天燈茶房 TENDANCAFE

さあ、皆さん どうぞこちらへ!いろんなタバコが取り揃えてあります。
どれからなりとおためしください

2013初夏・北欧バルト海紀行 #007:Science Centre AHHAA -タルトゥ科学館「AHHAA」-

2013-05-18 | 博物館・美術館に行く

#006:タリン→タルトゥ ハイテクITバスで行く、エストニア縦断快適バス旅行からの続き

タリンからの高速バスが到着したバスターミナルはタルトゥの新市街の中心部にあり、
周辺には巨大なショッピングモールやホテル、オフィスビル等が林立しています。


僕が今夜泊まるホテルもバスターミナルのすぐ近くにあり、屋上に目立つネオン看板を立てていたのですぐに分かりました。
ホテルにチェックインして、部屋に荷物を置いたらすぐに出かけます。
行く先は、これまたバスターミナルのすぐ裏にある、近代的な建物。Science Centre AHHAA(タルトゥ科学館「アハー」)です!

エストニア国内で最大最新の科学教育施設であり、広く北欧・バルト三国地域全体からも注目を集めるこの科学館「AHHAA」、
科学することの素晴らしさを広く人々に伝えたいとの想いが結集した、数々の最先端かつユニークな展示を行なっています。
その目玉ともいうべき展示設備が、360度全天球プラネタリウム!
通常のプラネタリウムが半球状のお椀を伏せたようなドーム屋根を見上げるように星空やデジタル映像を映し出すのに対し、この「全天球プラネタリウム」は何と、ボールのように完全な球体の中に浮かぶように座席が設置されており、頭上のみならず足下まで星空や映像が投影されて観る者の周囲が完全に星空に包まれるというのです!!

まるで宇宙空間に浮かんでいるような不思議な感覚を体感出来るというこの「全天球プラネタリウム」を創ったのは、
スーパープラネタリウム「MEGASTAR」シリーズの開発者として知られる日本人プラネタリウムクリエーター、大平貴之氏
AHHAAは、ヨーロッパで最初のMEGASTAR常設館であり、そして世界初の全球スクリーンを持つ全く新しいスタイルのプラネタリウムとして2011年5月にデビューした、世界中のプラネタリウム関係者とプラネタリウム愛好者とそして宇宙ファンから熱い注目を集める場所なのです!
僕も、この「全天球プラネタリウム」を観たくて、タルトゥまでやって来たのです。

憧れの「全天球プラネタリウム」を体感すべく、AHHAAのチケット売り場に並んで片言英語でプラネタリウムのチケットを欲しい旨をスタッフに伝えます。すると、
「プラネタリウムは1時間に1回上映してるけど、次の上映回から2回続けて満席なので、3時間後の午後4時からの回になるけどそれでもいい?」
とのこと。勿論OKです。3時間待つ位、どうってことありません。ついでに、ここまでやって来てたった1回しか観ないのは勿体無いので
「No problem!…あの、午後4時の後にもう1回プラネタリウムを観たいんだけど、いいかな?」
と聞いてみると、一瞬「えっ!?」という表情の後で
「あのね…プラネタリウムは毎回同じ内容のプログラムを上映するのよ。それに、解説はエストニア語だから、日本人のあなたに解説内容が理解できるかしら?」
というようなことを言われます。まぁ、ごもっともな反応です。
しかし、ここで喰い下がる訳にはいきません。僕がエストニア語の解説とは無関係に、とにかく「全天球プラネタリウム」を味わいたくて地球の裏からここまで来たんだということを伝えなくてはなりません。
「OK、OK…それもNo problem!僕は…プラネタリウムが大好きなんだ!Planetarium loverなんだ!Mr.オーヒラのMEGASTARが何度も観たくてたまらないんだ!だから、チケットを2回分売ってくれないかな。頼むよ…」
ここまで言うと、さすがにAHHAAのスタッフ氏も僕の熱意を理解したというか半分呆れたようで、苦笑しながら
「はい、午後4時の次は午後6時からの回が空いてるわ。科学館は午後7時で閉まるけど、館内の展示も観る?」
とチケットを発券してくれました。やれやれ(笑)

AHHAAのプラネタリウム観覧料は1回4ユーロ、展示施設の入館料は12ユーロ。
タリンからタルトゥまで走行距離200キロ弱の高速バスのチケット代が10ユーロちょっとでしたので、それと比較しても随分割高です。
総じて物価が安いというエストニアにしてはかなり高額な料金の筈ですが、それでもAHHAAは日曜日の午後ということもあってか家族連れを中心に大賑わいです。この国には科学する心を大切にする家族が多いのかと思うと嬉しくなりますね!
僕も「全天球プラネタリウム」の上映が始まるまで、AHHAAの展示を見て回ることにしましょう。



AHHAAテクノロジー分野展示ホール全景。

AHHAAの展示はとにかくユニーク、そしてお洒落で上品!
大人も子どもも、すべての人が科学を楽しめるよう工夫をこらされた体験型の展示が並ぶゆったりとしたホールを、リラックスして見て回ることが出来ます。


例えば、ネイチャーホールのひよこの展示。
何と、孵化寸前の鶏の卵を孵卵器機能を持つケース内に並べて、ひよこが実際に殻を破って産まれてくる様子をライブで目の前で見ることが出来るのです!
ケースの中には、さっき産まれたばかりらしいひよこちゃんが歩き回っていますよ!
よく見ると、今まさに中からひよこがくちばしで突いているらしきヒビ割れの入った卵も一つあります。しばらく見ていましたが、ひよこが出てくるにはまだ時間がかかりそうでした。
(あの卵のひよこちゃん、その後無事に産まれたかな?)


いかにも博物館らしい、正統派の(?)動物骨格標本の展示もあります。
その隣は、小さな水族館のアクアリウム。


こちらは、近年は日本の科学館でもよく見かけるようになった科学実験ショー。
お姉さん二人組(タルトゥ市内にある名門校・タルトゥ大学の学生さんアルバイトかな?)が液体の対流や化学反応や燃焼などを楽しく掛け合いながら実演解説中で、子どもたちの観客に終始大受け。
最後にエタノールか何かを気化させて風船に詰めて爆発燃焼させるという実験で締め括りましたが、ぼんやり見ていた僕に観客のお母さんが「あなた、何やってるの!早く耳を塞いで!!」というようなことを叫ぶので反射的に指を耳に突っ込むと、直後に部屋が振動する程の大音響が!!
耳を塞いでいなかったら、マジでヤバイところだった!お母さんThank You…
っていうか、本格的過ぎるぞAHHAAの大科学実験!!

エキシビジョンホールでは、宇宙関連の企画展を開催中でした。



お馴染みの、米ソ宇宙開発競争史。

企画展の展示でひときわ目を引いたのが、こちらの宇宙機の実機展示。



解説パネルには「スプートニク “コスモス2083”」とあります。
コスモス2083とは1990年に行われたソビエト連邦(当時)の人工衛星打ち上げミッションですが、どうやらそのミッションで使用された地球帰還カプセルのようですね。
しかしこのコスモス2083ミッション、どうやらその実態は軍事的な匂いの漂う偵察衛星だったようです。
有人宇宙船の「ボストーク」を改造した「Zenit-8」に宇宙飛行士の代わりにカメラとフィルムを載せて打ち上げ、地球周回軌道上で偵察活動を行った後に帰還カプセルが大気圏再突入して、撮影済みのフィルムとカメラ機材一式を丸ごと地上で回収していたということなのです。
球形のカプセルの左側に見える丸い穴が、偵察カメラのレンズを通す開口部らしい…。こんな不気味な目玉を持ったボールが宇宙空間から敵国を覗き見していたなんて、想像するだに薄気味悪いですね!
なかなかにヤバイ代物ですが、こんなブツが科学館で大っぴらに展示されるのも時代の流れ、地球があの頃よりは平和になったということでしょうか(しかもここは、コスモス2083が宇宙に飛んだ翌年にソ連から独立を勝ち取ったエストニアですからね…)。
※“コスモス2083”ミッションの詳細事項とZenit-8等の宇宙船についての情報は、旧ソ連とロシア関連の宇宙機に詳しいTwitter宇宙クラスタのけいけいさん(@Kei_Kei_Twi)に教えて頂きました。ありがとうございます)

宇宙関連の展示で、興味深いものがもう一つありました。




エストニア共和国初の人工衛星、ESTCube-1です!これは地上試験用の試作モデルでしょうか。

AHHAAの地元・タルトゥ大学とタリン工科大学とエストニア航空アカデミーの共同プロジェクトで、フィンランドとドイツの研究機関の支援を受けて2008年から開始されたものです。
大学が主体となって10cm角の超小型衛星を他の衛星とともにロケットに相乗りさせて打ち上げるいわゆる「キューブサット」なのですが、このESTCube-1はとんでもない冒険的ミッションを目指しています。
何と「宇宙空間でテザー(ひも状の物体)を展開し、これに太陽風を受けて加速し、宇宙ヨットとなる!」
そう!「はやぶさ」の弟、我らのイカ坊こと、日本の小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」と同じように太陽からの力を帆で受けて宇宙空間を航行する宇宙ヨットを目指しているのです!!
IKAROS(イカロス)が太陽の光による光子加速を行うのに対し、ESTCube-1は太陽からの帯電粒子や太陽風をセイルに受けて加速するので基本的な加速方式は異なるのですが、太陽の力を帆に受け進む宇宙ヨットである点ではどちらも同じ。ESTCube-1はIKAROS(イカロス)の小さな弟のようで、何とも可愛らしく親しみが持てるではありませんか!



ESTCube-1はこの翌週、日本時間の5月7日に欧州宇宙機関(ESA)のVegaロケット2号機(くしくも、Vegaロケットは「はやぶさ2」の打ち上げ用ロケットとして使用することが検討されていた機体でもあります)で無事に打ち上げられ、宇宙へと旅立ちました。
日本の一宇宙ファンとして、宇宙ヨットESTCube-1の活躍とミッションの成功を心から祈っています。


AHHAA宇宙展の一画で見つけた、古典プラネタリウム“オルロイ”。
この美しい機械はやがて、時計と結びついてプラハやヨーロッパ各地の街角に時間と宇宙空間を表示し、
光学機械と結びついてドームの中に人工の星空を映し出しました。



そして今、オルロイはエストニアの文化都市タルトゥで9.3mの全球スクリーンを手に入れたスーパープラネタリウム「MEGASTAR」として、新たな姿に進化しました。
…そろそろ午後4時です。
「全天球プラネタリウム」に会いに行きましょう。


#008:MEGASTAR in AHHAA -世界初!360度全天球プラネタリウム-に続く


コメントを投稿