みどりの一期一会

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改正DV防止法を現場で実効性のあるものに!/講演会中止事件「DV防止逆風に負けず」(2.15朝日)

2008-02-16 10:24:32 | ジェンダー/上野千鶴子

昨日、朝日新聞の生活面に、つくばみらい市講演中止事件に関しての
大きな記事が載っていました。
東京本社版に載ったと聞いていたので、毎日、注意して探していたものです。

以下に、記事を紹介します。

DV防止 逆風に負けず
  [離婚巡る争い激化、支援団体など危機感]

(朝日新聞 2008.2.15)
写真(DV防止施策について「自治体に自粛ムードが広がるのを懸念すると話す上野千鶴子さんら=東京・永田町の衆院第一議員会館で)

 夫婦や恋人の間での暴力(ドメスティック・バイオレンス、DV)を防ぐ活動逆風が吹いている。抗議を受け、DV防止の講演会を中止した自治体もある。危機を持った被害者の支援団体や研究者らは、署名活動や集会を展開している。逆風の背景には、子どもの親権など離婚をめぐる夫婦の争いの激化もあるようだ。
(杉原里美)

 [市民団体の抗議で市が講演会中止]
  連鎖懸念2700人の署名提出
 
 1月20日に予定していたDV防止の講演会を中止したのは、茨城県つくばみらい市。内閣府の男女共同参画会議の専門調査会委員で東京フェミニストセラピィセンター所長の平川和子さんが講演予定だった。
 1月初め、市は「DV防止法は家族を破壊する」と主張する市民団体から「偏向した講演会を市費で行わないこと」「開催するなら対等の立場で反対の発言を保障すること」などを求める要請を受けた。要請書には「普通の夫妻間に軽度・単純・単発的な『暴力』はあって当たり前。『夫からの暴力根絶』論は、過激フェミニズム」と書かれていた。講演会に抗議するメールや電話、ファクスは約100通届いたという。
 その後市庁舎前で3人が拡声機を使った抗議行動をし、市は16日に中止を決定。「当日の街宣活動を抑えられず、聴衆や講師に迷惑がかかると判断した」と説明している。数日後、隣のつくば市にある高校が恋人間の暴力についての講義をやめるなど波紋は広がった。同様の抗議を受けた新潟県長岡市は「反対意見があるからといって中止する理由にはならない」と平川さんの講演会を1月末に予定通り開いた。
 平川さんは「つくばみらい市は弱腰で暴力に屈しているとしか思えないが、その自覚がない。改正DV防止法では、基本計画の策定が市町村の努力義務になったというのに、この市の窓口に、被害者は相談しないだろう」と批判している。
 つくばみらい市の対応に、DV防止施策の後退を心配した研究者や地方議員らは「暴力から人権を守るための事業が、少数の威嚇によって実施不可能になるなら、『混乱を恐れて』自主規制する自治体が続出する」として、改めて市に講演会開催を求める署名を集め、2月1日、約2700人分を提出した。東京大学大学院の上野千鶴子教授は「反対勢力は、DV防止法が家族を破壊するというが、家族を破壊しているのは暴力。それを防ぐのがDV防止法だ」と話す。
 一方、講演会開催に抗議した「主権回復を目指す会」の西村修平代表は「公費で偏向した講演会を開くことはおかしいと考えるが、中止するとは思わなかった。反対意見と同時に、平川さんの言論も保障しなければいけない。講演会を開催するよう、市に要請したい」と話している。

 [事実認定・子との面会巡り争いも]
  居場所の秘匿 最大の安全
 
 夫婦間の暴力を犯罪と明記し、被害者保護と自立支援を目指すDV防止法。内閣府の意見募集に反対意見を出した「真のDV防止法を求める会」を運営する男性(43)は「本当のDV被害者は、救われるべきだ。しかし、離婚を有利に進めるために、被害者だと主張する人もいることを知ってほしい」と話す。
 首都圏の会社員(43)の場合、妻が2年前、息子を連れてシェルターに逃げ込んだという。前日妻ともみ合いになり、たたいたことが理由にされた。翌年、妻からの申し出でDV防止法に基づく保護命令が出たが、男性は即時抗告し、高裁で命令が取り消された。
 この男性は「妻は深夜に服を着ずにうろつくなどの奇行があり、詳細な日記をつけていたため、止めようとしただけでDVではないと認められた」という。
 別の男性(38)は「『DVじゃありません』と訴える機会もない」と話す。妻はDVを理由に子どもを連れてシェルターに入った。1年半、どこにいるかも分からず子どもにも会えなかった。「出産にも立ち会いかわいがってきたのに」
 この会が求めるのは、妻だけでなく夫婦双方の話を聞き、DVかどうかの事実認定をすることや、DVの有無とは別に子どもとの面会を保障することなどだ。
 DV防止法による一時保護は、各都道府県の婦人相談所の所長が決定する。厚生労働省の通知で、被害者の健康や配偶者からの追跡の恐れ、経済状態などを総合的に判断し、必要と認められる場合に保護することになっている。ただ、婦人相談所には本当にDVがあったのか調査する権限はない。「加害者に確認すると、どこの相談機関に行ったのか居場所がわかってしまうため、法の趣旨からも難しい」(厚生労働省)
 全国女性シェルターネット共同代表の近藤恵子さんは「被害者が逃げてきているという事実が、DVの明確な証拠。暴力的な関係の中で育った子どもも被害者だ。裁判所で面接交渉の取り決めが成立すれば父親に会わせられるが、加害者に居場所を知られないことが最大の安全である以上、シェルターにいる間の面会はできない」と話す。

◆キーワード  <DV防止法>  
 01年に議員立法で成立し、今年1月、2回目の改正法が施行された。生命や身体に重大な危害を受けるおそれがあるとき、裁判所は被害者から申し立てを受けて、一定期間被害者と子への接近禁止や自宅からの退去を命じる保護命令を出すことができる。今回の改正で脅迫も保護命令の対象となった。被害者は暴力を避けるためシェルター(避難所)で一時保護を受けられる。保護命令申し立ては06年に2759件。DVを理由にした一時保護は06年度に4565。


ところで、
記事の中で、「主権回復を目指す会」西村修平代表が
「公費で偏向した講演会を開くことはおかしいと考えるが、中止する
とは思わなかった。反対意見と同時に、平川さんの言論も保障しなけれ
ばいけない。講演会を開催するよう、市に要請したい」と話している。

と書かれていますが、これは間違いだと思います。

以下のように「主権回復を目指す会」は当日午後、みずからの掲示板に、
「本日16日8時半から、つくばみらい市の庁舎並びに市内全域において
講演会中止を訴えるビラ撒き投函と街宣を行った。・・・」

と、街宣の趣旨も含めて明確に書いています。

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主権回復を目指す会 掲示板
・中止が正式決定!つくばみらい市の反日講演会
主権回復を目指す会事務局 投稿日:2008/01/16 14:56

中止が正式決定!道理を掲げた少数が巨大な行政を圧倒・屈服させた。

(以下、一部引用)・・・・・主権回復を目指す会は本日16日8時半から、つくばみらい市の庁舎並びに市内全域において講演会中止を訴えるビラ撒き投函と街宣を行った。 開庁と同時に開始した西村代表の街宣とビラ撒きには、庁舎を訪れた市民の関心を深く惹き、多くの人から質問と疑問が寄せられた。  街宣の趣旨は、秘書広聴課が市に殺到した中止要請の声を握りつぶし、市長に届けていなかった意図的隠蔽工作を暴いた。さらに、反日極左の講演会を、国民の抗議を無視して強行したならば、つくばみらい市の今後に修復できない傷を残し、その不名誉は永遠に銘記される。しかしながら、実態が明らかになった段階で、速やかなる中止という決断を下すのならば、つくばみらい市の名誉と共に名声は全国の自治体に轟くであろうと。・・・・・
------------------------------------------------------------------
 

みずからの掲示板とも違うコメントを発するのも疑問ですが、
このような記事の書き方も納得できません。
今回の事件のように、強者(加害者)と弱者(被害者)が明確で、
お互いの利害が対立したとき、権力を持つメディアが両論併記するのは、
(読者にどっちもどっちという印象を与え)強者を利するだけです。

前に中日新聞を紹介しましたが、1月31日の東京新聞も入手しました。
記者さんがわざわざ友人に届けてくださったものですが、
西村氏は、この記事のなかでもやはり、
「市には中止しろとは言っていない・・・」と書かれていて変です。
「中止しろ」と言って、中止に追い込んでおいて、
「まさか本当に中止するとは思わなかった」というのでしょうか。

【ニュースの追跡】DV防止講演会 抗議受け中止の波紋 
東京新聞 2008.1.31
 茨城県つくばみらい市で先月中旬、市主催のドメスティック・バイオレンス(夫などの暴力、DV)をテーマにした講演会が中止になった。反対団体から抗議を受け「混乱回避」を優先したという。新潟県長岡市では同じ状況で講演会を開いた。行政の「過剰反応」が言論の自由を縛りかねない状況だ。

 言論の自由を縛る行政「事なかれ」
 改正法今月施行 支援拡充必要な時期に

 つくばみらい市は男女共同参画事業の一環として、先月中旬に「自分さえガマンすればいいの?」と題した講演会を予定していた。講師はDV被害者を支援する東京フェミニストセラピィセンターの平川和子所長(内閣府専門調査会委員)。
 ところが先月4日、DV防止法に反対する「DV防止法犠牲家族支援の会」の地元会員が市に講演中止などを要請。11日には「支援の会」会員と「主権回復を目指す会」の西村修平代表が市を訪れ、「当日は講師と逆の立場の論者にも発言を認めよ」と求めた。
 市は拒み、西村氏ら3人は16日、市庁舎前でチラシをまき、拡声器を使い主張を訴えた。市は同日、「開催すれば混乱を生じかねない」と講演会中止を決めた。
 西村氏は「夫婦間のトラブルは話し合いで解決すべきだ」と持論を述べた上でこう話した。「市には中止しろとは言っていない。日本には言論の自由がある。ただ、公費を使う以上、反対の立場の人間にも発言機会を与えるべきだ。講演会を開いたら脅威を与えるといった発言もしていない」
 一方、長岡市も「家族の中の暴力防止」をテーマに平川氏を招いた講演会を企画。前出の「支援の会」が「市費を使うな」などと抗議していたが、予定通りに27日、120人の聴衆を集めて開いた。

 つくば市では授業取りやめ 
 つくばみらい市の中止決定は余波も。茨城県つくば市の県立茎崎高校は「デートDV」をテーマにDV被害者支援のNPO法人による出前授業を予定していたが「直接の抗議はないものの、つくばみらい市の判断を重視した」(同校)として授業を取りやめた。
 今回の判断について、つくばみらい市の担当者は「ここは田舎。拡声器による街宣だけで皆が驚く。(言論の自由もわかるが)開催当日、会場に抗議団体が来て、混乱が生じる懸念を優先した」と説明する。
 しかし、講演するはずだった平川さんは「わずか数人による威嚇や妨害活動で中止されたことが残念。市が“事なかれ”で対応し、このまま終わってしまうのがおかしい。(1月)11日には改正DV防止法が施行された。支援体制の拡充が必要な時期だったのに」と語る。
 つくばみらい市の対応は類似した事件の判例をみても疑問が多い。広島県呉市は1999年、同県教組の教研集会のため、一度は学校施設の利用を許したが、右翼団体の抗議活動を予想して不許可にした。この件で、最高裁は2006年2月「妨害活動のおそれが具体的でなかった」と呉市の対応は不適当だったと判断している。
 お茶の水女子大学の戒能民江教授(家族法)は「今回の事件によって、せっかく積み重ねてきたDV防止の動きへの影響、さらに被害者の声を封じる結果をもたらしかねないことが危ぶまれる。行政は自主規制することなく、その責務を全うしてほしい」と訴える。

  開催の長岡市「聴衆を優先」
 民族派団体「一水会」の鈴木邦夫顧問は「市の対応がだらしなさ過ぎる。『反日』『売国奴』となじり相手の発言の場を奪うことも、回り回って自分たちの言論の機会を喪失することにつながる」と指摘する。
 長岡市の講演会担当者はこう話す。「どんな講演会にせよ、内容への賛否や意見はさまざま。万人が賛成する講師を条件にすれば、講演会など開けない。聴衆の受けとり方は講演会の開催とは別問題だ」
(東京新聞 2008.1.31)


つくばみらい市を講演会中止に追い込んで味をしめたのか、
次なるターゲットは、長岡市。
ところがどっこい、
長岡市は中止を求める抗議に屈せず講演会を予定通り開催した、とのこと。
「予定通り開催」は行政として当然のことで、美談でもないとは思うけど(笑)、
長岡市の毅然とした対応には拍手を送りたい。

☆男女共同参画情報メール第155号(H20.1.11発行)
◆◆ 男女共同参画局から ◆◆

           内閣府特命担当大臣(男女共同参画)
             上川 陽子

・・・・・・・・本日施行された改正配偶者暴力防止法に基づき、配偶者からの
暴力の防止及び被害者の保護・自立支援のための施策の充実にも努めてまい
ります。・・・・・
 
● 「配偶者暴力防止法の改正について」
 昨年7月に成立した「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する
法律の一部を改正する法律」(平成19年法律第113号)が、1月11日に施行
されました。
 配偶者暴力防止法は議員立法により平成13年に制定、16年に一部改正
され、今回も議員立法により改正が行われています。
 主な改正点は、①保護命令制度の拡充等(生命・身体に対する脅迫を受けた
被害者に係る保護命令、電話・ファクシミリ・電子メール等を禁止する保護命令、
被害者の親族等への接近禁止命令等)、②基本計画の策定を市町村の努力
義務とすること、③市町村の適切な施設において配偶者暴力相談支援センター
としての機能を果たすようにすることを努力義務とすること、となっています。
 詳細については、ホームページをご覧下さい。
配偶者暴力防止法が改正されました 


年明けに届いた「男女共同参画情報メール」にあるように、
配偶者暴力防止法(DV防止法)は、昨年7月に改正され、
6ヶ月の猶予(周知)期間をおいて、1月11日から施行されたばかり。

法律や制度はつくればよいというものではない。
だれのためのなんのための法なのか、DV被害者に届いてこその法改正でしょう。

法律は、ある政策を実現するために決定され、
施行された日から、全国津々浦々の自治体に大きく網をかけ、
同時にすべての人に適用され、その効力を発揮します。

今回の改正法は「基本計画策定という自治体の責務」を明確にしました。
自治体は、法により「基本計画=自治体の政策」を策定する努力義務を負いました。
ならば、自治体現場で改正法を実践していくために、
国と自治体の綿密な情報交換と協力は不可欠です。

国と自治体(地方政府)の関係は、上下関係ではありません。

「仏つくって魂いれず」「絵に描いた餅」にならないためにも、
主務省庁(国)は自治体に「丸投げ」せずに、法の趣旨と「解釈・運用」を説明する責任があります。

自治体もまた、「上部機関に指示を仰ぐ」という考えを捨て、
自治体と現場のDV被害者の状況を知らせながら、国と対等な関係で、
「DV防止法」を現場で実効性のあるものにしていく責任と義務があると思います。

国は「地方分権」の名のもとに、「自治体のことは自治体が決める」と
原則論を繰り返して知らん顔を決め込んでいるようだけど、
公務員が市民(国民)を守らなくてだれが守るのか、
そもそも「自治体(地方政府)」はだれのために何のために存在するのか、
今回の事件では問われているのは、「自治のあり方」そのものです。


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最後まで読んでくださってありがとう
2008年も遊びに来てね 
 また明日ね
 

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DV運動の悪用 (DV反対)
2009-06-21 15:54:57
批判しているのは偏った思想の人たちである事は確かですが、主張には一理あります。
最近では「別れさせ屋」「復縁屋」などの商売人やDVナンパ男などがDV被害者を狙う事例も増えています。
DVシェルターでの虐待も関係者自信からも内部告発されています。
行政が安易に金をばら撒くので本当に困った人が救われずにたちの悪い連中にかなりの金が渡っているのは事実です。

下記のサイトでDVの知られざる恐るべき実態が暴露されているので是非読んでみて下さい。
http://www.geocities.jp/fghi6789/dv.html

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