天燈茶房 TENDANCAFE

さあ、皆さん どうぞこちらへ!いろんなタバコが取り揃えてあります。
どれからなりとおためしください

2017年夏休み セルビア・ブルガリア旅行記 1日目(2017年8月12日)

2017-09-18 | 旅行記:2017 セルビア・ブルガリア

朝9時40分、熊本空港発東京羽田行きANA3714便で出発。
ソラシドエアのコードシェア便だ。

…熊本県南部の田園地帯にある自宅から熊本空港に来るまでが一苦労だった。
オンラインチェックイン済みとは言え朝8時台には熊本空港に着いておきたいのだが、この時間帯だと自宅から最寄りJR駅までの公共交通が動いていない。
始発のバスは午前9時台で話にならない、しかもタクシーも朝早いと運転手が起きていない!(※本当です)
結局、早朝にキャリーを引いて田舎道を30分歩いて駅へ。
田舎住まいだと、自宅エリアから脱出するのが一苦労なのです。


頑張って歩いた甲斐あって無事に乗り込んだソラシドエアのB737で熊本空港を出発!
隣は成田行きのLCCジェットスター機。
ジェットスターも熊本就航した当初は関空便とセントレア便もあったのだが、九州新幹線に負けたのか今や成田便だけになってしまったなぁ…


羽田に着いたら、国際線乗り継ぎ客だけが使えるショートカットルートを通って国内線2ターミナルから国際線ターミナルへ…


羽田空港国際線ターミナル12:30発、ミュンヘン行きANA217便に乗り継ぐ。
東京からのヨーロッパ便が次々に成田から羽田に移ってきているので、熊本などの地方空港からの乗り継ぎは本当に便利になった。
以前は福岡市内に前泊して早朝の福岡―成田便に乗るか、渋滞を気にしながら三千円も払って羽田から成田までリムジンバスで移動したものだ…


ANA217便は最新鋭機B787。この飛行機、とにかく乗り心地が良いので大好きだ。
羽田―ミュンヘンはほぼ同じ時間帯にルフトハンザ便も就航しているけど機材が古めのエアバス機なので、どうせならANA便に乗った方がいい。


ANA217便のB787は羽田から上越新幹線と同じルートで新潟に向かった後に日本海を北上し、ウラジオストック付近からロシア上空へ。
日本海上空でウェルカムドリンクのノンアルコールビールを頂く。
ANA国際線はエコノミークラスでもメニュー表にしっかりノンアルコールビールを記載しているけど、オーダーする人があまりいないのか毎回待たされてCAさんがビジネスクラスから持ってくる。
それが分かっているからノンアルビールを頼むのは少々申し訳なくて気が引けるのだけど、やっぱりビールっぽいものが飲みたくてつい毎回頼んでしまう(笑)


ANA217便の1回目の機内食は目玉焼きのせハンバーグ!
…なんだかファミレスのお子様ランチみたいだけど、これが案外美味しかった。


デザートはハーゲンダッツのアイスクリーム!やった~
さすがANA、エコノミークラスでもいいもの出すなぁ…でも夜食は配らないんだよね(笑)


夏のヨーロッパ直行便、シベリア上空はずっと太陽が沈まない…


2回目の機内食は鮭弁当風定食をチョイス。
…こってり系の洋食好きの僕もさすがに四十路になると、長時間フライトの後はあっさりした和食が有り難いようになりました。


現地時間の午後5時半、ミュンヘン空港に無事に到着。
ここでブルガリアの首都ソフィア行きに乗り継ぐ。


日本人の団体ツアー客が多いANA便から乗り継いでシェンゲン協定圏外の東欧ブルガリアに向かう乗客は僕一人だけだったようで、誰もいない連絡通路を延々歩いて欧州域内国際線の搭乗ゲートへ。


ミュンヘン発ソフィア行き、ルフトハンザ1706便エアバスA320(…いやA319だったかな?うろ覚えw)。
翼に大きなシャークレットを付けたちっちゃいエアバス機でブルガリアへ向かう。


2時間ほどのフライトでも、国際線なのでちゃんと機内食が出る。
…サンドイッチだけだけどね。でもさすがヨーロッパのエアライン、ハムチーズサンドが美味い。


バルカン半島上空に、長かった8月12日の太陽がようやく沈む…

ほぼ定刻通りの夜22時半、ソフィア空港に到着。
ブルガリアの首都空港は熊本空港とあまり変わらない規模の小さな空港だったが、ちゃんと夜でもターミナルは明るいしATMは稼働しているし、そして何よりソフィア空港には地下鉄が乗り入れている!


ソフィア空港の国際線ターミナルのすぐ横まで乗り入れているソフィア地下鉄。
外国の空港に夜遅く着いた時に一番困るのが市内へのアクセスが極端に悪い事だが、ソフィアでは真夜中まで地下鉄が運行していて格安で街まで行くことができる。これは本当に有り難い!
薄暗くて薄気味悪くていつ街に着くのか誰にも分からない路線バスや、ぼったくり上等の雲助タクシーで悪戦苦闘しないで済むなんて素晴らしい…


ソフィア地下鉄の車内はとても清潔で落書きもゴミも無い。冷房も効いているし、ますます素晴らしい…

という訳で安心して地下鉄でソフィア市街地へ向かうが、残念なことに地下鉄はホテルのある中央駅前に直行しておらず大きく遠回りするルートなので、途中の駅で降りて歩いてホテルを目指す。
ソフィアの街は夜中でも人通りが多くて治安も良さそう。道行く人をつかまえて片言英語で道を聞くが、最初に聞いたおばちゃんは「NONO!英語ダメねー」という感じで逃げられてしまったが、次に聞いた若いカップルは親切に「タクシーで行った方がいいかもだけど、この道をあっちへまっすぐ15分位だよ」と教えてくれた。
気遣いは嬉しいが、ここでタクシーに乗ると恐らく100%ぼったくられるので(ソフィアのタクシーは悪質らしいのだ)テクテク歩いてホテルへ…


日付が変わる頃にようやく辿り着いてチェックインしたソフィア中央駅前のラマダホテルは、併設のカジノの方がメインのような巨大ホテル。
去年泊まったNYロングアイランドのラマダはビジネスホテルそのものだったけど、同じ系列でも随分違うなぁ…
部屋は広くて快適。


やった、このホテルにはバスタブがある!

ゆっくりお風呂に浸かって長時間フライトと夜中の街歩きの疲れを取って、とにかく眠る。
明日もまた忙しいぞ…おやすみなさい。

2日目(2017年8月13日)に続く

台湾鐵路旅2017晩夏 最後の藍色平快車(南廻線普快3671次)

2017-09-18 | 鉄道
Photo:台東行普快3671次


9月初めに3連休が取れたので、ちょっと台湾に行ってきました。

九州からだと東京に行くより気軽に出かけられる台湾で、首都の台北から日曜日の日帰り鉄道旅行。
目的は…台湾南部の南廻線に1日1往復のみ残された、最後の旧型客車による普通列車「普快3671次」の乗り鉄!

懐かしい日本製の古い車両で運行される“藍色平快車”に乗るのも、恐らくこれが最後になるでしょう…

(乗車日:2017年9月10日)


早朝6時半、台北駅地下を発車する始発の南行き新幹線(台湾高速鉄路)で出発。
台湾高速鉄路のチケットはインターネット公式サイトの日本語ページで簡単に予約できる上に、早期予約割引等もあるので大変便利。
まさに日本のJRの新幹線感覚で利用できる。


台湾高速鉄路700Tエコノミークラスの車内。
700TはJR東海とJR西日本の東海道山陽新幹線700系をもとに日本で造られた車両で、車内の雰囲気もまさに新幹線そのもの。

台湾高速鉄路の終点は、台湾南部の大都市高雄の少し手前の左営駅まで。
将来は高雄市の中心駅である高雄駅まで延伸する…と言われ続けてもう随分経つが、一体いつになったら高雄駅まで伸びるのか…?

現在はまだ左営から台湾鉄路管理局の在来線に乗り換えて高雄駅まで行くことになるが、新幹線の駅は「左営駅」なのに在来線は「新左営駅」と、同じ場所にある駅なのに駅名が異なっている理由もよく分からん…
しかもインターネット予約で在来線のきっぷを買おうとすると「新左営駅」ではなく「中央駅」と表示されたりするので、さらに訳が分からん…
この辺りが台湾らしいカオスというか、何というか(苦笑)


新幹線の左営駅から乗り継ぐ在来線の新左営駅に、高雄方面の南行き区間車(普通列車)が入線。
台湾では鉄道の電化が進展中の為か気動車の運用に余裕が出ているようで、区間車なのにディーゼル自強号(特急列車)用の車両がやって来た。
駅で列車を撮影する「撮り鉄」(台湾語では「鐵路迷」)の姿を見かけるのも、今や台湾でも当たり前の光景?(笑)


新左営から区間車で1時間半、台湾南部の枋寮駅に到着。
ここで今回の旅の目的、普快3671次に乗り継ぐ。既に駅構内には藍色の旧型客車の姿が…


枋寮駅で発車を待つ台東行き普快3671次。
1960年代に日本で製造された旧型客車の先頭に、客車と同じ藍色に塗装されたアメリカGM社製のR100型ディーゼル機関車が立つ。




旧型客車の最後尾。
車体色は日本のブルートレインに近い。デッキの貫通扉が全開放で、まさにいにしえの国鉄の鈍行列車そのものの雰囲気。


車体中央には台鉄のロゴと台湾語のサボが掲示されており、この辺りは台湾ならでは、な雰囲気。


車内は合成皮革張りの回転式クロスシートがずらりと並ぶ。
この日本製平快車は台鉄への導入当初は優等列車に使用されていたそうなので、日本の特急「つばめ」「はと」に使われたスハ44形をもとに設計されたという話が伝えられている。


間もなく発車時刻、そろそろ車内へ…
って、この列車も当然のように現地台湾の鉄道ファン“鐵路迷”に大人気!
なので、日本の有名列車の発車前と全く同じ光景が台湾南部の駅に展開する。やはり鉄道好きに国境は無かった!!(笑)

普快3671次、枋寮駅10:55発車。








枋寮駅を出るとすぐに進行方向右側に海が広がる。
同時に列車は山裾に登っていくので、まるで海の上を走っているような車窓風景が広がる。


海が見えなくなると、急峻な山の中へ。
普快3671次の走る南廻線は険しい海岸線を縫い台湾中央山脈の南端を貫いて走るために建設工事も大変に難航し、1990年代に入ってようやく開通したことで台湾を一周する環状鉄道が完成した。


山中にある駅は、列車運行のための信号所としての性格が強く列車の乗客の利用はほとんど無さそうだ…
それでも鉄道員は鉄道の安全運行の重責を担い、ただ一人で列車を見送り続ける。




台湾が荒々しい自然の島であることを再認識させるような、美しくも厳しい風景。


もうすぐ終点の台東…
単線区間なので、行き違いの自強号との交換待ちで小休止。
ちなみに南廻線では運行する列車のほとんど全列車が特急の自強号。各駅停車の普通列車は1日1往復、この藍色平快車の普快号のみである。


台東駅13:21到着。
約2時間半の旅を終えた普快3671次は、数時間後に普快3672次として枋寮駅に折り返すまで暫し小休止。
入換用DLに推されて操車場に引上げる。


台東駅には観光用の食堂車を連結した莒光号(急行)が…って、台湾でもこういうのが流行ってるのか!?
日本のオタク文化恐るべし…萌え~(笑)




こちらは東部幹線経由で台北まで走る、最新鋭の日本製振り子電車を使用したプユマ自強号…って、これもゆるキャラ?
う~む…なんだか僕の地元熊本の、「例のあの黒いクマ」に似ている気がする…モン…(笑)


ノーマル塗装のプユマ自強号もやって来た。

これに乗れば、夕方まだ明るいうちに台北に着けるのだが、あいにく週末の東部幹線は利用者が多く全ての列車が満席状態。
台鉄の自強号は日本の特急のように自由席は無く全席指定で、立席乗車も認められていない。
事前に日本からネット予約を試みたが、どういう訳だか何度やっても操作を弾かれるので、台北直通の自強号の指定券は入手できなかった…


という訳で、帰りに乗るのはこれだ。
台北から高雄と、新幹線に接続する新左営駅まで直行する復興号(快速列車)。

…実は現在、台鉄は復興号を廃止する方針らしく、運行本数は激減している。台東―高雄の区間で運行している復興号はこの復興782次1本のみで、しかも日曜日のみの運行となっている。
1往復ではなく片道1本のみで、本当に台東→新左営間のこの782列車「しか」運行されない。台東までの車両の送り込みや返却回送はどうなっているのか、気になるところではある…


ある意味、藍色平快車の普快以上に希少な782次復興号に乗って台東15:22発車。

ちなみにこの782次復興号、時刻表によっては区間車(普通列車)扱いになっていたりもするので全車自由席なのかと思ったらしっかり全席指定で、しかも今日は満席!
しかし復興号は特例として無座(立席)での乗車も認められている。読み通りに車両の端っこの席が予備席扱いになっていたようで誰も座らなかったので、無座でも全区間でゆっくり着席して過ごすことが出来たので、まずはめでたい!


午後6時半頃、ほぼ定刻に新左営駅に到着。
水色の復興号の客車が走り去るのを見送る。藍色平快車も水色復興号も、どちらもこれが最後の乗車になるだろう…

さようなら、旧き良き時代の台湾鉄路の“火車”。

左営駅からまた新幹線に乗って、台北に帰る。でもせっかくなので、ちょっと寄り道…
実は台湾高速鉄路は2016年7月から台北駅より10キロほど東側にある南港駅まで延伸しているので、この新規開業区間に乗ってみようというのだ。
…まぁ、台北―南港間はほとんど地下区間のようだから乗っててもあまり面白いものではないが、そこは鐵路迷の悲しい性(笑)


夜9時過ぎ、無事に南港駅に到着。台湾高速鉄路、全線完乗!!(笑)
さて、捷運(MRT)に乗ってホテルに帰ろう。明日は朝早い飛行機で福岡に戻らねば…

以上、週末のちょっと台湾・乗り鉄お出かけ小旅行でした!
…やっぱり慌ただしすぎるなぁ。今度はもっとゆっくりのんびり来たいな。何しろ、台湾は色々と楽しいところなんだから!

Plavi voz ~チトー大統領のブルートレイン 3:ブルートレインよ永遠に

2017-09-17 | 旅行記:2017 セルビア・ブルガリア
Photo:朽ち果ててゆくチトーのブルートレイン専用機関車


2:ようこそ、ユーゴスラヴィア大統領専用列車へ!からの続き

チトー大統領の専用列車Plavi voz「ブルートレイン」の車内を見せてもらった後、車庫の外に置かれていた鉄道車両を見て周る。
実は、この車庫に来た時から外に放置されている車両が気になっていたのだ。


職員のクルマやレール等の資材に囲まれるように置かれたこの車両…
かなり傷みが激しく、廃車前提で放置されているような状況だが、車体の規格が車庫内のブルートレイン車両とは明らかに異なる。



その奥には、3両のディーゼル機関車がこれまた雨ざらしのまま朽ち果てた状態で置かれていた。



車体は腐食が進み塗装も剥げ落ちて、かなり荒廃しているが、元は流線型の車体にブルートレインと同じ青い塗装をまとった美しいデザインだったことが分かる。

これは1957年に西ドイツのクラウス社に発注されたブルートレイン専用機関車JZ-D66型で、それぞれ“Dinara”“Kozara”“Sutjeska”と愛称が付けられていた…らしいのだが、車体の荒廃が激しくて表記も見えなくなっており、どの車体がどの愛称を持つものかは判別出来なかった。


ちなみにこれが、ブルートレインの車庫のオフィスに飾られていたJZ-D66型の納車時の記念写真と思われるもの。
3両が導入されたJZ-D66はブルートレイン牽引時は2両重連で、常に1両が予備車として待機するという運用だったらしい。


後日訪問したベオグラード市内のセルビア鉄道博物館にも、JZ-D66の鉄道模型車両が展示されていた。
…やはり、本来は丸っこい車体に艶やかな青色塗装のとても美しい機関車だったようだ。


3両のJZ-D66のうち1両は青い客車と連結された状態で置かれていた。


「この位置で見ると、まるで今にもブルートレインを牽いて走り出しそうだなぁ…」

旧き良き時代のユーゴスラヴィアとチトーのブルートレインの記憶がそのままの姿で永遠に化石になったような、哀しくも美しい光景だった…
夜に星空の下で見たら、きっと幻想的だろう。


機関車JZ-D66の他にも、何両かの客車が車庫の外に留置されていた。

まだ比較的新しい車両でブルートレインと同じ青い塗装をまとっているが、なぜ運用から外されてしまったのかは不明…
いや、車庫のスタッフの方に聞いてみたのだが、僕の稚拙な語学力では詳細は聞き出せなかったというのが実情(苦笑)

だが、どうやら修理する予定等は無く、このまま荒れるに任せて放置される運命らしい…

車両の見学を終えて、ブルートレインの車庫で管理業務を行っているセルビア鉄道の関係者の皆さんにお礼を言って、ベオグラード市内に帰る。
数時間の滞在だったが、内容の濃い充実した時間を過ごすことが出来た…
何しろ、夢であり幻だったチトーのブルートレインに実際に会い、車内に乗って見ることが出来たのだ!

今回お世話になった皆さんにはひたすら感謝、である。ありがとうございました!

ベオグラード市内に戻り、夕刻に駅まで散歩に行ってみた。すると…



なんと、ベオグラード駅につい先程見たばかりの青い客車が停まっているではないか!



これは、まぎれもなくチトーのブルートレインの青い客車だ。
しかも、車庫に収められて磨き上げられたチャーター専用の保存車両ではなく、営業運転する列車に連結されて土埃にまみれながら現役で稼いでいる車両である。

実は、夏季のバカンスシーズン限定で、チトーのブルートレインの客車がベオグラードとモンテネグロのバールとを結ぶバール鉄道(チトー大統領の専用客車の一般団体レンタル運行でも走行可能な線区だ)の臨時夜行列車に連結されて、きっぷを買えば誰でも乗れる寝台車として使用されているのだ。
もちろん車両は豪華な大統領専用車などではなく、随行するスタッフが使用した一般型の個室寝台らしいのだが…




1959年製のブルートレインの車両と、近代的で明るい塗装のモンテネグロ鉄道の寝台車が連結されている。
さらにその後ろにはカートレイン用の自動車運搬車も連結されており、雑多で賑やかな凸凹編成を組んでモンテネグロを目指すようだ。


ブルートレイン車両のデッキのドアに張り出された号車番号札とサボ(方向幕)。この車両が生きた運用に就いている証明である。
サボの表記によると、ベオグラード発バール行きの433列車で「Lovcen」(モンテネグロ国内にあるロブチェン山という山の名前)という愛称が付いている。


ブルートレインの車体を飾る「燃える松明」のユーゴスラヴィア国章エンブレムも勿論健在。


驚いたことに、屋根上にはチトーの執務室のユーゴ各国首脳直通ホットライン電話の送受信や車内テレビ、ラジオの受信に用いられたと思われるアンテナまで設置されている。
現在はもちろんチトーのホットライン通信など使われていないし、車内でテレビやラジオのサービスを行っているとも思えないので、単にかつて大統領専用列車に連結されていた頃に使われていた設備が撤去されずそのまま残されているだけだと思うが…

ともあれ、思いがけず早々にチトーのブルートレインとの再会を果たしてしまった。
ブルートレインは今でも生きている。こうして夏休みの楽しい行楽に出かける旅行者を乗せて、今夜も走っていたのだ…

「40万円用意して大統領専用車両をチャーターする前に、バール行きの寝台列車に乗る方が手っ取り早いな(笑)

という訳で、僕は思ったよりずっと早くずっと安く(笑)チトーのブルートレインに乗れるかも知れません(いや、それでもいつかは大統領専用車両を貸し切って自分たちだけの為の特別列車を仕立てて乗るけどね、勿論!)。


ブルートレイン車両を連結したバール行きの寝台列車ロブチェン号が出発した後、すっかり日が暮れて夕闇に包まれたベオグラード駅の片隅で街灯りに浮かび上がるこの蒸気機関車…

実はこれもチトーのブルートレインの専用機関車。
ディーゼル機関車のJZ-D66型が1957年に登場する前にブルートレインを牽いていたSLだが、ちょうどJZ-D66の投入と同じ時期にブルートレインの車両が新造(1959年)されているので、このSLが牽いていたのはユーゴスラヴィア建国直後に登場した先代(初代)のブルートレインということになる。

そして数日後、ベオグラードを去り次の目的地ブルガリアの首都ソフィアへと向かう国際列車バルカン号に乗車して、ベオグラード駅を発車してしばらく走ると…




何と、見憶えのある懐かしい青い車両たちがバルカン号の車窓に…

思いがけず、あのブルートレインの車庫のすぐ隣を通ってベオグラード市を後にするルートを走っていたのだ。
一瞬ではあったがこれで二回目のブルートレインとの再会、もはや偶然とは思えない。

「やっぱり、いつかまた乗らずにはいられない運命のようなものがあるんだろうな…
よし、それまでベオグラードの森の中で待っていてくれ。
いつか必ず、僕たちだけの専用列車を仕立てて乗るぞ、チトー大統領の専用列車Plavi voz。『永遠のブルートレイン』に!」

それでは皆さん、今度は車庫から外に出て線路の上を走っているチトーのブルートレインの車内でお会いしましょう!
天燈茶房亭主mitsuto1976 拝

Plavi voz ~チトー大統領のブルートレイン 2:ようこそ、ユーゴスラヴィア大統領専用列車へ!

2017-09-16 | 旅行記:2017 セルビア・ブルガリア
Photo:チトー大統領専用列車Plavi voz車内、会議スペース

1:ベオグラードの森の中に眠る青い列車からの続き


ベオグラード近郊の森の中にある車両基地の車庫に眠るPlavi voz、チトー大統領専用列車「ブルートレイン」…
かつて、連邦共和国の国内各地を視察するチトーと世界各国から訪れた首脳たちを乗せてユーゴスラヴィア中を駆け巡った車両の車内に、これから“乗車”する。

かつては赤絨毯の敷かれたベオグラード中央駅のプラットホームに据え付けられていたであろう専用車両のデッキに車庫の床からタラップを使ってよじ登って、いよいよ夢のブルートレインの車内へ…


先ずは、長い通路が続くコンパートメント車両。

ヨーロッパの標準的な個室寝台車のスタイルで、日本のJRのブルートレイン「はやぶさ」や「富士」のA寝台1人用個室「シングルDX」と似た構造だが、木目調のインテリアと絨毯で豪華な雰囲気である。
ただし、これはチトーが寝起きしていた車両ではなく、随行するユーゴ政府高官や賓客が使用した寝台車だ。




賓客や政府高官が使用したコンパートメント内。
ベッドは日本のA寝台より一回りほど広く、幅1mはあるので寝心地は良さそうだ。







コンパートメント内には専用のデスクとトイレ、さらには立派なバスタブを備えたバスルームも用意されているので、JRのブルートレイン「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」のシャワーしか無いA寝台ロイヤル個室よりも豪華だ…

尚、同じ車両内にバスルーム無しのコンパートメントもあるようで、この辺りはおそらく使用する政府高官の身分や賓客のランクで差を付けていたと思われる。


次の車両は、車端部に気の利いた感じの小粋なウェイティングバーが…




バーの奥はもちろん食堂車…磨き上げられたマホガニー細工の壁が印象的な会食用サロンである。
今は灰皿が一つぽつんと置かれただけのテーブルにも運行時にはテーブルクロスがセットされ、チトーが賓客をもてなす豪華な食事の皿が並んだのであろう…




会食用サロンの隣は貴賓用サロン。
食後のくつろぎスペースといったところか。


貴賓用サロンの壁に埋め込まれたブラウン管テレビとカーラジオをそのまま流用したようなチューナー。
…この車両が製造された1959年当時としては最先端のハイテク装備だったんだろうなぁ、きっと!


食堂車には会食用サロン以外に、日本の「北斗星」のグランシャリオや「トワイライトエクスプレス」のダイナープレヤデスに似たプルマンカ―スタイルのテーブルが並んだ区画もある。
チトーの旅の随行員や同行する記者等のスタッフは、ここで集まって皆で一斉に食事したのかな。


食堂車の隣は会議車両。
休憩用のソファが並ぶ区画の奥には、チトーが世界の首脳たちと相まみえた「列車内首脳会談」の舞台となった、長いテーブルの会議室が見える…


長テーブル中央の、この席でチトーがイギリスのエリザベス2世やソ連のブレジネフ書記長、ルーマニアのチャウシェスク大統領やリビアのカダフィ大佐といった世界60カ国以上からユーゴスラヴィアを訪れた名だたる首脳たちと対面し、語り合った。

そして1980年、ユーゴ北部リュブリャナの病院で死去したチトーの遺体が首都ベオグラードへとブルートレインで最後の旅をした際にも、会議車両のこの位置に棺が置かれていたという…


会議車両の車内を彩るマホガニーの壁細工。
いにしえのオリエント急行のワゴン・リ寝台車の車内はアール・ヌーヴォー調の硝子細工とマホガニーとで飾られていたというが、チトーのブルートレインは繊細な硝子細工が見当たらないかわりに随所に磨き上げられたマホガニーの壁があり、豪華絢爛というよりは質実剛健な雰囲気が漂う。




会議スペースの端の壁には、“秘密の仕掛け”がある。
普段は絵の額縁が掛けられて隠されている壁のパネルを外すと…




なんと壁の裏が映写室になっていて、映写機が現れるのだ!
う~ん、PHILIPS社製の映写機が何ともレトロで、まるで懐かしのTVドラマ「スパイ大作戦」の世界!(笑)
…要は会議中に使うプロジェクターな訳だが、これもチトーの現役中は最先端装備だったんだろうなぁ。


歴史の舞台でありレトロフューチャーが詰まった会議車両を堪能したら、いよいよブルートレインの最重要車両であるチトー大統領夫妻の専用車両へ!
車両連結部の貫通幌も「オリエント急行」や「ななつ星」と同じように丁寧にビロードの幕で覆われている。これはまさに特別中の特別車両への入り口の装備だ…


マホガニーの壁に覆われた、チトー大統領の執務室。
チトーのブルートレインの中枢部である。




執務室を飾るマホガニーの壁細工は帆船のモチーフ。
チトーにとってはブルートレインは地を駆ける彼の船だったのかも?


チトーのブルートレインは空は飛ばないがユーゴスラヴィア版の「エアフォース・ワン」であり、「走る大統領官邸」だ。

執務室のデスクに置かれた電話はユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国の各構成国の首脳部と常に直結されたホットラインであり、チトーはここで走るブルートレインの車中からユーゴ各国の首脳へと重要司令を発していたという。

その為、ブルートレインの車両の屋根上にはホットラインの通信用アンテナが設置されており、他の一般形車両と見分けるポイントになっている(記事の最初に載せたブルートレインの車両の写真をもう一度よく見て頂きたい。車端部屋根上にアンテナがあるのがお分かり戴けるかと思う)。


執務室の隣はリビングルーム。
仕事を終えたチトーがくつろぐ様子が目に浮かぶ…




リビングに置かれたラジオ。
…食堂車の貴賓用サロンにはテレビがあったが、チトーのプライベートなリビングにはラジオしか無いのが不思議な気がする。
まあ、仕事が忙しくてテレビを見ている暇がなかったのかも知れないが。


チトーの寝室。
最初に見た随行するユーゴ政府高官や賓客が使用した寝台車と違い、線路と平行にベッドが置かれたゆったりとした造りになっている。

…が、案外素っ気なくシンプルな印象。
元パルチザンの闘士だった男は寝室に睡眠に必要ない無駄な豪華さなど求めなかった、と言えばちょっとチトーを持ち上げすぎだろうか。


寝室の隣は大統領夫妻専用のバスルーム。


そして、チトーの妻であるヨヴァンカ夫人の寝室。
夫の寝室と同じ間取りだが、さすがにファーストレディのベッドルームだけあって花柄を用いた華やかなインテリアデザインになっている。

余談だが、チトー大統領夫人であるヨヴァンカ・ブロズは17歳でパルチザンの狙撃手となったという“女性革命闘士”で、チトーの3番目の妻が結核で倒れた際にチトーの世話人となり、その先妻の死後に30歳も歳上のチトーの再婚相手となった。
さらにチトーの死後は政府によって軟禁状態に置かれた挙句、ユーゴ崩壊後は財産を没収されベオグラード郊外の粗末な家で一人暮らしをしていたという。
同じベオグラード郊外の森の中の車庫に眠る、かつて夫とともに乗車してユーゴスラヴィア各地を走り回り夜は同じ車両で眠った思い出のブルートレインをヨヴァンカ夫人がその後再訪した事があったかどうかは分からないが、波乱万丈の生涯を送り2013年に88歳で亡くなったヨヴァンカ・ブロズは現在、チトーと同じ墓に埋葬され眠っている…


チトー大統領夫妻の専用車両の隣は、ブルートレインの編成全体に電力を供給する電源車。

…実際のブルートレインの運行時には大統領専用車両のすぐ隣に電源車が連結されることは無かったと思うが、現在は豪華なビロード張りの貫通幌の向こうに無骨なディーゼル発電機が覗くという格好で編成が組まれている。




ブルートレインの電源車のディーゼル発電機はダイムラー・ベンツ社製。


電源車の配電盤。
夏は猛暑で冬は雪が降るユーゴスラヴィアでは、車内の冷暖房をまかなうための電源車の連結は必須だ。

…賓客と随行員用の寝台車から食堂車、会議用車と大統領夫妻専用車と電源車まで、チトーのブルートレイン「Plavi voz」の車内を一通り見てまわった。
ユーゴスラヴィア大統領専用列車ブルートレインの車内訪問はこれにて終了。名残惜しいが、青い列車を降りる。



「素晴らしい体験だった…この列車にはチトーと彼の時代の薫り、ユーゴスラヴィアの歴史がそのまま詰まっている。
このブルートレインに、また乗れる事はあるんだろうか?」

…実は、あるらしいのである。

ずっと車内を案内してくれた、ブルートレインが収められている車庫と車両の運用管理をしているセルビア鉄道の関係者の方によると、
このブルートレインの車両は現在、一般の団体客向けにレンタル運行を行っているそうなのだ。
今まで見てきた4両の専用客車(寝台車・食堂車・会議用車・大統領夫妻専用車)に冷暖房用の電源車を連結して、セルビア国内及びバール鉄道(モンテネグロ共和国)を丸一日(最低12時間)走っておよそ3,000ユーロ(約40万円)程とのことである(※ただし、チトー大統領夫妻の専用車の寝室やバスルームは使用できないとのこと)。

チトーのブルートレインを丸一日、自分だけのために走らせて約40万円…これって、考え方次第ではとても安いのではないだろうか?
だって、日本でクルーズトレイン「ななつ星in九州」に乗ろうと思ったら、一番リーズナブルな一泊二日コースでも一人あたり50万円以上するのだ。チトーのブルートレインを1編成丸ごと1日貸し切るよりも「ななつ星」の個室を一部屋だけ一晩使う方が高いのである!
チトーのブルートレインなら、乗車する人数を集めて頭数で割ればさらに割安になるではないか。
「これは…乗りたくなってきた!本気で乗りたいぞ、自分たちだけのために走らせるチトーのブルートレイン!!」

…日本からセルビアまでの往復の航空券代を足しても、例えば10人以上参加者を集めれば「ななつ星」よりも相当安く乗れるチトーのブルートレイン。
天燈茶房亭主は本気でいつか乗るつもりです。参加者が集まればいつでも乗ります!
もし、読者の方で「乗ってみたい」と思われた方が居られたら、是非とも乗ってみて下さい。セルビア鉄道への連絡手配等の相談には応じますよ(笑)
そして、チトーのブルートレインの旅の様子を聞かせて下さいね!


3:ブルートレインよ永遠にに続く

キヤ141総合検測車が鹿児島本線を走りました(平成29年9月13日)

2017-09-13 | 鉄道
「ドクターWEST」ことJR西日本所属のキヤ141総合検測車が今年も9月に熊本県下にやって来ました!
ちょうど有給休暇消化で休日だった9月13日の水曜日、朝から鹿児島本線を下っているとの情報をネットで捉えたので早速、新八代駅へ。


新八代駅の南側、第一井上踏切を通過するキヤ141。


八代駅裏の日本製紙八代工場の煙突をバックに走り去る…


あっ上りの普通電車の815系が来た(笑)
もうちょっと早く来たら、すれ違いが撮れたのに…

夕方、今度は鹿児島本線を上って来るキヤ141を氷川町の農道沿いで迎え撃ち。


晴れてたら夕焼けで車体がギラリと輝いたかもねー。

今日のクルーズトレイン「ななつ星in九州」とSL人吉(平成29年9月3日)

2017-09-03 | 鉄道

6月からの長期メンテナンス運休を終えて、先週から運行を再開したクルーズトレイン「ななつ星in九州」
運休中に水害で久大本線の鉄橋が流されてしまい不通となっている関係で、週に2回も日中に熊本県内を走破するルートに変更になっています。
今日はいつもSL人吉を撮影する場所から、鹿児島本線を北上してくる「ななつ星」を迎撃!
…なんだかPCの壁紙にちょうど良いような構図に仕上がりました(笑)


こちらは鹿児島本線を下る「ななつ星」。
後追いで展望車を狙おうと思ったのですが、機関車の横顔を捉えた直後、鏡面仕上げのように磨き上げられた車体に周囲の風景が映り込んだせいかカメラのオートフォーカスがピントを盛大に外すエラー発動( TДT)
ぐぬぬ、来週以降にリベンジせねば…!


最後は1枚目と同じ場所からSL人吉を一枚。
…あらら、よく見たら最後尾にDE10が連結されてるね。機関車58654は先月から煙室にトラブルが発生していたようだけど、まだ調子が悪いのかな?
っていうか、せっかく後補機が付いてるなら真横から編成がよく見える構図で撮ればよかったな、残念!

Plavi voz ~チトー大統領のブルートレイン 1:ベオグラードの森の中に眠る青い列車

2017-09-03 | 旅行記:2017 セルビア・ブルガリア
Photo:ベオグラード近郊の車庫に眠るPlavi voz(セルビア語で「青い列車」の意味)


ヨーロッパの東側、アドリア海を挟んでイタリアと向かい合うバルカン半島にかつて「ユーゴスラヴィア」と呼ばれる国があった。

「7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字」を有する「1つの国」、ユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国は今日では完全に解体され地上から消滅しているが、この余りにも多くのものを内包していた混沌とした地域を30年以上に渡り「1つの国」としてまとめ上げていたのが、ヨシップ・ブロズ・チトー大統領

クロアチアの田舎の小学校を卒業後すぐに錠前工として働き始めた少年は、やがて労働運動に身を投じ、徴兵され、ナチスドイツに抵抗するパルチザンのリーダーとなり、遂には新たに生まれた連邦国家の終身大統領にまで上り詰めた訳だが、この稀代のカリスマが1980年に死去するとユーゴスラヴィアは崩壊への道を歩み始める…

今日、チトーはようやく落ち着きを取り戻した“旧ユーゴスラヴィア”諸国において、ある種のノスタルジーをもって語られる事が多いという。
旧き良き時代、懐かしいあの頃の象徴として、連邦解体と凄惨な民族紛争と内戦を乗り越えてきたこの地において、チトー大統領もようやく安らかな眠りに就けたということだろうか。

そんなチトー大統領の生前を偲ばせる意外な遺産が、実は今日も秘かに存在している。
それは何と、鉄道車両
チトー大統領の専用列車として特別に製造された車両が、今でもかつてのユーゴスラヴィアの首都であったセルビア共和国のベオグラード近郊の車庫で保管されているのだ。

美しい青い塗装を施され、セルビア語で「青い列車」を意味する「Plavi voz」と称されるチトー大統領の専用車両は、日本でも海外の鉄道好きの間では「チトーのブルートレイン」と呼ばれてそれなりに名の知られた存在であったが、何しろ日本では現地セルビアの情報が少なく「幻の列車」という印象だった。
だが今回、インターネットを通じて知り合ったベオグラード在住の方にお世話になって、実際にこの「幻の列車」に直接対面することが出来たのである!
インターネット時代の文字通り世界を越えた人と人とのつながりの素晴らしさと、遠く離れた街でわざわざ手配を整えて下さった事にひたすら感謝です。

…それでは、天燈茶房読者の皆さんもご一緒に「チトーのブルートレイン」に会いに行きましょう。
青い列車たちは、ベオグラード近郊の森の中の車庫にひっそりと眠っていました…


(取材日:2017年8月14日)


朝から、タクシーで「チトーのブルートレイン」が保管されている車庫へ。
ベオグラードは大都市だが都心からでも少し車を走らせるとすぐに緑豊かな森が広がる。この森の向こうにブルートレインが眠っている…


やがて、木立の中に線路と鉄道車両が留置された工場のような建屋が現れた。
「あっ、青い客車がいる!」間違いない、どうやらここがブルートレインの車庫のようだ。

車庫に着いて、現在ブルートレインの整備を担当しているセルビア鉄道の関係者の皆さんに挨拶。
「今からブルートレインの電源を入れるからちょっと待ってて」と整備場の詰め所に案内される。

鉄道員の皆さんは突然訪れた日本人に対してとても親切で、「ラキヤ(バルカン半島で客人に振る舞われる蒸留酒)飲まないかい?」と勧められたが、断酒中だし度数40度(!)もあるラキヤなんか飲んだらひっくり返るに決まっている!(笑)
「せっかくですが、アルコールは駄目なんですよ」と丁重にお断りしたら、大笑いされた後に濃いトルコ風コーヒーが出てきた。皆さん本当に気さくでもてなし好きのようだ。


ブルートレインの電源を立ち上げるのに時間がかかるようなので、その間に車庫の整備工場を見学させてもらう。
工場長のデスクにはしっかりユーゴスラヴィアの国旗が掲げられていた…


そして壁には、ブルートレインの主であるチトー大統領の姿を列車と共に収めた写真が…

電源の準備にもう暫く時間がかかるようなので、車庫の中のブルートレインの外観をじっくり眺めてみる。



ブルートレインの車両は、車体に波型のコルゲート(ビード加工)が入った重厚なもの。
青く塗られているが、車体そのものは旧共産圏やかつての中国などでよく見られた緑色の「社会主義国の標準客車」と同じもののように見える。
セルビア鉄道の公式サイトによると1959年に製造されたとあるから、新製から既に60年近く経過したとても古い車両ということになるが、きれいに整備されているのでまるで新車のようだ。




車体に英語表記が一切無いのでよく分からないが、窓配置が異なる車両は食堂車かコンパートメント車かも知れない。


ブルートレイン車両の車体を飾るエンブレムは、6つの共和国を表す「燃える松明」をあしらったユーゴスラヴィアの国章。
ただし、オリエント急行のワゴン・リ車の「向い獅子」や「ななつ星in九州」の五芒星のエンブレムと比べたら非常に小ぶりで、控えめに掲げられている印象。


車庫にずらりと並ぶ磨き上げられたブルートレイン車両。壮観である…


ふと「そういえばチトー大統領が健在だった頃は『ブルートレインは実は常に2編成が運用されており、チトーが乗っているのとは別の影武者編成が暗殺者の目を誤魔化す為に走り続けている』なんて噂もあったらしいなぁ…」などと独り言をつぶやいたり。
この車庫の中には相当な数のブルートレイン車両が収蔵されているようなので、その気になれば実際に2編成運用も可能だったかも?

やがて詰め所の方から「電源の準備が出来た!列車の中に入れますよ」と声がかかった。
…お待たせしました、赤いテールランプの灯るデッキのタラップを登って、いよいよ幻のチトーのブルートレインの車内に入ります!



2:ようこそ、ユーゴスラヴィア大統領専用列車へ!に続く