天燈茶房 TENDANCAFE

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どれからなりとおためしください

須弥山世界プラネタリウム~ベトナム・バデン山~

2024-03-16 | 映画・演劇・コンサートを観る
今からちょうど100年前の1923年、ドイツの地方都市イエナで生まれた近代的プラネタリウムの始祖「カールツァイスⅠ型」投影機は4900個とも言われる人工の星々を直径16mのドーム内の暗闇に映し出した。この「イエナの驚異」以来プラネタリウムは進化を続け、世界各地へと普及していく。
はじめは電球等の光源から放たれた光が恒星原板やピンホールの穴を通ってドーム天井に星を映し出す「光学式」だった投影機は1980年代頃からCGで再現された星空や映像をプロジェクターを用いて投映する「デジタル式」やフルドーム映像が登場し、「本物に近い人工の星空を昼間でも見る事ができる」というプラネタリウムの姿は大きく変わった。ドームいっぱいに映し出された美しい映像を楽しむエンターテイメント性が加わったのだ。
特に近年ではコンピュータグラフィックス技術の著しい向上に伴い思わず息を呑むような高精細な映像を描き出すことが可能になり、また世界各国で新進気鋭のクリエイター達がプラネタリウムで投映されるフルドーム映像の製作に挑むようになったことで作品の完成度が高まり、芸術作品としても高く評価されるようになっている。

日本でも2009年、翌年の地球帰還を目指して最後の奮闘を続けていた小惑星探査機「はやぶさ」の旅路を情感豊かに描き出したフルドーム映像作品「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」が大阪市立科学館プラネタリウムで公開され、その完成度の高さと芸術性で極めて高い評価を得て以後のプラネタリウム全天周映像の潮流を決定づける金字塔的作品となった事は周知の通り。
そのHAYABUSAを創り上げた映像クリエーター上坂浩光氏はその後も積極的にフルドーム映像作品の製作を続けられており、「ETERNAL RETURN」「MUSICA」「HORIZON」といったプラネタリウムファンなら一度は観たことがある名作の数々を生み出し続けている。

そんな上坂浩光監督の手掛けた新たな作品「須弥山世界」の投映が2022年からベトナムで始まった。
この作品は仏教の真髄に通ずる古代インドの哲学的世界観を描いたもので、何と仏教のテーマパークの礼拝堂で投映する為に作られたという。現在ベトナムには主に教育用の小規模なプラネタリウムしか存在していないようなので、これはベトナム初の本格的なフルドーム映像を投映するプラネタリウムの誕生と言えるかもしれない。ともあれ、実際に現地で実物を観てみたい。

プラネタリウム誕生百年の夏、最も先端的で特殊な進化を遂げた不思議なプラネタリウムを求めて、ベトナムへ旅に出ることにした。



インドシナ半島の東側、南シナ海に沿って南北1600kmに及ぶ国土を有するベトナム社会主義共和国
かつてサイゴンと呼ばれた南部の最大都市ホーチミン市は首都ハノイを凌ぐ900万の人口を有し、経済成長著しい市内には高層ビル群の谷間にフランスに侵略され植民地支配された時代の名残りであるコロニアル様式の建築やオペラハウスも混在するエキゾチックな街だ。
先ずは、日本各地の空港から直行便がありアクセスも容易なホーチミン市に飛んで、ここを拠点に上坂監督の「須弥山世界」を投映している仏教テーマパーク「サンワールド バデンマウンテン」を目指すことにしよう。



ホーチミン市街地


2023年8月14日、ベトナムの格安航空会社ベトジェットでホーチミンのタンソンニャット国際空港に到着したのは午後9時、ほぼ定刻に着いたので安堵したのも束の間、入国審査が長蛇の列で1時間以上待たされて結局市内行き路線バスの最終便には間に合わなかった。
ターミナルビルを出ると早速カモを求めて白タクドライバーが群がってくるが、ぼったくりで悪名高いベトナムの流しのタクシーには絶対乗りたくないので定額チケットタクシーのカウンターに向かうもなかなか車が迎えに来ず30分も待たされて、予約していた日系ビジネスホテルにチェックインした時には既に午前零時を回っていた。そのままベッドにぶっ倒れるようにして眠ってしまい、翌朝は朝寝坊してから屋上の露天風呂でゆっくり朝風呂。

…若かった頃は沢木耕太郎の「深夜特急」に憧れてバックパッカー気取りで東南アジアの安宿や夜行列車を渡り歩いたものだが、四十不惑を越えると日本語のサービスや日本式の風呂が有り難い。今日は予備日で特に予定を入れていないので、ホテルから徒歩圏内のホーチミン市美術館で午後まで過ごして日が暮れたらサイゴンオペラハウスへ行って舞台芸術(オペラではなかったが見応えがあった)を鑑賞、真夏のサイゴンの休日で英気を養って「須弥山世界」に備える。




ホーチミン市美術館










サイゴンオペラハウス

8月16日朝7時、予定通りの時間に現地ツアーガイドさんがホテルまで迎えに来てくれた。

「サンワールド バデンマウンテン」はホーチミン市から北西に約100km離れたカンボジア国境に程近いタイニン省というところにあり、ベトナムではかなり人気のある観光地らしいのだが訪れるのは現地のベトナム人が中心で、皆んな自家用車やバイクで行くので外国人が一人で公共交通機関で到達するのはほぼ不可能ということが事前のリサーチで判明したので、やむなく旅行会社の日本語ガイド付き現地ツアーを探し出して予約手配しておいたのだが今日のツアー参加者は私一人だけだった。



日本語が話せるベトナム人のガイドさんに挨拶がてら
「実は私は、テーマパークで投映されているプラネタリウム作品を観るのが目的なのです。テーマパークの観光とかに興味は無いけれどプラネタリウムを何度も繰り返し観たい」
と説明、果たして上手く趣旨が伝わったかは定かではないが私一人のために用意された運転手付きハイヤーに乗って100km彼方のタイニン省へと出発する。



「タイニン省まではまだ高速道路が無いんです。今日は渋滞してるから3時間位かかります。」
とのことだったが、道路が車とバイクで溢れかえっているホーチミン市近郊の住宅地を抜けて郊外に出ると辺り一面の農地と椰子の木が生い茂る中を快調に走って、やがて平原の中にそびえるピラミッドのような山が見えてきた。
標高986mあるというメコンデルタ最高峰の死火山、山頂に「サンワールド バデンマウンテン」があるバデン山だ。



太平洋戦争中には日本軍に占領され、その後ベトナム戦争でも米軍と南ベトナム解放民族戦線の戦場となった過去を持つこの山は現在では信仰と観光の拠点となっており、頂上には仏像のようなものが建っているのも見える。
午前9時半、バデン山の麓の駐車場に到着。







ガイドさんに案内されて「世界最大のロープウェイ駅」としてギネス認定されているという駅からロープウェイに乗る。
ロープウェイはバデン山中腹にある寺院行きと山頂のテーマパーク直行の2本あり、一旦中腹の寺院に行ってから麓に戻って山頂行きに乗り換えますよと説明される。
山頂の「サンワールド バデンマウンテン」は入場料がそれなりに高額な為、ベトナム人の参拝者には中腹の寺院だけ詣って帰る人も多いのでこのようなコースになっているらしい。
チケット売り場には一応英語の表記もあるがルートが分かり難くて、もし自分一人だったら多分迷っただろう。こういう時、現地ガイドさんがいてくれると本当に助かる。



バデン山中腹の寺院はベトナム仏教では重要な寺だそうで、珍しい「座っている観音像」が寺院のご本尊だ。私も帽子を取り裸足になって小さなお堂に入って合掌する。
ベトナム仏教の重要寺院なのにとても小さいお堂と観音像だがベトナムの善男善女は皆、真剣にひれ伏して祈る。ガイドさんも仕事中なのにひれ伏して祈る。
ベトナムは宗教に冷淡とされる社会主義国であるにも関わらず国民の8割が仏教徒だそうで、本当に敬虔な仏教徒が多い事に感心させられる。

バデン山にはホーチミン市をはじめベトナム中から参拝者が来るそうで、ガイドさんによると「今日は平日だけど人が多いでしょ、週末と毎月1日、15日はお祈りの人がもっと多くなるよ」とのこと。カンボジア国境からも近いのでプノンペンから遥々来る人もいるけど、日本人はほとんど来ないそうだ。遠くから巡礼に来る人のために宿坊もあって、高野山にお参りに行った時のことを思い出した。



一旦下山して、改めて頂上へ向かう。
ロープウェイからは地平線の彼方まで広がるメコンデルタの農業地帯が一望でき、素晴らしい眺望だ。輝く水面も見えるがメコン川ではなく貯水池らしい。







バデン山の頂上に到着すると、そこは標高900m以上の山頂とは思えない程きれいに整備された近代的なテーマパークだった。ここが「サンワールド バデンマウンテン」だ。







麓からも見えた巨大な黒い観音立像は全高72mあり、170トンの赤銅で造られているという。
観音像の足元は4階構造の礼拝堂となっており、世界各地から集められた仏像が展示された回廊が取り囲む中心にドームシアターがあってここで「須弥山世界」が投映される。
これは日本人建築家の高松伸氏が手掛けたものでテーマパークの象徴となる建築物だ。





早速、礼拝堂参拝者の行列に並んでドームシアター内部へ。

入り口で靴を覆うカバーをつけて磨き上げられた石の床のドームシアターに入ると、壁面にずらりと並ぶ無数の仏像に圧倒される。
私は仏教の知識が無いので上手く説明出来ないのだが「京都の三十三間堂が円形のプラネタリウムドームになったような空間」と言えば雰囲気が伝わるだろうか?
仏像はドーム内の、プラネタリウムでいうと「南側」に配置されており、座席は無いので観客…いや参拝者は平面の床に直接座り込んで仏像と対面する(つまり南側を向く)かたちで天井を見上げる事になる。
フルドーム映像専用の為かコンソールは見当たらず、ドーム径は20mといったところか。

係員による説明(ベトナム語なので聴き取れなかったが恐らくドーム内が暗くなる事や気分が悪くなった際の対処法を説明したと思われる)の後、いよいよ投映が始まる。
ドームに映し出されたのは最果ての世界、宇宙の大規模構造…やがて銀河団が現れ、天の川銀河に存在する星雲や恒星を巡って太陽系へ、そして地球のインドシナ半島南部、バデン山頂の黒い観音像の足元の礼拝堂へ、つまり今いる場所へと飛び込んでいく宇宙の旅が描き出される。
これは上坂浩光監督の2022年の作品「まだ見ぬ宇宙へ」のバデン山バージョンとも言うべき作品のようで、仏像に見守られながら宇宙の階層構造を旅した参拝者は投映中にも歓声を上げていた。
ガイドさんも「凄い!こんな映像初めて観た。お客さんのトモダチが作ったんでしょ、日本人って凄いね」と興奮気味に語っているが、これは「須弥山世界」ではない。ガイドさんが係員に聞いたところ、やはり「宇宙編」「須弥山世界」の2作品を交互に投映しているとのことで、「私は3ヶ月前にもここに来たけど、その時は須弥山の作品は観たけど宇宙編はやってなかったよ。新しく投映を始めたんじゃないかな、お客さんラッキーだね!私は外で待ってるから、ゆっくり須弥山の作品を観るといいよ」という訳で改めて石の床に腰を据えて、今度こそ「須弥山世界」を観る!

…ドーム天井一面に曼荼羅イメージが広がり、次の瞬間我々は探査機に乗って海の中にいる。
水面から空へと飛び出すと世界の中心に聳え立つ須弥山が見えてくる。そこは生命に満ち溢れ、さらに新たなる生命を産み出す…溢れ出しほとばしるエネルギーの塊のような水飛沫から、幾つもの神々が生まれる。それはまるで「ETERNAL RETURN -いのちを継ぐもの-」(2012年)で描かれた深海の熱水噴出孔のように生命を育む聖なる場所だ。
やがて須弥山の山頂に辿り着くと、そこに建つ帝釈天の居城・善見城(デザインは高松伸氏によるものだ)は巨大な宇宙戦艦のように機体を展開して全ての生命を救済するべく翔び立つ。
無限の広さの善見城内に控える帝釈天と守護神たち、そして須弥山の更に上空にまで続く天界とそこに住む神々の姿がドームシアター内の無数の仏像と重なり合い、映像とシンクロする
…ドームシアターの設計段階から携わったという上坂監督の狙いが見事に決まった瞬間だ。

古代インド哲学を原点としてその後、仏教をはじめ様々な宗教に取り入れられた世界観の概念としての須弥山世界を、上坂監督は最新の科学に基づく宇宙論の手法で完全に具現化して描き切った。
それは全ての仏教徒、いや全人類が初めて見たリアルな世界としての須弥山世界だ。
哲学的概念だった途方もない世界が今、まるで宇宙探査機によって観測された実際のデータのように生き生きとした姿で目の前に現れたのだ。

仏教における須弥山の大きさを実際のサイズに置き換えると約56万km、その中腹を太陽と月が周回している。
さらに須弥山が載っている世界は高さ約132万km、これがさらに太陽系とほぼ同じ直径の円盤が3つ重なった上に載っている。これが「三千大千世界」で、宇宙には無数に存在するという…それはまるで、無数の銀河が織りなす宇宙の大規模構造そのものではないか!

ここまで考えて、バデン山で「須弥山世界」と「まだ見ぬ宇宙へ」的作品が同時に投映されている理由が解った気がした。
きっと上坂監督は我々に哲学的概念としての宇宙の姿と最新の科学観測と研究により明らかになった実際の宇宙の姿の両方を見せようとしているのだ。
そしてそれらが姿形は違えども驚くほど似ていることを示したかったのだと思う…。

そこには「宇宙の姿を見る人に分かりやすく伝える」というプラネタリウムのあるべき姿が貫かれている。
ここは紛れもなく、ドイツでの誕生から百年目にしてベトナムで究極の進化を遂げたプラネタリウムだった。

その後の投映を3回繰り返し観て、ドームシアターの外に出るとガイドさんが「もう満足した?」と迎えに来てくれた。
「ええ、満足しましたよ…良かった。本当に、ここまで来て良かった!ところでガイドさん、あなたも信心深い仏教徒だよね?仏教徒の目から観て、あの須弥山世界はどうでしたか?」
こう聞くと「私は3ヶ月前に初めて須弥山の作品を観た時、とても驚いたよ。仏教徒から見ても須弥山世界の内容は仏教の教えに正確で、間違っている点は全く無く完璧な作品だった。そして、仏教徒としてとても嬉しかったですよ!」
…この答えを聞いた時、私も本当に嬉しくなった。

「ああ、満足したらなんだかお腹が空いちゃった。ガイドさん、何か美味しいベトナム料理を食べに行きたいな!」
「OK!ホーチミン市に帰る途中で米から作ったライスペーパーで有名な町を通るから、生春巻きを食べて行きましょう」
「やったー!」

生きとし生けるものは幸せであれ。バデン山頂の黒い観音様が微笑んだ気がした。


(※注意:作品の内容説明や感想及び宗教解釈は全て筆者の主観によるものです。制作サイドの意向とは異なる可能性があります。)

◎「須弥山世界」を観に行こう
ベトナム・タイニン省バデン山までの行き方ガイド


最寄りの主要都市はベトナム南部の最大都市ホーチミン市。
同市のタンソンニャット国際空港までは羽田/成田、中部、関西をはじめ日本各地の空港から直行便が飛んでいる。
ハノイをはじめアジアの各都市での乗り継ぎ便も利用できるのでアクセスは容易。
空港からホーチミン市内までは直行の路線バスがあるが、時刻が頻繁に変わるので事前に最新の運行状況を確認しておくこと。
到着が夜遅い場合は定額制チケットタクシーが安心。
運転手がしつこく客引きしてくるタクシーはほぼ間違いなく悪質なぼったくりタクシーなので利用しないこと。

ホーチミン市からタイニン省までは路線バスを乗り継いで行くことも可能らしいが、乗り継ぎが煩雑な事や車内ではベトナム語しか通じない事が予想されるので外国人が利用するのは現実的ではない。
バデン山まで行く日帰り現地ツアーが多数催行されているのでこれを利用した方が便利。
今回は日系の大手旅行会社HISのホーチミン支店から販売されている日本語ガイド付きツアーを利用した。
宿泊ホテルまでの送迎と「サンワールド バデンマウンテン」入場料やロープウェイのチケット代も含めて大人1名で約3万円弱(2023年8月現在の価格。参加人数によっても価格が変わるので旅行会社に確認を)。

※バデン山中腹の寺院及び山頂の「サンワールド バデンマウンテン」はドームシアター内も含め宗教施設なので、くれぐれも節度のある行動を心掛けたい。

「サンワールド バデンマウンテン」公式サイト(英語):https://badenmountain.sunworld.vn/en/

参考資料:飛不動龍光山三高寺正寶院ホームページより「須弥山」

平成二十七年大相撲九州場所 初日を観戦してきました

2015-11-12 | 映画・演劇・コンサートを観る

九州に晩秋の季節を告げる大相撲十一月場所(九州場所)。
今年も、相撲ファン女子(スー女というらしい…)の妹が初日の正面桝(マス)席を押さえたので、一緒に観戦に行きました!

…とは言え、普通に観るのじゃTV中継と同じなので面白くない。
折角なので、TV中継では見られない取組までしっかり観てやろう!
そうだ!初日のいの一番、正真正銘最初の取組から、全部観てやるぞ!!



という訳で、昼頃から来るという妹より先に夜明け前に家を出て、熊本駅から始発の午前6時発の新幹線さくら号に乗って、朝一番でやって来ました福岡国際センター。
まだ早朝7時半…
でも、既に当日券を買うために並んでいる熱心な相撲ファンや気合を入れて朝イチでやって来た外国人観光客の団体もいます。
熱い!熱いぜ、さすが大相撲ファン…




初日の開場は朝八時半から。


既に、溜席と力士入り口は開いています。
初日は専用のマットが敷かれるんですねぇ…


ところが、一般席の入り口はドア位置とマットの位置がズレるトラブルが発生中(笑)
初日だし、仕方ないかぁ~

ともあれ、八時半になり寄せ太鼓が鳴り響く中、福岡国際センターの中へ!


まだだ~れもいない、これが開場直後の土俵。

そしてこれが、今年の大相撲九州場所の本当に最初の取組です!


拍子木が打ち鳴らされ、初日の取組開始の旨、口上が述べられる正真正銘の一番最初の取組となります。
東序ノ口二十二枚目の葉梨と東序ノ口二十三枚目の勇富士、押し倒しで葉梨の勝ち。


東序二段八枚目の誉錦は、なんと30年ぶりだというカナダ出身の力士!
行け~カナダから来た金髪のイケメンお相撲さん!!
…でも、残念ながら初日は西序二段七枚目の富士寿に引き落としで負け。
まぁ、明日があるさ!頑張れヘンダーソン!!

正直、午前中はかなり退屈するのではないかと思っていましたが、相撲は序ノ口、序二段、三段目が面白い!
頑張る若手力士や、諦めないベテラン力士の取組は見ていて飽きません。まさに、相撲は人間ドラマ!!

そうこうしているうちに昼になり、スー女(笑)の妹も桝席に到着。


そして気が付けば、今日も満員御礼が出ました!

午後になると、土俵では派手な行事が目白押し。

いよいよ関取が登場!
十両土俵入り!!









三役力士を引き連れた日本相撲協会理事長代理による協会御挨拶。




迫力があり過ぎます(笑)





続いて幕内土俵入り!!




僕が贔屓にしている西前頭筆頭・大砂嵐も登場!!
カッコイイ!!







そしていよいよ、横綱土俵入り!!
今場所は久々に三横綱が勢揃いしているので、見応え充分!!


「よいしょ~!」








横綱土俵入り後、中入りに立行司による翌日の取組披露が行われます。


イケメン審判。


見合って見合って…




がっぷり四つに組め!


そしていよいよ、大砂嵐関登場!
行け、金崇郎!インシャアッラー!!

…と、ここから先は応援するのに夢中で、写真を撮る余裕は有りませんでした(笑)

大相撲十一月場所(九州場所)は来週まで熱闘が続きます。
TVで観るのとはひと味もふた味も違う、土俵際からの観戦は最高ですよ!
皆さんもぜひ一度、現場でナマで大相撲観戦を!
はぁ~ドスコイドスコイ!!

バック・トゥ・ザ・フューチャー 「デロリアンが見た未来」がやって来た

2015-10-22 | 映画・演劇・コンサートを観る
今朝8時半頃、正確には2015年10月22日午前8時29分(日本標準時)、遂に1985年からデロリアンが到着しました!

…映画「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」が公開された当時、僕はちょうど中学2年生。
リアルに“中二病”真っ盛り(笑)の科学好き中学生達は皆、この映画に熱狂したものです。
僕もよく放課後の理科準備室に友人達と集まって、熱く「バック・トゥ・ザ・フューチャーに見るSF映画と科学談義」に花を咲かせたものですよ、懐かしい…

まだインターネットも無い時代、圧倒的に情報量が不足していた地方在住の僕たちに科学の面白さと多くの知識・情報を供給してくれたのは、バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズのような当時の極めて良質なSFエンターテイメント作品だったと思います。本当に素晴らしい作品でした…

天才科学者“ドク”の言葉に科学の無限の可能性を学んだ僕たちはその後、科学者や発明家にはなれなかったけれども、気がつけばそれでも自分なりに科学と関わろうと奔走し、小惑星探査機「はやぶさ」を命懸けで応援したり人前でロケット打上げの魅力を語ったりするような少々暑苦しいオトナになってしまいました(笑)

現実は映画の中で描かれたような未来とは少々違う、様々な問題を孕んだ2015年になってしまいましたが、それでも「ああ、今デロリアンが着いたな…!」と思うと、僕は興奮を抑えられませんでした。
何だかんだ言っても、結構エキサイティングで凄い未来に生きてる自分を、あの頃放課後にたむろしていた中学2年生たちに見せてやりたい気がします。

…ところで、実は僕はこれまでに何度かデロリアンに“第一種接近遭遇”しています。
その際に撮影した秘蔵の写真をこっそり公開!


写真1:2013年1月2日にポーランドのワルシャワ科学技術博物館内に着陸していたデロリアン。
なぜ中欧ポーランドにデロリアンが!?ドクの家系の実家はワルシャワなんだろうか(笑)
(→Muses Europa Eisenbahn 2012-2013中欧鉄道音楽紀行 22:MUZEUM TECHNIKI 科学技術博物館


写真2:2015年7月に日本の大阪市内某USJにて。これは一応オフィシャルだけど実はレプリカらしい…?
(→関西で夏休み前哨戦

「HAYABUSA2: Return to the Universe」の試写会に参加しました

2014-07-15 | 映画・演劇・コンサートを観る

昨日(平成26年7月14日)、
プラネタリウム全天周映像作品「HAYABUSA2: Return to the Universe」 の試写会に参加してきました。

小惑星探査機「はやぶさ」の旅路と地球への帰還を描いた「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」 の続編であるこの作品、今年の暮れに打上げ予定の「はやぶさ2」の旅立ちを超高精細コンピュータグラフィックスと実写とを融合させた驚異の映像技術でドラマチックに描き出しています。

そして…実は僕、この作品にちょっとだけ出演させて頂いているのです!

打上げの時から応援してきた大好きな「はやぶさ」と、その生まれ変わりである「はやぶさ2」と、この作品で“共演”を果たすことが出来た訳で、こんな素晴らしい機会を下さった「HAYABUSA2: Return to the Universe」の上坂浩光監督には本当に感謝!です。




…さて、試写会に行く前に、一緒に出演した“宇宙クラスタ”の仲間たちと一緒にちょっと寄り道して国分寺の早稲田実業学校の正門前へ。



ここは日本のロケットの父、糸川英夫先生の下でペンシルロケットの水平試射実験が行われた「日本の宇宙開発発祥の地」、それを記念した石碑に刻まれた糸川先生の肖像に挨拶をしに行ったのです。





小惑星探査機「はやぶさ」がタッチダウンを果たした小惑星「イトカワ」の名も、もちろん糸川先生のお名前を頂いたもの。
「はやぶさ」の生まれ変わりである「はやぶさ2」を描いた作品を観る前に糸川先生にご挨拶出来て、清々しい気分で気合を入れなおして「HAYABUSA2: Return to the Universe」試写会へと向かいます。



「HAYABUSA2: Return to the Universe」試写会の会場は多摩六都科学館のプラネタリウム。外観はまるでUFO(笑)
初めて行く館でしたが、周辺には田畑も点在してのどかで楽しい場所でした。



昨日は多摩六都科学館は休館日で、プラネタリウムを試写会専用に使っていたのですが、今後はそのまま通常の開館日にもHAYABUSA2を上映するという訳ではなく、試写会のためだけに1日だけのHAYABUSA2上映だそうです。

もったいないなぁ…今後もレギュラー上映すればいいのに。本当に素晴らしい作品だったのですから!

さて、「HAYABUSA2: Return to the Universe」ですが…
素晴らしすぎます!!
上映中、何度「これだよ!これが見たかったんだよ!!」と叫びたくなったことか。。。


上坂監督の「はやぶさ」と「はやぶさ2」、そして宇宙への熱く深い想いを感じました。

もっと具体的に感想を書きたくて仕方がないのですが、今感想を書いてしまうとまだこの作品を観ていない方々に要らぬネタバレになってしまう…
そんなことは許されない!だって、本当にこの作品はまっさらな心でしっかりと受け止めて欲しいから!!

だから、感想は書きません。書けません!
今言えるのは一言だけ。
「宇宙が、ロケットが、はやぶさが好きで良かった!!」

皆さんもプラネタリウムに出かけて「HAYABUSA2: Return to the Universe」を観て下さい。
きっと、心が…「はやぶさ2」と一緒に旅立っていくのを感じる筈です。

プラネタリウムの宇宙でお会いしましょう。「はやぶさ2」と一緒にお待ちしています。
天燈茶房亭主mitsuto1976 拝

スカイツリーから、銀河超特急999号出発進行!!~銀河鉄道999 赤い星ベテルギウス いのちの輝き~

2014-03-14 | 映画・演劇・コンサートを観る
コニカミノルタプラネタリウム“天空” in 東京スカイツリータウン



ご存知、東京の新しいシンボル「東京スカイツリー」
このスカイツリーの足元に広がる東京スカイツリータウンに、世界最先端の設備を備えた素晴らしいプラネタリウム
「コニカミノルタプラネタリウム“天空” in 東京スカイツリータウン」があります。




今日は、このプラネタリウム“天空”に行ってきました。
明日(平成26年3月15日)から上映が始まる最新作
「銀河鉄道999 赤い星ベテルギウス いのちの輝き」の試写会に参加させて頂けることになったのです!



日本の、いや世界の漫画・アニメ史上に燦然と輝く巨匠・松本零士先生の不朽の名作「銀河鉄道999」が、プラネタリウム全天周映像作品「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」「ETERNAL RETURN -いのちを継ぐもの-」「MUSICA」の上坂浩光監督によって完全オリジナルストーリーの新作としてフルドームで描き出されるというこの「銀河鉄道999 赤い星ベテルギウス いのちの輝き」、小惑星探査機「はやぶさ」を驚異的な超高精細CGで描き出し瑞々しい命を吹き込んだ上坂監督が、天翔ける蒸気機関車「銀河超特急999号」をどのような姿で描くのか!?
これは絶対に見逃せません!!期待に胸膨らませながら、試写会の開場となるプラネタリウム“天空”へと向かいます。上坂監督の「楽しんで観て下さい!」という挨拶に続いて、いよいよ上映開始。スカイツリーから、銀河超特急999号が出発します!!

…頭上に広がるプラネタリウム“天空”の巨大ドームに描き出された999号の雄姿。最初のシーンを見て感じたのは「さすが上坂監督、よくわかっておられる!!」ということ。「そうそう、999はこの姿で登場しなくちゃ!!」
まさに、かつて999号に心ときめかせた宇宙少年・鉄道少年が“これが見たかった!!”と思うシーンが次々に展開します。
そして、機関車C62-48の圧倒的な質感、重量感!!蒸気機関車の「鉄の塊」感が磨き上げられた剛鉄の輝きでそこに在り、そして旅立ちの高揚感とともに汽笛一声、大地を踏みしだいて摩天楼の谷間を駆け抜けそのまま宇宙へと駆け上がっていくメガロポリス東京ステーション出発シーンはまさしく圧巻、そして痛快!!
この作品では、999号がかなりパワフルに宇宙へと飛び出します。その印象は、もはや鉄道ではなくロケットに近い凄まじいもの。最近、実際にロケットの打上げを現地で見学された上坂監督のインスピレーションが色濃く反映されたのかも知れませんね。

そんな超高品質な画像を、しっかりとしたストーリーが支えています。全体を通じて貫かれるのは「全てのいのちは、星でつくられた宇宙の一部である」ということ、そして「過去から未来へ、永劫に受け継がれるいのち」への想い。これは前作「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」「ETERNAL RETURN -いのちを継ぐもの-」「MUSICA」にも共通する世界観です。このことが物語に深みを与え、単なる冒険活劇とは一線を画する深遠な哲学を感じさせる作品へと昇華させています。

でも、松本零士作品ではお馴染みのあのネタが登場したり、最後に思わぬサプライズがあってあの名キャラクターが登場したりと、サービス精神も満点なのがファンには嬉しいところ(笑)
もうこうなったら、999の劇場版長編を上坂監督にフルリメイクして貰って全編CGの完全新作長編の製作を期待したいところです!!
ちなみに僕が一番驚いたのは、機関車C62-48がその原型となった国鉄の蒸気機関車とは決定的に外観が異なっている箇所があったこと。これは直接本編とは関係がないのですが、鉄道ファンならあのシーンを見たら腰を抜かすだろうなぁ…(笑)


試写会が終わって、帰りの飛行機の窓から見えた地上の街明かりが、地球を旅立つ999号から見下ろすメガロポリスの夜景に見えたのは言うまでもありません。

「銀河鉄道999 赤い星ベテルギウス いのちの輝き」は平成26年3月15日からコニカミノルタプラネタリウム“天空” in 東京スカイツリータウンで上映開始。
この他、全国の科学館では既に先行上映が始まっている場所もありますので、是非プラネタリウムの大ドームで銀河超特急999号の旅と宇宙の摂理の深遠さ、そして「いのち」について、感じて考えて楽しんでみて下さい!


銀河鉄道大銀河本線オリオン・プレアデス経由アンドロメダ行き超特急999号、プラネタリウムの大宇宙へと発車します!乗客の皆様、お乗り遅れの無いようお急ぎ乗車を!
出発、進行!!


夏休みの想い出2013 その6・山梨県立科学館プラネタリウムで「MUSICA ~宇宙はなぜ美しい?」を観る

2013-08-29 | 映画・演劇・コンサートを観る

その5・オール2階建観光列車「ホリデー快速ビューやまなし」号…の1階席からの続き



甲府駅からバスに乗って山道を登ると、山の上に博物館があります。
山梨県立科学館です。




ここには、世界最強のプラネタリウム投影機MEGASTARの山梨カスタム仕様である「メガスター-ⅡA Kaisei」を中心に構築された新プラネタリウムシステム“プレアデスシステム” を備えた、直径20mの素晴らしいドームがあります。
そして、そのドーム(スペースシアター)では現在、
上坂浩光監督の手がけたフルドームデジタルプラネタリウム映像作品最新作
「MUSICA ~宇宙はなぜ美しい?」
が上映公開されているのです。

「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」で小惑星探査機はやぶさの生涯とその目指したものを鮮やかに描き出し、
「Eternal Return-いのちを継ぐもの-」で生命と宇宙の織り成す壮大な旅路を我々に見せてくれた、
上坂浩光監督の最新作「MUSICA ~宇宙はなぜ美しい?」。
今年の4月にここ山梨県立科学館で初公開され上映が開始されていた「MUSICA ~宇宙はなぜ美しい?」を、やっと今日観ることが出来るのです。
その為に、僕は仲間たちと一緒に今日ここまでやって来たのです。

…そして観た、「MUSICA ~宇宙はなぜ美しい?」。
「ああ、本当に何て美しい作品なんだろう!」
宇宙を貫く法則である螺旋模様と、そこから生まれるリズム、音楽…
そのすべてが調和していることが生み出す自然の心地よさとその不思議さを、視覚と聴覚のみならず五感の全てをもって感じることが出来る作品でした。
これからまた、何度も観直したい。観る度にきっと新しい美しさを僕は見つける筈。そう思える作品でした。
「山梨まで来てよかった!」



→「MUSICA ~宇宙はなぜ美しい?」公式サイト

山梨県立科学館では、「MUSICA ~宇宙はなぜ美しい?」を観るだけではなく、天体観測室から実際に自然を見つめて、その美しさを感じることも出来ました。



昼間の空にも、実は星が輝いています。
青空に負けないようにしっかりと輝く三日月形の金星や、今を盛りにと言わんばかりに燃え上がる真夏の太陽を(勿論、安全なフィルター越しにですが)見せてもらうことが出来て大満足。

帰り際、科学館入り口へと続く大階段の脇に、こんな素敵なものも見つけました。




「MUSICA ~宇宙はなぜ美しい?」の作中で、重要な役割を演じるひまわりの花。
それにちなんで作られたひまわりのお花畑“MUSICA Garden” だそうです。
宇宙の法則に貫かれ、調和というメロディで僕の心をやさしく満たしてくれるようなひまわりの花に見送られて、山梨県立科学館を後にしました。

この次の夏、またMUSICAを観るためにここを訪れることがあったら、
あのひまわりの子どもたちが満開の花畑になって僕を出迎えてくれたら嬉しいな…


(つづく)

2013初夏・北欧バルト海紀行 #025:Ballet Matinee エストニア国立オペラ劇場“Rahvusooper Estonia”

2013-06-19 | 映画・演劇・コンサートを観る
Rahvusooper Estonia


#024:エストニア・タリン街歩き 朝の旧市街散歩、教会巡りからの続き


タリンの旧市街と新市街の境目にある、公園に囲まれて建つネオクラシック様式の建築。
タリンのオペラハウス、エストニア国立オペラ劇場“Rahvusooper Estonia” です。
帝政ロシアの末期、1913年に建てられたそうなので、今年でちょうど100周年を迎える歴史ある劇場です。
建屋はそれ程大規模ではないのですがオペラ座とコンサートホールの両方を備えた、大変立派な施設を持つ劇場となっています。

今日はこれから、エストニア国立オペラ劇場でバレエのマチネ公演(昼間の公演)を観ます。

…本当は夜の公演でオペラを観てもよかったのですが、今夜は旧市街ではなく郊外の空港近くのホテルに移って泊まることになっているので、公演終了後の夜中になってからの空港ホテルへの移動を避けたくて、この時間帯の公演を予約したのです。
とりあえず、歴史あるエストニアの歌劇場でのステージを一目観ておきたかった為、演目もろくに確認せずにネットでチケットを手配してしまいました。

さて、特に意識せずに観ることになった今日のマチネ公演の作品は…
世界中の誰もが子供の頃から知っている名作中の名作、お馴染みのグリム童話を基にしたバレエ作品
「白雪姫と七人の小人(Snow White and the 7 Dwarfs)です!
…思いっきりお子様向けの作品ですね、何しろパンフレットにもハッキリ“Children’s ballet”って書いてありますから。

劇場のホワイエもご覧の通り、白雪姫のバレエを観に来た地元タリンの子どもたちで一杯でまぁ賑やかなこと!(笑)
それにしても、子どもたちばかりの観客の中に何故か紛れ込んでる、いい歳した東洋人男性の一人客は悪目立ちしまくりです。
引率の先生方や保護者のちょっと不審そうな視線が痛いぜ…


オペラ座の中に入って座席に着いたら、周囲を完全に子どもたちに囲まれてしまいました。
前列の席に座った女の子たちが興味津々といった顔で僕の方を覗き込んでくるので、思わず苦笑い。でも、面白いものを見つけた子どもたちの表情は、世界中どこに行っても変わりませんね。みんないい笑顔してます!
僕もつい、子供の頃に母に連れられて市内の劇場に人形劇を観に行った時の、遠い記憶を想い出してちょっと切なくなってしまいました。

童心に戻って観た、エストニア国立オペラ劇場のバレエ「白雪姫と七人の小人」


…面白かった!それに、とても本格的で素晴らしいバレエでした!
子供向けとはいえ、侮れません。白雪姫役バレリーナの儚さと優雅さ、七人の小人たちのコミカルでダイナミックなダンス…
バレエに関しては全くの素人で初心者(何しろ、バレエは高校生の頃にロシアのバレエ団の巡業で「白鳥の湖」を観て以来、実に二十年ぶりの鑑賞!嗚呼…)の僕でも解ります。躍動する全身で表現されるバレエの美しさと楽しさ、しっかりと感じました!
「白雪姫と七人の小人」って、こんなに面白い物語だったんだねぇ…!

パンフレットをよく読み直すと、この作品はブダペストのハンガリー国立歌劇場のバレエ監督や美術スタッフが参加しているそうです。
優秀なスタッフがエストニア国立オペラ劇場に集まって、質の高い舞台を創り出していたんですね。納得!




そう言えば今日は、いつも座る天井桟敷のバルコニー席ではなく平土間のほぼ中央という、随分と上等な席で観ることが出来ました。
実はオペラ劇場で平土間に座るのは、これが初めてだったりします。
オーケストラピットは平土間からだと、公演中着席してると一切見えないんですねぇ(ホントに知らなかった…(笑))
でも、僕の周りは小さな子どもたちばかりだったので、ひょっとしたら後列の子どもたちには視界を遮っちゃって悪い事したかな…?もしそうならゴメンね。
でも、座高の高い東洋人男性のせいでバレエやオペラ劇場のことを嫌いになったりはしないで欲しいな…


マチネ公演は、真昼の短い夢。
終演後オペラ劇場の外に出ると、明るい午後の陽射しと日常が変わらずそこにありました。
でも、ここは中世以来の夢を今でも見続けることが出来る街、タリン。
旧市街に戻って、もう少しだけこの最北のハンザ同盟都市の歴史を感じ、夢見ることにしましょうか。

#026:エストニア・タリン街歩き 旧市街路地裏散歩に続く

2013初夏・北欧バルト海紀行 #016:OPERA NIGHT フィンランド国立オペラ劇場“Ooppera”

2013-05-30 | 映画・演劇・コンサートを観る
Suomen Kansallisooppera


#015:フィンランド・ヘルシンキ街歩き トラムに乗って大聖堂へからの続き

フィンランドの国立オペラ劇場“Ooppera” は、ヘルシンキ市街地中心部から少しだけ離れて、
中央駅の構内裏手に広がる湖(どうやら正確には、バルト海と水路でつながった「内湾」のようです)の畔にあります。
ちなみに道路を一本挟んで向かい側は、1952年に開催されたヘルシンキオリンピックのメインスタジアムです。



トラム(路面電車)の走る大通り沿いに建つ、近代的かつシンプルモダンな白いビル。これが国立オペラ劇場です。

…正直、拍子抜けしました。
ヨーロッパ諸国の都市の文化的シンボルであるオペラ劇場と言えばやはり、
どっしり重厚な王侯貴族の宮殿のような建物と綺羅びやかな装飾、シャンデリア煌めく玄関広間と天井に届く客席の大階段…
というイメージを抱きますし、実際僕がこれまでに訪れたブダペストやプラハ、そしてウィーンの国立オペラ劇場はまさにそんな荘厳な建築が厳かに、オペラ鑑賞初心者のおっかなびっくりの訪問をド派手に迎えてくれたものでした。

しかし、このヘルシンキのオペラ劇場は日本の都市にもよくある「市民文化会館」みたいな、実に気取らない雰囲気。
「何だか、今まで想像していたオペラ座のイメージと随分違うなぁ…」
まぁとりあえず、建物の中に入ってみるとしましょう。


建物の中もすっきりシンプルなインテリア。
重厚なシャンデリアや分厚く敷き詰められた絨毯はありませんが、いかにも北欧らしい清潔で機能的なデザインで、これはこれで良い感じです。
ホワイエにはお酒を立ち飲みできるビュッフェも設えられて、本格的なオペラ劇場らしさもありますね。

ホワイエの壁は全面が金属とガラス張りのアトリウムで、開放感があります。



アトリウムの外には、湖の畔に広がる公園とそこを散策する人々の姿が見えます。
既に午後6時半を回っているのですが、初夏の北欧ではこの時間はまだ太陽も高くて青空が明るく広がる「長い昼下がり」。

さて、外が明るいので時間の感覚が怪しくなりますが、そろそろ今夜のオペラの開場時間です。
ボックスオフィスでEチケットを引き換えて、客席に着くとしましょう。
今回も事前にWebでオンライン予約したチケットは最上階バルコニー席、27ユーロ也。



僕の席はバルコニーの舞台に向かって右手側でしたが、まだ上演開始までに時間があり客席に誰も居なかったので舞台正面まで行ってみました。
これがフィンランド国立オペラ劇場の、最上階バルコニー客席からの眺めです。
客席も舞台もシンプルモダンなデザインでまとめられています。本当に、現代の北欧らしいオペラ劇場です。



↑サムネイルをクリックするとパノラマ撮影画像が開きます↑



そして今宵の演目は、ドニゼッティ作曲のイタリア・オペラの喜劇「愛の妙薬」
スペインはバスク地方の農村で繰り広げられる、他愛もなく可笑しくてそしてちょっと泣ける恋愛物語のイタリア・オペラを、白夜を思わせる明るい夜のフィンランドで一人旅の日本人が観るというのも中々乙なもの…


「愛の妙薬」は2幕物。
幕間のホワイエのビュッフェは外が明るすぎて、真昼間から飲んでいる気分な雰囲気…(笑)
僕は2020年の「はやぶさ2」地球帰還まで断酒中なので、飲んでる人たちを見るだけで自分では飲みませんでしたけどね、念の為!


“ドゥルカマーラ大先生の愛の妙薬”を飲めない代わりに、誰もいないオーケストラピットを覗き込んでみました。



そして見上げるとバルコニー席。
…そろそろ、あの天井桟敷に戻って、バスクの農民のお二人さんの恋路を見届けるとしましょうか。

何だかんだとあったけど、最後には恋がかなって大団円。
皆が楽しく笑いながらの、農村の恋の物語の幸せな終わり。
この作品は訳あって台本執筆から作曲まで殆ど「やっつけ仕事」状態で1ヶ月足らずで一気に書かれて仕上げられたそうですが、やっぱり誰も傷つかず解りやすい幸せな純情恋愛物語は誰にでも受け入れられやすいテーマなんですね、
「愛の妙薬」は1832年のミラノでの初演以来大ヒット作となり、今でも世界各地のオペラ座で上演される定番の喜劇作品となっています。
ここフィンランド国立オペラ劇場での「愛の妙薬」も、軽妙でテンポの良いストーリー展開を活かした、正統派の喜劇オペラという雰囲気で劇場内の観客の皆さん全員で楽しんで観ることが出来ました。

やっぱりみんな、恋の物語はハッピーエンドになって欲しいもんね。
オペラの夢の世界では特に…
せめてひと時、現実を忘れて…



幸せな夢を見て、フィンランド国立オペラ劇場“Ooppera”を出ると、外は夢の続きのようなブルーモーメントに包まれていました。
初夏の北欧は昼と夜の境目も曖昧なまま、束の間の夢の季節を楽しんでいるかのようです。

#017:フィンランド・ヘルシンキ街歩き トラムに乗って鉄道巡りに続く

Muses Europa Eisenbahn 2012-2013中欧鉄道音楽紀行 29:OPERA NIGHT ウィーン国立歌劇場

2013-02-23 | 映画・演劇・コンサートを観る
Wiener Staatsoper


28:kunst historisches museum 美術史美術館からの続き

すっかり日の暮れた午後5時半頃、今朝歩いた場所に戻って来ました。




夜の帳の降りたウィーンの街で、一層輝きを増したウィーン国立歌劇場
いよいよ今回の旅で最後のオペラ鑑賞です。


ウィーン国立歌劇場は一流の音楽通が集う世界最高峰のオペラハウスであると同時に、
ウィーンを代表する観光名所でもあります。
その為、観客層も音楽好きな人々ばかりでなく世界中から訪れた観光客も入り混じり、
開演前のエントランスホールは大変に賑やか。
周囲からは久しぶりに耳にする日本語の会話も聞こえてきます。




今夜の演目は、旅を華やかに締め括るのに相応しい古典的名作、
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの生涯最後のオペラ「魔笛」です!
余りにも有名な作品なので、あらすじは殆ど諳んじているし序曲やアリアはすっかり耳に馴染んでいますが、
さて世界最高峰のウィーン国立歌劇場ではどんなに素晴らしい「魔笛」を見せて聴かせてくれるのでしょう。

今夜も期待に胸を膨らませながら、昼間に国立チケットハウスでピックアップしたチケットを片手に
紳士淑女たちと共に大理石の階段を登って最上階のバルコニー席へと向かいましょう。

それにしても、ウィーン国立歌劇場は建物の規模が大きい!
ビュッフェもホワイエの一画にあるのではなく、専用のフロアを持つカフェバーコーナーになっています。



ここは立ち見客の天井桟敷の人々のための休憩スペースでしょうか。
この場所で室内楽のミニコンサートが開けそうな広さです。

そして、ここが最上階。


今夜もバルコニー席の最前列、舞台に向かって右手側の席です。
ちなみにウィーン国立歌劇場の公式Webサイト経由でオンライン予約したチケット代は44ユーロ也。
購入時のレートだと日本円で4500円程なのですが、
ハンガリー国立歌劇場の約2倍、プラハ国立歌劇場の約5倍の価格になります。
さてこの価格、高いと考えるか安いと感じるか…




バルコニー席の舞台正面からは、この眺め。

←サムネイルをクリックすると大きなパノラマ画像が開きます


ウィーン国立歌劇場は第2次世界大戦末期に連合軍の爆撃で破壊され、戦後に元通りに復元されたそうです。
そのせいか、客席の装飾もシンプルで、シャンデリアもとてもすっきりとしています。
重厚かつ豪華絢爛で歴史を感じさせるブダペストやプラハのオペラハウスと比べたら随分と近代的なのが意外でした。

そして、今夜見る最後のオペラの夢の世界…
聴き慣れた軽快な序曲と共に「魔笛」の幕が上がるのです。





…幾度目かのカーテンコールの後で、
パパゲーノやパパゲーナ、タミーノとパミーナ、ザラストロと夜の女王が舞台の幕の向こうに消えた時、
旅の終わる時が来たことを実感しました。
今回の旅もうたかたの夢の世界の彼方に去り、想い出になろうとしています。

「さぁ、僕も旅の舞台の幕を下ろそう。そしてまた暫し日常に戻ろう。日本に帰らなくちゃ…」



30:Finale Ferrara号Kansai行きに続く

Muses Europa Eisenbahn 2012-2013中欧鉄道音楽紀行 12:OPERA NIGHT プラハ国立歌劇場

2013-02-04 | 映画・演劇・コンサートを観る
Státní opera Praha


11:Prazsky orloj プラハの天文時計“オルロイ”からの続き


プラハのオペラハウス、プラハ国立歌劇場は中央駅のすぐ隣に建っています。
駅前大通りのオペラ座です。
威風堂々としたファサード、ギリシア建築の神殿のような列柱が印象的な、美しい白亜の劇場ですね。



開演まではまだ小一時間ほどありますが、既に観客の紳士淑女の皆さんがエントランスホールに集まっているようです。
僕もオペラハウスの中に入りましょう!


シャンデリアの煌めくエントランスホールは、天井も壁も一面が白いインテリアで、とても清潔感があります。
その表面を覆う精微な金細工が、これまた優雅ですね。

さて、今夜の演目は…
世界中の誰もが知っている、
ほとばしるように情熱的で激しく熱く、そして救いようのない悲惨な結末を迎える、男と女の愛と破滅の物語。
ビゼー作曲のオペラ「カルメン」です!
名作中の名作、世界で一番有名なオペラ作品の一つですね。

今夜のチケットも、プラハ国立歌劇場の公式Webサイト経由で購入手続きを済ませてプリントアウトしてきたEチケットです。
バルコニー席の最前列ですが、舞台に向かって右手の席になりました。
正面席ではないせいか価格も随分と安くて、たったの200チェココルナ。購入時のレートで何と約900円!
…ほとんど、天井桟敷の立見席感覚の、破格の安値です。

あまりにチケット代が安すぎて少し不安ですが(笑)、早速観客席に向かいましょう。
プラハ国立歌劇場では安い席の観客でも裏口に回されると言う事はなく、
モギリのスタッフにEチケットを確認してもらってから堂々と、大階段を登ってバルコニー席を目指します。

最上階のバルコニー席フロアまで息を切らして登って、クロークに外套を預けたら、
さあ僕も紳士のようにネクタイを締め直し、背広の胸ポケットにハンカチを挿して、オペラの夢の世界へ行きましょう!




「おお~!プラハのオペラハウスも素敵だなぁ…!」



バルコニー席の舞台正面側に立って劇場内を見渡すと、このように見えました。
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そして、見上げると天井画とシャンデリアが。
←サムネイルをクリックすると大きなパノラマ画像が開きます

客席の間を歩き回ってみると、夢の世界を産み出す創作の現場も目にします。

天井桟敷の一画、照明スタッフの戦場です。
華やかなオペラの夢は、
自分たちは決してスポットライトを浴びることのない多くの裏方スタッフたちによって支えられているのですね。


こちらは、文字通りの“天井桟敷の立見席”。
バルコニー席の一番奥、劇場で一番高い位置にあります。確かこのエリアのチケット代は日本円で500円以下だったような…
でも、実は舞台の上の出演者が最も恐れるのは「天井桟敷の人々」。
本当に毎日毎日オペラ座に通い詰め、遂には天井桟敷に棲み着いてしまった、恐るべき鑑賞眼を持つ通人たち、
“オペラ座の怪人たち”がここで舞台を睨みつけるのです…ああ恐い!(笑)
昨夜オペラの魅力を知ったばかりの僕も、死ぬまでには、ここに立つ資格を得る事が出来るでしょうか…?

…さあ、そろそろ開演時間です。僕も右手側最前列の自分の席へ向いましょう。


バルコニー席フロアの階段の段差はこんなに急傾斜。転んだら大変!
遥か下の平土間までそのまま転がり落ちそう!!


僕の席からは、舞台がこんな感じで見えます。
チケット代は格安だったのに、かなり見やすい良い席でした。

…さて、今夜のオペラ「カルメン」は…
ストーリーは最早、説明不要でしょう。
軽快な序曲が、これから始まる愛憎劇の悲劇の闇をいっそう濃くして、そして舞台の幕が開くのです…

「ああ、全く何で女って奴は…」 「そして、どうして男って生き物は…」





…ストーリーは結末まで全て知っているのに、それでも心千々に乱されるのは何故でしょう。
耳にすっかり馴染んだ、聴き慣れた音楽とアリアのせいか、
それとも知らず知らずに自らも熱愛の果ての破滅に焦がれているとでもいうのか。
…なんてね。
それにしても、今夜のカルメンを歌った人はジプシー女の妖艶な雰囲気がよく出ていたし、ミカエラは可憐で好対照だったし、
闘牛士もキザったらしさがいい感じで格好良かった。
素晴らしいカルメンでした。




そして、ありがとう。星の都のオペラハウス、プラハ国立歌劇場。
今夜も、素晴らしい夢を見させて貰いました。


13:Vltava/Moldau ヴルタヴァ ~プラハ散歩~に続く

Muses Europa Eisenbahn 2012-2013中欧鉄道音楽紀行 7:OPERA NIGHT ハンガリー国立歌劇場

2013-01-30 | 映画・演劇・コンサートを観る
Magyar Állami Operaház


6:Budapest ブダペスト、世界遺産散歩からの続き

英雄広場から世界遺産のブダペスト地下鉄M1号線に乗って、さあ国立歌劇場にオペラを観に行きましょう!


その名もOPERA駅で下車。
地下鉄M1号線の駅は優雅なタイル張りに重厚な格子のドア。まるで駅が既にオペラハウスの一部のようです。
これから始まる夢の様なひと時に思いを馳せ、胸を高鳴らせながら地上に上ると…

地下鉄OPERA駅のすぐ上がオペラハウスでした!
ハンガリー国立歌劇場です!!


宮殿のような建物がライトアップされ、本当に夢の国への入り口のようです。
正面玄関前には大きなクリスマスツリーもまだ飾られていますね。


早速、夢の国の入り口のドアを開けてオペラハウスの中に入ります。
エントランスホールの天井の豪華な装飾がシャンデリアに照らされ、煌めいています。


エントランスホールから続く、天井に届くような大階段の前にもクリスマスツリーが。

…ところで、実は僕はオペラハウスでオペラを観るのはこれが生まれて初めて。
もちろん、事前に最低限の鑑賞マナーを調べて準備してきましたが、それでもやっぱり緊張しますね。
新鮮な楽しさと緊張感が入り混じった、こんな気分になるのは何年ぶり、いや何十年ぶりでしょうか!


今夜の演目は、オペレッタの定番中の定番、
ヨハン・シュトラウス2世の「こうもり」です。
ハンガリー語で書かれた、今夜のキャスト表が張り出されていました。
「こうもり」は、有名な序曲しか知らなかったのですが、
今夜のために事前にDVDを購入してしっかり内容を「予習」してあります(笑)。
とても軽快で愉快な、楽しい喜劇作品なので、初心者のオペラハウスデビューにはもってこいの作品かも知れません。

さあ開演時間が近づきました。
大階段が開放され、観客が次々に客席へと向かい始めます。
僕も、居並ぶ紳士淑女たちの後ろに続いて階段を登り、モギリのスタッフにEチケットを確認してもらいます。
(今回はハンガリー国立歌劇場の公式Webサイト経由でチケットを予約したのですが、
クレジットカード決済で予約完了するとEチケットをダウンロード出来るようになり、それをプリントアウトして持参すればそのまま入場できるのです。これは便利!)


ところが、僕のEチケットを一瞥したスタッフは
「あなたの席は、この階段からは行けません。一度建物の外に出て、脇にあるバルコニー階専用の入口から入って下さい」
というようなことを言います。
僕が購入したのはチケット代が高価な平土間席や低層階のボックス席ではなく、お手頃価格の高層階バルコニー席
(ちなみにお値段は5800ハンガリーフォリント。購入時のレートで2千円ちょっと)
どうやら、お安い席のお客は、華やかな大階段を登ることは許されないようです。
いきなり出鼻をくじかれて、ちょっと憤慨しながらもバルコニー席用の“裏口”に回ります。やれやれ…


4階のバルコニー席まで、延々と通用口の階段を登り、いい加減息も切れかけたところにクロークを発見。
外套や大きな荷物を持ったままの野暮な姿でバルコニー席に座ることは許されません。
煩わしい物はすべてここに預けてから客室ホールに繰り出すのがオペラハウスのマナーです。
ここのクロークはちゃんと預かり賃の金額が明示されているので助かります。
任意のチップだと僕の場合、色々と気を遣って疲れますからね(笑)

身軽な姿になったところで、壁の姿見でネクタイを直し(今夜は僕も背広にネクタイを締めて“正装”しているのです!)、
さあオペラハウスの社交場、バルコニー席へ…!





「うわぁ…!!」


「これが…これがオペラハウスか!!」
何という華やかさ。何という優雅さ。
まだ上演は始まっていないのに、そこはまさしくオペラの夢の国。
客席とシャンデリアとオーケストラ・ピットから響く調律の音、そして着飾った観客たちが渾然一体となり、
オペラの世界はもう始まっていたのです。



僕の席は、4階バルコニー席の最前列、しかも舞台の真正面でした。
高い場所にいるので、すぐそばにシャンデリアが輝いているし天井画も間近に見えます。
何より舞台がとても見やすいし、歌声も音楽も素晴らしく響き渡ります。
ひょっとして、この劇場で一番いい席だったのではないでしょうか?何という幸運!

やがて指揮者を迎えたオーケストラが聴き慣れた軽快な序曲を演奏し始め、舞台が幕を開けます。
ハンガリー国立歌劇場が、
大晦日の夜のウィーンの邸宅に、
ロシア人貴公子の主催する舞踏会会場に、
そして12月32日!?の朝を迎えた刑務所に、
「こうもり」の作品世界へと変貌していきます…

「なんて楽しいんだろう!こんな素敵な世界を、今まで知らずにいたなんて…!」

…かくして、どうやら僕は、あっという間にオペラハウスに潜む魔物に取り憑かれてしまったようなのです。



「こうもり」は全三幕の構成で、途中で2回、幕間の休憩を挟みます。
この幕間も、オペラの楽しみの一つ。
客席を抜け出して、オペラハウスの中を歩き回ってみるのもまた一興なのです。


ホワイエに店を出したビュッフェで軽く一杯…というのが幕間のポピュラーな楽しみ方。
でも、カウンターは混んでいて飲み物を受け取るのも長時間並んで一苦労。
実際、幕間に飲む時間が足りなくなってしまったらしく、
幕が開いてから急いでホワイエから客席に戻ってくるお客さんがたくさん居られましたよ。
僕は断酒中なのでもとより飲めないので、楽しそうに乾杯している皆さんを眺めて満足することにしましょう。

ハンガリー国立歌劇場は、客席にも見所があります。



舞台の袖にある、一際豪華な装飾が施された貴賓席は、
元々はオーストリア=ハンガリー二重帝国の皇后エリザベートの専用室だったそうです。
ハンガリーびいきだったエリザベートがお忍びで、いつでもブダペストにオペラを観に来られるように、
この部屋は客を入れず常に空室にしてあったとか。
今では誰でも予約することが出来るそうです。


休憩中の空っぽのオーケストラ・ピットと、そこを覗きこむ人々(笑)
案外狭い空間です。
また、舞台とオーケストラ・ピットとの間には仕切りも何もないので、
舞台上の人が熱演熱唱の余り落ちてしまわないか心配になります。



…オペラハウスの夢の国に思う存分遊んで、笑って、時間は瞬く間に過ぎ去りました。
舞台の「こうもり」は目出度く大団円を迎え、余韻のカーテンコールの後には心地よい充足感と共に、
寂寥感を伴って現実が戻ってきます。


去り際、誰も居なくなった天井桟敷から舞台を振り返って、オペラハウスに別れの挨拶。

「今夜は、最高のオペラ鑑賞デビューだったよ。ありがとうございます。
そして、これからも末永くよろしく!…多分、一生涯続く付き合いになるね。」



いつまでも去り難い、後ろ髪ひかれるような思いでハンガリー国立歌劇場を後にしました。

ブダペストには今夜一晩宿泊して、明日にはまた列車に乗って次の街へと向かいます。

8:Hungária Express 国際列車ハンガリア号の旅に続く

国立歌劇場の切符

2012-11-13 | 映画・演劇・コンサートを観る
Vienna,Tram


宮脇俊三さんは1995年の秋にヨーロッパ鉄道紀行の旅でウィーンに滞在された折に、
国立オペラ座(Staatsoper)で当日券を買って「セビリアの理髪師」 を観られたそうです。
6階の立ち見席という文字通りの天井桟敷で、値段は20シリング(当時はまだ欧州統一通貨ユーロは無かったんですよね)、
これは当時のレートで日本円で200円程という破格の安さだったとか。

現在でもウィーンの国立オペラ座では伝統的に格安の当日券販売は行われているそうで、
色々調べてみるとさすがに200円ということはないですが、それでも確実に千円以下の破格値で世界最高峰のオペラをシーズン中はほぼ毎晩観ることが出来るというのだから、文化都市ウィーンの市民が羨ましい限り。

ところがここで、インターネットが世界中に張り巡らされた現代社会の恩恵を受けようと務める旅行者にとっては福音が。
ウィーンを始め、ヨーロッパ各国の首都で燦然と自国の文化の高さを誇示するように鎮座まします国立歌劇場は、今ではそれぞれ公式ホームページ上で正規のチケットをオンライン販売しているのです。
しかも素晴らしいことに、オンライン販売のチケットは基本的に業者のマージン等は一切含まれない“現地価格”。
もちろん座席のレベルによって価格はピンからキリまでですが、一番お値打ちなのは高層階バルコニー席の最前列で、これなら高くても数千円で買うことが出来る(このクラスの座席は地元の常連音楽ファンに大人気だとか)。
日本人旅行者も、自宅に居ながらにしてヨーロッパ各国の綺羅星のような国立歌劇場の切符を彼の地の市民と同じ価格で買うことが出来るなんて、ちょっと素晴らしいと思いませんか?

僕も今回、ウィーンとブダペストとプラハの国立歌劇場の切符をそれぞれの公式ホームページからオンラインで購入しました。
一番安かったのはプラハで200チェコ・コルナ、現在だいたい1コルナが4円弱ですから800円くらいですかね。
宮脇先生の20シリング天井桟敷ほどではありませんが、この価格なら成程毎晩でもオペラを観に行きたくなるというものです。
嗚呼、やっぱりヨーロッパの市民が羨ましい!

せめて僕も旅の間は、束の間彼の地の住人になった気分でオペラ座通いを愉しむとしましょうか。
ブダペストでは愉快なオペレッタ「こうもり」が、
プラハでは誰もが知っている情熱的な悲劇「カルメン」が、
ウィーンでは…波瀾万丈の天才音楽家の人生最後の傑作「魔笛」が、僕を待っているのです。

そう考えただけでも、何て楽しいんだろう… オペラ観劇の興奮は、既に始まっているのですね。

冬になったら… 国際列車に乗ってオペラを観に行こう

2012-11-12 | 映画・演劇・コンサートを観る
Vienna,Winter night


気が付けば、日に日に秋深まり冬近づく11月。
今年も残すところあと一月半、そろそろ年末年始休暇の旅支度を…

今年の冬は、久しぶりに中欧に行きます。
ウィーンの西駅から国際列車に乗って、ブダペスト、プラハ、ワルシャワ…

毎日列車で国境を超えて、違う国の都を巡り、
そして毎晩、それぞれの国が誇る綺羅びやかな歌劇場でオペラ観劇三昧。
こんな贅沢もインターネットの恩恵で、いとも簡単に手に入れることが出来る2012年の世界に感謝。
(何しろ、自分の部屋のPCから、国立歌劇場の正規チケットを天井桟敷なら千円程度で直接購入することが出来るのですから!)

もうすぐ雪と氷に閉ざされ、無機質で美しい季節を迎えるヨーロッパ。
素晴らしい冬が始まるのを、晩秋の日本で楽しみに待つ日々なのです。

Eterenal Return -いのちを継ぐもの- を観ました

2012-08-06 | 映画・演劇・コンサートを観る
JAXA相模原キャンパス特別公開2012の帰り路、渋谷に立ち寄って観てきました、
フルドームデジタルプラネタリウム映像作品
「Eterenal Return -いのちを継ぐもの-」

HAYABUSA-BACK TO THE EARTH-を手掛けた上坂浩光監督の最新作です!



現在、全国に先駆けてコスモプラネタリウム渋谷にて公開が始まっています。


コスモプラネタリウム渋谷は渋谷駅から徒歩5分、渋谷区文化総合センター大和田の最上階。




以前、渋谷駅前にあった老舗のプラネタリウム「五島プラネタリウム」の御本尊
“カールツァイスIV型投影機” も保存展示されていました。
五島プラネタリウムは僕も学生時代に何度も通った思い出深いプラネタリウムです。御本尊に再会できて、感激。

さて、初めて観た「Eterenal Return -いのちを継ぐもの-」ですが…

生命(いのち)とは何か。

それはどこから生まれ、どこへ行こうとしているのか。

生まれるとは、そして死ぬとはどういうことなのだろうか。

そして、我々は何故生きるのか…


そんな問いかけから始まる壮大な生命の旅の物語、その序章です。
それはまさに、前作HAYABUSA-BACK TO THE EARTH-で小さな宇宙船の奇跡の旅を通して
上坂浩光監督が描きたかったこと、そのものなのではないでしょうか。

また、僕はちょうど前日にJAXA相模原キャンパス特別公開で、
この作品の監修を務めている海洋研究開発機構の高井研先生のエキサイティングな生命の話を聴いたばかりだったので、
生命の旅の行方が更に気になりました。

…今はまだ、物語は始まったばかり。
EPISODE 1と銘打たれた「Eterenal Return -いのちを継ぐもの-」の、旅の続きが気になります。
三部作として構想されているというEterenal Returnの続編を楽しみに、
そしてこの作品が多くのプラネタリウムで上映され、人々が生命について考えるきっかけとなることを期待しつつ、
コスモプラネタリウム渋谷を後にしました。

また観に行きます。

HAYABUSA - Zuruck zur Erde ~ドイツ宇宙紀行 2012初夏~ その7:はやぶさ、ハンブルグの宙に舞う!

2012-06-03 | 映画・演劇・コンサートを観る
その6:ハンブルグの休日からの続き

プラネタリウム・ハンブルグPlanetarium Hamburg は日本の旅行ガイドブックでは紹介されていない場合が多いようですが、
緑豊かな市立公園の中にあり多くの市民が訪れる、ハンブルグでは大変有名で人気のある場所だそうです。
そしてここで現在、小惑星探査機「はやぶさ」の壮大な旅路を超高精細CGで描き上げた全天周プラネタリウム映像作品
HAYABUSA - Zurück zur Erde HAYABUSA-BACK TO THE EARTH-ドイツ語版)の
ヨーロッパ・プレミア上映が行われているのです。

僕たちは、今日この場所でHAYABUSA - Zurück zur Erdeを観るために、遥々日本からやって来たのです。

Uバーン(地下鉄)3号線に乗って、“約束の地”プラネタリウム・ハンブルグへ向かいます。



borgweg(市立公園)駅で下車。この辺りではUバーンも地上を走っていますね。

borgweg駅から徒歩数分で、鬱蒼とした木立に囲まれた市立公園の森の中へ。



ヨーロッパ有数の大都会ハンブルグの市街地中心部に、こんな森があるなんて信じられません。
街の喧騒も消えて、森の静寂の中に鳥の鳴き声が響き渡ります。

そして、森の小路を歩いて行くと…


突如、視界が開けて、
木立に囲まれた庭園の中にそびえ建つ威厳のある建物が現れます。

プラネタリウム・ハンブルグPlanetarium Hamburg です。


まるでレトロフューチャーなSF映画に登場する宇宙研究所か天文台のような独特の外観は、
この建物がプラネタリウムとして使われるようになる以前は、ハンブルグ市の水道の給水塔だったからだそうです。
高い塔の中には、巨大な水タンクが収められていたのですね。
現在では、水タンクの遺構はそのままプラネタリウムのドームとして再利用されているという訳です。

早速、プラネタリウム・ハンブルグの館内へ入ってみましょう。


館内はきれいに手直しされていますが、給水塔時代の名残りなのか壁や柱が同心円上にカーブを描いていますね。

エントランスホールにはプラネタリウムの資料が展示されています。



この建物の断面図がありました。上下に2つの球型タンクが重なっている構造になっていることがわかります。
このうち、下のタンクが現在のプラネタリウムのドームですね。
上のタンクはがらんどうのまま残されているそうで、先日ここを訪れられたHAYABUSA-BACK TO THE EARTH-(HAYABUSA - Zurück zur Erde)の
上坂監督ご夫妻は実際に上のタンクの中に入ってみたりされたそうですよ。
(※参考→上坂浩光監督のblog「星居Webブログ 2012年02月05日 ハンブルグ3日目(午後はお仕事)」)






資料展示の一角には新聞記事等のスクラップを集めたコーナーもあり、
HAYABUSA - Zurück zur Erdeのヨーロッパ・プレミア上映が始まったことを報じた記事も貼り出されていました。
当地でも、日本の小さな宇宙船の大冒険を描いた作品の上映は相当話題になっているようです。

プラネタリウム・ハンブルグは建物の外観はレトロですが、その中身は最新鋭のシステムを備えたハイテクプラネタリウムです。
映写機器類等のハードが最新鋭なのは勿論ですが、ソフト面でも最新鋭ぶりが徹底しています。プラネタリウム番組の鑑賞チケットがすべて事前に公式サイトでネット予約出来るのです。
HAYABUSA - Zurück zur Erdeはかなりの人気プログラムらしいので、僕も念の為に今日のチケットは日本を出発する前に予め自宅のパソコンを使ってネット予約しておきました。予約フォームがすべてドイツ語表記なので少々戸惑うこともありましたが、ドイツ語機械翻訳サイトを使って用語を読み解きながらスンナリと予約を済ませることが出来ました。

だから今日はエントランスの奥にあるチケットカウンターで、プリントアウトした予約フォームを見せるだけでOK!
カウンターの係員さんは、僕たちが日本人であるとわかると「ちょっと待ってて。日本語対応の音声案内ヘッドフォン貸してあげるから」と声を掛けてくれます。スタッフの気遣いもGoodです。凄いぞプラネタリウム・ハンブルグ!


プラネタリウムのドームに入る前のコンコースには、美しい星座図の天井画が描かれています。
ここにはグッズ類やスナック、飲み物を販売するカウンターもあります。飲み物はアルコール類も揃っていて、本当に「プラネタリウムは大人の社交場」という雰囲気。日本のプラネタリウムが基本的に「子供の教育」を主題としているのと対照的ですねぇ。


プラネタリウム・ハンブルグのオリジナルグッズ、日食をあしらったロゴ入りTシャツを見つけて、即購入。
これは帰国後、5月21日の金環日食の観望会で着るのにピッタリですね!

 (実際に金環食の日に着ちゃいました(笑)→見えた!太陽のリング ~金環日食2012~


いよいよドームに入ると、居ました居ました“御本尊”が!
プラネタリウム・ハンブルグの要となる投射機、ドイツが世界に誇る老舗カールツァイス社製の名機
The UNIVERSARIUM Mark IXです!
日本の名古屋市科学館にある世界最大の35mドームを持つプラネタリウム「Brother Earth」に設置された投射機と同じものですね。

日本国内のプラネタリウムと比べると上映前からかなり暗めのドーム内で、ネット予約時に指定しておいた席をちょっと難儀しながら探して、着席。
今日は日曜日ということもあってか、家族連れやグループ客が多く来場していて殆んど満席です。やっぱり事前にネット予約しておいて良かった!

上映前にスタッフから簡単に内容説明らしきものがあり、すぐに上映スタート。

…眼の前のドームに、もうすっかり見慣れたHAYABUSA-BACK TO THE EARTH-のオープニングの星空が広がります。
もうすっかり耳に馴染んだ心躍る旅立ちのテーマ曲が鳴り響き始めます。

でも、ドーム内に静かに流れる語りは、いつもの篠田三郎氏の声ではありません。
篠田氏同様に落ち着いた、でも時に力強く語られるドイツ語です。はやぶさに親しみを込めて語りかけるドイツ語です。

HAYABUSA - Zurück zur Erde…

僕の目の前で、HAYABUSAがドイツの街の宙(そら)に、いま羽ばたきました!

もう何度も何度も繰り返し観て、すっかり憶えてしまったHAYABUSA-BACK TO THE EARTH-が、ドイツの言葉で語られると新たな魅力と感動を持って心に染みこんできます。
僕はドイツ語は全く理解できないのに…不思議ですね。

そして、ドイツの観客たちも皆、HAYABUSAの物語に魅せられているのが手に取るようにわかるのが本当に嬉しかった。
機械を擬人化するという手法は、欧米の人にはあまり理解されないという話を聞いたことがありますが、少なくともHAYABUSA - Zurück zur Erdeではそんなことはありませんでした。
みんな、宇宙を旅する愛すべきHAYABUSAを「生きているもの」として見つめていました。
小惑星探査機の旅路を通して語られる生命の物語を見つめていました。

物語の終わりに、流れ星となり星空を駆け抜けるHAYABUSAと生命を次世代に繋いだカプセルの姿を見た時、観客の心に灯る想いは日本人もドイツ人も変わらない。
世界中のすべての人々が、きっと変わらぬ同じ想いを抱く。僕はそう確信しました。


本編上映終了後、日本のニュース映像も交えてスタッフから改めて丁寧な「はやぶさ」のミッションに関する説明があり、HAYABUSA - Zurück zur Erdeの上映は終了しました。
4月末現在では帰還バージョンではなくオリジナルバージョンでの上映でした(これは近日中に帰還バージョンに切り替えられる予定だそうです)。
そうそう、結局殆んど聴かなかったのですが、貸してもらった音声案内ヘッドフォンは日本語を始め数ヶ国語に対応、日本語は篠田三郎さんのオリジナルの音声トラックをそのまま使用していた模様です。

ドームから出ると、喜びが胸にこみ上げて来ました。
カウンターで飲み物を買って、皆で給水塔の最上階に登ります。

この景色を見ながら、乾杯!!

地上に降りてもまだ嬉しくて、皆でポーズを決めて記念写真!

やったー!!はやぶさ超最高!!

その8:プラネタリウム・ハンブルグこぼれ話に続く