天燈茶房 TENDANCAFE

さあ、皆さん どうぞこちらへ!いろんなタバコが取り揃えてあります。
どれからなりとおためしください

ニュージーランド星空旅記2009~5、天の河

2009-06-30 | 宇宙
写真:レイク・テカポ湖畔、善き羊飼いの教会

ニュージーランド星空旅記2009~4、レイク・テカポからの続きです

レイク・テカポの日が暮れた。
湖水とサザンアルプスの山並みは闇に溶け、窓の外にはいつの間にか硬くて冷たそうな夜の空気が漂い始めている。

今までずっと、ホテルの部屋で「銀河鐡道の夜」を読んで夜を待っていた。
日本から持参した、昭和28年初版印刷の古いハードカバーだ。多分、母か伯母の蔵書だと思うのだが、何時の頃からか僕の本棚に紛れ込んでいた本だ。

旧い文字で綴られた「銀河鐡道の夜」を読了して眼を上げ窓の外を見ると、まるで自分がたった今しがた、天の川の河岸を辿る天空の鉄道旅行から戻ってきたような気分になるのだ。
そして、先程旅立った“銀河ステーション”とはひょっとして、あの今は夜の闇に沈む湖畔の教会の辺りにあるのではないかという気さえしてくるのだ。

着込んで窓を開け、湖畔へと続く庭に出る。
頬に突き刺さるような凍てつき始めた夜風に顔をあげ、空を仰ぐと…もう幾つかの星が出ている。
また銀河鐡道に乗りたくなった。このまま暗い湖畔へ星空を見に行こう。

ホテルの庭から続く湖畔の道を歩き、そのままマウントジョンへと続く道を歩く。
この道はマウントジョン山頂の天文台へと続くトレッキングコースになっているが、日没後に山へと向かうのは危険な行為なのは充分承知している。
どうせ明日の夜には星空ツアーで安全に天文台まで行けるのだ、今夜はとりあえず、足下が確かで歩いていけるところまで行ってみよう。

そう思って歩き出したのだが、暗い湖畔の道に目が慣れてきた頃、木立に幾つものあかりが燈っているのに気がついた。まるでクリスマスツリーのように。

「否、クリスマスツリーじゃない!これは…星だ。天の河だ!」

見上げるレイク・テカポの夜空。
そこは、光の洪水だった。天空を切り裂き滔滔と流れる大河。
夜が暗いなんて誰が云ったんだろう、そこには光が溢れ、流れているじゃないか!

「ではみなさん、さういふふうに河だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしてゐた、このぼんやりと白いものが何か御承知ですか。」

「…あれは、やっぱり河ですよ。天の上にも河はあるんだ。ほら、あんなに煌いている。」
♪あかいめだまの さそり ひろげた鷲の つばさ あをいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。


「ああ、あそこがサウザンクロスの駅だ。南十字星が、河の中にあんなに輝いている。石炭袋の、空の孔も見えているなあ。」

天の河の畔には、ちぎれた雲が二つ漂っている。
こんなにも星が明るいと、夜でも雲が見えるのかと感心して目を凝らすと…
「あれは…ああ、マゼラン雲…」

もう、声も出ない。

なんという星空!いや、これは最早、宇宙そのものだ。
「これが宇宙…地球を取り巻く世界!なんていう物凄い世界に囲まれて、僕は生きていたんだろう!
そして、来年、あの星空から、僕たちの宇宙船が帰って来る。
今この時も、『はやぶさ』はこの星の世界を旅しているんだ。たった独りで!
ああ、僕は絶対、『はやぶさ』をウーメラ砂漠まで出迎えに行くぞ。

その夜、レイク・テカポ湖畔の凍てつくような林道で、僕はただ夜空を見ていた。このまま夜明けまででもずっと空を、宇宙を見ていたい、そう思いながら。
そして、この宇宙を孤独に旅する船たちを想いながら。

明日は…山に登ります。
天空への窓、深宇宙への入り口、マウントジョン天文台目指して。

ニュージーランド星空旅記2009~6、トレッキング・目指せマウントジョン天文台に続く

ニュージーランド星空旅記2009~4、レイク・テカポ

2009-06-29 | 旅行
写真:氷河湖レイク・テカポ 湖畔に「善き羊飼いの教会」と、サザンアルプスの山並み

ニュージーランド星空旅記2009~3、クライストチャーチ・街外れの駅からの続きです

2009年6月16日

朝8時、ホテルをチェックアウトすると外はみぞれのような冷たい雨と、強い風。
いかにも冬の荒れた朝という感じで、余り気分の良いものではない。
増してや、これから山の上まで星空を見に行こうというのに、初っ端からこんな天気では気分も萎えるというもの。

今日は、クライストチャーチからクイーンズタウン行きのバスに乗って、途中のサザンアルプス山中にある氷河湖レイク・テカポへと向かう。
レイク・テカポは景色がとても美しいことで名高い観光地だが、昼間の景色と同じくらい、いやそれ以上に夜空、星空が素晴らしく美しいところなのだ。

標高の高いサザンアルプス山中にあり、空気が澄みきっている上に周辺の人口が希薄な為に光害もなく漆黒の夜空となり、更に天候も比較的安定していて晴天率が高いとされる。
このようにスターウォッチングの好条件を見事なまでに備えたレイク・テカポは世界中の天文ファンから注目されている場所である。その素晴らしい星空を世界遺産に登録しようという声もあり、やがて世界初の星空の世界自然遺産が誕生するかもしれないという。
またテカポ湖畔に聳えるマウントジョンの山頂には世界最南端(南極の観測基地を除く)に位置する天文台があり、日本の名古屋大学をはじめとする研究機関により“重力マイクロレンズ効果”を利用して太陽系外惑星などの暗い天体を探す「MOAプロジェクト」が実施されていることでも知られる。

天文ファンから天文学者まで、世界中の星好き・宇宙好きが憧れ集う「星の町」レイク・テカポへ行って、世界遺産になる星空を見てみたい。また、地球上で最も深宇宙に近い場所の一つ、太陽系外惑星系への入り口であるマウントジョン天文台を訪ねてみたい。
今回のニュージーランド旅行の、それが一番の目的でもある。

クイーンズタウン行きのバスは日本からネットで予約しておいたが、バス会社のホームページの予約フォームに日時と乗車区間等とクレジットカード番号を入力するだけで完了し、えらく簡単で便利だった。「早割り」料金が適用できたので格安だったし。
バスに乗車する前に、運転手に確認メールのプリントアウトを見せるだけでチェックインもすんなりOK。何事も簡便でスマートで、中々いい感じ。
運転手のおっちゃん、僕が日本人と判ると「Japan?Moshimoshi?モシモシ!?Hahaha!!」
…日本人が電話する様子でも見たことがあるんだろうか?ちなみにおっちゃん、以前に観光旅行で京都に来たことがあるそうな。


モシモシおっちゃんが運転するバスは、クライストチャーチの街を抜けてハイウェイを快調に飛ばしていく。
やがて空も晴れ渡り、遥か彼方に雪を頂いたサザンアルプスを見ながらの気持ち良いドライブになった。



途中、何度か踏み切りを渡る。鉄道と併走しているようなのだが、列車は姿を現さない。

レイク・テカポのような山岳リゾート地、それも清らかな空気が売りの場所へは、本当は環境に優しい鉄道でアクセスしたいところなんだが…
スイスのように、山地へのアクセスは鉄道を活用するようには出来ないもんだろうか?
ニュージーランドは環境先進国というイメージがあるのだが、これだけ鉄道が冷遇されて自動車社会になっているのは何だか意外な気さえする。


バスは段々と山道に入っていく。サザンアルプスがどんどん近付いて来る。


標高が高くなるにつれ山道はどんどん険しくなり、所々路面が凍結している箇所にも出くわす様になった。モシモシおっちゃんの腕の見せ所のようなスリリングな山越えルートである。
車窓には迫力ある山並みが連続して、見ていて飽きない。

不意に車窓に碧い不思議な色の水を湛えた湖面が広がり、昼過ぎに無事レイク・テカポへ到着

「うわー!綺麗なところだなぁ!そして、寒いなー!!」


バスはここで昼食休みのようで、他の乗客は皆道路沿いに軒を連ねたレストランの方へと歩いて行く。僕の予約していたホテルは、そのレストランの先。
と言うより、レイク・テカポの町は湖岸の国道沿いの数十メートルに店舗やホテルが密集しているだけで、実に小さいのだ。
時季外れのせいかがらーんとしたホテルに入り、チェックイン。
空いているからか、1人客なのにレイクビューの広い部屋に通してくれた。


部屋から、この眺め。
ラピスラズリを想わせる不思議な碧い水面と、宇宙へ直結しているかのような暗いまでの青空。
「うーん…このままずっと見ていたいよ。」奇麗だなぁ…

湖岸をちょっと歩いてみる。

湖面に突き出した岬にある、「善き羊飼いの教会」と呼ばれる石造りの小さな教会。
中に入ると、白髭の神父さんが出迎えてくれた。
この教会には祭壇がない。あるのはテカポ湖に面した大きな窓だけ。
窓に広がる景色が、そのまま自然の祭壇になっているのだ。
「こんな素晴らしい祭壇を持っている教会は、きっと世界でもここだけだね。」


教会の傍に立つ、開拓時代の牧羊犬の像。
牧羊王国ニュージーランドの功労者を讃えている。

それにしても、ちょっと外を歩き回っただけで身体が芯まで冷えてしまうほど寒い!
それに僕は手袋を持ってくるのを忘れてしまったので、手がかじかんで切れそうに痛い。こりゃ堪らんと、“目抜き通り”にあるガソリンスタンド兼スーパーマーケットでモコモコした暖かそうな手袋を買う。
ついでに、スーパーの数件隣にある「マウントジョン星空ツアー」の事務所に寄って、予約の再確認。明日の夜、マウントジョン天文台で実施される星空観測ツアーに申し込んでおいたのだ。世界一の星空を、宇宙への入り口である天文台で見るなんて何とも贅沢で、今から楽しみだ。

さて、今日はもう部屋でゆっくり休んで、日が暮れて星が出てくるのを待とう。
日本から持参した宮澤賢治の「銀河鐡道の夜」を読みながら。

ニュージーランド星空旅記2009~5、天の河に続く

ニュージーランド星空旅記2009~3、クライストチャーチ・街外れの駅

2009-06-28 | 旅行
写真:クライストチャーチ駅に到着後、構内で機回しを行う「トランツ・アルパイン」号

ニュージーランド星空旅記2009~2、クライストチャーチ・大聖堂と公園の街からの続きです

クライストチャーチの駅は以前は市内中心部から程近いそれなりに便利な場所にあったのだが、現在は何故か街外れのえらく不便な場所に移転してしまっている。
かつてのクライストチャーチ駅舎は現在、映画館と子供向けの学習施設が入った施設として再利用されている。
カンタベリー博物館に行く前に見に行ってみた、これがその旧駅舎。



これが現駅舎。
モダンなガラス張りの建屋だが、ショッピングモールの奥にこっそり隠れるようにあって、かなり小さい。


人けのない駅舎の中には、鉄道が華やかだった頃の名残りだろうか、豪奢なエンブレムが掲げられていた。


駅の周辺はショッピングモールがある以外は殺風景そのもの。


暫らく待っていたら、小型の凸型DLに牽引された貨物列車が通過していった。
貨車は、カラのコンテナ車だろうか?

現在、ニュージーランドの鉄道は民営化による合理化が過度に進んだ状態で、収益の上がらない旅客列車が削減に告ぐ削減で壊滅寸前となっており、ここクライストチャーチを発着する旅客列車は僅かに2往復を残すのみ。
海岸線に沿ってニュージーランド北島の首都ウェリントンへのアクセス拠点となっている港町ピクトンを目指す「トランツ・コースタル」号と、
サザンアルプスを越えてタズマン海を望むグレイマウスへと向かう「トランツ・アルパイン」号がその貴重な旅客列車であり、ニュージーランド南島で運行されている旅客列車はこの2つのみである。
どちらも車窓が大変美しいことから観光列車として人気があり、特に「トランツ・アルパイン」号は世界で最も美しい風景の中を走る列車の一つに数えられることもある程。
この「トランツ・アルパイン」号に、4日後に乗車することになっている。今日は、その下見に来たのだ。

窓口も閉まり、誰もいない駅舎の中で、グレイマウスから戻ってくる「トランツ・アルパイン」号の到着を待つ。
午後6時過ぎの到着予定時刻が近付くと、出迎えの人達がどこからともなくやって来て駅は少し賑やかになった。
「列車を待ってるのかい?もうすぐ着くよ」と声をかけてくれる人もいる。


定刻に到着した「トランツ・アルパイン」号。
座席車6輌に展望デッキ付き荷物車と電源車をつないだ編成で、車内はほぼ満席だったようだ。冬季のオフシーズンなのに、やっぱり人気があるんだなぁ。
列車を降りた乗客でごった返していたプラットホームから人けが退いて、静かになったところでゆっくり撮影。水色に塗られた、瀟洒な客車。展望デッキは昔の日本の超特急「つばめ」や「はと」を彷彿とさせるオープンデッキで、ここからサザンアルプスの風景を眺めながら走ると気持ち良さそうだ。
4日後の乗車が楽しみになってきた。

編成が回送されて引き揚げるまで見ていようと思ったが、暫らく経っても動き出す気配がない。
駅からは乗務スタッフも帰ってしまい、誰もいなくなった。日も暮れて寒くなってきたし、寂しいから今日はもう帰ろうか。

駅前のショッピングモールの裏にバス停があり、ちょうど終バスが停まっていたので飛び乗る。
今夜は、早めに寝て明日のバス移動に備えよう。明日はいよいよ、氷河湖レイク・テカポまで行きます。世界遺産の星空が、そこには待っている!

ニュージーランド星空旅記2009~4、レイク・テカポに続きます

ニュージーランド星空旅記2009~2、クライストチャーチ・大聖堂と公園の街

2009-06-28 | 旅行
写真:クライストチャーチのシンボル、ゴシック大聖堂が冬の青空に聳える

ニュージーランド星空旅記2009~1、シンガポール・赤道を目指してからの続きです

2009年6月15日

シンガポール航空のB777は夜間飛行で赤道を飛び越え、ついでに日本を出てから2度目の時差も飛び越えて、現地時間の朝9時半にニュージーランド南島の中心都市クライストチャーチの国際空港に到着した。



着陸前、窓からは初めて見るニュージーランドの風景が広がっていたが、朝日を浴びて輝く急峻な雪山が先ず目に飛び込んできたのだ。

「あれが南半球のアルプス山脈、サザンアルプスか!」

あの山懐にある氷河湖レイク・テカポ、世界で最も星空が美しく見えるといわれる場所が今回の旅の最終目的地なのだが、その前に先ずはクライストチャーチの街にちょっとだけ滞在する。テカポへ向かうバスは早朝発なので、明日まで待たないといけない。
それまで暫し、“ガーデンシティ”とも称される美しい街だというクライストチャーチを楽しもう。

空港ターミナルから外に出ると、空気が硬くて冷たいのに気付く。
「ああ、冬になった!昨夜は熱帯にいたというのに」

空港から路線バスで市内へ行けるので、とりあえず市のランドマークとなっている大聖堂のある、その名も「大聖堂(カテドラル)スクエア」へ向かう。

クライストチャーチ市内中心部にいると否応無く目に入るゴシック大聖堂。
この大聖堂を中心に街が区画されているので、ここを基点に先ず予約していたホテルを探す。まだ午前中なのでチェックインは無理だろうが、荷物を預かってもらおう。

今夜泊まる「HOTEL SO」、予約サイトでやたらと値段が安かったので即決したのだが、大聖堂のすぐ裏手にあった目指すホテルは若手アーティストが好き勝手にデザインしたような凄い外観。何しろビルの壁面が原色の光るブロックで覆われている。
「なんじゃ、このホテルは…」と面喰ったが、フロントは親切ですぐに部屋を用意してくれた。
で、通されたのがこの部屋。

ベッドがブルーに光ってます(笑)
実は、バスルームも光ってました。それも数パターンに変更可能(笑)ラブホテルかよ!
「今まで世界中で随分いろんなホテルに泊まったけど、室内にイルミネーションのある部屋に泊まるのは初めてだな」
でも、実際に部屋にいるとそれ程違和感がないんだよな。かなり凝って考えてデザインしてるのが解かるし。方向性はともかく。
で、何だかんだ言いながら結構気に入ってしまった。おススメです、クライストチャーチの「HOTEL SO」。

イルミネーションの輝く部屋に荷物を置いて身軽になって、早速街に出る。
先ずは先程の大聖堂へ。

木の天井と梁が暖かな雰囲気の、大聖堂内部。


大聖堂の前からは、これまたクライストチャーチの名物であるトラム(路面電車)が発着する。

街を歩いていると、こんなところからトラムがひょっこり現れたりします。




こちらはトラムの夜の名物、トラムウェイ・レストラン。

トラムの車内で一流レストランのシェフの料理が楽しめる「食堂車路面電車」なのだが、トラムの車内で飲食出来るなんて熊本市電でやってるビヤガーデン路面電車みたいで楽しそう。
尤も、こちらは高級レストランがトラムに乗っている訳なので、大衆的にワイワイ楽しむ雰囲気ではありませんが。

街を歩いていると、トラムが追い越していきます。
何だか懐かしい情景。



トラムの行く先に見えているのは、カンタベリー博物館。

重厚な洋館の内部は完全に改装され、近代的な博物館となっている。

人間によって“食い尽くされてしまった”悲劇の巨鳥モアの標本から、この地がアオテアロアと呼ばれていた時代から暮らしていた先住民族マオリに関する展示、更にはクライストチャーチの街の発展を実物大の建物で再現したコーナーから南極探査まで、館内は実に充実していて見ているとあっというまに数時間が経ってしまう。
それにしても、南極探査コーナーで日本の白瀬矗中尉に関する立派な展示があったのは嬉しかったなぁ。海外で日本人の功績が称えられているのを目にすると、我がことのように誇らしいね。



カンタベリー博物館の裏手は植物園となっており、その先には広大なハグレー公園が続いている。


ガーデンシティ・クライストチャーチの象徴のようなハグレー公園。
生い茂った木立の間のひんやりとした空気を吸い込みながら、夕陽の差し始めた冬の公園を歩いていると、とても気持ちがいい。
このまま歩いて公園を抜けて、街外れにあるというクライストチャーチ鉄道駅まで行ってみよう。
数日後に、この駅から発車する「トランツ・アルパイン」号という列車に乗ることになっているのだ。どんな駅なのか、様子を見ておきたい。

ニュージーランド星空旅記2009~3、クライストチャーチ・街外れの駅に続きます

ニュージーランド星空旅記2009~1、シンガポール・赤道を目指して

2009-06-28 | 旅行
写真:シンガポール、Tanjong Pagar駅の午后

序:
 梅雨の日本を離れて南半球、ニュージーランドに行ってきました。
 氷河湖に聳える山の上の天文台を訪ね、
 やがて世界遺産になる星空を見て、
 雪山を越える列車に乗る。
  そんな旅の想い出語りに、暫しお付き合いを。

 天燈茶房亭主 mitsuto1976


2009年6月14日

早朝の福岡空港、国際線ターミナル。

今日は福岡空港を10:15発のシンガポール航空でニュージーランドへ出発するのだが、昨夜の前泊は乏しい小遣いの都合で(というか最近では毎度の事だが)博多駅近くのインターネットカフェ泊まりとなってしまい、それも格安のナイトパックだと早朝までしか滞在できないので、朝7時前には空港に到着してしまった。
さすがにこの時間だとチェックインカウンターも開いておらず、人っ子一人いない。

海外の空港だと、貧乏ヒマだらけのバックパッカーなんかが空港のロビーに寝転がって夜明かしを決め込んでる姿をよく見かけるが、大人しくてお行儀の良い日本の地方空港では横になって朝寝をする訳にもいかず、待合所で所在無い時間を過ごす。ああ眠い…

待つこと2時間、ようやく開いたカウンターで搭乗手続きを済ませる。
僕の今回の航空券はユナイテッド航空で貯めたマイレージの特典航空券で、シンガポール航空利用なのにEチケットのプリントアウトにはユナイテッドのマークが印刷されていたりするのでカウンターのお姉さんが面食らったらしく
「お客様…これは海外で購入された航空券ですか?」とか聞かれたが、
「マイレージのタダ券なんですよ」と事情を説明したら納得してもらえて、無事チェックイン完了。シンガポールで乗り換えて、最終目的地のニュージーランド・クライストチャーチまでのボーディングパスを渡され、預け荷物もクライストチャーチまで直行となる。
さあ、後はイミグレでパスポートに出国印を捺してもらって、飛行機に乗るだけ!


福岡発シンガポール行きシンガポール航空655便、ボーイングB777。
今日は“沖止め”というか“端っこ止め”で、ボーディングブリッジが使えないのだが、機体を間近でじっくり見られるので僕はこの乗り方好きだな。


離陸して僅か数分で、熊本県の上空を通過する。
この窓の下から、前夜から何時間もかけて移動してきたというのにと思うと、何とも虚し~い気分になるのだが、自分が普段住んでいる土地を空から見られるのはそれなりに楽しかったりもする。
今日は少し雲があるけど、阿蘇の五岳の“涅槃”が奇麗に見えるねぇ。

ネット書店で購入したきり「積ん読」になっていた本・新刊漫画等大量に持ち込んでいるので、機内食を食べたらワインをお替りして機内読書。

魔夜峰央の「パタリロ!」ももう82巻目か、よく続くなぁ…

そんなことをしてる間にSQ655便は、1時間の時差を越えて現地時間の午後3時過ぎにシンガポール到着。


乗り継ぐSQ297便・クライストチャーチ行きは19:50発なので、赤道を目前にして南半球に入る前に5時間ばかり待ち時間がある。
シンガポール・チャンギ国際空港は世界でもトップクラスの快適サービス満点空港で、ターミナル内にはレストランやショップのみならずリラクゼーションコーナーやゆったりカウチ、果ては無料インターネット端末やら無料映画館まで揃っているので、このまま待っていてもいいのだが、せっかくシンガポールに来たんだから入国して街へ繰り出す。
イミグレでパスポートに入国印を捺してもらい、そのまま空港ターミナルの真下にある新交通システムMRTの駅へ。
掻き集めて持ってきた、数年前にシンガポールに来た時に(確か、エジプトへ行く途中の乗り継ぎだったような…)使い残したシンガポールドルの小銭を使ってタッチパネルの券売機で乗車券カードを購入。
冷房がガンガン効いた快適なMRTの電車に乗って、途中1回乗り換える必要があるがそれでも30分もかからずシンガポール市内中心部に到着する。

シンガポールの観光名所といえば“世界三大がっかり名所”の一つに輝くマーライオン像や、後は豪華で高価なラッフルズホテルとかだろうが、そんな場所には最初から目もくれずに向かったのがここ。

マレーシアのクアラ・ルンプール、そしてタイ王国はバンコクのフワランポーン中央駅から連綿と続くマレー鉄道の終着駅、Tanjong Pagar(タンジョン・パガー)
シンガポール国内にある唯一のマレー鉄道の旅客駅であり、駅の運営はマレーシアが行っているので「シンガポールに残されたマレーシア」とでも云うべき独特の雰囲気が漂う場所である。
時間がないので「ちょっと乗り鉄」という訳にはいかないが、この個性的な駅を見に来たのだ。それだけの価値のある、隠れたシンガポール名所だと僕は思っているのですよ。


プラットホームに出ると、丁度列車が出て行くところだった。
マレー鉄道には、タイ国内で運転されている日本のブルートレイン客車を使った夜行列車にしか乗ったことがないが、いつの日か全区間乗り通してみたいものだ。


駅構内にある、「マレーシアの」税関。
この駅は既にマレーシア領なので、ここからマレー鉄道の国際列車に乗ると先ずマレーシアの入国手続きをしてから、国境の橋の袂にある信号所でシンガポールの出国手続きをするという手順になるらしい。通常と逆だ。
もう殆ど、国同士の意地の張り合いだねこうなると。


タンジョン・パガー駅舎内。
ヨーロッパの教会のような、でもどことなくモスクのような。エキゾチックで美しい駅です。


駅舎内にこんなプレートが掲示されているのを発見。
シンガポールとバンコクを結ぶ超豪華クルーズ列車、「イースタン&オリエンタル・エクスプレス」のエンブレム。

「まあ、僕みたいな貧乏リーマンパッカーの乗り鉄には一生縁がない列車だぁね~」

ちなみに「イースタン&オリエンタル・エクスプレス」の車輌はヨーロッパの本家ワゴン・リ社製オリエント急行車輌とは縁も所縁もない、ニュージーランドで使われていた日本製車輌だそうな。
今から行く場所で走っていた客車が、ここで豪華列車に生まれ変わって使われてるのか、何か不思議な感じ…

さあ、シンガポール散歩も楽しんだしそろそろ次のフライトに備えて空港に戻ろうか。
またMRTに乗ってチャンギ空港に戻り、イミグレでパスポートに次のクライストチャーチ行きボーディングパスを添えて差し出すと、入国審査官のおばちゃんから
「あら?もう日本でチェックイン済んでるの?あんた、今までシンガポールに入国して何してた訳?」とか突っ込まれる。
正直に「ハァ、ちょっと駅を見に…」とか云うと不審に思われて面倒になりそうだったので、
「市内でね、買い物してたんだ」とか何とか誤魔化す。あぁ、マイナーな趣味を持ってると色々と苦労する。。。


搭乗ゲート前に来ると、こいつが停まってた。
世界最大の旅客機、エアバスA380!

「でっかいなぁ~!ああ~これに乗りたいなぁ!」

しかしA380はオーストラリアのシドニー行きの機材で、僕の乗るニュージーランド・クライストチャーチ行きSQ297便は福岡から乗ってきたのと同型のB777でした。

「さあ行こう、夜間飛行で赤道を飛び越えて、ニュージーランドへ!」

ニュージーランド星空旅記2009~2、クライストチャーチ・大聖堂と公園の街に続きます

さよならマイケル

2009-06-26 | 音楽を聴く
マイケル・ジャクソン、早すぎる死。

マイケル・ジャクソンさんが死亡=報道(トムソンロイター) - goo ニュース

今朝、起き掛けに見たテレビニュース速報では「呼吸停止?」と言っていたが、
出勤して職場で見たニュースでは「死亡したらしい」と言っていた。
帰宅すると、追悼番組をやっていた。

「ああ、本当に亡くなってしまったのか…」でも、正直全然実感が沸かない。

僕が中学生の頃に初めて買った洋楽のアルバムが「DANGEROUS」。
辞書を引いて歌詞を訳してみると、聴いていて恥ずかしくなる位に純真に愛を歌い上げた作品や、社会の根底に潜む差別心をえぐり出した作品ばかりなのに驚かされた。
丁度その頃から「皮膚から色素が抜ける病気」で白い肌に変身したり、整形手術を繰り返しているとして物議を醸していたが、そのぶっ飛んだ言動と存在感はスーパースターそのものと思えて寧ろ好ましかった。
何というか…もう「人間」ではなく「マイケル・ジャクソン」という存在だとしか言い様がないんだよね。

今夜は久し振りにあの時の「DANGEROUS」のCDアルバムを聴こう。
このアルバム、発売からもう20年近く経ってたのか。

BLACK OR WHITEを乗り越え、アフリカ系のアメリカ大統領が活躍する時代の地球も、変わらずHEAL THE WORLDを必要としている。
さよならはちょっと早すぎたよ、MICHAEL JACKSON…

行けるぞ、種子島!皆既日食2009

2009-06-22 | 宇宙
昨日ニュージーランドから帰って来たばかりだというのに、今日も早朝から一仕事。
ああ、勿論勤め先でお仕事を再開したことではありませんよ(こんな風に書くと怒られそうだが…御免なさい)。
実は月例の有給休暇消化で今日までお休みなのです。

で、折角のお休み、それも旅行疲れを癒す絶好の休息日に朝も早よから何をやっていたのかというと…
種子島行き高速船を運航している船会社の予約センターに電話をかけまくってたのだ。
いよいよ1ヵ月後に迫った皆既日食を、皆既日食帯の北限ギリギリの種子島で見るべく、島への足を確保しようという寸法なのだ。



種子島へは皆既日食の時間に合わせても九州本土から高速船で日帰りできるし、
それに僕はこれまでにもJAXA種子島宇宙センターからのH-IIAロケットの打ち上げを見るために何度も渡航したことがあるので、それなりに土地勘もある。
ちょうどその種子島宇宙センターの射場辺りが皆既日食帯の北限ライン直下で、当日はJAXAも構内を開放して皆既日食見学客を受け入れるという話を聞いていたので、皆既日食は種子島で見ようと前々から考えていたのだ。

そんな訳で皆既日食のちょうど1ヶ月前の今日、種子島行き高速船のチケットが予約開始となるのに合わせて、予約センターでの受付開始時刻と同時に電話をかけたのだが…

「全然つながらん!ずーっと話し中だ!」

まあ、みんな考えることは同じだろうから当然ですね。

でも、皆既日食の時期の高速船は予約が殺到してネット予約のサーバーがパンクするのを見越してか、予約は電話のみでの受付なので、とにかく電話をかけ続けるしかない。
我が家の固定電話の前に座椅子とお茶と食べ物を準備して、ひたすらリダイヤルボタンを押し続けること実に2時間半!
ついに…

「取れた~!朝一番の種子島行き高速船ロケットの予約取ったぞ~!!」

ああ、疲れた…リダイヤルボタンを数百回押し続けた指が痛い…
それに、帰り便は既にキャンセル待ちも100人以上が殺到していて受付停止しているような状況で、片道キップでの予約となってしまったのだけどね。
それでも、これで種子島までの足は何とか確保しました。やった!

そんな訳で、2009年7月22日の皆既日食を追う種子島行きのタイムテーブルはこんな感じ。
未明:熊本県八代市の自宅をクルマで出発、九州自動車道を南下
夜明け前:鹿児島本港到着
8:00 南埠頭ターミナルからコスモライン「高速船ロケット」始発便乗船
9:35 西之表港到着
9:45 大和バス南種子営業所行きで西之表出発、皆既日食帯目指して種子島を南下
10:53 南種子営業所到着


バスが終点の南種子営業所に着く頃が、ちょうど皆既食の始まる頃ですね。

ちなみに大和バス南種子営業所はここ。

国立天文台の「2009年7月22日皆既日食の情報」ページにある「種子島における北限界線の詳細」と比較してみると…
「皆既日食の北限から1キロばかり離れてるな、うむむ…」
残念ながら、バスで南下できる限界地点から見ると完全な皆既とはいかないかも知れない。
それでも、間違いなく太陽は限りなく細くなるし周囲も暗くなる筈だし、それにどんどん食が進行して周囲が暗くなっていく中をバスで走るのも面白そうだ。
「高速船のチケットも取れたし、とにかく行けるだけ行こう!種子島へ!!」

さて、問題は皆既日食が終わった後、どうやって九州本土へ戻るかなんだが…
「ま、翌日以降の船の便なら何とかなるでしょ。真夏だから野宿しても死ぬことはないだろうし」
実際には以前実行した“種子島縦断ナイトハイク”を再決行して夜通し歩いて西之表港に戻ろうかと思う。虫除けスプレーを大量に準備しておく必要はありそうだね。

※6/23追記 種子島からの帰りの高速船の予約も取れました。皆既日食翌日の7/23の朝便ですが…

南半球から帰ってきました

2009-06-21 | 日記
先程、無事に南半球から日本に帰ってきました。
いや~日本は蒸し暑いですね(たかが1週間程度、気候が逆の南半球に行ってただけで、何云ってるんだか我ながら…)。

それに何かやたら明るいですね。それもその筈、今日は夏至なんだそうです。
ちなみに、南半球では今日は冬至になって、かぼちゃを食べて柚子湯に入る日になりますが(クライストチャーチのスーパーマーケットではかぼちゃは売ってたが柚子は無かったな、どうするんだろうオレンジで代用するんだろうか)、天文学や暦学では南半球も北半球も関係なく「夏至は夏至」なんだそうです。さっき、この記事を書くためにぐぐってて知りましたが。
こんなところにも、南北問題の影響が…(大袈裟)。

さて、この1週間ニュージーランドで遊びまわってました。

こんな山の上の天文台まで行ったり…

マウントジョン天文台から望むサザンアルプス

こんな風景の中をトレッキングしたり…

レイク・テカポ湖畔、“善き羊飼いの教会”辺り

こんな列車に乗り鉄したり…

トランツアルパイン号

いや~、楽しかった!!
確か当初は「小惑星探査機はやぶさの帰還を1年後に控え、その出迎えの準備というか視察というか、とにかく南半球に往く!」という目的らしきものもあったような気がするのだが、ニュージーランドの美しい風景と気持ち良い冷涼な気候の中ですっかり遊んじゃいましたw

でも、ちゃんと「はやぶさ君」の出迎えの準備もしましたよ、ほら。

シンガポール航空ボーイングB777機上から、オーストラリア上空ウーメラ方面を見る

嗚呼、もうすぐこの空に「はやぶさ」が帰って来るんだねぇ…
ううっ、ウェルカムドリンクのシンガポールスリングが効いてきやがったかな、目から汗が…

これからボチボチ写真をまとめて、ボチボチ旅行記書きますので気長にお待ち下さい。
今日は…スミマセン、日本食食べて国産ビール飲んで寝ます。
エコノミーでも快適至極なシンガポール航空とは言え、流石に時差を2度も越えての超長距離遠回りフライトは疲れた…

ところで、帰宅後JAXAのプレスリリースをチェックしたら、先日月に帰った「かぐや」の最後の置き土産が出ていましたね。
月周回衛星「かぐや(SELENE)」のハイビジョンカメラ(HDTV)によるラストショット画像の撮影について


どんどん、月面が近付いて来る。


さっき乗っていたボーイング777の巡航高度と同じ位だ…
そしてこの後…

画像提供:JAXA/NHK

ああ、また目から汗が…

改めて、ありがとう、かぐや。

南島横断、トランツアルパイン号

2009-06-19 | 実況
ニュージーランドを走る数少ない旅客列車の一つ、トランツアルパイン号に乗ってクライストチャーチから南アルプスを越え、西海岸のグレイマウスという街に到着しました。
これで今回の旅の目的は全て果たしました。これから再びトランツアルパイン号でクライストチャーチに戻り、明日ニュージーランドを離れます。

さて、帰りの車中では旅の成功を祝ってニュージーランドビールで祝杯をあげようかね。

登頂!マウントジョン天文台

2009-06-17 | 実況
昨夜のレイク・テカポは天の川が眩しいまでの星空でした。

今日は正午にテカポを出発して湖沿いのトレッキングコースを歩くこと2時間余、先程マウントジョン山頂の天文台に到着!
麓を歩き始めた頃は曇っていた空も、何時しか「宇宙まで突き抜けるような」暗いまでの青空に。今夜の星空も期待出来そうです。

さて、そろそろ山を降りて、ホテルの隣の日本食レストランに名物のサーモン丼でも食べに行こうかな。

シンガポール、終着駅

2009-06-14 | 実況
まだ南半球には入っていません。赤道にはだいぶ近付きましたが。
シンガポールで飛行機の乗り換え待ち、マレー鉄道の終着駅に行って来ました。この線路が、遥かバンコクまでつながっているんだなぁ…

チャンギ空港に戻って、これから夜間飛行。明日の朝にはクライストチャーチ到着予定。

かぐや、昇天

2009-06-11 | 宇宙
かゝる程に宵うちすぎて、子の時ばかりに、家のあたり晝のあかさにも過ぎて光りたり。

先程(平成21年6月11日 午前3時25分頃)、月周回衛星「かぐや(SELENE)」は月に帰りました。

夜半前から雨雲に覆われていた熊本県八代地方も、丁度その時間帯になって雲が途切れ、ほんの少しだけ欠けた月が雲間に輝きました。

あふことも涙にうかぶわが身にはしなぬくすりも何にかはせむ

なよ竹のかぐや姫は不死の薬を遺して月に昇天しますが、
「かぐや(SELENE)」は月の起源と進化の解明のためのデータと、月周回軌道への投入や軌道姿勢制御技術の実証という大きな成果を遺してくれました。
今後、それらのデータ解析が本格的に進められていくことになります。
21世紀の竹取物語は、これからが本番なのです。

「かぐや(SELENE)」は月で静かに永遠の眠りに就きます。僕を含めて、41万人の名前と想いに擁かれて…

ありがとう、かぐや。

最後の夜~竹取物語2007-2009 epilogue

2009-06-09 | 宇宙
月周回軌道に入る「かぐや(SELENE)」 画像提供:JAXA

あと30時間程で、月周回衛星「かぐや(SELENE)」は月に帰ります。

SELENE通信「お知らせ」

想えば、僕が本格的に宇宙科学に興味を持って以来初めて、
誕生と旅立ち(打ち上げ)から旅の終わりまでを通して見届けることの出来た船が「かぐや」でした。

コンデンサの取り付けミスで打ち上げが急遽延期されたことを、
宇宙研相模原キャンパス一般公開で知ってやきもきしたあの夏の日
月への旅立ちを見送るべく種子島行きフェリーに乗り込むも、
見込み違いのせいで数時間遅れで間に合わず船上で空を見上げたあの日の海
驚異の「地球の出」ハイビジョン映像にこころ打ち震えたあの夜
地球と月の船との会話に耳を欹てたあの森の中の黄昏

21世紀の竹取物語の様々な想い出が、胸に去就しては最後の夜の空に消えていきます。
最高の余韻を残して、間もなく最後の舞台の幕が降ります。


JAXAのかぐやプロジェクトチームの皆さん、

それから、

かぐやを影に日向に支えてこられた総ての皆さん、

そして、

見事に使命を果たし大役を演じきった名女優。
我らが「黒き月の船」、かぐや(SELENE)。

素晴らしい竹取物語をありがとうございました!
今、終幕を前に、一観客である僕から、心からの感謝とスタンディングオベーションを送りたいと思います。

ありがとう、かぐや。

6月11日の午前3時30分頃、僕も月を見上げます。例え目には見えなくても、確かにそこにはかぐやがいるから。
大切なものは、目に見えなくてもいいのだから。