天燈茶房 TENDANCAFE

さあ、皆さん どうぞこちらへ!いろんなタバコが取り揃えてあります。
どれからなりとおためしください

ゆるキャラを競り落とす

2007-05-27 | 日記
本日26日は勤め先の会社紹介イベント。
先日、「茶道部」に入部したので、来場者サービスの「野点」のお運びを1日中やってました。

でも途中で抜け出して、チャリティーオークションに参加してきた。
で、競り落としましたよ、勤め先が作った自社イメージキャラクター「くりぞう君」!

ゆるキャラ大好き人間の悲しい性だな。
manさんと競り合ってるうちに、どんどん値段が吊り上っていった結果…落札価格は4K円超。。。


まあ、何はともあれ自宅で「はまりん」と一緒に記念撮影。
今日は御疲れ様。疲れました正直。。。

以上、楽屋落ちネタ日記でした。




八代市立博物館未来の森ミュージアム春季特別展覧会 「北斎が八代へやってくる」を観る

2007-05-26 | 博物館・美術館に行く
ちょっと前の話なんだけど…

5月20日(日)、地元の八代市立博物館 未来の森ミュージアム(写真)でやっていた北斎の展覧会を観に行った。

ゴッホをはじめ西欧の印象派の画家達にも多大なるインスピレーションを与えたという世界的芸術家、葛飾 北斎。
北斎の作品をじっくり鑑賞するチャンス、しかも最終日という事もあって、未来の森ミュージアムは大変な混雑。
「やっぱり北斎は人気があるんだなぁ」

会場は行列が出来ていて何とも忙しかったが、それでも浮世絵、肉筆画をじっくり観る事が出来た。
浮世絵をきちんと鑑賞するのはこれが初めてかも知れないが、実に細かいところまで精巧に丁寧に描かれているので驚く。それに、1枚の画面に実に幅広い情報が(画面の隅に小さく描かれている人物や事象で)表現されており、しかもユーモアが溢れているので観ていて楽しく、飽きない。

「成程、この表現はまさしく漫画でありアニメだ。浮世絵はジャパニメーションの原点だな。」

そう思って見ると、有名な歌舞伎役者や遊女の浮世絵は「萌えキャラのイラスト集」みたいなもんだ。
日本人って200年も前から2次元キャラで萌えてたのか。。。ある意味、オタクは日本人の必然なのかも知れんな。。。
そう言えば最近、かつて印象派の華開いたフランスでは日本のオタク文化が一大ムーブメントになってるらしいし…

結局、芸術はオタクと表裏一体と言うか…まあ、みんなオタク的なものに惹かれるのね。



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JR九州20周年記念「スタンプラリー20」の旅 最終回~スタンプ、コンプリート!~

2007-05-25 | 鉄道
(写真:熊本駅に到着した寝台特急「はやぶさ」の機関車)


これまで数回に渡り挑戦し続けてきた、JR九州の駅と列車内に設置された20個のスタンプを集める「スタンプラリー20」の旅
(詳細はこちら→JR九州公式サイト http://www.jrkyushu.co.jp/20th/stamp.jsp)。
今までコツコツと地道に九州各地の駅を廻り、スタンプを集め続けてきたが、ここにきて遂に伝家の宝刀を抜く時が来た(何か最近伝家の宝刀が多いな)。

このスタンプラリーに合わせて売り出された特別きっぷがあるのだ。その名も「九州特急フリーきっぷ」!
2日もしくは3日間、JR九州の全路線で特急列車の自由席が乗り放題になるというこのきっぷ、スタンプラリーに執念を燃やす鉄道ファンの為に売り出された最強のきっぷなのだ。それにしても、目的のためなら手段を問わない鉄道ファンなら無条件に購入してしまうであろう商品を周到に用意する辺り、JR九州もなかなか商売上手だなぁ。


これが今回使用する「九州特急フリーきっぷ(3日間用)」、2万5千円也。
実はこれ、通常版とは別に枚数限定で先行販売された特別バージョンの「硬券仕様」。鉄道ファンはクラシカルな硬券きっぷの魅惑に弱い。僕もしっかり入手してJR九州に貢献してしまった。
昨年暮れに、東欧バルカン旅行に出発する前日にJR博多駅で購入してそのまま東欧・トルコまで持って行ってしまい、帰国後もそのまま保管し続けていたのだが、今日からいよいよこのきっぷを使って3日間に渡って九州を駆け回り、まだ入手していないスタンプを一気に集めてしまおうという訳だ。

平成19年5月12日(乗り放題1日目)

早朝、自宅最寄りの駅で「九州特急フリーきっぷ」に入鋏。
顔見知りの駅員氏が「え~っと、日付は…ここに記入するのか」とか言いながら物珍しそうにきっぷを見ている。このきっぷ、手のひらサイズでデカいし硬くてゴツイし、とにかく目立つのだ。

熊本駅で博多行き特急「有明」に乗り換え。この列車、つい2週間前に台湾へ出発する前に乗ったばかり。2週間前と同じ景色を眺めて、同じように眠くなり居眠りをして、同じように博多駅に到着。
博多で大分行き特急「ソニック7号」に乗り換える。1時間足らずで小倉に到着。ここでソニックから下車。
予定では小倉から寝台特急「富士」に乗り換えて大分へ向かうつもりだったのだが、あれ?大分方面の発着案内表示に「富士」が出ていないぞ?改札で事情を聞くと「本州で人身事故があって2時間遅れてますよ」何ーーー!?

出発から3時間程で早くも予定が狂ってしまった、さてどうするかとホームで立ち食いの「かしわうどん」を食べながら考えていると、目の前に次の大分行き特急「ソニック」が入ってきたので何となく乗車してしまう。

本来の予定では寝台特急「富士」で大分に向かい、大分到着後はすぐ「ソニック24号」で中津駅まで戻りスタンプをゲットするつもりだった。何で一度中津を通過して大分まで行ってしまうのかと云うと、「だって、寝台特急にはゆっくり終点まで乗ってブルートレインの旅を楽しみたいじゃないか!」つまりはそういう事だ。
しかし寝台特急「富士」に乗れないとなるとわざわざ大分まで行く必要はない。中津でさっさと降りてスタンプをゲットする。スタンプを手に入れたら中津には用はないのですぐに上り博多行きの「ソニック」で小倉に戻る。
つい2時間ほど前にうどんを食べた小倉駅のホームに降りると、「遅れておりました寝台特急『富士』到着します」との案内放送が。
「今頃到着したのか…乗っちゃえ!」


という訳で、改めて寝台特急「富士」に乗り込み大分へと向かう。
「富士」の車内は空いているので、B寝台の1区画を悠々と占有して白昼のブルートレインの旅を満喫。


昼下がりの大分駅に到着。
すぐに上り特急「ソニック」で博多へと引き返す…って、今日は一体何回「ソニック」に乗ってるんだ?
博多駅から長崎行きの「かもめ」に乗り換える。この時点で当初の予定よりキッチリ2時間遅れ。予定では長崎ではなく佐世保に向かいスタンプを入手して、すぐ肥前山口経由で長崎に移動、ここでもスタンプゲット…と考えていたのだが、佐世保は後回しにして長崎に直行する事にする。


すっかり暗くなり、雨の降り始めた長崎に到着。スタンプを入手後、雨のそぼ降る暗いプラットホームに入線してきた京都行きの寝台特急「あかつき」に乗車。
佐世保を後回しにしたのも、この「あかつき」に乗りたかったから。つまりはそういう事だ。
ブルートレインに乗っているとついこのまま終着駅まで行ってしまいたくなるが、生憎「九州特急フリーきっぷ」は九州内でしか使えない。門司駅で「あかつき」と別れ、小倉駅に戻ってから今夜の宿となる宮崎空港行き特急「ドリームにちりん」に乗車。
結局、今日は佐世保駅のスタンプを捺し損なってしまったが、明日以降挽回出来る筈だから気にしない。


平成19年5月13日(乗り放題2日目)

小倉から1時間半程、「ドリームにちりん」は深夜の大分駅に到着。ここで下車。
小一時間ほどでやって来る上り博多行きの「ドリームにちりん」に乗り換える。
所謂「返し」と呼ばれるテクニックである。一般的な旅しかしない世間の方々には想像もつかないだろうが、鉄道に乗ることそのものを目的とした「乗り鉄」の世界には時刻表トリックさながらの様々な超絶テクニックがあるのだ。「返し」はその中でも基本中の基本みたいなもので、まあ要するに夜行列車の途中駅で上り列車と下り列車を相互に乗り換えることで翌朝には再び出発地に戻る事が出来るというもの。
乗り放題のフリーきっぷと組み合わせて使用すれば宿泊費を浮かせることが出来るのでそれなりに便利であり、各地で様々な周遊きっぷ・フリーきっぷと夜行列車の組み合わせでで様々な「返し」のパターンが日々研究・実践されている。
ちなみに僕は十年以上前の学生時代に「信州ワイド周遊券」を使って夜行急行「ちくま」号の木曽福島返し5連荘を実行した事があるがあれはきつかった…「返し」は「睡眠時間が著しく阻害される」という弊害があるので、体力のある高校生大学生でも3日以上の連荘は健康上危険なんだよな…僕もあれで体重が4キロ減ったし…
などと大分駅周辺のコンビニを覗きながら輝かしい過去の栄光を思い出しているうちに、上りの「ドリームにちりん」が到着。小倉に戻る…って、結局昨日からこの区間だけで何往復してるんだ!?

小倉駅から門司港駅に移動。ここでスタンプをゲット。すぐに引き返し、門司駅から関門トンネルをくぐって下関駅へ。
下関駅は「九州特急フリーきっぷ」で立ち寄る事の出来る唯一の九州外の駅。関門トンネル区間がJR九州の管轄なので、例外的にJR西日本の下関駅への下車が認められている(しかしこれは「九州特急フリーきっぷ」購入時に駅で問い合わせて解かった事で、券面には一切謳われていない)。
下関駅から乗車するのは…

東京駅から夜の東海道・山陽本線1000キロを駆け抜けてやって来た、寝台特急「はやぶさ」と「富士」。今日は途中で人身事故にも巻き込まれず、定刻に到着できたようだ。
昨日は「富士」に乗ったので、今日は「はやぶさ」に乗車する。
B寝台のベッドでくつろいでいると、猛烈な睡魔に襲われて結局熟睡。昨夜寝てないからなぁ。。。気がつくともう終着の熊本だった。ああ良く寝た!

熊本駅で後続の「リレーつばめ41号」に乗り換え、更に新八代駅で九州新幹線「つばめ41号」に乗り換える。
先々週、台湾新幹線(台湾高速鐡路)に乗車したばかりだが、同じ700系ベースの車両なので当たり前だが乗り心地は同じだ。
「九州新幹線と台湾新幹線は姉妹だな。」

新八代からほんの10分程で水俣駅に到着。ここでスタンプを捺すべく下車。



新水俣駅は水俣市外からは離れた山の中に造られた新興駅だが、駅舎のデザインは凄い。
そのアバンギャルドなエクステリアはとても駅とは思えない。
しかし駅の周りには殆ど何もないので、スタンプを捺したらさっさと退散する。「つばめ46号」で新八代へと引き返す。
新八代から「九州横断特急6号」に乗り換えるのだが、時間があるので「つばめ43号」から「48号」へと乗り換えて新水俣までもう1回往復。せっかく新幹線も乗り放題のきっぷを持っているのだから、時間のある限り乗り続けてないともったいない。
改めて新八代から「九州横断特急6号」に乗車。阿蘇駅へと向かう。

阿蘇駅到着後すぐにスタンプを捺す…つもりなのだが、改札口周辺にスタンプが見当たらない。
阿蘇駅のホームには既に次に乗る予定の「あそ1962」が停車しているので、間に合わないんじゃ…?と気が気ではない。
「あの~スタンプどこですか?」と改札の駅員氏に聞くと
「そこのガラスのショーケースの中ですよ」
何でそんな妙な場所に設置しているんだ?


何とか「あそ1962」の発車までにスタンプをゲットして、やれやれと乗車。
この観光列車に乗るのも久し振りだねぇ。という訳で、自転車置きスペース兼ビュッフェ(凄い組み合わせだ)に設置されているスタンプを捺したら早速、車内販売の阿蘇地ビールを買ってそのまま乾杯。


「あそ1962」の終着駅熊本に到着後、「リレーつばめ19号」から「つばめ19号」と乗り継いで、今度は九州新幹線を終点の鹿児島中央まで乗り通し、鹿児島中央駅から日豊本線の普通列車で本日最後のスタンプ目的地・霧島神宮駅へ。



霧島神宮駅は山の中の小さな駅だった。
まだ午後7時半なのに、駅の周りは真っ暗で静まり返っていて、どこからか河鹿(かじか)蛙の鳴き声が聴こえてくる。
駅の待合室も静まり返っていて、既に窓口も閉まっている。
「あれ?この駅では終列車までスタンプが捺せる筈なんだが…窓口の中にスタンプが引き上げられてたら困るな。」
しかし心配するまでも無く、窓口の前にはスタンプがポツンと置かれ旅人を待っていた。

「何だか侘しいなぁ。。。」


ともあれ、無事に霧島神宮駅のスタンプをゲットして、本日の予定は終了、同時にスタンプも昨日捺し損ねた佐世保駅を残すのみとなった。
今日は一旦、熊本の自宅に帰る。明日は残る佐世保駅のスタンプをゲットして見事コンプリートを目指す!

平成19年5月14日(乗り放題3日目/最終日)

朝から新八代駅に向かい、博多行き特急「リレーつばめ34号」に乗車。

一晩だけでも実家に戻って慣れた寝床で休んだので、かなり体力を回復した。以前は夜行列車での連泊も平気だったのだが、三十路を越えて体力も下り坂のせいか最近では「夜汽車疲れ」を覚えるようになった。我ながら哀れなものだ。
「齢は取りたくないね。。。」

博多駅からは寝台特急「はやぶさ」に乗車。昨日も乗ったが、ずっと寝ていたので今日もう一度乗り直す。
特急「リレーつばめ」「有明」で乗るのとは一味違う鹿児島本線の旅を楽しんで、正午前に熊本駅に到着。

7月21日のJAXA宇宙科学研究本部相模原キャンパス一般公開には、はやぶさに乗って行こう。今度はヒルネ(昼間の寝台車の座席利用)じゃなくて、ちゃんと夜に寝台車のベッドで寝るぞ。」


熊本駅到着後、熊本市内で野暮用を済ませてから博多行き特急「リレーつばめ12号」に乗車。鳥栖駅で佐世保行き特急「みどり17号」に乗り換える。
いよいよJR九州20周年記念「スタンプラリー20」の旅も最終目的地へのアプローチに入った。この列車の終点・佐世保駅で一昨日捺し損ねたスタンプをゲットすれば目出度く20個コンプリート!
途中、昨年秋に小惑星探査機「はやぶさ」の講演会を聴きに行った佐賀県立宇宙科学館の最寄り駅・武雄温泉駅を通り(高架化工事がだいぶ進捗してるな~)、早岐駅で進行方向を変え、漸く傾きかけた夕陽に向かって佐世保駅のスタンプに向かってハイパーサルーン「みどり」号はラストスパート!


17時12分、「みどり17号」は定刻に佐世保駅に到着。すぐにプラットホームの階段を駆け下り、改札口近くにある筈のスタンプを目指す!


20個目の、最後のスタンプをパスポートに捺す。
「スタンプ、コンプリート!」
終わった…
JR九州20周年記念「スタンプラリー20」の旅、完了!!

最後のスタンプには佐世保名物「佐世保バーカー」が描かれている。
「ここは一つ、旅の終りを記念して美味しい物でも食べるか!」
佐世保駅の観光案内所で駅に近い佐世保バーガーの有名店を教えてもらい、商店街のアーケードまで歩いて買いに行く。世界中どこでも同じ店構え同じ味の大手チェーン店とは違い、スタッフのこだわりが感じられる店でハンバーグを焼くところから作ってもらった本物の佐世保バーガー。佐世保駅構内のスーパーでビールも買って、折り返し「特急みどり22号」の早い者勝ち展望かぶりつきシート(自由席なのだ)に陣取り、さあ始めよう。

「スタンプラリー20完了万歳、乾杯!」

ハイパーサルーン先頭車かぶりつきで前面展望を満喫しながらかぶりついた佐世保バーガー、大変美味しゅう御座いました。


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2007GW遠回り旅行記 イギリス鉄道乗り放題・後編~最北端へ~

2007-05-22 | 旅行
(写真:グリニッジ天文台のドーム)

2007年5月1日

旅に出てから実に3日ぶりにまともなベッドで眠ったので、朝から気分爽快。
スコットランド名物のボリュームたっぷりの朝食も旨い。
「脂っこくて臭くて凄い」と名高い名物料理のハギスもあったので試してみる。羊の内臓を香辛料やらその他よく分からないものと混ぜ合わせて茹でたものなのだが、臭みもそれ程なくて案外食べやすい。
「案外いけるじゃないか。英国料理は世界一マズイと聞いてたが、そんなことないな」
そう、英国料理はそんなに酷いものではなかったのである、この日までは。。。

朝食を済ませてからホテルのすぐ隣のインヴァネス駅へ。
いよいよ英国鉄道最北端への旅が始まる。
インヴァネス10:39発、Thurso/Wick行き列車に乗車。昨日エディンバラからここまで乗ってきたのと同じタイプの2輌ユニットのディーゼルカー。車内は遊びに繰り出す若い連中や家族連れの行楽客で賑やか。最北端へと向かう最果て列車というイメージではない。
この列車、「トーマスクック時刻表」によると全車2等車とあるが、僕の伝家の宝刀「ブリティッシュ・レイルパス(1等車用)」を見た車掌氏は「隣の“サロン”に行きなさいな」と運転席の後ろの小部屋のドアを開けて手招きする。行ってみると車両の端の区画を仕切った小さな1等席部屋があった。座席は隣の2等と同じものだが、他に誰もいないので静かだし気を使わなくて済むから助かる。
列車は定刻にインヴァネス駅を発車。駅構内で大きくカーブを切り、一路北に向けて走り始めた。


列車は入り組んだ湾に沿って北上する。
かなりの高緯度地域を走っているのだが、夏至間近のスコットランドは陽光に満ち溢れ風景も光り輝いている。今がまさに一年で一番いい季節なのだろう。
海と平野(牧草地か荒野)を交互に見ながら、列車は快走する。
海岸は石ころだらけの磯が続いていたが、所々には砂浜もあった。夏場は海水浴客で賑わうのだろうか。北海の水は冷たそうだけどな。



途中駅で列車交換。
擦れ違う列車は重厚な茶色の豪華車両。オリエントエクスプレスホテルズ社が運行するクルーズトレイン「The Royal Scotsman」だった。車内には優雅なダイニングにカクテルグラスが並んでいるのが見える。
この列車、スコットランド各地を1週間!もかけてゆっくり観て回るツアーを組んでいるらしい。一度は乗ってみたいものである。

延々と続く平原と荒地、樹が生えていない小高い山地、そして牧草地。
羊の親子とうさぎが遊びまわる、絵本のピーターラビットの世界そのままの風景の中をひたすら北上。
時々「♪ラララ~ララ~」と御機嫌に鼻唄をうたいながらやってくるワゴンサービスのおっちゃんから紅茶やビスケットを買って(この列車のワゴンサービスは1等サロンの乗客からも紅茶代1.55ポンドを徴収する。ちょっとセコイ)スコットランドの汽車旅を満喫する。


やがて平原の向こうから線路が近付いてきて合流したところで分岐駅Georgemasに到着。列車はここからちょっと面白い運行をする。
インヴァネスから英国最北端を目指す路線は、その最先端部がY字型に分岐していて終着駅が2つある。文字通り英国最北端のThurso駅と、やや南下して北海に臨むWick駅とがあるのだが、列車は先ずThurso駅へと向かった後でスイッチバックして分岐駅まで戻り、改めてWick駅へと向かう「行ったり来たりダイヤ」が組まれているのだ。
こういう運行は日本では考えられない。鉄道好きには堪らん愉快な列車運用だ。

分岐駅に到着した列車の運転士が、最後尾の運転席へと移動する。JR九州の肥薩線大畑駅・真幸駅や豊肥本線立野駅でもお馴染みのシーンだ。


折り返した列車は牧草地の中をゴロゴロ走り、Thursoに到着。
ここは名の知れた観光地らしく、殆どの乗客が下車。

最北端の駅、といっても日本の稚内駅のようなどん詰まり感は全くない、あっけらかんとしたThursoを折り返して、さっき走った線路を再び通り分岐駅へと戻る。改めて、終着駅Wickを目指す。

Wickは観光とは縁のない地味な街のようで、寂寥感の漂う終着駅に列車は静かに到着した。

着いた…ここが英国鉄道の終着駅だ。



Wickの駅舎は小奇麗に整備されているが、乗り場は1面1線しかない。駅舎を出てみると、駅舎の周りには広大な駅構内の遺構が広がっていた。
「ここはきっと昔は賑やかな駅だったんだろうな…ヤードの跡があるから貨物列車がたくさん発着していたんだろうな。今はこの路線は貨物の扱いはやっていないようだが…何だか筑豊や北海道のターミナル駅に似てるな」
実際、この駅は北海道の没落した幹線のターミナル駅…根室駅や様似駅、増毛駅とか…に雰囲気がよく似ている。

折り返し列車の発車まで小一時間程あるので、Wickの街を歩いてみる。
駅は病院か工場のような大きな建物の裏にあるので寂しかったが、ちょっと歩くとそれなりに繁華な通りに出た。河沿いに坂の多い街並みが続いている。河はすぐに北海に注ぐ河口になっているようで、港が見える。漁港と北海油田の基地になっているのだろう。

港があるので、活きのいい魚があるだろう。フィッシュアンドチップスでもつまもうかと思い商店街を歩くが、既にランチタイムを過ぎているせいか店には売り切れの看板が出ている。
本屋兼文房具屋で絵葉書代わりにグリーティングカードを買って(イギリス人はちょっとした手紙を書くのが大好きなようで、文具店には膨大な種類のカード類が揃っている)、さあ帰ろうか。


再び最北端のThurso駅まで行ったり来たりして、インヴァネスへと帰る。
もう午後も遅い時間になったが、陽の光はギラギラ強いままゆっくり傾いていく。余り遅い時間まで明るいと、何か気だるくて却ってメランコリックな気分になるという事に気がついた。

帰りの車中でも鼻唄親父のワゴンサービスから紅茶を買ってまったり過ごす。
まだまだ明るいが、流石に遊び疲れたのか牧草地で羊の仔が眠りについている。
午後8時、インヴァネス駅に到着。



インヴァネス駅ではちょうどロンドンからの直通特急が到着し、それを待っていたロンドン行きの寝台列車が発車するところだった。
ロンドン・キングズクロス駅からやってきた特急は昨日乗ったフライングスコッツマンと同じ系統だが、エディンバラから先は非電化区間を走行するのでディーゼル機関車が使われる「インターシティ125」と呼ばれるタイプ。ちなみに125とは最高速度時速125マイルで走るという意味らしい。125マイル≒200キロだから、ディーゼル機関車の癖にとんでもない俊足である。

丸っこくて愛嬌のあるインターシティ125の機関車。近づくと地響きのようなディーゼルエンジンの咆哮が身体に響き、車体を包む煤煙に思わずむせる。
それにしてもこの機関車、僕が小学校に入ったばかりのころ学校図書室で見た「世界の鉄道」という本に写真が載っていたから既に相当年季が入っている筈なのに、よく手入れされているので状態が良くてまだまだ現役バリバリという風情だ。
イギリス人は物を捨てるということを知らない、と言われるが、この徹底的に使い倒す精神は「モッタイナイ」という言葉を忘れかけている我々日本人も見習いたいところ。

ロンドン行きの寝台列車の発車を見送ってから、昨日も行ったドラッグストアで「ホッピー」のような不思議なアルコール飲料を買ってホテルに戻り、英国鉄道最北端到達を祝って独りで乾杯。


2007年5月2日

今日はインヴァネスを後にして、イギリスを南下。
スコットランドで一番の大都市グラスゴーへと向かう。
列車に乗り込む前にホテルの朝食ビュッフェで腹ごしらえ。昨日味を占めたハギスを大盛りにして頬張ると「ん?昨日のとちょっと風味が違うな。なんか少し生臭いような…」

果たして、ホテルをチェックアウトして列車に乗り込むと猛烈な腹痛。
「ヤラレタ…」
結局、乗り換え駅のアバディーンに着くまでずっと座席とトイレを往復する羽目に。身体中の水分を搾り取られたような酷い気分。
「昨日は何ともなかったのにな…ハギス恐るべし!まあ身体が疲れ始めているせいもあるだろうが…」
アバディーンは「花の都」と呼ばれる美しい街らしいが駅から出る気力も失せ、さっさとグラスゴー行きの列車に乗り換える。

グラスゴーは6年前に初めてイギリスに来た時に、道中知り合った人と一緒に飛び込みでチェックインした懐かしいホテルを予約してあり楽しみだったのだが、体調が最悪なので思い出深い街並みを見ても感慨もへったくれもない。
それでもホテルの部屋で暫くベッドに横になっていると段々気分が良くなってきた。
「ハギスを身体から追い出したからもう大丈夫かな。せっかくブリティシュ・レイルパスを持ってるんだからエディンバラに遊びに行こう!」

スコットランド一の大都会グラスゴーからスコットランドの首都エディンバラまでは小一時間でアクセス出来るし、往来も盛んなので直通列車が1日中ひっきりなしに往復している。
グラスゴーに2つあるターミナル駅の一つ、クイーンストリート駅から郊外電車に乗って出発。学校帰りの制服姿の中高生やサラリーマンが多数乗車する庶民的な路線で、例えるなら博多から小倉まで特急「ソニック」や「有明」で移動する感覚に近い。


遅い午後の陽射しの中、エディンバラ旧市街を散策。
6年前にもこの通りを歩いて、その重厚な雰囲気に圧倒されて感動したものだが、今こうして再び歩くと「所謂観光地だな」としか思わない。昔の自分は純真だったのかも知れない。


夕陽に照らされたエディンバラ城を眺めてから帰途に着く。
帰りは別路線を通って行こう。
駅の発着案内を見ると、グラスゴーのセントラル駅行きの特急列車がある。これに乗るか。
フライングスコッツマンの発着するホームで待つ事暫し。現れたのは…

ヴァージン鉄道の新型車両「ボイジャー」だった!

航空会社から金融、レコード店、コーラの製造販売まで手掛ける英国ヴァージングループは鉄道業界にも進出しているが、いかにもヴァージンらしいお洒落でぶっ飛んだサービスを展開するので注目されている。
この「ボイジャー」は地方路線の品質向上を目論んで投入されたもので、コンセプト的には日本のJR九州が展開する新型特急に近いと思われる。即ち、「高品質な車両」「耳目を集めるデザイン=目立ったもん勝ち!」「上質な車内サービス」といったところか。
そう思って見るとこの「ボイジャー」、JR九州の「ソニック883」と雰囲気がそっくりなんだよな。名前もNASAの外惑星探査機と同じでカッコいい。
「ボイジャー」はエディンバラで殆どの乗客を降ろしてしまい、ガラガラで発車。
車内は無機質にまとめられていて非常にスッキリしている。ヴァージンメガストアの店内のような雰囲気と言えばいいのだろうか(福岡店にしか行ったことがないからよく知らないけど)。

到着したグラスゴー中央駅はホテルのすぐ横なので、そのまま帰って就寝。早く体調を戻さないと。

2007年5月3日

今日はグラスゴーからさらに南下して、ロンドンへと戻る。
グラスゴー中央駅から乗車したロンドン・ユーストン駅行きの西海岸線経由の特急列車は、昨日の「ボイジャー」と同じくヴァージンの運行する列車。最新式の振り子電車「ペンドリーノ」だ。

ヴァージンの列車らしく、原色の赤や黄を大胆にあしらったデザインで、フェレットの顔を想わせる愛嬌たっぷりの先頭車が何とも可愛らしい。東海岸線を走る特急「フライングスコッツマン」が伝統と格式を感じさせる英国紳士のような濃紺の重厚ボディなのと好対照だ。

グラスゴー中央駅を静かに発車した「ペンドリーノ」は郊外に出ると振り子機構をフル作動させて車体を小気味良く傾けながら、凄まじい勢いで疾走していく。軽く時速200キロ以上は出ているんではないだろうか?
疾走する列車の1等車内では、お洒落な真っ赤な制服の車掌氏による検札が済むと優雅にプルマンスタイル(座席まで食事を運んできてくれる)の朝食サービスが始まった。座席に置かれたメニュー表によると「ペンドリーノ」では時間帯ごとに数パターンの食事サービスが実施されているらしいが、午前中発の列車では「軽い朝食(PENDOLINO LIGHT BREAKFAST)」サービスが実施される。ちなみに早朝便では「本格的な英国式朝食」、昼以降はランチメニュー、以後アフタヌーンティーと更にフルコースの夕食…と続く模様。
さて「軽い朝食」とはどんなものかと思ったら、山盛りのスクランブルドエッグにベーコンとソーセージが鎮座した皿が出てきた。更にバスケット一杯のパンと飲み物はアルコール類を含めて飲み放題である。「どこが“軽い”朝食なんだよ!」
とか何とか言いながら、しっかり朝からワインをお替りする。
朝食が済む頃に、ようやく最初の停車駅カーライルに到着。すると駅発車後に今度はサンドイッチが出てきた。その後、プレストンとどこかに停車した筈だが、その都度ケーキやら何やら新しいメニューがワゴンで運ばれて来る。

結局、ロンドン・ユーストンに到着するまでひたすら食べ続け飲み続けたのであった。。。これで食事代はすべて乗車券込みだから、「ブリティッシュ・レイルパス」で乗車している僕は完全にタダ食いしてる感覚である。それにしても、これだけの食事サービスを僕のような予約していない乗客にまで徹底的に提供する体制は凄い。ヴァージン恐るべし!である。これだけのサービスが受けられるなら、スコットランドとロンドンを旅行する人はヴァージンに乗りたがるよなぁ。。。これがヴァージンの「サービス戦略」か。

食べ放題特急は昼下がりのロンドン・ユーストン駅に到着した。昨日、食中りを起こしたばかりなのにまた飽食したせいで体調が悪い(当たり前だ)。すぐに地下鉄で予約してあるホテルへと向かう。また初乗り900円の切符を買うのは癪なので、殆ど値段の変わらない1日乗り放題券を買ってチャリングクロス駅近くのホテルへ。部屋で暫く休憩してから、チャリングクロス駅から出る郊外電車に乗る。向かうのはロンドン郊外、本初子午線の通る丘。


テムズ河畔のグリニッジ駅で降りて、大学のキャンパスを通り抜け、グリニッジパークの中の小高い丘の上に建つ、グリニッジ天文台。
経度0度、世界標準時の基本となる地だ。
ハレー彗星の軌道計算で知られるエドモンド・ハレーもかつて台長を勤めたことで知られるこの天文台、宇宙探査好きとしては是非一度訪れてみたかったのだ。
念願叶って辿り着いたグリニッジ天文台はハイキングに来たら最高に楽しめそうな芝生が気持ちのいい公園のど真ん中にあった。実際、ピクニックがてら遊びに来たような観光客が多い。芝生に立って天文台のドームを見上げていると、リスが木から降りて来てズボンの裾を引っ張り餌を催促する。

残念ながら開館時間は終了していたので建物の中には入れなかったが、中庭に1本の線が引いてあるのが柵越しに見えた。あれが正真正銘の本初子午線、経度0°0′0″だ。

本初子午線は当然ながら中庭を突っ切り、グリニッジ天文台の外へと延びている。天文台の塀には本初子午線の位置を示す線が刻印されている。その線に日本から持参した「SEIKO鉄道時計」をあてがって記念撮影。

でも、よく考えると今イギリスではサマータイムを使用している時期だから、正確にはグリニッジ標準時のお膝元では標準時より1時間先行しているんだよな。とか考えながらも、満足してロンドンに帰る。そのまま地下鉄に乗ってロンドン名物の時計塔「ビッグベン」の鐘の音を聴きに行って、時計尽くしのロンドン観光は終了。

2007年5月4日

今日の夕方のヒースロー空港発香港行きキャセイパシフィックに乗って、再び南回りで日本に帰る。
時間があるので、ホテルをチェックアウトしてから荷物を預かってもらい(預かり賃を取られた。ロンドンは何かとカネのかかる街だな…)、大英博物館へ。

大英博物館は世界有数の規模を誇る一大ミュージアムなので、とても帰国前の数時間で見てしまえるものではない。「また今度、ゆっくり来るさ…」と割り切って、めぼしいところだけを駆け足で見て回る。それでも膨大な展示が波のように押し寄せてきて、すっかりクタクタになる程。

一番の目玉展示は、やはりロゼッタストーンだろうか。
周囲を取り囲む人の群れは途切れる事がない。その人垣の中に紛れていると、あちこちから日本語が聞こえてくる。
古代ヒエログリフの謎を現代に伝えてくれたこの石碑は、一人旅の男に故郷の言葉も届けてくれる。
「ふるさとの訛りなつかし ロゼッタストーンの人込みの中に そを聞きに行く」

日本を紹介したコーナーを見に行くと、入り口に巨大な日本地図の衝立があった。西洋製の物ではなく、江戸期以前に日本国内で作成されたもののようだ。毛筆でびっしりと各地の地名が書き込まれている。覗き込んでよく見ると、僕の住む熊本の田舎町の旧地名もしっかり書かれていて驚く。
すると横に立っていた初老の白人紳士から「読めますか?」と流暢な日本語で話しかけられる。
「はい、読めます!…ここに、僕の住んでいる町の名前が書いてありましたよ。」

今から経度130度の彼方にあるこの町まで、地球の丸さまで体感しつつ遠回りして帰るとしよう。


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2007GW遠回り旅行記 イギリス鉄道乗り放題・前編

2007-05-17 | 旅行
(写真:夕陽のエディンバラ城)

福岡発台北・香港経由ロンドン行きの南回り格安航空券で寄り道しながらイギリスを目指す今回の旅。
最初の寄港地、台湾で1日滞在して、旧型鈍行「平快」と開業間もない台湾高速鐡路(台湾新幹線)で台湾を一回りした僕は再び飛行機に乗り、次の寄港地・香港を目指した。

2007年4月29日夕刻(台湾時間)

台湾桃園空港から香港までの所要時間は僅か1時間半程度。
今日は朝から1日中列車に乗っていたので、満足に食事をしていない。「1時間半のフライトじゃ軽食かドリンクしか出ないだろうな」と思い、念の為に桃園空港の地下にある「怪しいコンビニ」(1タミの地下駐車場脇に隠れるようにある。街中でよく見かける店と同系列チェーンなのだが、途中でゴミ収集所や職員通路のような場所を通らないと辿り着けないし、とにかく雰囲気が怪しい。面白いので桃園空港に行かれるなら一度利用してみる事をおススメする)で台湾式コンビニ弁当を買って待合ロビーで腹ごしらえ。

20:20発、香港行きのキャセイパシフィック531便は名古屋のセントレアから飛んできた飛行機。機内で「中日新聞」なんぞを読んでいると、機内食が配られた。軽食ではなくてちゃんとしたホットミール。うむむ、さっきコンビニ弁当食べたばかりなのに。。。すっかり腹一杯になって香港チェク・ラプ・コック空港に到着。

さて、2つめの寄港地・香港に着いたが、香港では滞在はせずにすぐロンドン・ヒースロー空港行きの夜行便に乗り換える
香港23:55発、キャセイパシフィック251便。香港からは他に数便の欧州行き夜行便が設定されているようで、発着案内板には欧州各都市の表示が並ぶ。何となく、国鉄ブルートレイン全盛期の九州行き列車がたて続けに発車していた頃の東京駅のような独特の雰囲気。

香港を飛び立ったヒースロー空港行きジャンボは明日の早朝5:45着。明日に備えて、機内ではよく飲みよく食べ(我ながらホントよく食べるなあ。。。)よく眠る。アルコールと低い気圧のおかげで12時間殆ど前後不覚に眠り続け、早朝のロンドン・ヒースロー空港に到着した。
「やっと着いたか…」飲み過ぎと寝過ぎで腫れぼったい眼に朝陽が眩しいぜ。しかし南回りでイギリスまでの道程は流石に遠かった。。。

2007年4月30日

さてヒースロー空港には着いたが、今夜の宿は英国北部スコットランドのそのまた北部ハイランドのインヴァネス。ロンドンからは遠い、遥か北の街だ。すぐに北を目指さねば。
ヒースロー空港からロンドン市内へは地下鉄やタクシーでも行けるが、一番速くて快適とされるのが空港特急「ヒースローエクスプレス」。空港ターミナル直下の駅から僅か15分、ノンストップでロンドン・パディントン駅へアクセス出来る。しかし、この「ヒースローエクスプレス」、片道料金が何と15.5ポンド(3700円)!!ふざけてるのかこのアングロサクソン野郎!と叫びたくなる超強気の料金設定!!
しかし、僕は最強の「伝家の宝刀」を持っているのだ。英国全土の鉄道、しかも1等車が無条件に乗り放題になる「ブリティッシュ・レイルパス」だ。もちろん、「ヒースローエクスプレス」にも有効。早速、空港地下駅で「ブリティッシュ・レイルパス」をバリデード(通用開始手続き)してぼったくり特急に乗り込む。15分で降りるのがもったいないほどのゆったりシートのファーストクラス車(通常料金だと24.5ポンド、5900円!!!)は他に誰も乗っていなくて(当たり前だ)実に快適。
さて、パディントン駅からはスコットランド方面行き特急「フライングスコッツマン」の発着するキングズクロス駅へ移動しないといけないが、地下鉄で行くとこれが初乗り4ポンド、900円!!!
…何なんだこの国は。
「ブリティッシュ・レイルパス」では地下鉄に乗ることが出来ない。仕方なく、泣く泣く900円の初乗り切符を買って(切符自販機は日本語表示対応だった)、数駅先のキングズクロス駅へ。

キングズクロス駅から乗車するのがエディンバラ行き特急、通称「フライングスコッツマン」。かつての大英帝国の名列車の伝統を受け継ぐ特急列車だ。19世紀から運行されていたブリテン島東海岸線を辿ってロンドンとエディンバラを結ぶ特急列車は鉄道発祥の国イギリスの誇りとされ、第2次世界大戦中にはロンドンがドイツ第3帝国軍の空襲を受けている最中にも定刻の午前10時にキングズクロス駅を発車したという記録が残っている(但し、発車した記録は残っているが、その後どうなったのかという記録は残っていない)。

今日は先を急ぐので10時発ではなく8時発のエディンバラ行き特急に乗車。1等車の未予約席に座る(イギリスでは指定席車・自由席車の概念がなく、予約が入っている席は指定席に、誰も予約していない席は自由席扱いとなる。これは他の欧州諸国や台湾も同じ)と、車掌が恭しくパスを拝見し、目の前のテーブルに紅茶のポットと焼き菓子が置かれ、定刻にキングズクロス駅を発車した。よく晴れた初夏の朝、見ているだけで気持ちのいい平原の牧草地の中を列車は猛スピードで北へと疾走する。一つ驚いたのが、菜の花畑が多いこと。黄色い絨毯のような菜の花畑の中を突き進んでいくのは実に爽快。自分は1等車のゆったりしたシートに座って景色を眺めながら紅茶を飲んでいるだけで、あとは列車に任せていれば目的地へと連れて行ってくれる。これは内田百先生が東海道本線の超特急「つばめ」の展望車で感じていた「阿房列車の悦楽」そのものだ。
フライングスコッツマンはダイヤ通りに英国東海岸線を駆け抜け、定刻の12時30分にエディンバラ・ウェーバリー駅に到着した。1時間程度の延着が日常茶飯のイギリスの鉄道にしては上出来の、見事な走りっぷりであった。

エディンバラでローカル列車に乗り継ぎ、インヴァネスを目指す。
フライングスコッツマンが時間通りに走ってくれたおかげで乗り継ぎ時間にも余裕があるので、駅コンコースのドラッグストアで昼食を買出し。サンドイッチと同じ棚に並んでいた寿司を買う。レジで店員のおばちゃんから何やら言われるのだが、何やらパピプペポ音の妙に強調された喋り方で何を言ってるのかサッパリ分からない。スコットランド訛りのせいか、英語に聴こえないのだ。
何と答えたものか窮していると、向こうも諦めたのか棚から葡萄の粒の入った袋を持って来た。どうやら寿司にはおまけでデザートが付く、と言いたかったらしい。
おばちゃんのくれたお釣りを見ると、イングランドのものとはデザインの違うスコットランド銀行の青いポンド札だった。

エディンバラ発インヴァネス行きのディーゼル列車は短い編成だったが、ちゃんと1等席の区画があった。流石、階級社会のヨーロッパ。もっとも、乗ってるのはフルムーン旅行らしい老夫婦ばっかり。
隣の席のじいちゃんのトランクを荷物棚から降ろしてやると何故か車内のじいちゃんばあちゃん達から拍手されたりしながら、のんびりした午後の時間を過ごす。
車窓の風景が次第にハイランドらしい荒涼としたものに変化してきた。小川の水が茶色で「スコッチウイスキー色」をしている。スコットランドの風景は秋頃の阿蘇に似てるな、と思っているうちに列車はハイランドの都インヴァネスに到着した。

英文の駅名表記の下に、スコットランド語も書かれている。ここはもはやイングランドではない、もう一つのイギリスだ。
それにしても、もう午後5時を回っているというのに陽が高い!まだ真昼の空だぞこれは。
しかし、台湾以来数十時間も乗り物に乗りっ放しでさすがに疲れた。インヴァネス駅のすぐ横にあるステーションホテルにチェックイン。ああ、一っ風呂浴びてビールでも流し込みたい気分…と思ったら、バスタブなしの部屋か、あ~あ残念。


気を取り直してシャワーを浴び、サッパリしたところで窓を開けるともう午後7時過ぎだというのに外はまだ燦燦と陽が照りつけている。部屋でじっとしているのがもったいないような気がするので、ちょっと近所を散歩してみた。
インヴァネスは小さな町なのでちょっと歩くと主な見所は一通り回ることが出来る。まずは、駅前の商店街を抜けて行った先にあるインヴァネス城へ。
城というより邸宅といった感じの小さな建物。


インヴァネス城の建っている小高い丘からは、町の中心を流れるネス川を見下ろすことが出来る。
この川を遡っていくと、あのネス湖につながっている。
ネス湖までは5キロ程しか離れていないらしいので、その気になれば歩いて行けるだろう。
以前、友人Kの妹がイギリスに留学していた時に一人でネス湖まで遊びに行って「ヒッチハイクが捉まらなくて、仕方ないのでネス湖まで歩いた」と言ってたが、きっとこの川沿いの道を歩いて行ったんだろうな、などと思う。僕もよっぽど今からネス湖まで歩こうかと思ったが、ヨーロッパ行き南回り航路での強行軍で疲れが溜まってるので断念。今日はホテルに帰って大人しく寝ようと思う。まだ旅は続くのだ、しっかり休息を取ってリフレッシュしないと。
商店街の端のドラッグストアでギネスビールを買ってご帰館。
明日はいよいよ英国最北端の鉄道駅を目指す。
(続く)


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2007GW遠回り旅行記 台湾寄り道編

2007-05-12 | 旅行
(写真:左榮駅に停車中の台湾高速鐡路700T)


ゴールデンウィークにイギリスに遊びに行きました。
でも、いつものように成田から直行便の飛行機でシベリアを飛び越えて一直線に欧州入りしたのではない。
今回は敢えて遠回りの“南回り航路”で寄り道しながらの道中なのです。

かつての「格安航空券の定番ルート」であり学生旅行者やバックパッカー御用達というイメージの「ハードな旅行臭」が漂ってきそうな、魅惑的な南回り航路。
以前からある種の憧れがあったのだが、いかんせん勤め人の身としては遠回りフライトで貴重な休暇を浪費したくないという切実な気持ちがあり敬遠していたのだが、何気なくネットで調べてみたところ、多数のアジア系航空会社の路線が就航している九州・福岡空港発の場合は乗り継ぎ時間のタイミングが良ければ成田経由と殆ど所要時間が変わらないという事が分かった。しかも、途中の寄港地で寄り道が出来るし何といっても価格が安い!

…ということで、衝動的にネットで予約してしまった、福岡発台北・香港経由ロンドン行きキャセイパシフィック航空。
最初の寄港地の台湾で1日の滞在を組み込んで、先日ついに開業を果たした台湾高速鐡路(高鐡・台湾新幹線)の初乗りと絶滅寸前の旧型客車列車「平快」の乗り納めをしてから英国を目指す盛り沢山な日程である。

2007年4月28日

朝からJR特急「有明」で博多へ。
キャセイは福岡空港10:50発なので、成田経由時のように早朝1本のみの成田便に搭乗するべく福岡市内に前泊する必要がないのが嬉しい。
博多駅から地下鉄で数分で福岡空港に到着する。都心から数時間も掛かる成田と比べて、何と云うアクセスの良さよ!
でも、地下鉄は国内線ターミナルが終点なので、ここからシャトルバスに乗り換えないと国際線ターミナルに辿り着けない。
「滑走路の向こう側の国際線ターミナルまで数百メートルしか離れてないのに、何で向こう岸まで行ってくれないんだ!?」といつも思うのだが。

最近は格安航空券でも航空券本体は当日空港渡しということはなく、ちゃんとEチケットになっている。前日のうちにネットでチェックインも済ませられるので実に気楽だ。何の問題もなくボーディングパスを受け取り、出国手続きを済ませ、キャセイのエアバスの機内の人となる。機内食を食べているうちにエアバスは数時間前に出発した熊本県の自宅上空を飛び越え東シナ海を南下し、定刻に台湾桃園空港へ着陸した。
久し振りの台湾。どんよりした曇り空と、熱く湿った空気。この国に来るといつも「ああ、帰って来た…」という気分になるから不思議だ。

早速、桃園空港から最寄りの高鐡桃園駅直通のシャトルバスに乗って、待望の台湾新幹線に初乗車…といきたいところだが、そうしない。
まずは台北市内行きの高速バス國光号に乗って、台北駅へ。台北駅で台湾国鉄東部幹線の特急「自強号」の切符を買い、東海岸の街・花蓮へと向かう。
台湾新幹線は明日の最後の行程までお預けしておいて、先ずは東部幹線の旧型客車列車「藍色平快車」に乗ることにする。
蒸気機関車が似合いそうな日本製の旧型客車を連ねたレトロな鈍行列車「平快」は、一昔前の日本の汽車の香りがする懐かし列車として台湾国内の鐡路迷(鉄道ファン)のみならず日本の鉄道ファンの間でも人気が高まっているが、台湾新幹線開業後は台湾国鉄在来線の近代化が急ピッチで進む事が予想される事から、まもなく姿を消すと言われている。
この機会を逃したら、もう乗れないかも知れない貴重な平快車。日本出発前にプリントアウトしてきた最新版の台湾国鉄オンライン時刻表によると、東部幹線北部の宜蘭~花蓮間に1日2往復程の列車が運行を続けている事が分かる。台北駅を午後2時半に発車したこの自強号で東部幹線を南下すると、途中どこかの駅で花蓮を17時5分に発車した宜蘭行き平快と擦れ違う筈だ。その手前の駅で自強号を降りて、やってくる平快を捉まえればいい。さて、どこの駅で自強を降りればいいものか…東部幹線を快走する自強号の車窓には美しい海岸線が続いているが、それには目もくれず時刻表のプリントと格闘し、線を引き、その場でこれからの行程を組み上げていく。なかなかスリリングな行為で、まさに哈台日本人鐡路迷としての腕の見せ所な訳だが、「時刻表を睨んであーだこーだ考えてる日本人」の姿は車中の台湾人乗客諸氏の目にはかなり奇妙なものに見えたかも知れない。。。
ともあれ、花蓮に行く途中の羅東という駅で特急「自強号」を乗り捨てて後続の普通電車に乗れば、崇徳という駅で平快車を捕まえられる事が分かった。
「よし、これで行こう!」

崇徳は台湾東海岸段丘の谷間にある小さな駅だった。
普通電車を降りて改札に向かい、身振り手振りで「折り返して宜蘭まで行きたい」と伝えようとするがなかなか通じない。そりゃそうだ、こんな小さな駅に突然日本人が現れて「今来た方に引き返したいよ」とか言っても、相手は意味不明で戸惑うばかりだろう。埒があかないのでメモに「我鐡路迷、希望乗車平快車往宜蘭」と書いて渡すと「ああ!あんた鉄道オタクか」って感じで一発で通じ、同時に大笑いされた。。。
「もうすぐ列車が来るから、急いでホームに行きな。切符は車内で買ってくれよ(多分そう言われてたんだと思われる)」
見るともう藍色平快車を連ねた宜蘭行き536列車が駅構内に入線して来ている。急いで乗り場へ向かうと、駅員氏が列車を待たせていてくれた。
「多謝!」
動き始めた列車のデッキから身を乗り出して駅員氏に手を振る。列車はすぐに速度を上げ、海岸段丘のトンネルに入って行った。



台北から自強号と普通電車を乗り継ぎ、時刻表を駆使してやっと乗車できた平快車。
平快乗車は昨年の夏休み以来だ
536列車は高速列車が行き交う台湾東部幹線を他の列車の隙間を縫うようにして進む。とはいえ、のんびり走っていると後続の特急に追い付かれてしまうので走行中はかなり速度を出す。窓もデッキも開けっ放しの車中にはトンネル通過の度に轟音と風圧が押し寄せ、老体をものともせず豪快に揺れながらぶっ飛ばすワイルドな走りを堪能することが出来る。
「日本の国鉄時代末期の常磐線や北陸本線の旧客鈍行列車はきっとこんな感じだったんだろうな」と思う。のんびりゆっくり走らない、飛ばし屋の旧型客車もまたいいものだ。
宜蘭が近付くと雨が降り始めた。
「確か去年乗った時も宜蘭では雨が降っていたな…」
雨に濡れた田んぼの畦道の匂いが車内に漂う。このしっとりした雰囲気は日本でもよく感じるものだ。日本と台湾の気候風土は実に共通点が多いんだな。でも日本ではもう鈍行列車の車内で雨の匂いをかぐ事は出来ないな。この国には「失われた日本の風情」がまだ生きている。

午後7時過ぎ、すっかり暗くなった宜蘭駅に到着。536列車はすぐに「機回し」を行い、折り返し537列車となって花蓮に帰る。僕もそのまま列車と一緒に花蓮に向かう事にする。
時間があるので一旦改札を出て、窓口で花蓮までの乗車券を購入する。
「ニーハォ、リーホォ。ホワィエン、ピンクヮイ!」これで通じた。
駅員氏が一瞬ニヤッと笑みを見せて「ピンクヮイ(平快)ね」と切符を打ち出す。ああ、きっとこの人も僕のことを「日本人の鉄道オタクか」とか思ってるんだろうな。。。

ところで、今まで旧型客車列車の事を「平快」と呼んできたが、実は台湾新幹線開業後に国鉄の制度が一部変更されたらしく、今では「普快」というらしい。でも、敢えて今まで慣れ親しんだ「平快」の呼び方で通してきたが、こうして駅の窓口でも「ピンクヮイ(平快)」で通じてしまうのでこの呼び方でも特に問題はないと思う。
もう間もなく消え去ってしまう碧い旧型客車、せっかくだから最後まで親しみを込めて「平快」と呼んでやりたい。

雨の中、今来た道を引き返す藍色平快車は、午後9時半、雨上がりの花蓮駅に到着した。
明日の早朝、再び宜蘭行きの534列車となって出発するまでそのまま花蓮駅のホームで眠りについた藍色平快車に別れを告げて、台東行きの東部幹線夜行キョ光号に乗り込み花蓮を後にする。


2007年4月29日
日本では今年から「昭和の日」となったこの日を、台湾東部幹線を走る夜行列車の車中で迎えた。
列車は霊峰ニイタカヤマ(玉山)を望む田園地帯を快走している。JRのグリーン車並みの居住性を誇る夜行キョ光号では短い時間ながらも熟睡したので爽快な朝を迎えることが出来た。もっとも旭日は拝めず、辺りの風景は朝霧が立ち込めてさながら水墨画の世界なのだが。
台東駅にほぼ定刻の午前6時過ぎに到着。駅構内にはインド製通勤型の藍色平快車を連ねた列車が待機している。台湾最南端を行く南廻線に朝夕2往復のみ残された平快車のひとつ352列車。昨日の郷愁漂う日本製客車の平快とは違って、ある種の泥臭さが魅力のこの列車に乗り、さらに南を目指す。
荒々しい海岸線と椰子の木の熱帯雨林、バナナやマンゴーの繁る果樹園を辿る南廻線をインド製の客車に乗って走っていると、自分が既に北回帰線直下の亜熱帯にいるんだということが実感できる。日本とかけ離れた南洋の気候風土、これも台湾のもう一つの素顔である。
352列車は途中駅で同じ藍色平快車の353列車と擦れ違う。碧い列車同士の貴重な離合シーンを瞼の裏に焼き付け、列車は終着駅・枋寮に到着した。朝霧はすっかり晴れ渡り、青い亜熱帯の空から強烈な夏の陽射しが降り注ぐ終着駅には、台湾南部の大都市・高雄へ向かう快適な冷房つき普快車が待っていた


ここまで、台湾の旧き佳き鉄道の旅をじっくりと堪能してきたが、高雄からは一転して台湾の最先端を疾走する超特急に乗り換えて一気に台北へと戻り台湾の旅を締めくくりたいと思う。今まで行きつ戻りつ一晩かけて辿ってきたが、ここからはあっという間だ。
台湾高速鐡路は台湾北部の首都・台北から西部海岸の主要都市を辿り、南部の大都会高雄を結ぶ…ということになっているが、実はまだ高雄での高鐡開業工事は完成していない。
高雄駅では高鐡を迎え入れるべく、日本統治時代に建てられた名建築で名高い駅舎を移動保存までして大々的に準備工事が行われたが結局間に合わず、暫定的に隣の左営駅を高雄側の終着駅とすることで2007年1月の開業に漕ぎつけた。現在でも高雄駅では高鐡の正式乗り入れと市内新交通システムの完成を目指し建設工事が続けられている。ちなみに日本時代の旧駅舎は工事完成後は再び元の位置まで曳き戻して復元するとのことで、気合が入りまくっているなー!
工事現場のような高雄駅のホームで名物の鐡路便當(台湾の駅弁。本格派パイコーハンで美味)をかき込んで腹ごしらえを済ませ、通勤電車で国鉄新左営駅へ。新幹線の駅に新○○という駅名を付けるのは日本と同じで面白い。

まるで国際空港のような巨大で豪華な新左営駅。いずれ高鐡高雄駅の工事が完成すれば通過駅となってしまうのに、こんな大規模なインフラを造って大丈夫か?と余計な心配までしてしまう。
ちなみに国鉄在来線は新左営駅だが高鐡では左営駅と表示されている。同じ駅舎内に同居しているのに駅名が違うので少々ややこしい。
さて、台湾新幹線は全席指定席。台北までの指定券を買わねば。何となく九州新幹線出水駅のみどりの窓口に似た雰囲気の高鐡左営駅のチケットカウンターに並び、女性オペレーターにカタコト英語で「1時間後の台北行き列車で台北まで、片道で」と告げると「今日の席は全部売り切れね」とのこと。何ー!?
まだ開業後間もないので運転本数も制限されており、1時間に1本しか運行していないせいか、座席数が供給不足のようだ。しかし困った、今日の夕方までに台北に戻らないと、次の寄港地香港行きのキャセイパシフィック航空に間に合わない。
「立席特急券とかないの?」
「エコノミーの席は全部ダメね。でも、ビジネスクラスなら席が残ってるよ」
やれやれ、それを先に言ってよ。ということで、何とか無事に台北行きビジネスクラス(グリーン車)指定券をゲット。2440台湾元(約9000円)也。
「うう、やっぱ高いな。。。この区間の切符代だけで、今まで乗ってきた平快の切符代の3倍以上するんじゃなかろうか。。。」
それでもグリーン車に乗れるのは嬉しい。早速ホームへ行って、出発までの間台湾新幹線700Tの車体を間近からじっくり観察しよう、と自動改札機にチケットを挿し込むと赤ランプが表示して弾かれる。すぐに駅員が飛んできて「発車15分前までホームには入れません」とのこと。仕方がないので、コンコースの端の窓から家族連れと並んでホームに居並ぶ700Tの雄姿を覗き見る。何か九州新幹線の開業時にも同じようにホームを覗き込んでるギャラリーが居たなあ…こういうのは日本でも台湾でも同じなのね。

ようやく入場時間になり、ホームで700Tと待望の御対面。
「う~ん、これは…JRの700系のぞみと殆ど同じだな」
前面デザインとカラーリングは高鐡オリジナルだが、その雰囲気は紛れもなく日本の700系新幹線そのものだった。
「まさかこれ程同じだとは…」
ホームから嘗めるように700Tの車体を見回すと、気がついた点が幾つかある。
「先頭部の造形は案外シャープでエッジが効いてるな。写真で見ると潰れたような感じで格好悪かったけど、現物は悪くないな。…車体の洗浄は余り丁寧じゃないな。窓ガラスに水垢が残ってるし、ボディも土埃が付いてるぞ。」





車内に入ってみる。
「日本メーカーの銘板類は…一切なしか。日本語の案内表示もないな。普通車の車内は色使いも700系とよく似ているけど、ビジネスクラスの車内は座席がワインレッドで独特の雰囲気だな。」

あれこれ観察しているうちに乗客がどんどん乗車してきた。発車時間も近付いてきたので、指定されたビジネスクラスの座席に腰掛ける。
僕は実は日本の700系のグリーン車には乗車した事がないのだが、後日ネットで確認したところモケットの色合いが違うだけで座席そのものは700系のグリーン車と同じもののようだ。読書灯とオーディオのサービスがあり、ヘッドフォンを挿し込んでみると日本語のポップスが流れていた。
高鐡416列車(台湾新幹線には列車愛称はない)は定刻の14:25、滑るように左営駅を出発した。すぐにグングン加速していく。当たり前だが、日本の新幹線と全く同じ走りだ。
「ああ、700Tはやっぱり新幹線だ。とうとう台湾に新幹線が走り始めたんだな…!」
僕に指定された席は通路側だったが、隣の乗客の顔越しに車窓に広がる南台湾の田園が見える。
「車窓が見やすいな。そうか、線路はヨーロッパ規格で建造したから、日本と違って防音壁が低いんだ。それに、トンネルが殆ど無いな。」
車窓に見入っていると、隣席の乗客と目が合った。にこやかに話し掛けられるが、台湾語なので聞き取れない。「スミマセン、分からない。日本人なもので。」
すると「日本人デスカ?」とカタコトの日本語で言われ、嬉しそうに握手を求められた。
「私は新竹に行きます」
「次の駅ですね。もうすぐ着きますよ」
「ああ、もう降りなければ…じゃあ、サヨウナラ日本の人」
言葉を交わしたのはこれだけだが、あの親しみのこもった笑顔が嬉しかった。

台北が近付くと、700Tは地下に潜りそのまま国鉄台北駅に滑り込んだ。すぐ隣の線路を在来線の特急「自強号」が走っていく。
地下ホームからエスカレーターで地上に登ると、昨日花蓮行きの切符を買った台北駅のコンコースに出た。
「ああ、本当に新幹線で台北まで来ちゃったよ。。。まだ実感がないな。この駅の地下に新幹線がいるなんて。本当に夢みたいだ」
日本の新幹線とは異なるヨーロッパ式の規格で敷かれた線路を走るとはいえ、700Tは間違いなく日本の新幹線の走りを見せてくれた。
この「新しい新幹線」が、今後どのように台湾の国土に根付き、台湾の人達から愛され独自の発展を遂げていくのか。これから興味深く見守っていきたい。そして何より、また乗りたい!
今度は台北発の南下便に乗るぞ、と心の中で決めて、桃園空港行きバス國光号に乗り込んだ。


「さあ、次は香港、それからいよいよロンドンだ!」
ヨーロッパ行き南回り航路の旅はまだ続く!



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Virgintrainの朝食

2007-05-03 | 実況
まだイギリスをうろうろしている。
昨日はスコットランド名物のハギス(内臓料理。ゲテモノ、臭くて不味いと名高いイギリスが世界に誇る一品)を食べてみて噂どおりの不味さに大満足したが、今朝はグラスゴー中央駅から乗車したロンドン・ユーストン駅行きのバージントレインでイギリス式の大盛り脂こってりの朝食をサービスされる。
お洒落過ぎる車輌デザインと過剰気味なサービスで英国鉄道業界に殴り込みをかけるバージントレインはイギリスのJR九州みたいな会社。
しかし、さすがに朝からぶっといソーセージと山盛りベーコンはきつい…ブルートレイン北斗星の和朝食が恋しくなってきた僕はやっぱり日本人だな。

英国鉄道最北端に到達

2007-05-02 | 実況
昨日はフライングスコッツマンでスコットランドのエジンバラへ向かい、列車を乗り継いでハイランドの中心都市インバネスに到着した。ここはネッシーで有名なネス湖の入り口の街。
実はここまで予定通りに来れるかどうかが今回の旅の一番の懸案事項だったのだ。鉄道発祥国であるにというのにダイヤの乱れや運行トラブルが日常茶飯事のイギリスの鉄道で、長距離移動と乗り継ぎを組み合わせたクリティカルな旅程をこなすのは危険な行為とされているのだが、今回は英国鉄道も頑張って走ってくれてすべて定刻通りに計画を完了することが出来たのだ。
さてインバネスで一泊し、朝から再び列車に乗り込みさらにハイランドの北の果てを目指す。果てなく続く牧草地と荒れた平原の果ての最北の二つの終着駅、ThursoとWickに2輛編成のディーゼルカーが到着する。