功する保証は全くないのですが、そのリスクを乗り越えてエネルギーを注ぎ込むには、その事象自体への愛情がやはり重要であると改めて気づかされます(みうらさんは、その事象が好きになるように「自己洗脳」するとおっしゃっています)。その一方である事象が「仕事」になるためには、一定の熟成期間が必要ともおっしゃっていて、どこか力の抜けたスタンスにも非常に共感できます。

40 進化生物学、進化心理学の研究成果をもとに、我々の想像以上に、遺伝や性別などの生物学的な資質によるよる違いが、人間の能力や行動に影響を与えているということを、挑発的な文体で書かれた本です。社会全体というマクロ的な視点にたてば、個人の努力や環境面の是正だけでは克服できない点があるということをロジカルに示されているので、筆者の橘さんがおっしゃる通り、確かに「不愉快な本」なのかもしれません。ただ、この主張をどこまで受け入れるかはともかく、このような考え方にも一定の根拠があるということは知っておいて損はないと思います。個人的には、子どもの成長に大きな影響を与えるのは、遺伝的性質と友人関係(子どもは進化適応上、「友だちとの世界」からほぼ全てのことを学ぶので、親による子育てによって子どもに影響を与える範囲は非常に限定的)という主張は、かなり説得力があると思いました。幼稚園から大学までの一貫教育校など、幼少期から均質的な友人関係で育つことには、個人的にはこれまで否定的でしたが、この本を読んで、そのような学校出身者で素晴らしい人格者が多数存在すること(一方で、鼻につく人も一定数存在しますが)の理由がわかった気がします。

41 先日読んだ楠木健さんの本でこの本の著者の常見さんが対談されていて面白かったので読みました。こちらも、ネットメディアで活躍されている人らしく、文体は非常に挑発的(サブタイトルが「ソーシャルメディアにはびこるバカヤロー」ですから・・・)ですが、書かれている内容は極めて常識的で、「自分探しや人脈形成など中途半端に意識を高く持って疲弊するよりも、現実を直視して、日々の小さな幸せを噛みしめながら、今を一生懸命生きなさい」というのが、主題であると私は読みました。まあ、同年代の私から見ると非常に共感できる内容ではありますが、筆者がこのメッセージを届けたい20代の人たちには、なかなか受け入れにくい面もあるかと思います。結局、恥ずかしい思いや失敗をしないと、生きていく上での知恵は身につかないと思いますので、迷惑をかけられない範囲なら、「意識高い系(笑)」の人たちの行動も、温かい目で見てあげるべきなような気がします(常見さんは「意識高い系(笑)」からかなり被害を被ってそうなので、そう悠長なことは言えないのかもしれませんが)。


■映画
38 ロング・グッドバイ/監督 ロバート・アルトマン
39 花とアリス/監督 岩井俊二

38 ストーリーよりも独特の世界観を楽しむタイプの映画です。冒頭の主人公のアパートのシーンから、ロバート・アルトマン監督らしい、雑然としたシニカルな雰囲気が充満しています。レイモンド・チャンドラーの有名な原作「長いお別れ」を、何度か挫折して読んでいないので間違っているかもしれませんが、映画の方はかなり独自の解釈をしているような気がします。エリオット・グールド演じるフィリップ・マーロウはもちろんのこと、アパート隣人の奇妙なヨガ集団やマーロウを脅すギャング、依頼人の夫の作家などエキセントリックなキャラクターが満載です。群像劇が得意なロバート・アルトマン監督らしく、このあたりのキャラクターの描き分けの手腕は見事です。衝動的に行動するキャラクターばかりなので、共感できないところも多いのですがその刹那的な行動がクールでもあります。

39 こちらも世界観を楽しむ映画です。一応のストーリーはあるものの、二人の主人公の心の通い合いやすれ違いを描いたささやかなエピソードの積み重ねで引っ張っていきます。独特のぶれたカメラワークや細かいカット割り、そして光の使い方がとてもユニークです。また、岩井俊二監督が自らが作曲された音楽も、その映像にとてもよくマッチして印象的です。しかし、この映画のクオリティで決定的な役割を果たしているのは、アリス役の蒼井優さんの圧巻の演技です。鈴木杏さんも演技力の高い女優さんだと思うのですが、彼女の存在感が霞むほどです。終盤のオーディションでのバレーダンスシーンを見るだけでも、この映画を観る価値があると思います。平泉成さん、阿部寛さん、広末涼子さん、といった強い個性を持った役者さんをふんだんに端役として使っているところも贅沢です。監督の作家性が前面に出た映画なので観る人を選ぶと思いますが、アンチの人もねじ伏せる(私もどちらかと言えば岩井監督によい印象は持っていませんでした)だけの力を持った作品だと思います。
コメント
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