みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

【悩みのるつぼ】上野千鶴子「人生は減点法でなく得点法で」/【yumiyoriな話】上野千鶴子さん

2011-03-15 00:33:11 | ジェンダー/上野千鶴子
東北太平洋沖大震災の報道が続いていて、
わたしも、11日の「女ぎらいの会」読書会をしている時にゆれを感じて以来、
ずっと、地震や福島原発事故の情報をブログとP-WANにアップし続けてています。

ところで、この地震の影響は東京にも及んでいて、
先日、このブログで紹介した明15日の上野千鶴子さん最終講義は、
中止となりました。

上野千鶴子教授 特別講義 (東大社会学研究室HP) 
【緊急】今般の東北地方太平洋沖地震被害および計画停電などの事情によりまして、3月15日に予定されていた上野千鶴子教授特別講義は中止となりました。今後については後日あらためてお知らせいたします。


わたしも聴きに行くつもりだったのですが、
上野研から連絡をもらってきゅうきょ上京を取りやめに。
また、あらためて開催するようでしたら、ブログでお知らせします。、

土曜日の朝日新聞be【悩みのるつぼ】の回答者は、上野千鶴子さん。
【yumiyoriな話】もアップされたので、あらためて紹介します。

【悩みのるつぼ】
相談者 無職 46歳  私の人生は何だったのか?

2011.3.12 朝日新聞

 私は46歳、50歳の夫と2人暮らしです。最近、自分の境遇がなぜこんなに不幸なのか、悩んでいます。本当にいいことがないのです。これからも何も楽しいことがなくて年老いていくのかと思うと、日々、つらく暗い気持ちです。
 ケンカの絶えない父母の元に育ち、楽しい思い出はほとんどないまま成長しました。そのため、早く結婚して子どもをつくり、平凡でいいから仲のいい楽しい家庭を築くのが夢でした。
 25歳で結婚し、早く子どもをと望みましたが、とうとうできませんでした。10年ほど前に母が亡くなり、残った父がギャンブルで抱えた大きな借金を、私が返すハメに。まもなく夫の会社が倒産、私は平日はフルタイムで、土日はパートで休みなく働きました。借金を返し、夫も何回かの転職の末に、最近落ち着いてきました。
 ところが今度は私が体調をくずし、半年前に仕事を辞めました。最近時間ができたせいか、自分の人生を振り返ります。
 子どもを持つ夢が破れ、しんどいことばかりが続き、今後も楽しいことが何もないのかと思うと、私の人生は何だったのかと悩みます。同世代の女性が夫に守られ、子どもを持ち、幸せそうに暮らしているのを見ると嫉妬の気持ちがわき、自分と比べてよけいに落ち込みます。これからどのように生きていったらいいのでしょう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
回答者 社会学者・上野千鶴子
人生は減点法でなく得点法で

 いやあたいへんな人生を送ってこられましたね。それでも最近になって、父の借金を返し、転職をくりかえした夫は落ち着き、あなたは仕事を辞め、時間のゆとりができたんですか。ほっと一息してもよい時期に、「わたしってこんなに不幸」症候群にかかったんですね。
 質問があります。借金に追われ、休みなく働き続けてきた10年間、あなたは不幸だと感じましたか? たぶんそんなことを感じるひまもないほど、目の前の課題に無我夢中だったことでしょうね。
 こういう心理機制を「目標喪失症候群」と言います。どんなに厳しくても目標があるあいだは泣き言を言っている余裕はありません。それがふっと目の前から消えたとき、むなしさに襲われる……これを避けるには、夫に先立たれるとか新たな危機が訪れたらまた力が出ることでしょうが、さんざん苦労してきたあなたにこれ以上別な苦労を味わってほしいと思っているわけではありません。軽くみているのではないのです。こういう時がかえって危険。うつ病のひとが回復期に自殺する可能性が高まるのと同じです。むなしさを感じるだけの体力・気力があればこそ、だからです。
 察するにこれまでのあなたの苦労はすべて他人のための苦労だったんですね。子どもがいればきっと子どものために生きたでしょう。その子どもが苦労をかけてくれればあなたは一生不幸を感じずに生き抜けたかもしれません。
 あなたに必要なことは、自分自身のために生きること。ようやくその条件が整ったときに、茫然自失(ぼうぜんじしつ)しているというのが正直なお気持ちではないでしょうか。
 そのためには、人生を減点法(何を持たないか)ではなく、得点法(何を持っているか)で考えること。父も夫もリスクではなくなった、リスクになる可能性のある子どももいない。46歳、何かを始めるのに決して遅くはありません。特別のことをしなくても、夫とふたり大病もせず、気持ちのゆとりのある日々を過ごせるだけで、他人もうらやむ暮らしかもしれませんよ。
 あなたのご相談に夫への不満がないのが救いです。失業も転職もご自身の落ち度ではないし、父の借金を抱えた妻を支えてきた、実直で誠実な男性の姿が浮かびます。浮気もせずDVもしない夫なら、これからも助け合って生きてください。
題字・イラスト きたむらさとし



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【yumiyoriな話】第31回 上野千鶴子さん 

絶妙な住み分けね
 シンガー・ソングライター松任谷由実さんの対談企画「yumiyoriな話」。今回は、ゲストの社会学者上野千鶴子さんがリードして、質問を投げかけていく展開となりました。上野教授の専門分野である「男と女」、「老い」を巡り、ユーミンの秘密が解き明かされていきます。(構成・清川仁)

 松任谷(以下M) 『女ぎらい』は、胸のすく思いがいたしました。私自身も、そういうものにさらされてきたんだと気づいて。
 上野(以下U) 私の本のファンだという方に会うと、「かわいそうに。苦労してきたのね」と思うのね。でも、松任谷さんのようなシンガー・ソングライターであり、板(舞台)の上に立つパフォーマーにもなり、それをショービズにまでした女王が共感なさったなんてビックリ。
 M バブル時代と一致したブームが終息する時、すごいバッシングにあったんです。周りからは「男なら、あんなたたかれ方はしない」と言われて。
 U 私も「あの程度の才能なら男にはざらにいる。上野は女だから得した」と言われました。ムカつきますけど、開き直ります。「女でさんざん損したから、女でたまに得して何が悪いのよ」と。
 M 結婚して34年ですが、交際中から夫(松任谷正隆)が「髪結いの亭主」(女性に養われる夫)的に言われることが嫌だったことを思い出しました。その言葉自体がミソジニーですよね。
 U おっしゃる通りね。由実さんのお母様は呉服店の跡取りで、お父様を婿養子にとられた。だんな様も「髪結いの亭主」と言われるような方なら、2世代にわたり家庭内家父長制を経験せずにこられた。すごいレアケースですよ。
 M 夫は長男ですがリベラルな人。音楽を続けてこられたのは、プロデューサーの夫にプレッシャーをかけられてきたから。もし先に逝かれたら『おひとりさまの老後』でいうところの喪失感は大きいと思います。
 U コーチであり、プロデューサーであり、パートナー。34年間、お互い期待を裏切らずにきたなんて素晴らしい。互いの才能の評価に厳しい同業者カップルはたいがい破綻します。だんな様から嫉妬されることはなかったですか。
 M あったとは思います、昔。今は同化してます。結婚したのは、互いの才能を独占したかったんだと思う。
 U 同じ板の上で競合するのではなく、松任谷由実という作品の作り手側に回られた。絶妙な住み分けでしたね。
 M 軋轢(あつれき)もしょっちゅうありますけどね。
 U 作品を作るうえで? それとも男女間の軋轢?
 M 境目がないんです。家にスタジオがありますし。
 U じゃ、合宿生活を34年やっている。ほとんど同志愛ですね。同志愛で一緒に走ってくると、ゲイカップルみたいになりますよね。
 M そうです、そうです。夫は写真のフレームを買うのが大好きで、家で芸術品を飾るような場所に、二人の写真ばかり飾るんですよ。
 U やっぱり。「ユーミン」て記号は、二人のユニットのアイコンなんだ。
 M ユニット名でもあり暖簾(のれん)やブランドのようなもの。実家と同じことやってるな。
 U 商家のDNAですね。
 U 歌手にとっては、声が一番大きいツールですよね。パフォーマーとしても、ボディーをよくここまでメンテナンスされておられると感嘆します。でも、どこかでピークはありますよね。
 M 30代半ばは無敵でしたね。
 U 私も30代は怖いもの知らずで、オヤジをからかうのが楽しくて。「上野は怖い女」というイメージが定着したのはその頃です。でも、流行を追う社会学者が、時代と添い寝できるのは30代が限界。40代で研究主題を高齢化や介護にシフトしました。そして、下り坂になった時間をどう過ごそうかと考えるようになってきた。老いを切実に感じておられてますか。
 M 感じつつ、まだ行けるという時間をはじき出してます。声の音域は狭まるのでボイストレーニングに励んだり、ひざ小僧は「ひざ爺(じじい)」にならないように努力したり。CG技術なども駆使すれば、実態はともあれ、70歳までは今のイメージのままでやれるかな。“長生きのマイケル・ジャクソン”をやりたい。
 U でも、人間はゆっくり確実に老い衰えますよ。
 M 老いないなんて思っていないけど、もう少しやるやつがいてもいいかなと。
 U 板の上で果てたい?
 M それはないです。色んな意味で格好良く死ねるには準備に10年は必要と思って。
 U 一緒に年を取るのを見届けたいというファンは、松任谷さん一人がアンドロイドみたいに変わらないのは、つらいのでは。
 M そのアンドロイドっぷりに、茶々を入れたいのが私のファンなんです。
 U 口うるさい聴衆に恵まれてらっしゃるんだ。屈折したアイロニー的消費ですね。私も、あれこれ言ってくる読者に恵まれています。読者に届くメッセージには正解も誤解もあるけど、届いている手応えがあるから続けられますよね。自由恋愛だけど、片思いじゃない。

板の上で死ぬのは
 M これからの日本はどうなりますか。
 U 明るい展望はないですね。高齢化で完全に人口減少期に入っています。社会にも、人生のようにピークもあれば下り坂もあるから、軟着陸さえできればいい。ただ、そのためのシナリオはいると思います。
 M そのシナリオはどんな人が書くのですか。
 U 介護保険ができてよかったと思うのは、助け合いがビジネスになったことです。その草の根の現場を担っているのは優しい女性たちなんです。彼女たちを見ていると、政策やデータだけを見て悲憤慷慨(こうがい)する気分にはなれない。どんな時でも、女の人は何とかして生き抜こうとしてきたんです。そういう人たちと一緒になって何かやりたいなと、ずっと思ってます。
 M 分かります。
 U その時、高齢化の現場にいる人たちのバックグラウンドに、ユーミンの音楽がある。ユーミンの音楽を聞いてきた人が、年を取ったからといって演歌のファンにはなったりしないので。
 M 私が、その人たちがいる板の上で死ぬっていうのどうですか。
 U いいですね。デイセンターにユーミンの歌があるというのは。大人気ですよ。
 M それ、いいかも。

 ニューアルバム「Road Show」(4月6日発売)は、銀幕の風景が目に浮かぶような11曲を収録。70歳現役宣言を裏付けるような力強い歌唱も聴きどころです。全国ツアーは、4月15日の神奈川・よこすか芸術劇場を手始めに、40都市73公演です。
上野千鶴子さん
 うえの・ちづこ 1948年、富山県出身。東京大学教授。女性学、ジェンダー研究のパイオニアで、近年は「おひとりさまの老後」(法研)を著すなど、老いや介護に領域を広げる。話題の近著「女ぎらい―ニッポンのミソジニー」(紀伊国屋書店)では、「女性嫌悪」と訳される「ミソジニー」をキーワードに、男社会に渦巻く女性の生きづらさの根本を読み解いている。
(2011年3月11日 読売新聞)
 



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