天燈茶房 TENDANCAFE

さあ、皆さん どうぞこちらへ!いろんなタバコが取り揃えてあります。
どれからなりとおためしください

2013初夏・北欧バルト海紀行 #016:OPERA NIGHT フィンランド国立オペラ劇場“Ooppera”

2013-05-30 | 映画・演劇・コンサートを観る
Suomen Kansallisooppera


#015:フィンランド・ヘルシンキ街歩き トラムに乗って大聖堂へからの続き

フィンランドの国立オペラ劇場“Ooppera” は、ヘルシンキ市街地中心部から少しだけ離れて、
中央駅の構内裏手に広がる湖(どうやら正確には、バルト海と水路でつながった「内湾」のようです)の畔にあります。
ちなみに道路を一本挟んで向かい側は、1952年に開催されたヘルシンキオリンピックのメインスタジアムです。



トラム(路面電車)の走る大通り沿いに建つ、近代的かつシンプルモダンな白いビル。これが国立オペラ劇場です。

…正直、拍子抜けしました。
ヨーロッパ諸国の都市の文化的シンボルであるオペラ劇場と言えばやはり、
どっしり重厚な王侯貴族の宮殿のような建物と綺羅びやかな装飾、シャンデリア煌めく玄関広間と天井に届く客席の大階段…
というイメージを抱きますし、実際僕がこれまでに訪れたブダペストやプラハ、そしてウィーンの国立オペラ劇場はまさにそんな荘厳な建築が厳かに、オペラ鑑賞初心者のおっかなびっくりの訪問をド派手に迎えてくれたものでした。

しかし、このヘルシンキのオペラ劇場は日本の都市にもよくある「市民文化会館」みたいな、実に気取らない雰囲気。
「何だか、今まで想像していたオペラ座のイメージと随分違うなぁ…」
まぁとりあえず、建物の中に入ってみるとしましょう。


建物の中もすっきりシンプルなインテリア。
重厚なシャンデリアや分厚く敷き詰められた絨毯はありませんが、いかにも北欧らしい清潔で機能的なデザインで、これはこれで良い感じです。
ホワイエにはお酒を立ち飲みできるビュッフェも設えられて、本格的なオペラ劇場らしさもありますね。

ホワイエの壁は全面が金属とガラス張りのアトリウムで、開放感があります。



アトリウムの外には、湖の畔に広がる公園とそこを散策する人々の姿が見えます。
既に午後6時半を回っているのですが、初夏の北欧ではこの時間はまだ太陽も高くて青空が明るく広がる「長い昼下がり」。

さて、外が明るいので時間の感覚が怪しくなりますが、そろそろ今夜のオペラの開場時間です。
ボックスオフィスでEチケットを引き換えて、客席に着くとしましょう。
今回も事前にWebでオンライン予約したチケットは最上階バルコニー席、27ユーロ也。



僕の席はバルコニーの舞台に向かって右手側でしたが、まだ上演開始までに時間があり客席に誰も居なかったので舞台正面まで行ってみました。
これがフィンランド国立オペラ劇場の、最上階バルコニー客席からの眺めです。
客席も舞台もシンプルモダンなデザインでまとめられています。本当に、現代の北欧らしいオペラ劇場です。



↑サムネイルをクリックするとパノラマ撮影画像が開きます↑



そして今宵の演目は、ドニゼッティ作曲のイタリア・オペラの喜劇「愛の妙薬」
スペインはバスク地方の農村で繰り広げられる、他愛もなく可笑しくてそしてちょっと泣ける恋愛物語のイタリア・オペラを、白夜を思わせる明るい夜のフィンランドで一人旅の日本人が観るというのも中々乙なもの…


「愛の妙薬」は2幕物。
幕間のホワイエのビュッフェは外が明るすぎて、真昼間から飲んでいる気分な雰囲気…(笑)
僕は2020年の「はやぶさ2」地球帰還まで断酒中なので、飲んでる人たちを見るだけで自分では飲みませんでしたけどね、念の為!


“ドゥルカマーラ大先生の愛の妙薬”を飲めない代わりに、誰もいないオーケストラピットを覗き込んでみました。



そして見上げるとバルコニー席。
…そろそろ、あの天井桟敷に戻って、バスクの農民のお二人さんの恋路を見届けるとしましょうか。

何だかんだとあったけど、最後には恋がかなって大団円。
皆が楽しく笑いながらの、農村の恋の物語の幸せな終わり。
この作品は訳あって台本執筆から作曲まで殆ど「やっつけ仕事」状態で1ヶ月足らずで一気に書かれて仕上げられたそうですが、やっぱり誰も傷つかず解りやすい幸せな純情恋愛物語は誰にでも受け入れられやすいテーマなんですね、
「愛の妙薬」は1832年のミラノでの初演以来大ヒット作となり、今でも世界各地のオペラ座で上演される定番の喜劇作品となっています。
ここフィンランド国立オペラ劇場での「愛の妙薬」も、軽妙でテンポの良いストーリー展開を活かした、正統派の喜劇オペラという雰囲気で劇場内の観客の皆さん全員で楽しんで観ることが出来ました。

やっぱりみんな、恋の物語はハッピーエンドになって欲しいもんね。
オペラの夢の世界では特に…
せめてひと時、現実を忘れて…



幸せな夢を見て、フィンランド国立オペラ劇場“Ooppera”を出ると、外は夢の続きのようなブルーモーメントに包まれていました。
初夏の北欧は昼と夜の境目も曖昧なまま、束の間の夢の季節を楽しんでいるかのようです。

#017:フィンランド・ヘルシンキ街歩き トラムに乗って鉄道巡りに続く

2013初夏・北欧バルト海紀行 #015:フィンランド・ヘルシンキ街歩き トラムに乗って大聖堂へ

2013-05-28 | 旅行

#014:タリン→ヘルシンキ 豪華フェリーでバルト海ショートクルーズからの続き


タリンからの船が発着するヘルシンキ港の西ターミナルは、南に向かって海に面したヘルシンキの街外れに位置します。
ここから市街地への移動はトラム(路面電車)が便利。
港のターミナルの建物を出ると、目の前がそのままトラム乗り場です。


さて先ずは、トラムのチケットを買わないと…
でも、船を降りた乗客の多くがトラムを利用するにも関わらず、チケット売り場はプラットホーム上にある自動券売機1台のみ。
当然、大勢の人が自動券売機に並びますが、この券売機が慣れていないと妙に使い難い代物でなかなかお客が捌けません。チケット購入の行列が進むのを待っている間に、市街地方面行きのトラムが3本も発車…

結局、随分待って、そして僕も他の人を待たせて(笑)、どうにか2日間市内エリアの公共交通乗り放題パスを購入。
さすが物価が世界一高いと言われるフィンランド、2日間乗り放題だと12ユーロもします。ちなみにシングルチケット(1回のみの乗車券)は2.2ユーロなので、2日間で6回以上乗り降りすれば元が取れる計算になります。

さあ、乗り放題パスも手に入れました。早速、トラムに乗ってヘルシンキの街に出発です!


ヘルシンキ港西ターミナル前から乗車したトラム9系統から、途中の停留所でトラム3B/3T系統に乗り換えます。
乗り換え停留所で降りてトラム3B/3T系統を待っていると、何とトラムの停留所に路線バスが乗り込んできてそのまま停車。
ヘルシンキ市内の停留所はトラムとバスの共用になっているんですね!



バスが出て行くと、次にトラムが到着。これは合理的!
トラム停留所とバス停が別々にあるより道路上のスペースが有効活用できますし、何より乗客の乗り換えが非常に楽になります。日本でも取り入れて欲しいシステムです。

乗り換えたトラム3B/3T系統はヘルシンキ市内をぐるりと8の字状に周回する環状線で、沿線に観光名所が多いことから特に観光客の利用が多く、ガイドブックでも乗車を薦められる程に利便性の高い人気路線。
僕が今夜泊まるホテルも、このトラム3B/3T系統沿線の国立オペラ劇場前にあります。ホテルにチェックインして荷物を部屋に置いたら、すぐまたトラム3B/3T系統に乗ってヘルシンキ街歩きに出発です!
ヘルシンキには28時間しか滞在しないので急がないと、この街を楽しみ損ねてしまいます!

まずやってきたのは、ヘルシンキ中央駅



ヘルシンキ中央駅はフィンランド国内各方面への列車のみならず、ロシアへの国際列車も発着するヘルシンキの陸の玄関口です。
20世紀初頭に建てられた駅舎は大聖堂をイメージさせるエントランスとコンコースや、ちょっとレトロフューチャーなイメージの漂う時計塔や巨大な人物像が印象的です。






近郊列車や地方都市へと向かう列車が並ぶ頭端式プラットホームは、北欧の旅情が漂います。
この次にヘルシンキに来る時は、サンクトペテルブルグ辺りから国際列車に乗り込んでこの駅に降り立ちたい…
そんな気持ちを噛み締めながら、ヘルシンキ中央駅を後にします。

またトラムに乗り込んで、途中で賑やかな広場が見えたので何となく下車。





広場をぶらぶら歩いていると、トラムの走る通りの先に美しい建物が見えてきました。




ヘルシンキの街のシンボル、ヘルシンキ大聖堂です!
広場の先の、小高い階段の上に建っているので、下から見上げるとまるで空に浮かぶ教会のように見えます。

それにしても、初夏の北欧の澄み切った濃い青空と流れる雲に白亜の大聖堂が映えて本当に美しい!
あまりに美しいので暫く階段の下からただ大聖堂を見上げて立っていたら、地元在住と思われる金髪碧眼の少女から日本語で
「こんにちは。あなたはずっと教会を見ているけど、教会の建築が好きなんですか?」
と声をかけられました。
彼女は大学で日本語を勉強しているとのことで、突然現れた日本人らしき男が呆然と大聖堂を見て立ち尽くしている姿が気になって勇気を出して話しかけてくれたのかもしれません。
「うん、この教会があんまりきれいなものだから、感動してしまって…
あなたは、日本語が上手ですね。話しかけてくれてありがとう!」



大聖堂前で偶然出会った人と一言二言だけ言葉を交わし、また別れる。
一期一会。旅しているということを強く感じる瞬間でした。

大聖堂の中にも入ってみました。



観光客や地元の人たちで賑わう大聖堂前広場とは打って変わり、大聖堂の中は人の気配も無く静謐な空間が広がっています。


ヘルシンキ大聖堂には立派なパイプオルガンもありますね。
今日は誰もいないので演奏は聴けませんが、どんな荘重な響きなのでしょうか。

パイプオルガン演奏は聴けませんでしたが、今夜はこれから楽しい音楽の夢の時間が待っています。
宿泊するホテルを国立オペラ劇場の前に取ったのは、勿論今夜オペラを観るからです!

さあ、ホテルに帰って一張羅に着替えて胸ポケットにチーフを挿し、お気に入りのネクタイを締めましょう。
ちょっとだけお洒落をしたら、オペラの夢の世界を観に行きましょう!

#016:OPERA NIGHT フィンランド国立オペラ劇場“Ooppera”に続く

2013初夏・北欧バルト海紀行 #014:タリン→ヘルシンキ 豪華フェリーでバルト海ショートクルーズ

2013-05-26 | 旅行

#013:タリン旧市街、雨の夕暮れからの続き

2013年4月30日

朝から、港にやって来ました。今日は船に乗ってバルト海を渡り、フィンランドの首都ヘルシンキに向かいます。
午前10時半、タリン港から出航です!


タリンはバルト海に君臨したハンザ同盟都市らしく、今でも大きな港を擁する海の交通の要衝です。
バルト海沿岸諸国を結ぶ定期船のみならず世界中からやってくる豪華クルーズ客船も寄港するタリン港には、行き先別に幾つもの岸壁とターミナルがありますが、僕がこれから乗り込む船は北欧・スカンジナビア半島方面への船が使用するDターミナルに接岸して出航準備中でした。

黄緑オレンジの波模様という、常軌を逸した(笑)ド派手な船体色に全身を包んだ大きな船。
ここタリンを拠点にバルト海の各地へと航路を展開するタリンクシリヤライン社の大型フェリー、
その名も「スーパースター」です!


「スーパースター」はタリンと対岸のヘルシンキの間を2時間で結ぶ“タリンクシャトル”と呼ばれる幹線航路で使用される高速船で、2008年に就航したというまだ新しい船です。
タリンとヘルシンキの間は、他にも幾つかの船会社が就航して激しく競合しているドル箱航路なので、新しくてド派手な船を投入して集客に務めているようです。

船会社間の競争が激しいということは、お互いに利便性やサービスの良さや船賃の安さを競い合っているということなので乗客にとっては嬉しい話。
実際、タリンからヘルシンキまでのタリンクシリヤラインのチケットは早割や往復割引やWeb予約割引が効いて、往復で58ユーロと国際航路にしては随分お手頃な価格で購入することが出来ました。

タリンクシリヤラインのチケットも勿論ITの国“eストニア”の会社らしくEチケット。
出航30分前までにターミナルの自動チェックイン機に予約番号を打ち込むとボーディングパスが発行されて乗船手続き完了。そのままボーディングブリッジを通って「スーパースター」に乗り込みます。空港で国内線の飛行機に乗り込む感覚です。
エストニアとフィンランドは共に「シェンゲン協定」適用国なので、出入国管理のパスポートコントロールもありません。

船に乗り込んだら、先ずは最上部のオープンデッキ甲板に向かいます。
ここでタリンの出港風景を眺めることにしましょう!

タリン港には、大きな船が何隻も接岸していて賑やかです。


「スーパースター」の隣に停泊していたこの船は、同じタリンクシリヤラインの「ヴィクトリア」
タリンと、スウェーデンの首都ストックホルムを結ぶ夜行航路に投入されている船で、昨夜一晩バルト海を走って、つい先程タリンに到着したばかりのようです。


こちらは「シリヤ ヨーロッパ」
「スーパースター」と同じくタリンとヘルシンキを結ぶ航路の船ですが、2時間でバルト海を渡る高速船ではなく、
夕方にヘルシンキを出て夜中にタリンに到着し、乗客を船内に宿泊させたまま一晩停泊。乗客は翌朝下船してタリンの半日観光を楽しみ、午後にはヘルシンキに戻るという観光クルーズコースに使用されているとのこと。
タリンは世界遺産の旧市街を目当てにした観光客が近年急増中で市内のホテルの部屋数が不足気味なため、このような効率的な船内宿泊込みのクルーズも人気があるんだそうです。

甲板から港の船を見ているうちに、出港時刻間近です。
乗船手続きが早めに完了してしまったらしく、10時半より少し前には舫い綱が解かれて「スーパースター」は港を離れます。



タリン港の外れには、赤い船体の船が係留中。
タリンクシリヤラインのライバル船会社であるヴァイキングライン社から移籍してきたクルーズフェリー「イザベル」です。
現在タリンクシリヤライン仕様に改修中で、近日中にラトビアのリガとストックホルムを結ぶ航路に投入される予定だそうです。

新入りの「イザベル」の横をすり抜けて、「スーパースター」はタリン港外に出ます。


遠くなっていくタリンの街。
タリンは「バルト海でもっとも美しい港街」と言われているそうですが、なるほど海から眺める旧市街は趣があって、タリンを去るのが名残惜しくなってきます。まぁ、明日の夕方にはまたタリンに戻ってきますが(笑)


タリンの街外れの森の中には、高い塔がそびえ立っているのが見えます。
ソ連邦時代、モスクワオリンピックのTV放送のために建設されたタリンテレビ塔です。
エストニアのソ連からの独立の際には、エストニア国民へのニュース放送を死守しようとした放送局員と独立を阻止しようと迫るソ連軍兵士との間での攻防戦も展開されたという、歴史の舞台でもあります。

タリン港を出た「スーパースター」は、一路ヘルシンキを目指し曇り空の下のバルト海を進んでいきます。
あまり天気が良くないので見晴らしも良くないし、何よりバルト海は初夏と言えども気温が低く海風が冷たいので、甲板から船内に戻るとしましょう。




「スーパースター」の船内は、この豪華さ。
乗船時間わずか2時間の高速フェリーとは思えない、まるでクルーズ客船のようです!


乗船時間が短いにも関わらず、個室の客室もかなりたくさんあります。
2時間ではベッドで昼寝をするにも短すぎると思うのですが、どんな人たちが利用するのでしょうか。
ひょっとしたら、「シリヤ ヨーロッパ」のように港に一晩停泊する観光運用も考慮しているのかもしれません。
ちなみに僕が買った割引乗船チケットはもちろん「部屋なし」です。

格安の「部屋なしチケット」で乗ってくる乗客も、船内で居場所がなくて不自由することはありません。
「スーパースター」には様々なサービス設備(=チケット単価の安い乗客におカネを使わせる施設)(笑)が揃っています。



バルト海の景色を見ながら食事ができるレストランも、豪勢な食べ放題ビュッフェからファーストフード店までいくつもあります。


国際航路らしく、免税店もあります。


スーパーマーケットもあります!品揃えも街中のスーパーマーケットと比べて遜色ありません。
世界でも最も物価の高いフィンランドから、物価の安いエストニアに、週末に日用品を大量に買い出しに来る人が結構多いそうで、そういった乗船客に移動中も安く買い物をさせようということでしょうか。
何とも商魂逞しい…


そして何とカジノまで!

…とにかく船内には何でもありのタリンクシリヤライン「スーパースター」。
ここまでくると大型フェリーというより、国際空港がそのまま海に浮いているような感覚です。

船内散策ですっかりくたびれたので、再び甲板に出てみます。

おお、いつの間にか随分、天候が回復しています!バルト海の上に青空が広がり始めました。

タリンを出てから1時間、「スーパースター」はバルト海フィンランド湾のど真ん中辺りを航行中です。
バルト海の大海原と水平線をパノラマ撮影してみましたので、ぜひ大きな画像でご覧下さい。







↑サムネイルをクリックすると大きな画像が開きます↑




やがて、船の前方遥かに陸地が見えてきました。フィンランドです!


タリンから2時間。「スーパースター」は無事、ヘルシンキ港西ターミナルに接岸しました。




初めて来る国、フィンランド。天気はすっかり良くなり、青空が出迎えてくれました。

ヘルシンキにはこれから約28時間だけの短い滞在となりますが、やりたいことはたくさんあります。
さて、どれだけヘルシンキを楽しめるでしょうか…?

#015:フィンランド・ヘルシンキ街歩き トラムに乗って大聖堂へに続く

2013初夏・北欧バルト海紀行 #013:タリン旧市街、雨の夕暮れ

2013-05-26 | 旅行

#012:タルトゥ→タリン ソ連製の列車で行く、エストニア鉄道の旅からの続き


再びエストニアの首都タリンに戻って来ました。
とは言え、市街地に入るのはこれが初めてです。初めて訪れるタリンの街、鉄道駅の前には小高い丘の上の城があり、列車で到着した旅人を出迎えてくれます。


雨がそぼ降る中、今夜泊まるホテルを目指し歩き始めます。
欧州では少しぐらいの雨では誰も傘をさしません。僕も現地の習慣に習い、濡れながら歩きます。
小雨で肌が濡れると、まるで雨粒に溶けたエストニアの大地とバルト海が僕の中に染み込んでくるような気がします。


今夜のホテルは城壁に囲まれた旧市街の中にあります。
駅を見下ろす古城の脇、この門をくぐると、世界遺産にも登録されているタリン旧市街です。

旧市街の中は石畳の小路が迷路のように入り組んでいるのですが、
事前にGoogleマップのストリートビューで道順と景色を頭に叩き込んでおいたので、迷わずホテルに行き着くことが出来ました。

もっとも、旧市街の築数百年は経っていると思われる屋敷を使ったクラシックホテルは館内も迷路のように入り組んでいて、
レセプションを見つけるのに随分迷いましたが…
(宿泊中に、僕以外にもホテル内で迷子になっている人を何回も見かけました。さすがに分かり難すぎるでしょ…(笑))

ホテルに無事にチェックインしましたが、外がまだ明るいうちにまた出かけます。
実はタリンには今夜一晩だけの滞在。明日は朝から船に乗ってバルト海を渡り、隣国フィンランドの首都ヘルシンキへと向かいます。
ヘルシンキ行きの船は旧市街から少し離れた港のターミナルから出航するので、事前に港までの道順を確かめておきたいと思ったのです。


まだ小雨は降り続いていますが、構わず濡れて歩きます。雨に濡れて美しく光る石畳の道を歩いていくと、行く手に城門が現れます。


この城門をくぐると、もう旧市街の外です。
タリン旧市街は全長が南北に1キロ程度しかない、小さな区画なのです。


今くぐった城門はタリン旧市街の港側の出入り口で、その名も沿岸大門(スール・ランナ門)。
沿岸大門の隣にはずんぐりした円筒形の建物がありますが、これはかつて最北のハンザ同盟都市としてバルト海に君臨していた交易都市タリンを海からの脅威から防御するべく14世紀初めに建てられた要塞の砲塔です。

その後、この地域一帯が帝政ロシアに支配されるようになると砲塔は不要となり、いつしか監獄として使われるようになってからは「太っちょマルガレータの塔」と呼ばれるようになったとのことですが、“マルガレータ”とは一体誰のことなのかについては諸説あり、真相は今ではもうわからないとか。
ちなみに「太っちょマルガレータの塔」は現在は監獄ではなくエストニア海洋博物館として使われています。


沿岸大門を出てしばらく歩くと、トラムが走る大通りに出ました。
旧市街をバックに走る青いトラムは絵になる風景ですね。これで晴れていれば最高だったんだがなぁ…


旧市街から徒歩で30分ほどで、タリン港に着きました。明日はこのDターミナルから、ヘルシンキに向けて出発します。
雨のタリン旧市街と一晩でお別れなのは心残りですが…
でも大丈夫。明後日にはまたタリンに戻ってきますから!(我ながら、何とも忙しない日程の旅だなぁ~(笑))

#014:タリン→ヘルシンキ 豪華フェリーでバルト海ショートクルーズに続く

2013初夏・北欧バルト海紀行 #012:タルトゥ→タリン ソ連製の列車で行く、エストニア鉄道の旅

2013-05-25 | 鉄道

#011:エストニア・タルトゥ街歩き 文化首都タルトゥ、大学のある街からの続き

タルトゥの街に別れを告げ、街外れの鉄道駅へと向かいます。


駅へと続く道沿いで見かけた、くすんだ灰色の建物。何となく陰気で薄気味悪い感じがしませんか?
実はこの建物、その名も「灰色の家」と呼ばれて長年タルトゥの人々から恐れられた、
ソ連邦時代のKGB(カーゲーべー:ソ連国家保安委員会)本部が入っていたビルなのです。

この国がエストニア・ソビエト社会主義共和国としてソ連に支配されていた時代、タルトゥにはソ連空軍の基地が置かれ、街全体が閉鎖されて厳重な監視体制下にありました。エストニアの文化首都にも、恐怖と苦難の時代があったのです。
閉鎖都市タルトゥの市民を監視して政治犯を弾圧したソ連の情報部・秘密警察の本拠地だった灰色のビルは現在、その名もKGB監獄博物館としてエストニアの暗黒時代の恐怖の歴史を伝え続けています…
監獄博物館、恐いけどちょっと見てみたい…
この次にタルトゥに来た時は、思い切って行ってみることにしましょう。

監獄博物館を通り過ぎて、昨日も歩いた道を進み、再びタルトゥ駅にやって来ました。



これから乗るのは、17:14発のタリン行き列車。昨日見送った列車より1本早い時間の列車です。

窓口でタリンまでの乗車券を買おうとすると、座って編み物をしていたおばちゃんはどうやら駅員ではなくてキオスクの売り子さんだったようで、
「きっぷは列車の中か、自動販売機で買ってね。自動販売機でクレジットカードで買うと、10%安く買えるからそうしなさい」と流暢な英語で教えてくれます。

そして、例によってIT立国“eストニア”らしく、きっぷの自動販売機は日本のJR等の券売機顔負けの高機能なもの。
オンラインでシートマップを見ながら座席指定まで出来てしまいます。
タルトゥからタリンまで1等車利用で13ユーロ、自販機割引で11.7ユーロでした。高速バスだと10.8ユーロでしたから、少しだけ列車の方が割高になりますね。
もっとも、2等車なら9ユーロ(自販機割引で8.1ユーロ)ですから列車の方が安くなります。


無事に割引きっぷも買えたので、おばちゃんにお礼を言ってプラットホームに出ます。


プラットホームに出た途端、目の前をタンク車を連ねた貨物列車がかなりの高速で通過。
いきなりやって来たので後追い写真しか撮れませんでしたが、数十両ものタンク車の長大編成に日本のJR貨物EH500型機関車のような2車体連結の大型ディーゼル機関車が先頭に立ち牽引する、実に立派なタンカー列車です。
エストニアの鉄道は旧ソ連圏規格の1520mmの広軌なので列車の車体も大きく、迫力があります。


そしてこれが、僕がこれから乗車する首都タリン行き列車。
昨日見送った列車と同じ、ラトビアの鉄道工場で作られた旧ソ連製の車輌が使われています。
同じソ連の遺産とは言え、恐ろしい「灰色の家」とは違って今でもエストニアの人々のために頑張る頼もしいソ連製の列車です。

早速乗り込んで、1等車の車内を見てみましょう。



これが僕の乗る1等車の車内。テーブルを挟んで向かい合わせの2人がけ座席が並んでいます。
座席は一見リクライニングシートのようですが固定式です。枕カバーではなく、座席全体をカバーで覆っているのが特徴的ですね。


1等車の車内にはビュッフェのカウンターもあります。


僕の席には、「予約席」の札とビュッフェのメニュー表が用意されていました。
ついさっき駅の自動券売機で座席指定してきっぷを発行したばかりなのに、仕事が素早いですね。きっとモバイル端末等で座席指定の状況を逐一チェックしていると思われます。
さすが“eストニア”!


一方こちらは2等車の車内。
基本的には1等車とあまり変わらない構造ですが、向かい合わせになっている区画が限られていて、座席も簡素で少しくたびれた感じがしますね。
ちなみに1等車は全席指定ですが2等車は自由席です。


そしてこれが、先頭車のエンジン搭載室の隣にある半車の客室。
この車輌も2等車扱いだと思うのですが、座席は昔の病院の待合室のようなビニール張りのベンチシートで随分と居住性が劣ります。
いわゆる「ハズレ席」で、通常はここに好き好んで座る人は居ないでしょう
(エンジン音を堪能したい鉄道ファンは別ですが…轟々たるエンジン音が荘重なオーケストラの演奏や妙なるオペラのアリアに聴こえるという“音鉄”なる人種もいますからね。そう言えば、エストニアには鉄道趣味は存在するのかな?)

車内を一通り見て廻りましたが、まだ列車は発車しません。
タルトゥ近郊の町からやって来る区間運行の対向列車が到着するのを待ってからの出発のようです。
先頭車の横のプラットホームに立って対向列車の到着を待ちます。

やって来ました!









短い編成の対向列車が隣のプラットホームにすべり込んだら、我がタリン行き列車は出発準備完了です。
定刻にタルトゥ駅を後にして発車します。




タルトゥ駅の構内には広大な貨物操車場があり、さっき通過していったタンカー貨物列車と似た編成の貨物列車が待機中。
青い車体の連結式機関車はどうやらF級(動輪6軸)を2つ連ねた12軸、L級!日本式に言うと「DL500型」といったところでしょうか。とんでもない超大型マンモス機関車です。

タルトゥを出発した列車は、平原と田園と森林のエストニアの大地を駆け抜けていきます。



大きな川も渡ります。タルトゥの街を流れていたエマユギ川でしょうか。
それにしても雪解け水のせいか水量が豊かですね。岸の木々は水没してしまっているような…


エストニアは平原の国です。山は見当たらず、なだらかな土地に森が広がる風景がどこまでも続いています。
美しいのですが単調な景色の車窓です。

列車は平坦な路線を時速100キロ程の案外速いスピードで走ります。
かなり使い込まれた古い車輌ですが、さすがはソ連製。まるで戦車のように頑丈に造られていて老体での高速走行も問題ないようです。エンジンが先頭車にしか搭載されていないおかげで走行音も静かで、車内は快適です。

1等車にはビュッフェがあるので、どんなものを売っているのかメニュー表を見てみましょう。

サンドイッチのセットが3ユーロ、コーヒーは0.7ユーロ…
物価が安いエストニアならではのお手頃価格ですね!日本円だと90円程度で買えるコーヒーを飲んでくつろぐことにしましょう。


単品の食事メニューもありますが、こちらもほとんどのメニューが2ユーロ以下です。

1等車の乗客にはスナックのサービスもあります。



女性車掌さんが手かごで配っていたのは、鉄道会社オリジナルのパッケージに入った小さなチョコレートでした。

列車は時々、小さな街の駅に停車しながら首都タリンを目指します。


エストニアにはソ連から独立した後も多数のロシア系住民が住んでいるせいか、ロシア正教会の寺院もよく見かけます。


途中駅の構内に、蒸気機関車が静態保存されていました。
動輪が5軸の、日本のデゴイチ(D51)より一回り以上大きな貨物用機関車です。
かつてはソ連邦のバルト海沿岸地方を結ぶ貨物列車を牽引して大活躍したのでしょうね。

タリンが近付くにつれて、空模様が怪しくなり、
一昨日泊まった空港ホテルのすぐ裏にあるタリン郊外の駅に到着する頃には小雨が降り始めました。

タルトゥを出発してから2時間と少し。
午後7時半に、列車はほぼ定刻通りにタリン駅に到着しました。




タリン駅には、電化されている近郊線を走る電車の姿もあります。


タリン駅と列車たちをじっくり見たかったのですが、段々と雨脚が強くなってきました。
早々に駅を出て、今夜泊まるホテルに向かうことにします。


#013:タリン旧市街、雨の夕暮れに続く

2013初夏・北欧バルト海紀行 #011:エストニア・タルトゥ街歩き 文化首都タルトゥ、大学のある街

2013-05-24 | 旅行
Tartu raekoda/Tartu Town Hall

#010:エストニア・タルトゥ街歩き たそがれ時の川沿いの散歩道からの続き

2013年4月29日

タルトゥでの一夜が明けました。今日も群青の空が広がるいい天気です。


ホテルの部屋はシティビューなので、月曜日の朝を迎えたタルトゥの市街地が見渡せます。
窓の下には新市街の大通りが通っているのですが、ホテルの向かいは公園になっていてとても開放感があります。
この公園の向こうがタルトゥ旧市街です。今日はホテルをチェックアウトしたらフロントに荷物を預けて、夕方の列車の時間まで旧市街を中心に街歩きを楽しむことにしましょう。

先ず向かった先は、昨夜もちょっとだけ眺めたラエコヤ広場の奥に建つタルトゥ市庁舎


この街が帝政ロシアに支配されていた18世紀末、1782年から89年にかけて建てられたネオクラシック様式の建物で、ロココやバロックの手法も取り入れられているそうです。ピンク色の壁が可愛らしいですね!
ちなみに現在も現役のタルトゥ市庁舎として使用されています。


市庁舎前の噴水には恋愛映画のワンシーンのような「傘をさして抱き合う恋人たちの像」も立っていて、
一人旅の独身男の旅人を大いに妬かせてくれます(笑)


市庁舎から見渡すラエコヤ広場。
1775年に街を焼き尽くす大火災がタルトゥを襲った後、同じ高さに揃えられた建物が並ぶ美しい姿に整備されたそうです。
この広場がタルトゥ旧市街の中心で、市庁舎の背後にそびえる丘陵(トーメの丘)とエマユギ川の畔とをつないで細長く伸びています。

ちょっとラエコヤ広場のカフェでケーキでも食べたい気もしますが、街歩きを続けましょう。
市庁舎から北側に伸びる横丁を歩くこと暫し。



赤レンガを積み上げた立派なゴシック教会が建っています。ヤーニ教会(聖ヨハネ教会)です。
14世紀の創建で、当時のタルトゥ市民をモデルにしたとも伝えられるテラコッタ製の人形が外壁の至る所に飾られているのが特徴だそうですが、現在は外壁に飾られているテラコッタ人形はレプリカに取り替えられていて、オリジナルの人形はバロック様式の礼拝堂の内部に保存されているとのこと。
礼拝堂に入ってみたかったのですが、残念ながら扉は閉じられて施錠されていました。

ヤーニ教会から、再び市庁舎の方に戻る道を歩いて行きます。





突如、ギリシャ神殿のような威風堂々たる建物が出現しました。
エストニアのみならず北欧バルト地方の最高学府である名門校、タルトゥ大学(ドイツ語でドルパット大学とも呼ばれています)の本館です。


タルトゥ大学は1632年、当時この地を治めていたスウェーデン王グスタフ2世アドルフによって設立されて以来、400年近くの歴史を誇ります。
タルトゥの街は、この大学と共に学園都市として歴史を歩み発展してきたのです。
大学はタルトゥの人々の誇りであり、「タリンがエストニアの政治経済の首都なら、大学のあるタルトゥは学術文化の首都だ」 と自負しているとか。

タルトゥ大学本館の裏手はすぐ、トーメの丘と呼ばれる丘陵になっています。
このトーメの丘を中心にして、タルトゥ旧市街の西側はタルトゥ大学の建物が並ぶ広大なキャンパスです。
昨日、タルトゥ科学館AHHAAで見たエストニア共和国初の人工衛星ESTCube-1も、自分たちの手での宇宙開発を夢見て頑張るタルトゥ大学の学生たちがここで日夜研究室に入り浸って、キューブサット衛星の開発作業に没頭して造り上げたのでしょうねきっと。


トーメの丘へと続く道を登って行くと、道の上に瀟洒な陸橋が架かっています。


これは天使の橋と呼ばれているそうで、19世紀に架けられ、当時のタルトゥ大学の学長に捧げられたとのこと。
学長さん、天使と呼ばれるほど学生に優しかったんでしょうか。或いはひねくれものの学生連中の皮肉かな?(笑)


せっかくなので、天使の橋を渡ってみましょうか。天使に会えるような、いい気分になれるのかな?


天使には会えませんでしたが、トーメの丘の麓から続く学生街を一望できるので確かに気持ちの良い眺めです。


反対側には、大学の各学部棟等が並ぶ典型的なキャンパスの風景が。

天使の橋から、さらに先へと進みましょう。



どうやら、トーメの丘の頂上まで来たようです。


トーメの丘の頂上には、エストニアゆかりの偉人たちの像が並んでいます。
数ある像の中でも存在感があったのが、こちらの決意に満ちたというか随分と厳しい表情をしている青年の像。
足元の案内板によるとKristjan Jaak Peterson、19世紀初頭の詩人で、若くして亡くなった人だとか。
彼が生前、思索しながらエストニアを放浪した時の姿を表現しているようです。想い悩み流離う若き詩人か…

トーメの丘の頂上には、大きな廃墟も建っています。



タルトゥ大聖堂です。
15世紀の末に建てられたゴシック様式の大聖堂だったのですが、1520年代にこの地に到達した宗教改革の波によって破壊され、その後は朽ち果てるまま数百年間に渡り放置されました。
現在、荘厳なゴシック大聖堂だった頃の面影は高くそびえたレンガの壁が物語るのみ。
はるかな昔はステンドグラスが厳かな光を通していたであろう窓からは、明るい青空が広がっています。

そろそろ、トーメの丘を降りましょう。
下り坂を進んでいくと…



また陸橋が架かっていますが、さっきの天使の橋と比べると薄黒くて何とも陰気な感じ。
これは悪魔の橋と呼ばれていて、20世紀初頭に架けられ当時の帝政ロシアの皇帝に捧げられています。
これはわかりやすいですね。祖国エストニアを支配していた憎きロシア皇帝をそのまま悪魔呼ばわりしていますから(笑)

悪魔の橋を渡ってしばらく行くと、丘陵の中腹に塔を持った印象的な建物が見えてきました。


タルトゥ大学付属の天文台です。
1810年に建てられ、二重星の観測で知られる天文学者フリードリッヒ・フォン・シュトルーベが勤務していたそうです。
現在は新しい天文台が建てられているので、この旧天文台は資料館になっています。
シュトルーベ先生の時代の古い観測機器や望遠鏡があるとのことで、見てみたかったのですが、月曜日だったせいか門扉が締まっていました。
…残念!

旧市街とトーメの丘を一周りして、麓の新市街に戻って来ました。
小さな街タルトゥの、小さな旧市街散策。
ほんの数時間もあれば一通り見て廻れますが、意外と見どころがたくさんあって興味深く、楽しい街歩きでした!

駅に向かうまでもう少し時間がありそうだったので、タルトゥ科学館AHHAAの裏手のエマユギ川沿いにあった市場を覗いてみました。


花や食料品から衣料まで、様々な日用品が売られています。
すぐ近くに大きなショッピングモールもあるのですが、昔ながらのスタイルの市場に買い物に来るお客さんも結構いるみたいです。
「旅先では市場を見れば、その街がわかる」 が僕の旅のモットーですが、タルトゥは昼下がりにのんびり花屋さんに買い物に来る人たちが住んでいる素敵な街、ということで決まりのようですね。

さあ、そろそろ駅に行きましょうか。

#012:タルトゥ→タリン ソ連製の列車で行く、エストニア鉄道の旅に続く

おまけ画像


天使の橋の近くの、学生街の音楽教室の前を歩いていたふさふさタルトゥ猫。
音楽教室から出てきた、バイオリンか何かのケースを背負った小学生くらいの子と一緒に追いかけたのですが、空き地に逃げられてしまった。残念…

でも、エマユギ川に架かる橋の欄干に猫がいた…

…っていうか、エストニアにもこの手の、やたら作り込まれたAA(アスキーアート)があるのねやっぱり(笑)

タルトゥでは街を上げて公共アート大会のような催しをやっているらしく、橋の欄干をはじめ道端の至る所にちょっと洒落た落書き風アートが描き込まれ、そのまま展示されていました。


中にはこんな芸術的な作品も。
こういう落書きなら大歓迎ですよね!

2013初夏・北欧バルト海紀行 #010:エストニア・タルトゥ街歩き たそがれ時の川沿いの散歩道

2013-05-23 | 旅行

#009:エストニア・タルトゥ街歩き 街外れの鉄道駅を見に行こうからの続き

タルトゥ鉄道駅から、街の中心部へと戻って来ました。
もう午後9時ちかくですが、夏至間近の高緯度帯の太陽はまだ沈みきりません。
タルトゥの街は美しいたそがれ色に包まれています。

ホテルに帰る前に、もう少しだけ夕暮れの街を散歩していきましょう。



タルトゥの市街地の東側を流れるエマユギ川。
雪解け水のせいか水量が多いですが流れは緩やかで、水面が鏡のように岸辺の並木道と暮れていく空を映し出していました。


エマユギ川の橋の上から、タルトゥ科学館AHHAAのある新市街方面を眺めます。
ガラス張りのモダンなオフィスビルが、タルトゥの街の新しいシンボルのようです。エストニア第二の都市らしい、近代的な都市景観です。


一方こちらは、タルトゥの歴史と伝統を感じさせる旧市街。
エマユギ川の畔から丘陵地に向かって細長く伸びるラエコヤ広場です。広場の奥には市庁舎の建物が見えています。
今日はもう店じまいしていますが、昼間はオープンテラスのカフェなども並ぶ賑やかな場所のようです。




エマユギ川の畔の並木道を歩いていくうちにすっかり日が沈んで、辺りは静かな夕闇色に…


やがて街はブルーモーメントの中に沈んでいきます。


街灯の明かりに浮かび上がるラエコヤ広場を横切って、ホテルに帰るとしましょう。
今日は初めて訪れたタルトゥの街で、本当に色々なことがありました。

明日はもう、タルトゥを離れます。
でも、列車が発車する夕方まで丸一日時間があるので、もう一度ゆっくりタルトゥの街を見て廻りたいと思います。

#011:エストニア・タルトゥ街歩き 文化首都タルトゥ、大学のある街に続く

おまけ画像


散歩の途中で、
エマユギ川沿いで見つけた深夜営業のスーパーマーケットで買って帰ったエストニアの飲み物各種。
向かって左から、オーガニックが売り(らしい)のヨーグルトと、謎の茶色い飲料水、そして水です。

ヨーグルトはとても美味しかった!これはまた食べたい。
水は、僕はいつも地元の銘柄で一番安いものを買うようにしているのですが、このラベルに灯台の絵が描かれたものは苦味を感じる程のものすごい硬水で、正直辟易しました…
そして謎の茶色ジュース…ラベルにKALIとありますが、こりゃ一体何なんですかね?(笑)
恐らく麦芽を発酵させた系統の飲み物だと思うのですが、発泡性ではなく醸造系の妙な甘みが癖になる、まぁ要するに得体の知れない味わいでした。
棚一段にズラ~っと同じ商品が並んでいたので、多分かなり売れ筋のエストニアの国民的飲み物だと思うのですが…
どなたかKALIについてご存じの方がおられたら、詳しく教えて下さい!

2013初夏・北欧バルト海紀行 #009:エストニア・タルトゥ街歩き 街外れの鉄道駅を見に行こう

2013-05-23 | 鉄道

#008:MEGASTAR in AHHAA -世界初!360度全天球プラネタリウム-からの続き

午後7時。
Science Centre AHHAA(タルトゥ科学館「アハー」)は閉館しましたが、夏至間近のこの季節は緯度の高い北欧バルト地方ではまだ日差しも高く、明るい青空が広がっています。
このままホテルに帰るのは勿体無いので、ちょっとタルトゥの街歩きを楽しむことにしましょう。

タルトゥはエストニア第二の都市ですが、グーグルマップ等で見ると街並みはとてもコンパクトにまとまっていることがわかります。徒歩でも半日もあれば一回り出来そうな、可愛らしい街です。
タルトゥの街の西側を鉄道路線が通っていて、西の街外れには駅もあります。

今日は首都タリンから高速バスでタルトゥにやって来ましたが、せっかく鉄道が通っているのだから明日は列車でタリンに戻るつもりです。
明日の列車への乗車を前に、ちょっとタルトゥの鉄道駅の様子を見に行くことにしましょう。

科学館AHHAAやバスターミナルやホテルのある、タルトゥ市街地中心部の賑やかな目抜き通りを西に向かい歩き出します。
10分も歩くと、周辺は静かな住宅地になりました。そのまま歩き続けると、前方に鉄道線路が見えてきます。


線路にそって右折し、さらに歩き続けます。
すると行く手に、何故かバッサリと切断された線路が…



全長100mほどで、両端が切り取られた状態の線路です。これは一体何なんでしょうか…
ひょっとしたら保存車輌を上に乗せて展示するつもりで準備しているのかも知れませんが、案内板も何も見当たらないので詳細は不明です。

謎の切り取られ線路からさらに進むと、行く手に給水塔らしき建築物がそびえ立っています。



レンガ造りの、高くてとても立派な円筒形の給水塔です。
今は使われている様子はありませんが、かつてはここに蒸気機関車の基地が存在したことを教えてくれる歴史の証人ですね。

給水塔からさらに先に進んだところに、タルトゥ鉄道駅の建屋がありました。



タルトゥ駅の駅前風景。
駅前広場から並木道が一直線に続いていて、かつては栄えていたのかもしれませんが、
今では街外れの住宅地のなかにポツンと取り残されたような印象のある寂れた佇まいです。


駅舎の入り口に掲示板があり、時刻表が貼り出されていました。
臨時列車の運行もあるようですが、基本的にタルトゥ駅に発着する列車は1日に数本程度。
早朝と夕方以降に、首都タリンへ向かう列車と、隣国ラトビアとの国境の町ヴァルガ行きの列車(恐らくヴァルガでラトビアの国内列車と接続している筈なので、たぶん国際連絡列車です)がそれぞれ2便ずつ設定されているのみです。
エストニア第二の都市の駅なのに、何とも寂しい限り…

でも、駅舎の中に入ってみたら驚きました!




見て下さい、この瀟洒で美しいホールを!
駅舎の外観も小振りながらも堂々としたものでしたが、屋内も最近改装して創建当時の姿に戻したのでしょうね、クラシカルで優美な素晴らしいインテリアです!
高い天井とシャンデリアが印象的な、いかにも古き良き時代の欧州の小都市の駅という清楚な雰囲気が漂っています。


だがしかし、そんなクラシカルな駅舎でもIT立国“eストニア”らしく、
列車の発着案内は運行状況や駅までの列車の接近距離情報までもがリアルタイムに更新される液晶大画面モニタ表示です。
ちなみにこの液晶モニタ、SONY製の「BRAVIA」でした。日本製品が使われているので、なおさら好印象(笑)




ホールの隣は待合室ですが、こちらもそのままバレエや室内楽のコンサートが開催出来そうな優雅な空間です。


待合室には簡単な資料展示があり、ミニ鉄道博物館になっていました。
(上の写真、ショーケースの中に展示された資料にコペルニクスらしき人物が描かれているけど、あれは一体何だったのかな?)


エストニアの鉄道の変遷を紹介するパネル展示。
タルトゥ駅の駅舎は帝政ロシア時代の19世紀末にこの地に鉄道が開通して建てられたものだそうです。
そう言われてみれば、何となく建築デザインがロシア風のような気もしますね。






硬券や常備券等各種きっぷ類と、往時の鉄道風物を描いた素朴な手描きスケッチ。


美しくて静かな駅のとても居心地のいい待合室なので、つい何時間でもぼんやりと過ごしてしまいそうになりますが、
窓の外のプラットホームが急に賑やかになりました。
どうやら数少ない列車が到着したようです。見に行きましょう!


プラットホームにすべり込んできた列車は、首都タリン発タルトゥ行きの午後便でした。
このまま約50分後には折り返し、タリン行きの本日最終列車となります。


プラットホームの先まで歩いて、先頭車の顔を見ます。
恐らくソビエト連邦時代にラトビアにあったソ連鉄道工場で共産圏内各地向けに大量に製造された車輌だと思われますが、前面非貫通で運転室は2枚窓の、日本の「湘南形」電車や国鉄型電気機関車に似たデザインです。
運転室の屋根上に、路線バスのような電光式の行先表示装置を載せているのがユニークですね。


タルトゥ駅には2面3線のプラットホームがあります。
列車をじっくり見るには相対側のホーム上からの方がいいので、地下通路を通って「2-3番のりば」へ移動。




ようやく傾きかけてきた初夏の高緯度の夕陽を受けてぎらりと輝く車体。
いかにもソ連製の車輌らしくいかつくて無骨なデザインですが、いぶし銀のような趣きを感じます。


ちなみにこの列車、ディーゼルエンジンを搭載した気動車なのですが、
エンジンを各車輌の床下ではなく先頭車の運転席側サイドの車体内に搭載しているという独特の設計になっています。
エンジンを床下に収まるようにコンパクト化することが技術的に不可能だったのか、或いは気候の厳しいソ連邦内の風土を踏破する為に敢えて強力な大型エンジンを搭載する設計となっているのか、その辺の事情は分かりませんが、まるでディーゼル機関車と気動車のハーフのような面白い列車なのです。


先頭車の運転席側だけを見ると、本当にディーゼル機関車と見分けがつきません。

物珍しいソ連製の列車を眺めているうちに、そろそろ本日の最終タリン行き列車の発車時刻となりました。


午後8時過ぎ、タリン行き最終列車が夕陽に照らされながらタルトゥ駅を出発。
最終列車を見送ったら、本日の営業を終えて静けさに包まれたタルトゥ駅を後に、僕も街へと帰ることにしましょうか。

…明日はタリン行きの列車に乗るために、またここへ来ますけどね。

#010:エストニア・タルトゥ街歩き たそがれ時の川沿いの散歩道に続く

夏のロケット2013~今年は3回、4機が宙(そら)へ!観測ロケット・こうのとり4号・そしてイプシロン

2013-05-21 | 宇宙
内之浦宇宙空間観測所M台地イプシロン射点からリフトオフするイプシロンロケット イメージ画像提供:JAXA


2013年夏季のロケット打ち上げ計画が本日、JAXAより発表されました。
今年の夏のロケットは凄いことになっています!なんと、
打ち上げは全3回、合計4機ものロケットが立て続けに宙(そら)へ旅立つのです!!

この空前のロケットラッシュの先陣を切るのは、
2013年度第一次観測ロケット実験として内之浦宇宙空間観測所KSセンターから打ち上げられる観測ロケットS-310-42号機S-520-27号機
7月20日の深夜23時以降に、なんと2機連続打上げで真夏の月夜の星空に相次いで翔び立ち、夏のロケットの季節の始まりを華々しく飾ってくれます!

2013年度第一次観測ロケット実験の実施について
(JAXA宇宙科学研究所トピックス 2013年5月21日)


続いて、8月4日には種子島宇宙センター大型ロケット発射場から宇宙行き重貨物列車が出発。
宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機(HTV4)を搭載したH-IIBロケット4号機の打ち上げです。
今回の「こうのとり4号」は、国際宇宙ステーション(ISS)の軌道の関係で早朝4時48分頃にリフトオフ!
南の島の、真夏の爽やかな夜明け空へと旅立っていくことでしょう。

H-IIBロケット4号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機(HTV4)の打上げについて
(JAXAプレスリリース 平成25年5月21日)

そして夏のロケットの季節の最後をしめくくるのが、遂に復活を果たす日本の固体燃料ロケット、イプシロン初号機!!
今回はイプシロンロケット試験機という扱いになるようですが、惑星分光観測衛星(SPRINT-A)を載せて
いきなり日本の宇宙科学の最先端に鮮やかに躍り出て、華麗なる復活劇を観せてくれることになりました!!

イプシロンロケット試験機には、先日行われた「イプシロンロケット試験機掲載応援メッセージ公募」で集まった5,812件の熱い想いを秘めたメッセージを入れ込んだ特別デザインが施されることになるそうですが、これはなんと、
往年の宇宙科学研究所の固体燃料ロケットの伝統のカラーリングである“赤の縦帯”を再現したものになるようです!!
(リンク先プレスリリース参照)

ペンシルロケットから脈々と受け継がれた世界最高峰の固体燃料ロケットの伝統と栄光とともに、
内之浦に昨年完成したばかりの糸川英夫先生の銅像に見守られ、
イプシロンは宙(そら)へと旅立ちます…!晩夏の内之浦に、衛星を載せた固体燃料ロケットが帰ってきます!!
イプシロンロケット試験機、平成25年8月22日午後1時半頃リフトオフ!!


イプシロンロケット試験機による惑星分光観測衛星(SPRINT-A)の打上げについて
(JAXAプレスリリース 平成25年5月21日)


…今年の夏は、近年稀に見る熱い熱い、そしてほとばしるようにたぎる情熱の季節になりそうですね。
僕も、すべてのロケットたちの旅立ちを見るつもりです。
早朝に出発するこうのとり4号はさすがに条件がハードですので熊本県南部の自宅から見送ることになるでしょうが、
内之浦からの旅立ちは現地に駆けつけます!

皆さん、この夏は内之浦の町でお会いしましょう!!

2013初夏・北欧バルト海紀行 #008:MEGASTAR in AHHAA -世界初!360度全天球プラネタリウム-

2013-05-19 | 博物館・美術館に行く

#007:Science Centre AHHAA -タルトゥ科学館「AHHAA」-からの続き

Science Centre AHHAA(タルトゥ科学館「アハー」)の建物を外から見ると、
ひときわ目を引くのが屋上に載った銀色の巨大な球体。

これこそ、世界初の360度全天球プラネタリウム の球体ドームです!

このドーム内には、日本のプラネタリウムクリエーター大平貴之氏の手掛けたスーパープラネタリウム「MEGASTAR」が据え付けられており、直径9.3mのボール状の球体内部全周に渡り実に数百万個もの星々を映し出します。
従来の常識を超えたスペックを持つ世界最強のプラネタリウム投影機が、これまた世界初の試みである球体ドームと融合して、プラネタリウムの常識を打ち砕く全く新しい姿に進化したのです!!

一切の常識にとらわれず何も恐れず、ただひたすら最先端を突き進む日本のプラネタリウム職人たちの熱い魂と、
新しい歴史を歩み始めた若い祖国の明日の為にも、誰もが科学する心の素晴らしさを感じて欲しいと願ったエストニアの人々の情熱が出会い、奇跡の融合を果たして生まれた、まだ誰も見たことのない未来の人工宇宙空間…

それがタルトゥ科学館「AHHAA」の360度全天球プラネタリウムです。

さぁ、投影開始時刻の午後4時5分前です。
誰も見たことがない人工の宇宙を観に行きましょう!



全天球プラネタリウムはAHHAAの最上階、4階にあります。
専用エレベーターで4階まで昇ると、そこにはまだ見ぬ宇宙空間へと続く白い通路と入口のドアが…

ドアの前で待つこと暫し。
午後4時きっかりにAHHAAのプラネタリアン氏が現れ、ドーム内の球体の宇宙空間へと招き入れてくれました。

これが、エストニア共和国タルトゥに出現した直径9.3mの人工宇宙、世界初の360度全天球プラネタリウムの内部です!!

ドームの中に一歩足を踏み入れた瞬間、「あっ!僕、浮いてる!!」 と感じました。
直径9.3mの球状空間の中に円周部から張り出すように透明な強化ガラスのフロアがあり、足下が透けて見えるのでまるで自分が球体の中に浮遊しているような感覚になるのです。


そしてマジョーラカラーの金色に輝くこれが、球体の中心に鎮座する全天球プラネタリウムの中枢。
大平技研(Ohira Tech Ltd)製の世界最高性能のプラネタリウム投影機、500万個の星空を映し出すスーパープラネタリウム
MEGASTAR-IIB(メガスター・ツー・ビー)AHHAA Science Centerカスタマイズ仕様

AHHAA全天球プラネタリウムではさらに、このMEGASTAR-IIBの下部に
220万個の星を映し出す能力を持つMEGASTAR-ZERO(メガスター・ゼロ)も設置されており、
2つのMEGASTARの合わせ技で球状プラネタリウムのドーム全球に星空を映し出します!

それに加えて、デジタル全天周映像を投影するUNIVIEW(ユニビュー)も備えられており、
高精細なデジタル映像を球体の全方位に映し出すことも出来るという究極のシステムが構築されているのです!


観客たちが席につくと、プラネタリアン氏がMEGASTARの前に立ち全天球プラネタリウムの解説をしてくれます。
球体ドーム内のフロアにはゆったりとした安楽椅子のような座席が14席だけ設置されており、スペースにとても余裕があるので、まるで私設の天文台の応接室に通されたような気分でリラックスしてプラネタリウムを楽しむことができます。
(それにしても、定員が僅か14名ではすぐに満席になってしまう訳ですよね。
必ず観たい場合は事前の予約を勧める記述がAHHAAの公式サイトにもありましたが、納得。)


挨拶して観客の顔を見渡したプラネタリアン氏、僕の顔を見ると
「今日はMEGASTARを観に外国のお客さんが来ているので、解説はエストニア語ではなく英語でやりましょうか… 
他のお客さん、よろしいですか?」
と断りを入れてくれました。なんて親切な心遣い!
プラネタリアンさん、他の観客の皆さん、僕への思いやりに感謝です!!

そして始まった、360度全天球プラネタリウムの世界。
いきなり、14席の座席はエストニア共和国上空の地球周回軌道上に投入されます。
UNIVIEW(ユニビュー)がISS(国際宇宙ステーション)からの実写映像と見紛うばかりの超高精細画像で高度450キロから見下ろす地球を映し出したのです。
観客からも思わずどよめきと歓声が入り混じった声があがります。
そして直径9.3mのドームは無限の奥行きを持つ宇宙空間へと変貌し、AHHAAは地球を離れ宇宙の大規模構造を巡る旅へと出るのです…

上映プログラム後半、いよいよ2つのMEGASTARに光が入り、数百万個の星空の全球投影が始まります。
軽いモーター音と共に動き始めたMEGASTARから、人の目の限界を軽く超える程の凄まじい星々の洪水が溢れだし、視界が全て、星空となっていくのです…!!
「ああ、身体が星空に包まれていく…これが全天球プラネタリウムか!!」

気が付くと、僕の身体にも無数の星々が映し出されています。MEGASTARから放たれた星の光は全球ドーム内面のみならず、観客の身体までも星空へと同化させてしまうのです。
全天球プラネタリウムの観客は、自らも星空の一部となり、星々の光に包まれるひと時を過ごすのです…


午後6時。
二度目のプラネタリウム入室で、僕の顔を見たプラネタリアン氏は一瞬「おや?」という顔をしましたが、
僕が「やぁ、こんにちは…全天球プラネタリウムがあまりに素晴らしいんで、また観せて下さいね。ああ、もちろん今度は解説はEesti(エストニア語)でいいですよ」と挨拶すると笑顔で再びドーム内に迎え入れてくれました。
そしてMEGASTARが映し出す、おうし座のM45プレアデス星団を「日本では“すばる”と呼ばれる星々です」 と僕のために解説してくれたのです。

二度目の上映後、プラネタリアン氏に感謝を伝えに行くと、
「このMEGASTARプラネタリウムは我々の誇りです。日本から観に来てくれてありがとう!」
と投影コンソールを見せて下さいました。

2つのMEGASTARとUNIVIEWを操作するのに、随分シンプルなシステム構成ですね。
こんな小さな机から、あの大宇宙を操作していたなんて驚きです。


「今日は本当に感動しました。ありがとう!また全天球プラネタリウムを観に来たいです。さようなら!」

エストニア共和国タルトゥに生まれた、奇跡の宇宙。
タルトゥ科学館「AHHAA」の360度全天球プラネタリウムで、僕もまた星空の一部になりました!!

そして、こんな素晴らしい宇宙を生み出したエストニアという国の文化と人々が、僕は好きになったのです。

#009:エストニア・タルトゥ街歩き 街外れの鉄道駅を見に行こうに続く

2013初夏・北欧バルト海紀行 #007:Science Centre AHHAA -タルトゥ科学館「AHHAA」-

2013-05-18 | 博物館・美術館に行く

#006:タリン→タルトゥ ハイテクITバスで行く、エストニア縦断快適バス旅行からの続き

タリンからの高速バスが到着したバスターミナルはタルトゥの新市街の中心部にあり、
周辺には巨大なショッピングモールやホテル、オフィスビル等が林立しています。


僕が今夜泊まるホテルもバスターミナルのすぐ近くにあり、屋上に目立つネオン看板を立てていたのですぐに分かりました。
ホテルにチェックインして、部屋に荷物を置いたらすぐに出かけます。
行く先は、これまたバスターミナルのすぐ裏にある、近代的な建物。Science Centre AHHAA(タルトゥ科学館「アハー」)です!

エストニア国内で最大最新の科学教育施設であり、広く北欧・バルト三国地域全体からも注目を集めるこの科学館「AHHAA」、
科学することの素晴らしさを広く人々に伝えたいとの想いが結集した、数々の最先端かつユニークな展示を行なっています。
その目玉ともいうべき展示設備が、360度全天球プラネタリウム!
通常のプラネタリウムが半球状のお椀を伏せたようなドーム屋根を見上げるように星空やデジタル映像を映し出すのに対し、この「全天球プラネタリウム」は何と、ボールのように完全な球体の中に浮かぶように座席が設置されており、頭上のみならず足下まで星空や映像が投影されて観る者の周囲が完全に星空に包まれるというのです!!

まるで宇宙空間に浮かんでいるような不思議な感覚を体感出来るというこの「全天球プラネタリウム」を創ったのは、
スーパープラネタリウム「MEGASTAR」シリーズの開発者として知られる日本人プラネタリウムクリエーター、大平貴之氏
AHHAAは、ヨーロッパで最初のMEGASTAR常設館であり、そして世界初の全球スクリーンを持つ全く新しいスタイルのプラネタリウムとして2011年5月にデビューした、世界中のプラネタリウム関係者とプラネタリウム愛好者とそして宇宙ファンから熱い注目を集める場所なのです!
僕も、この「全天球プラネタリウム」を観たくて、タルトゥまでやって来たのです。

憧れの「全天球プラネタリウム」を体感すべく、AHHAAのチケット売り場に並んで片言英語でプラネタリウムのチケットを欲しい旨をスタッフに伝えます。すると、
「プラネタリウムは1時間に1回上映してるけど、次の上映回から2回続けて満席なので、3時間後の午後4時からの回になるけどそれでもいい?」
とのこと。勿論OKです。3時間待つ位、どうってことありません。ついでに、ここまでやって来てたった1回しか観ないのは勿体無いので
「No problem!…あの、午後4時の後にもう1回プラネタリウムを観たいんだけど、いいかな?」
と聞いてみると、一瞬「えっ!?」という表情の後で
「あのね…プラネタリウムは毎回同じ内容のプログラムを上映するのよ。それに、解説はエストニア語だから、日本人のあなたに解説内容が理解できるかしら?」
というようなことを言われます。まぁ、ごもっともな反応です。
しかし、ここで喰い下がる訳にはいきません。僕がエストニア語の解説とは無関係に、とにかく「全天球プラネタリウム」を味わいたくて地球の裏からここまで来たんだということを伝えなくてはなりません。
「OK、OK…それもNo problem!僕は…プラネタリウムが大好きなんだ!Planetarium loverなんだ!Mr.オーヒラのMEGASTARが何度も観たくてたまらないんだ!だから、チケットを2回分売ってくれないかな。頼むよ…」
ここまで言うと、さすがにAHHAAのスタッフ氏も僕の熱意を理解したというか半分呆れたようで、苦笑しながら
「はい、午後4時の次は午後6時からの回が空いてるわ。科学館は午後7時で閉まるけど、館内の展示も観る?」
とチケットを発券してくれました。やれやれ(笑)

AHHAAのプラネタリウム観覧料は1回4ユーロ、展示施設の入館料は12ユーロ。
タリンからタルトゥまで走行距離200キロ弱の高速バスのチケット代が10ユーロちょっとでしたので、それと比較しても随分割高です。
総じて物価が安いというエストニアにしてはかなり高額な料金の筈ですが、それでもAHHAAは日曜日の午後ということもあってか家族連れを中心に大賑わいです。この国には科学する心を大切にする家族が多いのかと思うと嬉しくなりますね!
僕も「全天球プラネタリウム」の上映が始まるまで、AHHAAの展示を見て回ることにしましょう。



AHHAAテクノロジー分野展示ホール全景。

AHHAAの展示はとにかくユニーク、そしてお洒落で上品!
大人も子どもも、すべての人が科学を楽しめるよう工夫をこらされた体験型の展示が並ぶゆったりとしたホールを、リラックスして見て回ることが出来ます。


例えば、ネイチャーホールのひよこの展示。
何と、孵化寸前の鶏の卵を孵卵器機能を持つケース内に並べて、ひよこが実際に殻を破って産まれてくる様子をライブで目の前で見ることが出来るのです!
ケースの中には、さっき産まれたばかりらしいひよこちゃんが歩き回っていますよ!
よく見ると、今まさに中からひよこがくちばしで突いているらしきヒビ割れの入った卵も一つあります。しばらく見ていましたが、ひよこが出てくるにはまだ時間がかかりそうでした。
(あの卵のひよこちゃん、その後無事に産まれたかな?)


いかにも博物館らしい、正統派の(?)動物骨格標本の展示もあります。
その隣は、小さな水族館のアクアリウム。


こちらは、近年は日本の科学館でもよく見かけるようになった科学実験ショー。
お姉さん二人組(タルトゥ市内にある名門校・タルトゥ大学の学生さんアルバイトかな?)が液体の対流や化学反応や燃焼などを楽しく掛け合いながら実演解説中で、子どもたちの観客に終始大受け。
最後にエタノールか何かを気化させて風船に詰めて爆発燃焼させるという実験で締め括りましたが、ぼんやり見ていた僕に観客のお母さんが「あなた、何やってるの!早く耳を塞いで!!」というようなことを叫ぶので反射的に指を耳に突っ込むと、直後に部屋が振動する程の大音響が!!
耳を塞いでいなかったら、マジでヤバイところだった!お母さんThank You…
っていうか、本格的過ぎるぞAHHAAの大科学実験!!

エキシビジョンホールでは、宇宙関連の企画展を開催中でした。



お馴染みの、米ソ宇宙開発競争史。

企画展の展示でひときわ目を引いたのが、こちらの宇宙機の実機展示。



解説パネルには「スプートニク “コスモス2083”」とあります。
コスモス2083とは1990年に行われたソビエト連邦(当時)の人工衛星打ち上げミッションですが、どうやらそのミッションで使用された地球帰還カプセルのようですね。
しかしこのコスモス2083ミッション、どうやらその実態は軍事的な匂いの漂う偵察衛星だったようです。
有人宇宙船の「ボストーク」を改造した「Zenit-8」に宇宙飛行士の代わりにカメラとフィルムを載せて打ち上げ、地球周回軌道上で偵察活動を行った後に帰還カプセルが大気圏再突入して、撮影済みのフィルムとカメラ機材一式を丸ごと地上で回収していたということなのです。
球形のカプセルの左側に見える丸い穴が、偵察カメラのレンズを通す開口部らしい…。こんな不気味な目玉を持ったボールが宇宙空間から敵国を覗き見していたなんて、想像するだに薄気味悪いですね!
なかなかにヤバイ代物ですが、こんなブツが科学館で大っぴらに展示されるのも時代の流れ、地球があの頃よりは平和になったということでしょうか(しかもここは、コスモス2083が宇宙に飛んだ翌年にソ連から独立を勝ち取ったエストニアですからね…)。
※“コスモス2083”ミッションの詳細事項とZenit-8等の宇宙船についての情報は、旧ソ連とロシア関連の宇宙機に詳しいTwitter宇宙クラスタのけいけいさん(@Kei_Kei_Twi)に教えて頂きました。ありがとうございます)

宇宙関連の展示で、興味深いものがもう一つありました。




エストニア共和国初の人工衛星、ESTCube-1です!これは地上試験用の試作モデルでしょうか。

AHHAAの地元・タルトゥ大学とタリン工科大学とエストニア航空アカデミーの共同プロジェクトで、フィンランドとドイツの研究機関の支援を受けて2008年から開始されたものです。
大学が主体となって10cm角の超小型衛星を他の衛星とともにロケットに相乗りさせて打ち上げるいわゆる「キューブサット」なのですが、このESTCube-1はとんでもない冒険的ミッションを目指しています。
何と「宇宙空間でテザー(ひも状の物体)を展開し、これに太陽風を受けて加速し、宇宙ヨットとなる!」
そう!「はやぶさ」の弟、我らのイカ坊こと、日本の小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」と同じように太陽からの力を帆で受けて宇宙空間を航行する宇宙ヨットを目指しているのです!!
IKAROS(イカロス)が太陽の光による光子加速を行うのに対し、ESTCube-1は太陽からの帯電粒子や太陽風をセイルに受けて加速するので基本的な加速方式は異なるのですが、太陽の力を帆に受け進む宇宙ヨットである点ではどちらも同じ。ESTCube-1はIKAROS(イカロス)の小さな弟のようで、何とも可愛らしく親しみが持てるではありませんか!



ESTCube-1はこの翌週、日本時間の5月7日に欧州宇宙機関(ESA)のVegaロケット2号機(くしくも、Vegaロケットは「はやぶさ2」の打ち上げ用ロケットとして使用することが検討されていた機体でもあります)で無事に打ち上げられ、宇宙へと旅立ちました。
日本の一宇宙ファンとして、宇宙ヨットESTCube-1の活躍とミッションの成功を心から祈っています。


AHHAA宇宙展の一画で見つけた、古典プラネタリウム“オルロイ”。
この美しい機械はやがて、時計と結びついてプラハやヨーロッパ各地の街角に時間と宇宙空間を表示し、
光学機械と結びついてドームの中に人工の星空を映し出しました。



そして今、オルロイはエストニアの文化都市タルトゥで9.3mの全球スクリーンを手に入れたスーパープラネタリウム「MEGASTAR」として、新たな姿に進化しました。
…そろそろ午後4時です。
「全天球プラネタリウム」に会いに行きましょう。


#008:MEGASTAR in AHHAA -世界初!360度全天球プラネタリウム-に続く

2013初夏・北欧バルト海紀行 #006:タリン→タルトゥ ハイテクITバスで行く、エストニア縦断快適バス旅行

2013-05-18 | 旅行
Tallinna lennujaam タリン空港・ターミナルビル


#005:夜のバルト海を越え、エストニアまで一っ飛びからの続き

2013年4月28日

エストニアでの最初の夜が明けました。
今日は、朝からバス旅行。首都タリンでは到着後一晩寝ただけで、すぐにエストニア第二の都市タルトゥに向かいます。


エストニアの北岸、バルト海のフィンランド湾に面した港街タリンから、南部のロシア国境にも程近いタルトゥまでおよそ200キロ弱、国土の小さなエストニア共和国をほぼ縦断する旅です。
早速、朝になったらタリンの鉄道駅へ…といきたいところですが、今回は残念ながら鉄道旅行ではありません。

エストニアではソ連からの独立後、国内の鉄道網が大幅に整理された結果として旅客列車の運行数が激減してしまい、首都と第二の都市を結ぶ「エストニアの東海道新幹線」とでも言うべき主要幹線でも都市間直通の旅客列車は1日3往復程度が運行されるのみ。しかも早朝と夜だけの運行で、日中は全く列車が走らないという悲惨な状況になっているのです。

その代わり、エストニアでは国内各都市を結ぶ高速バス路線が非常に発達しています。
また、IT産業が盛んで“eストニア” と称されることもある国らしくバスの利用環境もIT化が進んでいるようで、高速バスのチケットは各社共通のホームページからオンラインで簡単に予約が可能です。
僕も今回、予め日本でタリンからタルトゥまでのバスをeチケットでネット予約してきました。価格は税込みで片道10.8ユーロ、千数百円といったところ。
ところで、予約ページでバスの時刻を調べていたら、タリン発タルトゥ行きのバスは毎時2~3往復も運行していて、しかもわざわざバスターミナルまで行かなくても途中でタリン空港に立ち寄る便もあることが判明。
「なんて便利なんだ… スゴイぞeストニア!」

朝10時。ホテルから空港まで、昨夜歩いた道を再び戻って来ました。
空港のターミナルビル入り口には、タルトゥ行き高速バスのチケット自販機もありました。

一見、ゴミ箱みたいなデザインですが(笑)、クレジットカード対応でオンラインのタッチパネル式の優れものです。

僕は自宅のPCでプリントアウトしてきたeチケットの控えを持ってきているのですが、
試しに自販機に予約コードを打ち込んでみたらちゃんとチケットが発券されましたよ。

「おいおい、こりゃ日本より便利じゃないか… スゴすぎるぜeストニア!」

タリン空港のターミナルビル前には、バス停がいくつか並んでいます。

これはタリン市街方面行きの路線バス乗り場ですね。


これがタルトゥ方面行き乗り場です。英文で案内が書かれているのですぐに分かります。


タリン空港を経由するタルトゥ行きは、Sebeというバス会社が運行する路線です。
本当に運転本数が多いですね。しかも深夜バスまで走っているようです。こりゃあ、鉄道が衰退する訳だよなぁ…

午前10時半、定刻通りにタルトゥ行きのバスがやって来ました。

全身紫色というド派手な巨大バスです。


運転手さんにチケットを見せて、トランクを荷物スペースに収納してもらってさぁ出発!
タリン空港を出たら、タルトゥ市街地までノンストップで突っ走ります。
ビジネス客はあまり利用しないであろう日曜日の午前中の便のせいかタリン空港から乗った乗客は僕一人でしたが、車内は乗車率70~80%といったところで結構混んでいました。


タリン郊外の風景はこんな感じ。薄曇りの空の下、針葉樹の森が続いています。
それにタリンからタルトゥまでを結ぶ国道2号線は路線改良工事の真っ最中のようで、工事現場の中を走るような殺風景な車窓が連続します。

でも、車窓が味気無くてもエストニアの高速バスは車内サービスがスゴイ!

革張りシートの背もたれにはパーソナルモニタ完備です!
そしてこのモニタのメニューがこれまたスゴイ事になっています。
無料で映画や音楽が楽しめるのは勿論のこと、何とインターネット接続にも対応していてウェブサイト閲覧まで可能なのだ!


タッチパネルで「INTERNET」ボタンを押すと、閲覧可能なサイトのアイコンが表示されます。
ニュースサイトが一通り揃っていますね。


CNNのサイトもこの通り。
走行中のバス車内から誰でも無料で、ネットで世界の最新ニュースを見られるとは…
eストニアのバス恐るべし!

でも、一番便利で楽しいのはやっぱりこのサービスかな。

GPSでバスの現在位置を表示してくれる地図情報サービス。
これもカーナビの画面をそのまま表示している訳ではなく、バス専用のシステムが用意されているようで、
次のバス停までの距離や到着時間予想まで表示してしまう優れものです。
特にバス停周辺の地図情報が一目で解るので、初めての街を訪れる旅行者にとっては、バスを降りた後に取るべき行動も予め見極めることが出来て、実に便利です。
「参ったねこりゃ… 気合い入り過ぎだろ、どこまでやってくれるんだeストニア!!」

モニタのサービスの充実ぶりに感心することしきりですが、
バスがタルトゥに近付くにつれて天気もよくなってきました。





ヨーロッパらしい澄み切った群青の青空の下に、大平原と森と、雪解け水で潤う豊かな農地が広がります。


タリンから約2時間半。
お昼の零時半に、Sebe社の紫色の高速バスは無事タルトゥ市のバスターミナルに到着しました。
実に快適で、そしてエストニアのIT社会の発達ぶりに圧倒されるような気分も味わったバスの旅でした。

さて、今回の旅の最初の目的地であるタルトゥの街に到着しました。
これからすぐ、お目当ての「御本尊」が鎮座まします場所へと向かいましょう。僕はこれを観るために、遥々日本からエストニアの南の街までやって来たのですから…

#007:Science Centre AHHAA -タルトゥ科学館「AHHAA」-に続く

2013初夏・北欧バルト海紀行 #005:夜のバルト海を越え、エストニアまで一っ飛び

2013-05-15 | 旅行

#004:到着!アムステルダム・スキポール国際空港からの続き

午後8時過ぎ、アムステルダム・スキポール空港からエストニア共和国の首都タリン行き便の搭乗開始です。
Eチケットの記載ではKLMオランダ航空の便名になっていましたが、
エストニア共和国のフラッグ・キャリアであるエストニアン・エア(エストニア航空)の機体で運行されるコードシェア便でした。
エストニアの国旗と同じ青系のトリコロールカラーで、爽やかな機体色が印象的です。


エストニア航空の飛行機はボンバルディア社製のCRJ900、プライベートジェットのような小型機です。
スキポール空港の滑走路脇に沖止めで、乗客は順番にタラップをぞろぞろ登って乗り込みます。


真っ正面からエストニア航空機の鼻面を拝んでみました。
ちょっと「モグラ」か何かの小動物のようで、愛嬌がありますね。
これから北海を北上してバルト海を突っ切りエストニアまで、旅の最終区間をよろしく頼むよ!


KLMオランダ航空2831便ことエストニア航空0474便がスキポール空港を飛び立つと、
ようやく空の上にも遅い夕暮れがやって来ました。

アムステルダムからタリンまでのフライト時間は約2時間半、途中で中央ヨーロッパ時間から東ヨーロッパ時間に切り替わるので1時間の時差があり、タリン到着は深夜23時半になります。
タリンに着くまでに、機内食のスナックでちょっと腹ごしらえを…と思ったら何と、エストニア航空の機内ではエコノミークラスは機内食も飲み物も全て有料!
フラッグ・キャリアなのにサービスはLCC並みだなんて、ちょっとガッカリ…
窓の外も日が落ちて真っ暗になり、福岡からの長時間フライトの疲れも出てきたので暫し、ふて寝。


目が醒めると、既にタリンが近いのか、窓の外の眼下には小さな町灯りが連なっているのが見えます。
エストニアに来るのは初めてですが、何となくホッとするような穏やかで暖かい灯りです。

深夜のタリン空港は、小さなターミナルビル内に人影もなくて照明も薄暗く、お店も全て既に閉店していてひっそりしていました。
どうやらエストニア航空0474便はタリン空港に到着する本日の最終便だったようです。
福岡で預けたトランクを無事にピックアップして、夜中の空港ターミナルビルを出て見知らぬ国の夜道を歩きホテルへと向かいます。
夜霧が漂い、しんしんと冷え込む夜道を歩くのはさぞかし心細かろう…
と思いきや、実は事前にタリン空港周辺の道路をGoogleストリートビューで見てホテルまでの道順を把握してあるので、既に頭の中に土地勘が出来上がっているのです。
世界中の街の道を自宅に居ながらにして歩き回って確かめておくことが出来るなんて、なかなか素晴らしい21世紀になったものですねぇ!

という訳で、何のトラブルもなく空港近くのホテルに到着してチェックイン。
旅の最初の夜は、何はさておきバスタブに熱いお湯をたっぷり張ってゆっくり浸かり、長い空の旅で凝った身体を伸ばす…つもりだったのに生憎シャワーのみでバスタブ無しの部屋でした。
気を取り直して、温かいシャワーを思いっきり浴びてからベッドにもぐり込みます。

おやすみなさい… 明日から、エストニアでの日々が始まります。初めての国エストニア、どうぞよろしく…

#006:タリン→タルトゥ ハイテクITバスで行く、エストニア縦断快適バス旅行に続く

2013初夏・北欧バルト海紀行 #004:到着!アムステルダム・スキポール国際空港

2013-05-12 | 旅行

#003:KLM870便(福岡→アムステルダム)空の上からの風景からの続き

現地時間の午後3時。
KLMオランダ航空870便は昼下がりのオランダ、アムステルダム近郊のスキポール国際空港に到着しました。
時計の上では福岡を飛び立ってからまだ5時間程しか経過していませんが、
実際には日本とオランダの7時間(夏時間)の時差を飛び越えてきたので、実に12時間にも及ぶ長時間フライトでした。



福岡から頑張って飛んでくれたB777-200「Pont du Gard」号ともここでお別れです。お疲れ様でした!

さて、スキポール空港ではエストニア共和国の首都タリン行きの飛行機に乗り継ぐのですが、
乗り継ぎ時間が5時間もあります。
外はまだ明るいし、ちょっとアムステルダムの街まで遊びに行きたい気もしますが、自分の体力を過信して過酷な長旅の途中で気を緩めるのは怪我のもと病気のもと。
ここは大事を取って、空港のターミナルビルの中で休息しながらエストニア行き便の出発時刻を待つことにしましょう。
(…二十代の頃は、平気で街まで遊びに行ってたんだがなぁ。三十路後半になると、体力の衰えが自分でわかるのがツライ。)

スキポール国際空港はヨーロッパでも有数の規模を誇る巨大ハブ空港。
ターミナルビル内にも、乗り継ぎの旅客を退屈させないような面白い施設が色々と揃っています。
中でもスゴイのがこれ!

何と、空港内に本格的なカジノがあるのです!
もちろん未成年者はお断りですが、大人なら誰でもパスポートを提示すれば入って運試しが出来ます。
僕も一つ、ヨーロッパに来て先ずは今回の旅の運試しを…
やめときましょう(笑)旅の初日にいきなりスッて無一文になったりしたら洒落になりませんからね。


カジノの隣には、アムステルダム国立美術館スキポール空港分館があります。
ここにはこの前の年末年始にも来ましたね




展示されている作品にも見憶えがあります。
時々テーマを変えて展示作品を入れ替えているそうですが、お正月以来まだ替えていないようですね。

このようにターミナルビルの中を見て回るのも結構楽しいのですが、2時間も経つとさすがに退屈になって来ました。
ちょっと空港の建物の外に出てみましょうか。
オランダの入国審査を受けてパスポートにスタンプを捺してもらってから、到着ゲートの外に出るとそこは…

すぐにオランダ鉄道のスキポール駅です!
スキポール空港の真下にある地下駅で、空港ターミナルビルと直結しているという実に立地の良い駅ですが、それだけではありません。
アムステルダムの都心部方面へはもちろんベルギー方面への国際路線ともつながっており、長距離運転の国際高速列車も停車するのでとても便利な駅なのです。

ちょうど、アムステルダムからスキポール駅を経由してベルギーのブリュッセルとフランスのパリとを結ぶ高速列車タリス(Thalys)がやって来ました!



最高速度時速300キロを誇るフランスの超特急TGVをベースに、真っ赤な専用塗装をまとったタリス。
これはカッコいい!!
思わず「このままタリスに乗り込んでパリに行くのも悪くないなぁ~」などと考えてしまいます。


タリスに続いて、オランダ国内線の高速列車Fyraも登場。
こちらは本来は新型の流線型電車を導入し、最高速度時速250キロでベルギーまでの国際運行を行う計画でしたが、
新型電車が雪による運行トラブルを続発してとうとう運行停止となってしまい、やむを得ず旧来の電気機関車を用いてオランダ国内のみでかろうじて運行を続けているという変わり種の高速列車です。

空港の地下にある駅で、次々にやってくる個性的な列車たちに会えるので大満足。
そろそろエストニア行き便の搭乗ゲートに向かうとしましょう。
オランダとエストニアは共に「シェンゲン協定」が適用されるので、国境検査は免除されます。空港でもパスポートチェック無しの国内線扱いとなるので便利です。

#005:夜のバルト海を越え、エストニアまで一っ飛びに続く

おまけ画像


スキポール空港の中にあるスーパーマーケットで売っているSUSHIです。ここに来ると何となく毎回買ってしまいます。
(前回買った時のレポートはこちら→2012-2013中欧鉄道音楽紀行 番外編:10 オランダの寿司
今回買ったこれは「HANAMI SNACK」とありますが、日本ではこれをお花見で食べるというイメージなんでしょうか(笑)


中身はこの通り。割とまとも…というか普通に美味しそうですね。
手毬寿司?のようなオニギリ寿司が可愛らしいです。
実際、お米がちょっとパサパサしていましたがそれなりに食べられる味でしたよ。

2013初夏・北欧バルト海紀行 #003:KLM870便(福岡→アムステルダム)空の上からの風景

2013-05-12 | 旅行

#002:KLM870便(福岡→アムステルダム)エコノミークラスの機内食からの続き

福岡空港を飛び立ったアムステルダム行きKLMオランダ航空870便は日本海に沿うように北海道まで北上して、
小樽上空から日本海を横切りロシア極東・シベリアへと抜けていく飛行ルートを辿りました。


夏至も間近のこの時期、北極圏に近いシベリアの北回りを太陽を追いかけながら飛ぶこのルートはヨーロッパに着くまでずっと日が沈まず、
飛行機は延々10時間以上も濃い群青の空の中を飛び続けることになります。


機内は就寝時間となり、窓の日除けを下ろして消灯され真っ暗になりますが、
客室後部のギャレー近くにある非常脱出扉の窓は日除けが開いていますので、
時々この窓から空の上からの風景を眺めました。

高度10000mから見下ろすシベリアの大地には、初夏のこの時期でも雪と氷が残っています。
氷結したままの大河が地平線まで延々と続く、美しく雄大でそして過酷な風景です。



一見、どこか遠くの宇宙にある氷の惑星の地表のようにも見えるこんな環境にも、
目を凝らすとしっかりと人々の営みがあることが解ります。
真っ白に凍りついた湖の畔にはきちんと区画整理され建物が並ぶ小さな町がありました。

氷雪のシベリアを過ぎてウラル山脈を飛び越えると、そこはもうヨーロッパ。



スカンジナビア半島南部辺りまで来ると、もう地表に雪はありません。
強い日差しに雪解け水が輝く季節を迎えているようですね。


北欧らしいフィヨルド地形を見ながら、オランダを目指し南下していきます。



大きな空港の上空を通過しました。
並行した2本の滑走路の間に垂直方向の搭乗ゲートとターミナルビルがある構造から、
おそらくノルウェーのオスロ空港だと思われます。

ここまで来たら、オランダまではもうすぐ近く。北海を飛び越えれば終点のアムステルダムです!

#004:到着!アムステルダム・スキポール国際空港に続く