天燈茶房 TENDANCAFE

さあ、皆さん どうぞこちらへ!いろんなタバコが取り揃えてあります。
どれからなりとおためしください

熊本県から見えた!H-IIBロケット9号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV9)の打上げ

2020-05-21 | 宇宙
本日2020年(令和2年)5月21日午前2時31分00秒(日本標準時)、宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機(HTV9)を搭載したH-IIBロケット9号機(H-IIB・F9)がJAXA種子島宇宙センターから打上げられました。

現在、新型コロナウイルスの感染対策として種子島では本土からの渡航自粛が呼びかけられており、宇宙ファンの見学やマスコミの来島取材も無く一種の厳戒態勢下での打上げとなりましたが、僕の住む熊本県南部からは雲ひとつ無く晴れ渡った初夏の夜空に駆け昇っていくH-IIBロケットの飛翔を見ることが出来ました!




打上げ時刻から40秒ほど経ってから、九州山地の稜線からH-IIBロケットが飛び出して来ました。
固体ロケットブースタ(SRB-A)を通常型のH-IIAロケットの倍の4発も噴かしているので、真っ赤な噴射炎がとても明るく見えます。
第1段のメインエンジンLE-7Aも2発ですから、2機のH-IIAのコア機体の周りにイプシロンロケットが4機束ねられているのと同じ構成です。本当に怪物のような巨大ロケットであることが分かります。
美しく、そして力強い飛翔です!


打上げからおよそ2分でSRB-Aは燃え尽き、切り離されます。動画には映っていませんが、切り離されたSRB-Aが2回に分かれて火の粉のように舞い落ちていく様子も肉眼で確認出来ました。
SRB-Aが切り離された1分半後には「こうのとり」9号機(HTV9)を覆っていたフェアリングも切り離されますが、この頃にはH-IIBロケットは既に宇宙空間の高度に到達しており噴射炎も青白く広がっているのが判ります。
この時点で機体は四国の遥か南方沖の太平洋上空を飛行しており、やがて第1段エンジンが燃焼停止して視界から消えていきました…
そして打上げから約15分後にHTV9を予定通りに分離、打上げは成功しました!

新型コロナウイルスが世界的に感染拡大している状況での打上げという、日本と世界の宇宙開発関係者が史上初めて経験する極限状況下での打上げでしたが、晴れ渡った星空の中を天の川の流れをくぐるように駆け抜けた見事な打上げでした。
これでH-IIBロケットは打上げ計画を全て終了、宇宙ステーション補給機「こうのとり」と共に全ての打上げを成功させて有終の美を飾る事が出来ました。
関係者の皆さん、本当におめでとうございます!

H-IIBロケットと宇宙ステーション補給機「こうのとり」の任務は、今年度中にも初号機が打上げられる日本の新しい基幹ロケットH3と新型宇宙ステーション補給機HTV-Xに引き継がれます。
新しいロケットの打上げは人類が新型コロナウイルスに打ち勝って自由を取り戻してから、種子島で見たい…そう願っています。

オホーツク道央プラネタリウム巡り 北網圏北見文化センターと旭川市科学館サイパル

2018-09-08 | 宇宙

北海道のオホーツク海沿岸地方で唯一のプラネタリウムがある北見市の北網圏北見文化センター
文化センターと名乗っている通り、プラネタリウムのみならず科学館と博物館、そして美術館も備えた総合文化施設です。





※記事中の写真・動画は北網圏北見文化センターの許可を得て撮影・掲載しています

科学館の展示物には、こんな凄いものも。




なんと日本のN-Iロケットの模型です!
JAXAの全身、宇宙開発事業団(NASDA)が1975年から1982年まで打上げていたロケットで、日本初の静止衛星「きく2号」を1976年2月に打上げた実績を持っています。
…しかし、いかんせん古い世代のロケットなので最近は科学館等の展示でも見かけることは殆どありません。僕もN-Iロケットの模型展示は初めて見ました。一体いつ頃から展示されているんだろう?


しかもこのN-Iロケットの模型、可動式で動きます!
種子島宇宙センター大崎射点(中型ロケット発射場)の、今は無き移動式組立棟が実物同様に移動して打上げを控えたN-Iロケットが姿を現します。

…僕は既に赤錆びた廃墟となった姿の大崎射点の移動式組立棟しか見たことが無いので、現役時代の動く姿を見るのもこれが初めて。
まさか種子島から遠く離れたオホーツクの科学館でそれを見ることになるとは…


さらに、こんな展示も。月の石!
まさかこれも遠く離れた九州の、先日惜しまれつつ閉園したスペースワールドに展示されていたものを持ってきたのでは…(ということはさすがに無いでしょうけど、特にレプリカである旨の解説も見当たらなかったので、もしかしたら…?)

北網圏北見文化センターには他にも先史時代からアイヌ文化、北海道開拓期の豊富な展示を持つ博物館もあり、プラネタリウムの開演を待つ間も飽きることがありません。
そろそろ投影開始なのでプラネタリウム室へ…





北網圏北見文化センタープラネタリウムの直径15mドームに鎮座する投影機、1984年式の五藤光学研究所GMⅡ-AT
僕の地元の熊本博物館プラネタリウムの初代投影機GM-15-ATの同系列の後継機で、スタイルもよく似ているので親しみを感じます。


美しくライトアップされた投影機。


プラネタリウムドーム内には小さい子供が投影中に怖くならないようにぬいぐるみも完備。


プラネタリウム鑑賞後は、こんな素敵な店名の館内カフェで寛ぐことも出来ます。

光学式の投影機のみならず全天周映像にも対応しているので、最新の全天周映像作品も楽しむことが出来る北網圏北見文化センタープラネタリウム。
流氷観光等でオホーツク海沿岸地方に足を伸ばすことがあれば、一度訪れてみてはいかがでしょうか?


続いては北海道第二の都市旭川にある日本最北のカールツァイス・プラネタリウム設置館、旭川市科学館サイパル





直径18mドームの中央に鎮座まします投影機はカールツァイス社製ZEISS STARMASTER ZMP
カールツァイスの中型ドーム用投影機の最新型標準機ですが、日本で導入しているのはここ旭川市科学館サイパルだけです。






プレートに刻まれた番号は578。


日本唯一のカールツァイスSTARMASTER ZMPの能力を遺憾なく発揮するのは、生解説の一般番組投影回。
一時間以上待ってでも観る価値があります。


上映待ち合わせの場所となるプラネタリウムドーム外周には、STARMASTER ZMPのメンテナンスの為に本国ドイツのカールツァイス社から専門の技師(マイスター)が訪れた際の写真も貼り出されていました。
これも必見!


そしてしっかり全国プラ「レア」リウム33箇所巡りのポスターも。
旭川市科学館サイパルは第2番札所です。



プラネタリウムドームのエントランスには、先代の投影機も保存展示されています。
先代機もカールツァイス社製…いや、ドイツが東西に分けられていた頃に当時の東ドイツにあったカールツァイス・イエナ社製の名機ZKP-1!



小型ドーム用のプラネタリウム投影機の決定版として大量に生産され、共産圏だった東ドイツから世界各国に輸出されたZKP-1。
今でも東欧や旧ユーゴ諸国では現役で活躍している姿をよく見かけますが、日本ではここ旭川市科学館サイパルの全身である旭川市青少年科学館と、岐阜市の「岐阜プラネタリウム遊園地」に納入された2機のみです。


ZKP-1のプレートに刻まれた番号は165。
ちなみに岐阜のものは73とのこと。

最新型のSTARMASTER ZMPと古典名機ZKP-1、2つのカールツァイスに出会えるプラネタリウムが旭川市科学館サイパル。
まさに最北の聖地です!


ZKP-1の向かいには、旭川市天文台で使われていた望遠鏡も展示されています。

旭川市科学館サイパルでは屋上に2つの天文台ドームを備え、天体観測会も実施されています。カールツァイスSTARMASTER ZMPでファイバーオプティクスの星空を観た後は、屋上で本物の星を見るなんて最高ですね!
…あいにく僕が行った日は雨が降っていたけど。
よし、また行こう。今度こそ旭川市科学館サイパルで2つの星空を見るぞ!

皆さんも是非、北海道で素敵な星空巡りの旅を!

日本最東端プラネタリウム巡り 釧路市こども遊学館と厚岸町海事記念館

2018-09-02 | 宇宙

北海道東部には、2つの“日本最東端のプラネタリウム”があります。
今年の夏休み、その2つの最東端をはしごして巡ってきました。

1つ目の最東端は、釧路市こども遊学館





JR釧路駅からも徒歩圏内、釧路市街地の北大通や有名な観光地である幣舞橋界隈にも程近い場所にある釧路市こども遊学館。
ドーム直径15mのプラネタリウムを備え、日本プラネタリウム協議会(JPA)に加盟しているプラネタリウムとしては日本最東端にあります


釧路市こども遊学館のプラネタリウム入り口。
スターエッグという愛称が付けられています。




これが釧路市こども遊学館のプラネタリウム投影機。
世界で初めて設置された、そして現在世界唯一のコニカミノルタ社製GEMINISTARⅡで、光学式投影機INFINIUM Sと電子式投影機Digistar Ⅱを組み合わせたもの。
現在Digistar Ⅱを投影しているのも、日本ではここ釧路市こども遊学館だけです。
その希少性から、釧路市こども遊学館のプラネタリウムは全国プラ「レア」リウム33箇所巡りの第3番札所に選ばれています。




ドーム内には全国プラ「レア」リウム33箇所巡りの案内ポスターが…っていうか一番目立つド真ん中に明石市立天文科学館のブラック星博士の姿が!?(笑)


こちらはドーム内に展示されていた先代(釧路市青少年科学館)の投影機、五藤光学研究所製のGX-10-T。
投影機を分解した状態で展示しているのは珍しいかも。


小さい子供が投影中に怖くならないように用意されたぬいぐるみ。
こども遊学館と名乗るだけあって、細やかな心遣いですね。

さて釧路市こども遊学館の投影は、星空解説とオリジナル番組の上映というスタイル。
オリジナル番組は職員の方と地元劇団との協働による手作りで、熱心にプラネタリウム運営に取り組んでおられる姿勢が伝わってきました。
ちなみに僕はこの日「軌道星隊シゴセンジャー」のTシャツを着ていたのですが、職員さんから一目見るなり「あっ明石から来られたんですか?」と言われた…プラネタリウムファンを見破る眼力も恐るべし!




プラネタリウム投影を終えてドームの外に出ると、手作りの小惑星探査機「はやぶさ」の1/2模型が。
細部まで作り込まれていて、よく出来ています。


よく見ると「はやぶさ」だけではなく金星探査機「あかつき」やソーラーセイル「イカロス」の姿も。


釧路市こども遊学館の館内から見下ろすプラネタリウムドーム。
ドーム外殻が白くて丸いので、スターエッグという愛称の通り大きな卵のように見えます。
建物にすっぽりとドームが収まっていて、ニューヨークのアメリカ自然史博物館ヘイデン・プラネタリウムによく似た印象です。


螺旋の通路が巡る吹き抜けの空間もあり、こちらはニューヨークのグッゲンハイム美術館にそっくり。

釧路でニューヨークを感じる意外な感覚を味わったら、JR釧路駅から根室行きの列車に乗って次の最東端プラネタリウムへ出発。




釧路から列車で約1時間足らず、厚岸駅で下車して漁港方面に向かい20分ほど歩くと厚岸町海事記念館に着きます。
ここに本日2つ目の最東端プラネタリウムがあるのです。

厚岸町海事記念館のプラネタリウムは日本プラネタリウム協議会(JPA)に加盟していないのですが、
ここが地理的には正真正銘の日本で一番東の端にあるプラネタリウムです!



受付で入場料金を払う時に入館者アンケートの記入を頼まれて、『どこから来たか』の欄に『厚岸町外・北海道外・その他(熊本県)』と記入すると「えええっプラネタリウム観るために九州から来られたんですか!?」とびっくりされ、「ちょっと待ってて下さい、今プラネタリウムの担当者を呼んできますから!」とわざわざプラネタリウム担当の職員さんに挨拶までされてしまい、なんだかかえって申し訳ない気分に。


プラネタリウムの投影が始まるまで、館内の展示を見て回ります。
さすが厚岸は漁業の町だけあって、海の仕事に関する展示が豊富で興味深いです。漁業用の各種エンジン類や実物の漁船の操舵室を丸ごと展示なんてのもあります。


厚岸では捕鯨も行われていたそうで、捕鯨船から撃ち込む銛(捕鯨砲)やクジラの髭も展示されています。


プラネタリウムがあるので宇宙科学に関する展示コーナーもありますが、これが何ともレトロな雰囲気…
でもきれいに整備されていて、とても状態が良いです。


投影時間になったのでプラネタリウム室へ。




厚岸町海事記念館プラネタリウムの投影機。
五藤光学研究所GX-T
昭和63年に厚岸町海事記念館が開館した時以来ずっと使われている機種のようです。


コンソールから見たドーム内と投影機。


この日はお客が他にいなかったので特別に許可を頂いて、投影中の様子も撮影させて頂きました。
この風景画像は実際にドームのてっぺんによじ登って撮影した写真をもとに描き起こしたそうです…と、ここで遅れて来た子連れのお客さんが急遽入室、投影プログラムも子供向けのものに差し替えられました。
この良い意味での緩さというか臨機応変さ、いいですね!
ここは是非また来たい、そう思わせてくれる厚岸町海事記念館プラネタリウムでした。

…以上、夏休みの“2つの日本最東端のプラネタリウム巡り”。
皆さんも北海道東部に旅行されたら釧路湿原や海鮮グルメもいいですが、時にはちょっと趣向を変えて日本最東端のプラネタリウム巡りなどいかがでしょうか?

苫小牧のミールを見てきました

2018-08-26 | 宇宙

夏休みに北海道の苫小牧市にあるミールを見てきました。

苫小牧市科学センターのミール展示館に収蔵展示されている旧ソ連の宇宙ステーション「ミール」
1986年に打上げられ2001年まで地球を周回していたミールのバックアップとして作られ、その後は地上訓練に使用された“予備機”(※)とされています。
しかしソ連崩壊直前の経済混乱で国外に流出・売却され、その後苫小牧市の建設会社が購入して寄贈されました
(※バックアップ用の予備機ではなく、宇宙で使用される能力を持たないモックアップ(模型)であるという情報もあります)



苫小牧市科学センターへはJR苫小牧駅から歩いて20分ほど。
8月中旬とはいえ大雪山系への初冠雪もあり秋の訪れの早い今年の北海道、太平洋からの海風が冷たく吹き付ける苫小牧市街を歩くと涼しいというより最早寒い…





夏の終わりの寒さに縮こまりながらやってきた苫小牧市科学センター。
ここに来るのはちょうど10年ぶりです。懐かしいなぁ…
(→SAVE OUR SHIP ~ミール、懐かしき宇宙船。苫小牧~ 天燈茶房TENDANCAFE 2008年08月31日


苫小牧市科学センターの玄関先ではL(ラムダ)-4Sロケットがお出迎え。
ご存知日本初の人工衛星「おおすみ」を打上げたロケットですが、実はこれ雨樋を兼用したオブジェらしい…


年代物の日時計。
台座に刻まれている鶴丸デパートとはかつて苫小牧市内で営業していた現存しない老舗の百貨店。


旧ソ連の宇宙ステーション・ミールを展示しているのに、なぜか案内看板にはアメリカのスペースシャトルのイラストが(笑)
しかもスペースシャトル初号機の「コロンビア」だ。


昭和44年竣工のちょっとレトロな苫小牧市科学センターの館内には、五藤光学研究所製の古典プラネタリウム投影機S-3が展示されています。
五藤光学研究所の公式サイトによると1969年に苫小牧市青少年センターに納入され、1990年まで使用されていたとのこと。


こちらは1990年から現在まで使用されているプラネタリウム投影機、先代と同じく五藤光学研究所製のGX-AT





苫小牧市科学センター館内にはいたるところにミールの姿が。
ただしミール展示館は本館とは別棟の新館になります(本館とつながっているのでそのままミール展示館と行き来することも出来ます)。







ミール展示館の前庭には蒸気機関車C11の姿も。
やはり宇宙と鉄道は相性が良い模様。


ミール展示館外観。
最近リノベーションされたらしく、以前はなかった太陽電池パネルがあります。
この太陽電池パネルが円筒形のミール本体を象った看板と共にミールの宇宙空間での姿を現している、遊び心のある演出になっています。




苫小牧市科学センター本館とミール展示館を隔てる壁面一杯に描かれた宇宙開発史とミールの解説パネル。


そして解説パネル側面の入り口から入ると見えるミールの全景!
展示館のフロア一杯にミールが収まっているので、全体を見渡せるのはここからだけです。


間近から見るミール。ミールのコアモジュール部の全長は約13m、巨大です…


天体物理観測モジュール「クバント」とコアモジュールのドッキング部。
コアモジュール部とクバントを結ぶ直線方向の両端ドッキングポートに地球往還用のソユーズ宇宙船がドッキングし、さらにコアモジュール部右端のドッキングポートに各実験モジュールが直角方向にドッキングして宇宙ステーション「ミール」が完成する構成になっています。
ちなみに、苫小牧市科学センターで展示されているこの「クバント」モジュールは予備機等ではなく、どうやら展示用に作られたモックアップ(模型)らしい。


「クバント」モジュールのドッキングポート。ここにソユーズ宇宙船がドッキングします。
ソユーズ宇宙船と宇宙ステーションのドッキングは、地球周回軌道上からミールが無くなった現在も引き続き国際宇宙ステーション(ISS)で日常的に行われています。




コアモジュール側面に折り畳んで収納された太陽電池パドルと、ソ連の宇宙機ではお馴染みの円錐形アンテナ。ドリルではない(笑)


コアモジュール先端部のドッキングポート。クバントとを結ぶ直線上にあるポートにはソユーズ宇宙船が、直角方向にあるポートには各実験モジュールがドッキングします。
実験モジュールをドッキングさせる際にも一旦は正面側のソユーズ宇宙船が使うポートにドッキングして、それからポートの中間に設置されているマニピュレーターにアームを挿して支点として側面に移動させるという作業を行っていたそうです。




ドッキングポートを間近から。
モジュールを連結結合して固定する爪が案外小さい。また、ドッキングと同時に接続されるコネクタの非常に小さい端子が見えますが、こんな細かなものが宇宙空間で自動的に接続出来たというのは驚きです。端子のいくつかがうまく穴位置が合わずに壊れて折れたりしなかったのかなぁ…


ミール船内から見たドッキングポート。
手前の操縦席は左右で全く同じものが一対設置されています。操縦席の手前側はそのまま食堂兼居住区になっていて、ミール船内の狭さを実感出来ます。
実際には無重力状態だとそれほど狭さが気にならないというけれど、こんな狭い空間に大の大人が3人で半年間も暮らしたのは本当に大変だったでしょうね。


ちなみに、これが苫小牧市科学センターのミール展示館で一番新しい展示品。
数年前にNHKが、1997年にミールで起きた火災と酸素発生装置の故障を再現したドラマの製作のために苫小牧のミールで撮影に使用した非常用酸素発生装置の模型。


現在確認されている、苫小牧以外に存在する世界中のミールの一覧。
モスクワの宇宙飛行士記念博物館のミールは、今度の年末年始にモスクワに行くので実際に見られるな…


ミール展示館で配布されていたガイドブック。
手作りのガイドブックですが、非常に充実した内容で参考になります(苫小牧市科学センターの公式サイトでPDFが無料配布されています)。
展示館の職員の方もとても熱心で、ふらりと訪れた見学者にも丁寧に対応して下さり感謝です!

皆さんも是非、奇跡的に日本国内に存在する“本物のミール”を見に行って下さい。
苫小牧市科学センターの開館日なら、いつでも会えますよ!

観測ロケットSS-520 5号機による超小型衛星打上げ実験を見に行きました…今度こそ成功!

2018-02-03 | 宇宙
Photo:内之浦宇宙空間観測所KSセンターより打上げられた観測ロケットSS-520 5号機のロケットロード ※画像提供:あつ志さん


平成30(2017)年2月3日(土)の14時03分00秒(日本標準時)
超小型衛星の打上げ実証を目的とした観測ロケットSS-520 5号機の打上げ実験が内之浦宇宙空間観測所に於いて行われました。

これは、ちょうど一年ちょっと前の平成29(2017)年1月15日(日)に行われて失敗に終わったSS-520 4号機の打上げ実験の仕切り直しのリベンジマッチとなります。
→観測ロケットSS-520 4号機による超小型衛星打上げ実験を見に行きました…が、しかし。 天燈茶房TENDANCAFE
これは、また見に行かない訳にはいかない!!
という訳で、今回も九州外から駆けつけた宇宙クラスタ諸氏と合流して再びロケットの聖地・内之浦に乗り付けたのでした。




※画像提供:あつ志さん
内之浦の町の入口には、先々週の1月18日に打上げられたイプシロンロケット3号機の成功を祝う横断幕が掲げられています。


※画像提供:あつ志さん
公式見学場所となる宮原ロケット見学場には、ここからは発射場所がKSセンターのドーム裏側となり直接見えない観測ロケットSS-520の姿をイメージしてもらえるようにと、足場が組まれて実物大のタペストリーが掲げられています。
これはいいアイデア!

…だがしかし、打上げ予定時刻が近づいてくると台風並みに風が強まり、とうとうこの実物大SS-520は足場ごと風に煽られて倒壊してしまったのであった!
幸い、見学場を仕切っておられた地元肝付町のスタッフの方が事前に危険を察知して足場周辺を立入禁止にしていたので怪我人等は出なかったのですが、こんな強風下で打上げは大丈夫か!?


※画像提供:あつ志さん
打上げ前に繰り返されるバルーン放球による風速観測も、放たれたバルーンがすぐに強風に流されて真横に飛んでいってしまう有様。
うむむ、これは今日の打上げは中止もやむ無しかも…
だがしかし、場内放送では内之浦を象徴する力強い肉声でのターミナルカウントダウンの読み上げが開始!
まさか、この風に逆らって打つのか!?












※画像提供:あつ志さん


※動画撮影:けいけいさん

本当に打ったー!!観測ロケットSS-520 5号機リフトオフ!!
風に負けるな、力強く翔べ、SS-520 5号機!!









※画像提供:あつ志さん

写真に写っているロケットロードが打上げ直後で風に流される前にもかかわらず真っ直ぐ伸びておらず、途中何箇所かクランク状に曲がっているのがお分かり頂けるでしょう。
そうです、本当に途中で何度かロケットが強風に煽られて機体が押されていたのです!
だがしかし、そこは世界最高水準の打上げ性能を誇る宇宙科学研究所の観測ロケット、基準値以下の風には決して影響を受けず見事に飛翔して視界から飛び去っていきました…

そして数時間後、予想通りに今回こそ嬉しい知らせが!
SS-520 5号機による超小型衛星打上げの実証実験の結果について(JAXAプレスリリース 平成30年2月3日)

SS-520 5号機はリフトオフ後も予定通りに飛翔して、前回の4号機では果たせなかった第2段ロケットモータの点火指示以降のシークエンスも完全に実行され、超小型衛星TRICOM-1R(トリコム・ワンアール)を分離して軌道投入に成功し「たすき」と命名されました。
SS-520 5号機は衛星の打上げに成功した世界で最も小さいロケットになったのです。
おめでとうSS-520 5号機!…そして、貴重な経験をありがとうSS-520 4号機。

…折しも、キヤノン電子とIHIエアロスペースを中心とした日本の民間企業が和歌山県にロケット発射場を建設して小型ロケットによる衛星打上げ事業に参入する計画が報じられ、また既に北海道の大樹町ではベンチャー企業による小型ロケット打上げ実験が行われています。
今回のSS-520 5号機による超小型衛星打上げ実験はあくまでも「実証実験」であり今後の日本国内における民間の小型ロケット打上げ事業に直接つながっていくものではないとされていますが、それでもSS-520 5号機が切り開いた小型ロケットによる衛星打ち上げの成功の大きな意義は引き継がれ、日本のロケット打上げの新たな歴史を切り開く第一歩となっていくのは間違いないでしょう。

小型ロケットの描く真っ白なロケットロードが日本の空に鮮やかに描かれる、そんな爽快な未来の到来を楽しみにしています!

イプシロンロケット3号機打上げ、そして「夜光雲」出現!

2018-01-20 | 宇宙
Photo:イプシロンロケット3号機打上げ後の空に出現した「夜光雲」


平成30(2018)年1月18日の早朝6時6分11秒(日本標準時)、
高性能小型レーダ衛星ASNARO-2を搭載した3機目のイプシロンロケットが内之浦宇宙空間観測所から打上げられた。

イプシロンロケット3号機による高性能小型レーダ衛星(ASNARO-2)の打上げ日時について(JAXAプレスリリース 平成30年1月16日)

昨年の技術的問題での年越し延期に続き、当初は前日の1月17日に予定されていた打上げが悪天候により更に1日延期された今回のイプシロンロケット3号機。
ロケットの打上げは「水物」で予定変更はつきものとは言え、なかなかに“追っかけ”の難易度が高かったが、幸いにも仕事の有給休暇を取ることが出来たので内之浦まで見に行って来ました!




打上げ予定時刻の2時間前の午前4時頃に内之浦宇宙空間観測所のお膝元・鹿児島県肝属郡肝付町内之浦に到着。
イプシロンロケットが打上げられるM台地が一望出来る宮原見学場へのバスツアーに申し込んでいない見学者は、内之浦漁港に設置された一般見学場へと誘導される。




夜明け前の寒空の下で、明るく照明を灯して温かな食べ物等を用意してくれていた物販テント村が嬉しい。
今夜は一晩中営業して見学者を迎えていたとのこと。


物販テント村で内之浦限定販売のイプシロンロケット3号機ミッションマークステッカーやピンバッヂを購入したりして、打上げの時間を待つ。
南国鹿児島のさらに最南端部にある内之浦とはいえ、真冬の夜明け前はかなり冷え込んだ…

寒さに耐えながら待つこと2時間。
午前6時前には、打上げ時刻に合わせて見学場内を全て消灯することと、消灯後は危険防止のために一切の場所移動を禁止するというアナウンスがかかる。
集まった見学者たちは思い思いの場所に陣取り、打上げの瞬間を待つ…

やがて見学場内に、内之浦宇宙空間観測所のイプシロンロケット管制センターからのターミナルカウントダウン読み上げ音声が流れ始め、緊張感がいやが上に高まる。
そして午前6時6分11秒…!



カウントゼロとリフトオフの瞬間、山の向こうにいきなり太陽が出現したかのように突如として光り輝く稜線。
生まれたばかりの小さな太陽は数秒遅れて山から飛び出し、辺りを焼き焦がしながら南へと飛び去る。凍てつく内之浦の夜明け前の空にイプシロンロケットのロケットロードが高く高く伸びてゆく…

リフトオフ後2分間足らずでSRB-A(第1段ロケットモータ)を燃やし尽くし、イプシロンロケット3号機は一旦夜空から姿を消す。
その後、慣性飛行しながら大気圏を突き破り宇宙空間に躍り出たイプシロンは不要になった衛星フェアリングと第1段モータを切り離し、約1分後に第2段モータに点火して夜空に再び姿を現す。
この時点で既に宇宙空間に出ている為にロケットモータの噴射炎は青白く輝き、噴射炎は南の空の一面を覆い尽くさんばかりに大きく広がっていく…







第2段モータが燃焼している間にロケットの高度は地上から200kmに達しようとしており、機体は衛星を地球周回軌道に投入するのに備えて地表と水平方向に向かっての飛翔へと遷移している。
この為、イプシロンロケットは自身が噴射した燃焼ガスの雲・ロケットロードを噴射炎で横から照らすような不思議な姿となり、まるで天を駆ける彗星のようにも見える…

リフトオフ後5分程で第2段モータも燃焼終了。再びイプシロンは姿を消す。この時点で地上高度は200km以上、飛行慣性速度は秒速5kmに迫ろうとしている。
そして約1分半の慣性飛行の後、第2段モータを切り離したイプシロンは第3段モータに点火、一気呵成に第一宇宙速度(秒速7.9km)まで加速する…!


…だがしかし、第3段モータが燃焼開始した直後にイプシロンの機体は内之浦の南の山並みの向こうに沈んでいき、視界から完全に姿を消した。
つまり物理的に目視での観測が可能な最後の瞬間まで、イプシロンロケット3号機は内之浦漁港から見えていた事になる。
こんなに条件が良かった打上げは滅多に無い。素晴らしい打上げだった!

でも、これで終わらなかったのだ。
イプシロンロケット3号機が見えなくなり、見学者も三々五々と帰り始めた時、さっきイプシロンが飛び去っていった方角に不思議な光がぼんやりと見えている事に気が付いた。
夜空に青く光る塊がある。「あっ、夜光雲が出てる!」

夜明け前や日没直後の時間帯の場合、ロケットの打上げ後の空に薄っすらと光る雲…夜光雲が出現する事はそれほど珍しい事ではない。
ロケットが噴射した燃焼ガスや化学物質が大気圏と宇宙空間との境い目付近の超高高度で凝結し、この高度には届いている太陽光線を受けて光り輝く現象であり、僕も以前に種子島宇宙センターから打上げられたH-IIAロケットの飛び去った後の空に紐状の雲が漂いながら薄っすらと白く光っているのを何度か見た事がある。
だが、このイプシロンロケット3号機が残した夜光雲は青く光っている。色付きの夜光雲というのは初めて見た…


その後、青い夜光雲の塊は上空の風に流されたのか解れるように紐状になり、色も白く変わった。
それと同時に空が薄明を帯び始め、夜明けの空に夜光雲が溶けて消えていく…

…いや、消えない!それどころか、どんどん明るさを増して輝き始めた!?





遂には、夜光雲はリボン状に伸びて空中に大きく広がり、色も七色に変わり始めた!!
何という…何という光景なんだ!!


リボンが重なったように太くなった部分が銀色に輝き始めた夜光雲と、オレンジ色に光る夜光雲。





銀色に輝くリボンはどんどん明るさを増す…


夜明けの空に七色の夜光雲のリボンが乱舞する…
そう、この不思議な光る雲はゆっくりと姿を変えて、まるで空で踊っているように見えたのだ。

…ここまで凄まじいと、美しさを超越して恐ろしささえ感じてしまう。





「これが、人間がつくったものだなんて…」





出現から1時間程も見えていたであろうか…
すっかり明るくなり日の出が迫った朝の空に、夜光雲はようやく薄れて消えていった。

…今回、初めてロケットに「畏怖」を感じた。
以前、自分自身が、筑波宇宙センターで行われたロケット打上げ見学経験者の座談会で「ロケットは人が作った神様」だと言った事があるのを思い出していた。
そして「それって、こういう意味だったのか…」と自分の言葉を噛み締めていた。


イプシロンロケット初号機に搭載されていた惑星分光観測衛星「ひさき」の名前の由来となった、内之浦の漁師の守り神が祀られた神聖な場所である火崎半島に朝陽が昇る。
イプシロンロケット3号機と七色の夜光雲は空の彼方に消え去り、何事も無かったかのようにまたいつもの平和な漁村・内之浦の日常が始まろうとしている…


帰る前に、昨夜は有料のバスツアーの参加者のみが入場を許された宮原見学場を見に行った。
見学者は帰ってしまい、物販テント村の撤去作業が行われていた。祭りの後の寂しさが漂う向こうに、空っぽになったM台地のEロケット発射装置整備塔とロケットランチャーが見える。


視線を南に移すと、イプシロンロケット3号機が飛び去って行った海が見える。
打上げから約52分35秒後に高性能小型レーダ衛星ASNARO-2はイプシロンロケット3号機から分離されて所定の軌道に投入され、打上げは成功した。
そして約90分後にはASNARO-2は地球を一周りして、再びこの内之浦の上空に帰って来ていた筈である。
…僕が夜光雲に見惚れたり恐れ慄いたりロケットに畏怖したりしている間に、またイプシロンの新しい衛星(ほし)が誕生していた。そう考えると、何だか急に可笑しくなってきた。

イプシロンロケット3号機による高性能小型レーダ衛星(ASNARO-2)の打上げ結果について(JAXAプレスリリース 平成30年1月18日)

さあ帰ろう!
あ、帰る前に内之浦のお土産の定番「ロケット最中」を買っていかないとね。
そして…次の内之浦宇宙空間観測所からのロケット打上げは来月早々、昨年失敗した観測ロケットSS-520の超小型衛星打上げ実証実験のリベンジだ。
忙しいな(笑)またすぐ来るぞ聖地・内之浦へ!

内之浦宇宙空間観測所から見えた!H-IIAロケット37号機の打上げ

2017-12-23 | 宇宙
Photo:内之浦宇宙空間観測所から見たH-IIAロケット37号機のロケットロード


本日(平成29年12月23日 天皇誕生日)午前10時26分22秒(日本標準時)、気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)と超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)の2つの衛星を搭載したH-IIAロケット37号機が種子島宇宙センターから打上げられました。

H-IIAロケット37号機(高度化仕様)による気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)
および超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)の打上げ結果について
(JAXAプレスリリース 平成29年12月23日)

今回はせっかくの週末土曜日の打上げなので、見に行って来ました!
…ただし、最近ロケットの打上げの度に大変な混雑となる種子島ではなく、九州本土の大隅半島にあるもう一つのロケット発射場・内之浦宇宙空間観測所から大隅海峡越しに水平線の彼方からの打上げを眺めて来たのです。




内之浦宇宙空間観測所は原則年中無休で朝8時半から構内に見学に入ることが出来ます。
受付の守衛所で見学手続きを済ませて、向かった先は観測所内で最も標高が高い衛星(ほし)ヶ丘展望台
“小うっちーさん”こと20mパラボラアンテナがお出迎え。


衛星(ほし)ヶ丘展望台からの眺め。
若干雲が出ていますが“大うっちーさん”34mパラボラアンテナの向こうに薄っすらと、平べったい種子島の島影が見えています。
これなら何とかH-IIAロケットの描き出すロケットロードを見ることが出来そうです!

そして打上げ時刻の午前10時26分を十数秒程過ぎた頃、種子島から上昇する小さな光の粒が…


「見えた!H-IIAロケット37号機だ!」
固体ロケットブースターSRB-Aの吹き出す赤い噴射炎がきれいに見えています!


画像を拡大するとこの通り。
SRB-Aの噴射炎と伸びていくロケットロードがはっきりと確認出来ました!


そしてH-IIAロケット37号機はすぐに上空の雲の中へ…


ロケットロードも風に流され消えていきます。
行ってらっしゃい、H-IIAロケット37号機に搭載された気候変動観測衛星「しきさい」と超低高度衛星技術試験機「つばめ」。
よい旅を!


帰る前に、内之浦宇宙空間観測所の構内に立つ日本のロケットの父・糸川英夫先生の像にご挨拶。


糸川先生の見つめる先には、現在イプシロンロケット3号機の打上げ準備中のM台地と、その先には種子島を望む海が広がっています。
糸川先生はここで毎回、日本のロケットの旅立ちを見守っておられるのですね。

…そして種子島から翔び立ったH-IIAロケット37号機は、
その後は超絶技巧的に飛行高度を変えながら気候変動観測衛星「しきさい」と超低高度衛星技術試験機「つばめ」をそれぞれ正常に分離して、打上げは成功しました!

気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)の衛星状態について(JAXAプレスリリース 平成29年12月23日)

超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)の衛星状態について(JAXAプレスリリース 平成29年12月23日)

この次はいよいよ来週の12月28日に超小型衛星打上げの実証実験を行う観測ロケットSS-520の5号機が、
そして来年1月17日には高性能小型レーダ衛星(ASNARO-2)を搭載したイプシロンロケット3号機が相次いで、ここ内之浦宇宙空間観測所から翔び立ちます!
この冬も、日本は熱いロケットの季節になるようです。

KUMAMOTOxSPACE『金星探査機あかつき活躍中 知っているようで知らない妹の姿』佐藤毅彦教授講演会

2017-07-30 | 宇宙
※佐藤毅彦先生の許可を得て写真を掲載しています


平成29年7月30日、高校生・大学生による宇宙団体SPICAの九州支部主催で
JAXA宇宙科学研究所の佐藤毅彦教授の講演会『金星探査機あかつき活躍中 知っているようで知らない妹の姿』が熊本県民天文台のある熊本市南区の塚原古墳公園内で開催されました。
地元で、しかも若い人たちが頑張って開催してくれた講演会、僕も勿論参加してきました!
以下、講演の内容をレポートします。

金星探査機あかつきのスタッフTシャツ姿の佐藤先生、以前は熊本大学の教育学部におられたなど簡単な自己紹介に続いて金星の説明から。
今日は夏休みなので来ている小さい子供たち向けに、飽きないやさしい話をしますとの事。

◎金星と地球は太陽系の惑星の双子星。大きさ、重さはよく似ている。でも、大気は全然似ていない。

◎金星は昔から我々に親しまれてきた星。明けの明星、宵の明星など。

◎金星の大気の最大の特徴、スーパーローテーション
 金星の1日は地球の243日。金星の赤道付近では地面が時速6キロ、歩く程度の速さでゆっくりと動いていることになる。
 だが、大気は時速360キロで動いている!地表面の動きの実に60倍の速さ。
 
(ここで佐藤先生の研究室の若い研究者の方が実際にスーパーローテーションの1/3の速さの大気の流れを再現する風洞に入って悶絶(笑)するビデオ上映等もあり、会場は笑いに包まれる)

◎金星の大気、気温は460℃でピザ窯と同じくらい。金星では何もしなくてもピザが焼きあがる。気圧は地表面で90気圧、水深900mの深海に相当する。
 天気は毎日曇り、雲は硫酸、空気は二酸化炭素。

◎その金星の雲の下を知りたい!
 特定の赤外線は二酸化炭素による吸収を受けにくいので、大気下層からの赤外線が宇宙に漏れ出してくる。これをあかつきのカメラが捉える!

…佐藤先生の分かりやすく引き付けられる語り口の説明で、会場に来ていた子供たちも興味津々。大人が聴いても高度な内容なのに皆、全く飽きずに喰い付いてきています。
さすが佐藤先生!

あかつき本体を実際に組み立てている作業の様子を佐藤先生がご自身で撮影された秘蔵映像や打上げの様子のビデオを鑑賞したところで一旦、前編終了。
後半に続く!(笑)



後半ではあかつきに搭載されている複数の観測用カメラのしくみをそれぞれ説明。

◎UVI(紫外イメージャ):283nmと365nmの2つの観測波長で金星を紫外線で観測すると、正体不明の謎の模様が見えてくる…

◎IR1(1μmカメラ):金星の地表面からやって来る赤外線を観測すると、夜側の地表では標高差が見える。
 金星の地表面のどこかに、突然明るい点が出現して見えないかと期待している。それは、まだ未確認の金星の火山だ。

◎IR2(2μmカメラ):雲頂の凹凸を、明暗で捉えることが出来る。

◎LIR(中間赤外カメラ):サーモグラフィ、熱赤外線カメラ。雲頂の温度分布を調べる。
 金星の山地の上空では、スーパーローテーションに流されなず影響を受けない、動かない70km上空までの温度分布が見られることが分かった。

最後に質疑応答。
僕も質問させて頂きました。

Q:佐藤先生の、今後の「あかつき」以降にやってみたい宇宙探査への“野望”のようなものは何でしょうか?
A:次は火星を調べに行きたい。火星に着陸して調べたいです!
  私が現役の間には正式にプロジェクト移行までは至らないだろうが、次の世代の人たちの手で、いつか必ず…!

…最後に、熱い一言を戴きました。決して消えることのない素晴らしい情熱、感動しました!!
佐藤毅彦、ありがとうございました!来月、JAXA相模原キャンパス夏の特別公開のあかつきブースでまたお会い出来ればと思います。

宮嶋利治学術財団学術講演 小惑星探査機「はやぶさ2」を科学する

2017-07-08 | 宇宙

平成29年7月8日、熊本県八代市のやつしろハーモニーホールで学術講演会「小惑星探査機「はやぶさ2」を科学する」が開催されました。
講師は工学博士の村田健司先生
小惑星探査機はやぶさ2に搭載された、小惑星表面に弾丸を撃ち込んで人工的にクレーターを作るSCI(衝突装置・インパクター)を担当された、爆破のスペシャリストです。

爆破と宇宙開発、一見するとつながりがよく分からないテーマですが、実はこの2つには密接な関係が…
そして村田先生は、実はロケットと宇宙科学が大好きで開発畑に飛び込んだ筋金入りのロケット・ボーイだったのです!
こういう人の話が、面白くない筈がない!という訳で、情熱に溢れた熱い講演会の内容をレポートします!



村田健司先生は1988年に秋田大学大学院鉱山学研究科燃料化学科を修了後、日本油脂株式会社(現・日油株式会社)に入社して同社武豊工場に勤務。
ここで宇宙ファン・ロケットファンならすぐにピンとくると思いますが、日本油脂の武豊工場といえばペンシルロケットからイプシロンまで日本の固体燃料ロケットの燃料製造を手掛けた工場。
そう、村田先生は「アポロ11号に感動して、ロケットをやりたくてここに入った」と豪語する生粋のロケット・ボーイ!
その後、2006年には日本油脂から日本工機株式会社に出向。
同時に熊本大学をはじめ全国の大学で客員研究員として、爆破のスペシャリストとして働くことに。

「私の専門は爆破=ぶっ壊すことです!」

しかし、ただぶっ壊すだけではありません。うまく調整してやると、分厚い鉄板でも何でもきれいに簡単に切れる、それが爆破。
古い鉄橋やビルの解体でも、周囲の残したい部位にはダメージを与えずに対象物だけ切り離してきれいに破壊することが出来ます。東日本大震災で傾いてしまった港の岸壁を、損傷していない部位だけ残して破壊撤去する仕事などもこなされたそう。
即ち、爆破の技術とは切り離す方法に他ならず、そして宇宙ロケットの特徴は飛翔しながら不要な部位を次々に切り離すこと!
ここで見事に爆破と宇宙技術がリンクしました。

また、ロケットだけではなく他の分野でも科学に多大なる貢献をしているのが爆破の技術。
村田先生はスーパーカミオカンデの掘削工事での爆破も担当され、地下の巨大空間を爆破で掘り抜きました。
ちなみに…ダークマターやダークエネルギー等、ダークと名のつくものは科学の世界では「まだよく分からないものは何でもかんでもダークと呼ぶ習慣があって、今夜の夕飯のおかずもダークだったりする」…さすが村田先生、オヤジギャクも半端ないぜ(笑)


Photo:H-IIAロケット26号機の飛翔(筆者撮影)


続いて日本のロケット開発の歴史の紹介。
はやぶさ2を搭載したH-IIAロケット26号機の打上げ動画を見ながら固体燃料ロケットと液体燃料ロケットの違いを説明。
「補助ロケットブースターは固体燃料ロケット。切り離されたらロケットの噴射煙の色が変わります。」
固体燃料ロケットモータの煙は燃料のアルミニウム粉由来の酸化アルミニウムなので真っ白、でも液体燃料ロケットエンジンは水蒸気を放出するので無色透明。
またロケットにはエンジン以外にも多数の火工品が使用されており、燃焼を終えた1段目、2段目や補助ロケットブースター、衛星を覆っているフェアリング等を結合している部位を火薬で爆破して切り落とす。

次に、実際の固体燃料ロケットの燃料の作り方。
材料は基本的に燃料(アルミニウム)と酸化剤とバインダ(まとめて練り上げるためのゴム。これ自体が燃料にもなる)の3種類。これらを混ぜ合わせて作るが、凄まじい精度が要求される世界。アルミニウムもただ粉末にするだけではなく特殊な方法で微細に加工している。
このため、ロケットの固体燃料は理論値の限界に近い性能を叩き出すことが出来る
精度的には、燃料(アルミ)に対して僅か10%のバインダ(ゴム)でドロドロの状態に練り上げることが出来る。もしホットケーキミックスやお好み焼き粉を、水を10%しか入れずに練り上げる事が出来ると思いますか?

本日のテーマである小惑星探査機はやぶさ2とはやぶさの話。
簡単にはやぶさのミッション内容の説明に続いて、はやぶさの地球帰還時には「設計寿命を大幅に超えてるから、帰還カプセルの分離やパラシュートの展開に使う最後の3つの火工品がきちんと作動するかどうかとにかくヒヤヒヤした!」との事。
なるほど、火工品が作動しなかったらせっかく地球に帰ってきたはやぶさはカプセルもろとも大気圏再突入して分解消滅してしまう訳ですからね。

ちなみに…村田先生は以前からはやぶさ帰還の地であるオーストラリアのウーメラにある実験場に勤務されていたので、ウーメラは馴染み深い場所とのこと。
「ウーメラ砂漠を大型四駆で時速150キロでぶっ飛ばして片道3時間、毎日毎日通勤してました(笑)
はやぶさもはやぶさ2もウーメラへの帰還は現地の真夏の時期ですが、これは「夏はとにかく暑くて誰もいなくなるから安全だからでは。冬場はウーメラにも羊飼いの人がいたりします」だそうです。

そしてはやぶさ2、SCI(衝突装置・インパクター)の開発。
川口淳一郎先生から「小惑星に直径5m、深さ1.5mのでっかい人口クレーターを作れ!」と命令された。
こういう場合、技術者の答えは2つしか無い。「YES」か、「はい」だ!言われたらやるしか無いので考えた。

かくして始まった前代未聞の衝突装置開発。小惑星に超高速の弾丸を発射せよ!
条件は弾丸質量2kgで速度は2000m/s、マッハ5!

2年以内での開発で、
◎2kgの銅板を僅か数十マイクロ秒で2000m/s、マッハ5に加速
◎まっすぐ300m飛ばして小惑星の表面にぶち当て、クレーターを掘る
◎全てのシステムを20kg以内に詰め込む
◎サイズはミカン箱程度で


…同じように弾丸を発射する10式戦車だと重量44トン、120mm砲だけでも4トン、全長6m。そんなものが軽自動車程度の大きさしかないはやぶさ2に載せられる筈もない。
これは…高性能爆薬の爆発エネルギーを飛翔体に注ぎ込むしかない!!
そして完成したのが自己鍛造弾!銅板が爆破による爆轟波によって変形し、瞬時に丸い弾丸状になって飛び出すのである。

最後に国立天文台の4次元デジタル宇宙プロジェクトMitakaを用いてのはやぶさ2の軌道説明や宇宙の大規模構造を見てから、質疑応答。
僕も質問させて頂きました。

Q:SCI(衝突装置・インパクター)の今後の展開・応用は考えていますか?
具体的には、日本で計画中の新しい科学探査ミッションである月探査機や火星探査機、また世界各国で計画中の探査機等への搭載の予定はありますか?

A:SCI(衝突装置・インパクター)のみが探査用の装置ではない。他に私が手掛けたもので月探査用ペネトレータもある。
SCIは小惑星や彗星探査に特化したもの。だから、今後はやぶさ3やはやぶさ4が飛ぶならやりたい。どんどん作って載せたいと思っています!

以上、宇宙とロケットへの熱い情熱と、好きなことを思う存分頑張っている人の輝きに満ちた「科学少年の夢」を感じる素晴らしい講演会でした。
村田健司先生、ありがとうございました!いつか日油の武豊工場でまたお会いして、宇宙仲間と一緒にゆっくりお話の続きを聞かせて頂きたいです。


講演会終了後、村田先生(右側)と筆者。※写真掲載の許可を頂いています

ブルーインパルス、熊本城を翔ぶ!平成29年4月23日編

2017-04-23 | 宇宙

昨日のテスト飛行に続き、今日(平成29年4月23日)はいよいよブルーインパルス震災復興支援特別飛行の本番、
「熊本復興 飛翔祭」での展示飛行でブルーインパルスが熊本城の上空を翔びます!
という訳で、昨日の記事と同じ構図の写真ばかりですが(笑)一挙公開!

快晴の熊本城に舞う復興の不死鳥ブルーインパルスの雄姿を見よ!!




先鋒の気象確認機に続いて海側から5機編隊で熊本城上空に進入、そのまま一気に熊本城上空を低空通過!




フェニックスローパス!
不死鳥ブルーインパルスが熊本城に舞う!!


日本の美の象徴「さくら」。
…ううむ、やはり花弁が巨大過ぎて一輪の桜花がファインダーに収まらない(笑)




同じく、巨大過ぎて視野に収まりきれない巨大な愛を地上に届ける(笑)キューピッド!







「ヒャッハー!!」
「すごーい!!」「たーのしー!!」
という声援が響く熊本城二の丸広場!
城内への入場規制が掛かる程の超満員の観客も皆、ブルーインパルスの繰り出す超絶飛行に大興奮!!





途中、熊本城に隣接する国立病院へのドクターヘリの緊急離発着があり、
一時展示飛行が中断され上空待機となるハプニングもありましたが、無事にドクターヘリを着陸させた後に展示飛行再開。





ブルーインパルス、超最高!
素晴らしい展示飛行をありがとう!!








完璧な飛行を終えたブルーインパルスは、名残惜しげに熊本城の上空を旋回して熊本地震の被災地である益城町と南阿蘇村の上空へと去っていきます…
さようなら、そしてありがとう!
また熊本に飛んできてね、ブルーインパルス!!



…さて今日は「熊本復興 飛翔祭」ということで、ブルーインパルスの展示飛行に先立ってステージショーも開催され、
ブルーインパルスの3番機に搭乗する熊本出身のパイロット上原広士1尉の出身校である熊本北高校の後輩たちが空の先輩にエールを送る場面も見られました。


また、今日のフライトでは熊本を励ますべく、
ブルーインパルスの全パイロットがヘルメットにくまモンひごまるのステッカーを貼って展示飛行に臨んで下さったそうです。

そして、展示飛行後はブルーインパルスファンへの特別サービス!
地上で飛行支援にあたっていたパイロットのサイン会が開催されて長蛇の列に!


僕も2時間並んで(並んでる間にステージの大型モニタで上映されていた映画「トップガン」を全編観終えてしまった…)サインをゲット!
なんとブルーインパルスのリーダー、コールサインDANNAこと飛行班長の越後英3佐の直筆サインです!!


こちらがエースパイロット越後3佐。おお~さすが空の男、爽やかイケメン!
(※ご本人の写真掲載承諾を得ています)
越後3佐には「ブルーインパルス初体験でしたがすっかりファンになりました!今度は基地祭でアクロバット飛行のフルコースも観に行きますので、また見事なフライトを見せて下さい!」と熱く語ってきました(笑)

という訳で、すっかりブルーインパルスの魅力にハマってしまった天燈茶房亭主。
近日中にどこかの基地祭でまたブルーインパルスに再会する事にしましょう。
翔べ、日本の碧い翼ブルーインパルス!!

ブルーインパルス、熊本城を翔ぶ!平成29年4月22日編

2017-04-22 | 宇宙

本日(平成29年4月22日)、
航空自衛隊宮城県松島基地第4航空団第11飛行隊「ブルーインパルス」が熊本城の上空を飛行、
華麗な展示飛行を繰り広げました!

今回の飛行はブルーインパルス震災復興支援特別飛行ということで、
昨年の熊本地震で大きな被害を受けた熊本城の上空での展示飛行が実現したものです。

実は僕は、ブルーインパルスの展示飛行をナマで見るのはこれが生まれて初めて。
噂に聞くブルーインパルスの凄さを実体験すべく、熊本城の二の丸広場で青空を見上げてきました!





おお~っ!これは…
メチャクチャ格好いいじゃないですか!!





青空と太陽をバックに、巨大な桜の花が描き上げられました!
これは九州新幹線の全線開業記念の展示飛行でも描かれる予定だった「さくら」ですね…




続いて2機で描かれたハートマーク。
巨大過ぎてファインダーに収まりきれません(笑)
漫画「宇宙兄弟」でもこれを描くシーンがあったなぁ…






クライマックス!
カッコ良すぎる…凄いぞブルーインパルス!!


最後に全機揃って隊列を組んで、熊本城と観客に別れの挨拶。
この後、ブルーインパルスは熊本地震で特に被害の大きかった益城町と南阿蘇村の上空に向かい、
真っ白なスモークを引いて被災地に復興のエールを送ったそうです。

…やるねぇ、粋だねぇ、カッコいいねぇブルーインパルス!!
僕もすっかりブルーインパルスのファンになったぞ(笑)

さて、ブルーインパルスの震災復興支援特別飛行ですが、
実は明日熊本城で開催される「熊本復興 飛翔祭」での展示飛行が“本番”で、今日はそのテスト飛行だったのです。
ということは…明日(平成29年4月23日)もブルーインパルスが見られる!
これは、また観に行くしかないでしょう!

という訳で、明日も観に行きます(笑)

おまけ画像


熊本城に向かう前に、JR熊本駅でちょうどSL人吉の出発に出会うことが出来ました。
…なんか、今年はSL人吉を見たのはこれが初めてのような気がする。






いってらっしゃ~い!


いい天気だったので、帰りに西熊本駅でちょっと降りて三角線のキハ40も撮ってみる。
晴れてて陽が当たってると、iPad miniのカメラでも結構きれいに撮れるもんです。

今年限りで閉園「スペースワールド」

2017-04-02 | 宇宙
Photo:スペースワールドの象徴、スペースシャトル「ディスカバリー」号実物大モデル


残念ながら、今年限りで閉園することが決まった福岡県北九州市にある宇宙のテーマパーク「スペースワールド」
多数の絶叫マシン・ジェットコースターを揃えた遊園地として有名ですが、メインテーマはあくまで宇宙!
実は充実した宇宙関連資料を収めた博物館も園内に持つ、宇宙ファン必見の施設でもあります。



という訳で!
閉園になる前に今一度しっかり観ておこうと、宇宙ファン一同で名残のスペースワールドを見学してきました!
(※取材日:平成29年3月19日)

既に閉園が大きく報じられているせいか、従来は割りと空いていたというスペースワールドも入場待ちの行列ができる大盛況。
30分ほど並んでチケットを買って入場ゲートを通過したら、絶叫マシン等の楽しそうなアトラクションには目もくれず真っ先にここへダッシュ!
向かった先は…


スペースシャトル「ディスカバリー」号の実物大モデル(笑)

…フツーの入場客にとっては単なる「背景」かも知れませんが、我々宇宙ファンにとってはこれは絶対外せません。
何しろ、スペースシャトルの実物大モデルというだけでも世界的にあまり数が多くなく、かなり貴重な展示品であると同時に、
ここスペースワールドのディスカバリー号は打上げ時の姿で、巨大な外部燃料タンクと固体ロケットブースターを従えて堂々と「立って」いますからね!
スペースシャトル打上げ時の姿を再現した実物大モデルは、ひょっとしたら世界中でここだけかも?


さらに、スペースワールドのディスカバリー号はNASA公認の資料に基づいてつくられた非常にクオリティの高いもの。
ただの展示用模型とは訳が違います。

…ちなみに、実は僕は「ディスカバリー号」の正真正銘の本物とも以前対面した事があるので、地元九州での意外な形での再会となりました(笑)

(→2013-2014 スミソニアン博物館ツアー #10:国立航空宇宙博物館別館 スペースシャトル「ディスカバリー」号
そうそう、スミソニアンのディスカバリー号も脚を出して着地した姿での展示だったんだよね。


こんな角度からスペースシャトルのリフトオフ時の姿を拝めるのも世界で恐らくここスペースワールドだけ!
スミソニアンでも見られない下から見上げたスペースシャトルの、外部燃料タンクの底と固体ロケットブースターの雄姿を見よ!!

ディスカバリー号をじっくり堪能したら、次はいよいよ宇宙ファン的にはスペースワールドの本丸である宇宙博物館へ!


非常に狭い館内にぎっしり詰め込まれたお宝の数々が!

天井から吊り下がった、お馴染みのスプートニク1号


…でもこのスプートニク1号も只者ではなかった。




なんと、ソ連宇宙総局グラフコスモス公認の証明書付きレプリカ!


何の案内もなく片隅に転がすように展示されていたこの物体…
Twitterで情報提供と分析を依頼するツイートを流したところ、ネット上で待機していた宇宙ファン仲間が瞬時に調査してものの数分で回答が。
どうやら米空軍の小型衛星実証実験モデルの実物!とのこと。
…ぐぬぬ、こんなものを無造作に展示してるスペースワールド宇宙博物館も恐ろしいが、即座に解析を完了してしまうTwitter宇宙クラスタの集合知も恐ろしすぎる…


さらに、月に降り立った2人目の宇宙飛行士バズ・オルドリンが実際に着用した船内服(もちろん実物)も!!

「な…何でこんなものがここにあるんだ~!?スペースワールド恐るべし!!」
「信じられない…一体どうなってるんだ、ここはまさしく宝の山だ~!!」

あまりの衝撃に嬉しい悲鳴を上げっぱなし!(笑)

…だがしかし。あまり喜んでばかりもいられないのです。
そう、スペースワールドは年内一杯での閉園が決定している状況。
今後の施設の運用はまだ未定のようですが、宇宙博物館はこれから一体どうなるのでしょうか…

「これだけのお宝が揃っているのに惜しい…閉園後はどこかの博物館なり資料館に引き取ってもらう訳にはいかないのかな?」
お宝の数々を目にして顔が紅潮していた我々宇宙ファンも、直面している課題の大きさに一転して表情が曇ります…


そして陽も傾き、閉園間際。
最後に一つくらい遊園地らしいアトラクションにも乗っておこうということでディスカバリー号を見下ろす大観覧車スペース・アイに乗り込んだ宇宙ファンの面々。
だが、ここから見下ろすスペースワールド園内バックヤードには、信じられないような物体が…!!


何と!?
観覧車下のバックヤードの駐車場片隅に、アメリカNASAのアポロ計画やスカイラブ計画で使用されたサターンIBロケットに酷似した円筒形の物体や、
さらにその近くには正真正銘のロケットエンジン!?が!!

このロケットエンジン類については、関連ツイートをまとめサイトに詳細にまとめて下さった方がおられるのでそちらを参照下さい。


観測ロケットSS-520 4号機による超小型衛星打上げ実験を見に行きました…が、しかし。

2017-01-22 | 宇宙
Photo:内之浦宇宙空間観測所KSセンターより打上げられ飛翔する観測ロケットSS-520 4号機 ※画像提供:あつ志さん


平成29(2017)年1月15日(日)の朝08時33分00秒(日本標準時)
超小型衛星の打上げ実証を目的とした観測ロケットSS-520 4号機の打上げ実験が内之浦宇宙空間観測所に於いて行われました。

年明け早々、しかも昨年暮れのイプシロンロケット2号機の打上げから一ヶ月も経たないうちに行われた観測ロケットの打上げ実験、冬期の悪天候による強風を理由に打上げ日が延期された結果、何と日曜日の早朝という打上げ見学には絶好のタイミングでの打上げとなりました。
これは見に行かない訳にはいかない!!(笑)

という訳で、当日は九州外からも急遽駆けつけた宇宙クラスタ諸兄と合流して未明から意気揚々とロケットの聖地・内之浦に乗り付けたのでした。だが、しかし…




※画像提供:あつ志さん
まだ夜明け前に、今回の打上げの公式見学場所となる宮原ロケット見学場に到着。
既に多くのロケットファンが集結しており、駐車場もどんどん埋まっていきます。


※画像提供:あつ志さん
気温が氷点下に近い極寒の中、海風まで吹き抜ける宮原ロケット見学場で静かにその時を待つロケットファン達。
今朝はよく晴れ渡り、絶好の打上げ日和となりました!(そのせいで放射冷却もキツく、寒さも倍増ですが…)

そして8時33分、“内之浦名物”の肉声のカウントダウンに送られて、観測ロケットSS-520 4号機リフトオフ!


※画像提供:あつ志さん
宇宙まで突き抜けるような真冬の青空に向かって、ちょうど差し始めた朝陽に照らされきらきらと輝きながら真っ赤な噴射炎を噴き出し、SS-520 4号機のロケットロードが天空へと真っ直ぐ伸びていきます。
とても美しい、素晴らしい打上げの光景でした!

…この時点では、誰もが打上げの成功を確信していました。
僕も「そう言えば、ペイロード(超小型衛星)の分離ってリフトオフの何分後だっけ?衛星が軌道に乗ったら当然名前が付くよね!今回はなんて名前になるのかな」などと呑気に話していたのです。
そう、この時はまだ…

この後、内之浦から引き揚げて鹿屋市辺りで昼食にしようかと話していた移動の車中で、携帯端末で打上げ後の情報収集をしていたK君が突如、悲痛な表情で一言…
「あの…なんて言えばいいのか…。非常に悪いお知らせがあります。」

SS-520 4号機実験結果について(平成29年1月15日 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構プレスリリース)

観測ロケットSS-520 4号機は、第1段ロケットモータの燃焼と飛翔は正常だったものの飛行中にロケットからのデータ受信が途絶してしまい、第2段ロケットモータの点火指示が中止されそのまま打上げ実験は中止。
SS-520 4号機は第1段ロケットモータの燃焼終了後、ペイロードと共に海上に落下しました。
実験の目標である超小型衛星の軌道投入は果たせず、結果として打上げ実験は失敗しました…。

…僕が平成18(2006)年にM-Vロケットの6号機による赤外線天文衛星 「あかり」打上げ、及び7号機による太陽観測衛星「ひので」打上げでロケットの打上げ見学(というかロケットの“追っかけ”)を始めて以来、初めて経験する「自分が打上げを見たロケットの打上げ失敗」です。

これが初めて知る失敗の味、深くて重くて苦いな…
でも、不思議と悲しさは感じませんでした。もちろん悔しさはありますが、それもどこか前向きだったと思います。
そう、これは「打上げ実験」なのです。
最初から失敗しないと分かっていたら実験をやる必要はありません。あくまで、上手くいくかどうか分からないのでやってみる野心的で冒険的で、そして緊張感に胸躍る素晴らしい行為なのです。
それが、「打上げ実験」なのです!!

「今回は、上手くいかなかったという事を知ることができた。それもまた成果の一つだ。
さぁ、今回の失敗の原因を徹底的に突き止めよう。そして…次は必ず成功させる!!


きっと、今回の打上げ実験に関わったすべての人たち、すべてのロケットボーイとロケットガールたちが、今は同じ気持ちで前を向いて奮闘を再開していると思います。
僕も、僕たちロケットファン・宇宙ファンも、全力で応援し続けます!!

必ず原因を突き止めて、そしてまた再び内之浦のKS台地に帰ってこい!
必ず、また翔べ!超小型衛星を打上げる観測ロケットSS-520!!
僕はいつまでも待っているからな…!!

「直方隕石」5年に一度の特別公開!須賀神社御神幸大祭を見てきました

2016-10-23 | 宇宙
福岡県直方市下境の須賀神社


福岡県直方市にある須賀神社には、なんと隕石が奉納されています。
しかも、ただの隕石ではありません。人類史上最古の「目撃記録が残りそれが科学的に鑑定・認証された隕石」なのです!

「…時は貞観三年四月七日(西暦861年5月19日)の夜、突如何かがこの地の上空に飛来。
そのまま須賀神社境内にあった柿の木の幹に当たって爆発。辺りが昼間のような明るさになり、大音響が鳴り響いた。
その跡地には地面を突き破って大穴が開き黒い石がめり込んでおり、後日掘り出した石は皆が恐れ誰も触れる者もいなかった程だが、桐箱に入れて須賀神社に納めた…」

というような伝承が直方市下境地区に残されており、実際に須賀神社にも黒い石が入れられた桐箱が奉納されていたのですが、
桐箱の素材の炭素年代測定法による鑑定等を経て1981年に国立科学博物館の村山定男先生によって「実際に貞観年間に地球に落下した隕石である」と認証されました。
※他に、江戸時代の寛延年間に落下したとする研究も存在します。

実に1155年前の平安時代にこの地に落下して以来、ずっと神社に納められ地域の人達に畏れられ大切に守られてきた“世界最古の記録を持つ稀有な隕石”、それが「直方隕石」です!
(ちなみに貞観年間には東日本大震災との対比で話題となった貞観地震をはじめ日本国内各地で火山が噴火したりしており、隕石落下とは直接関連はありませんが日本列島が天変地異の災害に見舞われ続けた時期だったようです。)

そんな「直方隕石」ですが、普段は須賀神社に納められており見ることができません。
ですが、5年に一度開催される須賀神社の御神幸大祭で特別に公開されます!
そして、今年(平成28年・2016年)がその貴重な5年に一度の隕石を実際に見るチャンスの年!

という訳で平成28年10月22日、Twitterの宇宙クラスタ仲間と誘い合って「直方隕石」を見てきました!!








須賀神社の境内には「直方隕石」の記念碑が建てられています。
このゴツゴツしたのが「直方隕石」のレプリカらしい…

そして、お神輿の山車に載って特別公開に登場した、これが本物の「直方隕石」です!!


…記念碑のレプリカより随分小さくて形状もつるっとしてますが、これが紛れもなく本物の世界最古の目撃記録を持つ「直方隕石」です。
それにしても、御神体ではないにせよ神社に大切に奉納されている宝物の筈なのに、アクリルのケースに入れて雨の降る中に持ち出してくるとはかなり扱いが大胆だなぁ(笑)

しかし、この後はもっと大胆だった…
何と、貴重な「直方隕石」は神輿に載せられたまま雨の中を担ぎ出され、そのまま直方市内を練り歩き始めたのです!
う~ん、大胆というか豪快というか…っていうか、ホントにこんなことしていいの!?(笑)
須賀神社の御神幸大祭、恐るべし!!





そぼ降る秋の雨の中、「直方隕石」を載せたお神輿と山車の巡行は進みます。
我々宇宙ファンも隕石に付き添って、巡行行列と並んで歩きます。



…それにしても、歩く歩く!
ちょっと神社の周辺の町内を一回りするだけかと思ったら、どうやら直方市内の下境地区を全てくまなく巡るらしい…
隕石と一緒に歩いている我々もだんだん疲れてきました。



一時間半ほど歩いたところで、公民館で休憩。




公民館の駐車場で休憩中の「直方隕石」。

小休止を終えて、隕石のお神輿巡行は再び出発。さて、いつまで歩き続けるのか…


※同行した宇宙クラスタ仲間が撮影・提供してくれた動画です


平成筑豊鉄道の線路も越えて「直方隕石」は進む。
…なかなか見られないですよ、踏切を渡る隕石なんて!っていうか、なんてシュールな光景なんだろう(笑)



午前9時半頃に須賀神社を出発してから歩き続けること3時間。
ようやく「直方隕石」の巡行行列は目的地である稲荷神社に到着。




雨の中を練り歩いた「直方隕石」は無事に稲荷神社の本堂に安置、というか搬入されました。
隕石は今夜はこの稲荷神社でお泊りになるそうです。
そして、明日はまた直方市内を練り歩いて須賀神社にお帰りになるとのこと…
明日も頑張って歩いてください!

我々宇宙ファンも無事に「直方隕石」の巡行と一緒に歩き終えて、ああ疲れたお腹も空いた。
何か食べよう、直方名物の食べ物って何かな!?


という訳で直方名物の地元B級グルメ、焼きスパ(焼きそば式に調理したスパゲティらしい)をいただきま~す!
ああ、3時間も歩いた後の焼きスパは超美味しい!

今日は本当に疲れたけど、なんだか凄く面白くて楽しかった。
だって、隕石と一緒に歩いたんだよ!こんな経験、生まれて初めて!!
それに、世界中に隕石は数あれど、千年以上前に落ちてきて以来ずっと地域の人々に大切に守られて、歴史を積み上げてきた隕石なんてきっと世界中でこの「直方隕石」だけ。
千年以上もみんなが隕石と共に生きてきたなんて、何だか感動してしまうじゃないか…世界で一番幸せな隕石かも知れないね。


…さて、次回の須賀神社御神幸大祭は5年後、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に帰って来る翌年の2021年です。
5年後にもまた歩くよ、世界最古の目撃記録を持つ「直方隕石」と一緒に!
宇宙が好きな皆さん、是非この次は皆んなで一緒に隕石と歩きましょう。2021年に直方で隕石と会おう、歩こう!!

H-IIAロケット30号機/X線天文衛星ASTRO-Hの打上げが熊本県八代市で見えた!

2016-02-17 | 宇宙
Photo:飛翔するH-IIAロケット30号機(熊本県八代市・八代内港旧フェリーターミナル付近にて)


本日(平成28年2月17日)17時45分00秒(日本標準時)、X線天文衛星ASTRO-Hを搭載したH-IIAロケット30号機が種子島宇宙センターから打上げられました。

打上げ時刻は、ちょうど南九州では日没直前の夕暮れ時。
「空は暗くなり始めているが、太陽光は上空に差し込んでいる」という絶好の“ロケット見学時間帯”。
僕も、勤務終了後に(残業を強引に断って(笑))種子島方向が海に面して開けたロケーションにある港地区に向かい、地元の熊本県八代市からのロケット打上げ目視観測にチャレンジしました!




午後5時半頃、港に到着すると、晴れてはいるものの雲が空一面に…

でも、かなり風が強くて上空の雲がかなりの速さで北に吹き飛ばされているのが分かります。
何とか雲の切れ間からH-IIAのロケットロードが見えることを祈って、打上げ時刻を待ちます。

インターネットの打上げライブ中継を見ながら、17時45分のリフトオフの瞬間を確認。
ライブ中継は若干のタイムラグがあるので、そろそろH-IIAロケット30号機は上空に到達して、ここからでも肉眼で見え始める筈。

「どこだ!?雲が多くてよく分からないが、出て来いH-IIA!早く飛んで来い!!」

しかし、なかなかロケットの機影もロケットロードも見えず、「やっぱりダメか…雲に隠されてしまったか」と諦めかけたその時!

「来た!来た来た来たー!!H-IIAロケット30号機だ!!」




小さく輝くH-IIAロケット30号機の機影が、真っ白なロケットロードを引き連れて、雲の切れ間の青空を天空目指し突き抜けていきます!


やがてH-IIAはASTRO-Hを地球周回軌道へと導く為に航路を地球表面に沿うように曲げ、地平線の彼方へと落ちていきます…





「行ってしまった…もう宇宙に出ているな。多分、既に第一段ステージもフェアリングも切り離した筈だ。
…ASTRO-H、いい旅を!!」



やがて、冬の強い風に吹き流されてロケットロードも夕空に溶けていきます…


H-IIAロケット30号機が旅立つのに合わせたように日が暮れて、海風が冷たくなってきたのでクルマの中に退避して、打上げの余韻に浸ります。
今回もいい打上げでした!

H-IIAロケット30号機によるX線天文衛星(ASTRO-H)の打上げ結果について
(JAXAプレスリリース 平成28年2月17日)

そして打上げの約2時間後、H-IIAロケット30号機から分離され地球周回軌道に投入されたX線天文衛星ASTRO-Hは地球を一周りして再び九州の上空に到達し、大隅半島の内之浦宇宙空間観測所で衛星からの電波受信にも成功。
無事に太陽電池パドルを展開していることも確認され、「ひとみ」と命名されました。
日本の新しいX線天文衛星「ひとみ」が誕生したのです!

X線天文衛星(ASTRO-H)の太陽電池パドル展開及び衛星の名称について
(JAXAプレスリリース 平成28年2月17日)

おめでとう、「ひとみ」。そして、今回もありがとう、H-IIAロケット。
君たちは日本の誇り。科学の子、そして、平和の使者。