みどりの一期一会

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婚姻要件の国籍法規定は違憲/子どもの願い、応えた国籍法違憲判決(毎日新聞)-2

2008-06-05 16:32:23 | ほん/新聞/ニュース
前の記事の続きです。

昨日から、いち早くwebに速報をアップしたのは、毎日新聞。
一面はもちろん、社会面もこの日のために取材をしていたという感じです。

通常、二審判決が敗訴で、最高裁の法廷が開かれる、
という場合、高裁判決が見直される可能性が大なのです。
特に今回のケースは「大法廷」ですから、違憲判決は「想定内」。
ということで、
各社を読み比べてみましたが、中日もいいけど毎日もよいです。
記事を書いていらっしゃる北村和巳さんは、
以前、岐阜支局に見えた優秀な記者さんです。


婚外子:婚姻要件の国籍法規定は違憲 最高裁大法廷判決 
2008.6,4 毎日新聞

 結婚していない日本人父とフィリピン人母10組の間に生まれた子ども10人が、国に日本国籍の確認を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・島田(仁郎、に、ろう)長官)は4日、出生後の国籍取得に両親の婚姻を必要とする国籍法の規定を違憲と初判断した。大法廷は「遅くとも国籍取得を届け出た03年には、規定は合理的理由のない差別を生じさせ、法の下の平等を定めた憲法に反する」と述べ、10人全員の日本国籍を確認した。(社会面に関連記事、9面に判決要旨)

 最高裁が法律の規定を違憲としたのは、在外邦人の選挙権を制限した公職選挙法を巡る訴訟の判決(05年9月)以来で8件目。国会は早急な法改正を迫られる。
 国籍法3条1項は、未婚の日本人父と外国人母の子について、父の出生後認知と両親の婚姻の両方を日本国籍取得の条件とする。原告は関東地方などに住む8~14歳で、父の認知を得て03~05年に国籍取得を届け出たが、認められなかった。
 大法廷は、同項が設けられた84年当時は規定に合理性があったが、その後の家族生活や親子関係の意識変化、多様化で、立法目的にそぐわなくなっていると指摘。「国籍取得は基本的人権の保障を受ける上で重大な意味を持ち、不利益は見過ごせない」と述べた。
 国側は「出生後認知のみで国籍を取得できるとするのは、裁判所が新たな制度を設けることになり、立法権の侵害だ」と主張。大法廷は「原告の救済の観点から、婚姻要件を除いた部分を満たせば国籍取得を認めるというのが合憲的解釈」と退けた。
 裁判官15人中12人が違憲と判断し、このうち9人が多数意見。藤田(宙靖、とき、やす)、甲斐中辰夫、堀籠幸男の3裁判官は、原告の国籍取得を認める規定がない立法不作為を違憲とした。藤田裁判官は「現行法の拡張解釈で救済できる」として日本国籍を認めたが、甲斐中、堀籠両裁判官は「違憲状態の解消は国会に委ねるべきだ」と反対意見を述べた。
 横尾和子、津野修、古田佑紀の3裁判官は「家族の生活状況に顕著な変化があるとは思われず、規定には合理性があり合憲」と反対意見を述べた。
 1審は違憲判断し10人の日本国籍を認めたが、2審は憲法判断をせずに原告逆転敗訴としていた。【北村和巳】

 ◆判決のポイント◆
 ▽婚姻の有無で国籍取得を区別する国籍法3条1項は、遅くとも03年当時には合理的な理由のない差別として憲法に違反する
 ▽出生後認知された子は、同項が定める要件のうち、両親の婚姻以外が満たされれば国籍取得が認められる。原告は取得届提出で日本国籍を取得した

 【ことば】日本国籍の取得 国籍法2条は出生時に法律上の父か母が日本人なら子は日本国籍を取得すると定める。母が日本人ならば無条件に子は日本国籍。日本人父と外国人母の子の場合は、出生時に両親が結婚しているか、未婚でも妊娠中に父が認知していれば日本国籍を取得する。一方、生後認知された婚外子は3条1項の規定で、20歳までに両親が結婚し嫡出子の立場を得た場合に限って法相への届け出で日本国籍を取得できる。この場合、外国籍と日本国籍の二つを持つことになり、22歳までに国籍を選択しなければならない。

 ▽原告側代理人の話 不合理な差別を正面から違憲と認め、高く評価できる。同じ境遇にある多くの子どもたちに希望を与える。
 ▽鳩山邦夫法相の話 国籍法の規定が憲法違反とされたことは厳粛に受け止めている。判決内容を十分に検討して適切に対応したい。

 ◇実情踏まえた判断
 棚村政行・早稲田大大学院教授(家族法)の話 画期的な判決で、婚外子差別を禁じた国際人権B規約や子どもの権利条約を尊重した判断だ。価値観の多様化やグローバル化の中で国際的な家族が増えている日本の実情を踏まえている点も妥当。重要な権利でもある国籍について、結婚しているかどうかという親の事情で差別するのは問題だ。婚外子差別の合理性を問う判決で、民法の相続分の差別などにも大きな影響を与えるだろう。

 ◇家族巡る法制度に影響
 最高裁判決は、民法と同様に法律婚による「家族の結びつき」を重視する国籍法の見直しを迫った。最高裁が婚外子差別を違憲と判断したのは初めてで、家族を巡る法制度にも影響を与える可能性がある。
 夫婦別姓など家族関係の価値観は多様化している。事実婚や婚外子の増加で婚外子差別の見直しを求める声が高まり、住民票や戸籍では婚外子を区別する記載が撤廃された。
 一方で、国籍法の差別規定は維持されてきた。日本人父・外国人母の婚外子で国籍が認められない子どもたちは国内に数万人、海外にも相当数いるとの試算もある。国籍がなければ参政権を得られず、就職や日本在留でも制限を受ける。同法の規定は違憲との学説が有力になっていた。
 判決は救済の道を開いたが、直ちに婚姻要件が無効になるわけではない。原告と同じ境遇の子どもが法務局に届け出ても自動的に国籍は認められないとみられ、法務省は「窓口で混乱が起きないよう対処したい」と話す。同省は法改正に向けた検討を始めたが、どこまでさかのぼって救済するかや婚姻以外の要件を盛り込むかなどが議論になるだろう。
 婚外子差別では、遺産相続を嫡出子の半分とする民法の規定が残る。法制審議会は96年、相続分を同一にするよう法相に答申したが、たなざらしのままだ。最高裁判決の意味は重く、相続規定の論議が再燃するのは必至だ。【北村和巳、坂本高志】
毎日新聞 2008年6月4日 16時08分


社会面の
「婚外子国籍確認訴訟:国籍法違憲判決(その1) 子どもの願い、応えた」は、
中部本社版(岐阜)でも見つけたのですが、
{婚外子国籍確認訴訟:国籍法違憲判決(その2) 家族の結びつき、重い」は、
我が家に届いた新聞では見当たらず、東京本社版のようです。
今日の夕刊に載るかもしれません。

婚外子国籍確認訴訟:国籍法違憲判決(その1) 子どもの願い、応えた

 ◇夢じゃない?やっと日本人 
 日本人と認めてほしい--素朴で当然の願いに、司法が応えた。日本人父と外国人
母の婚外子に国籍を認めない法の規定を違憲と断じた4日の最高裁判決。日本人の血
が流れ、日本で生まれ育ち、日本語を話しながら、日本国籍を認められなかった子ど
もたち。判決後、母と一緒に抱き合って涙を浮かべ、はじけるような笑顔をみせた。
【北村和巳、銭場裕司】

 原告の子どもたちは母とともに傍聴席で判決を聞いた。主文の意味を弁護団から知
らされると大きな拍手がわき起こり、東海地方に住む原告のマサミさん(10)=小
学5年=は「マジで勝ったの? 夢じゃない?」と笑った。
 母ロサーナさん(43)は88年にフィリピンから来日し、仕事で知り合った日本
人男性との間にマサミさんが生まれた。1年後、父の認知が得られ市役所に「正美」
の名で出生届を出した。担当者は「日本国籍ではない」と冷たくローマ字への書き直
しを命じた。
 「何で私は日本人じゃないの?」。小学2年のころ、マサミさんは日本国籍でない
ことを知って驚き、泣いた。「外国人」と友達にからかわれ、「学校に行きたくな
い。転校したい」と漏らしたこともあった。
 妹の直美ちゃん(6)=小学1年=は、出生前に父の認知を受けたため日本国籍。
同じ両親を持つのに、国籍法の規定が姉妹の境遇を冷たく分けた。「私は日本人と呼
ばれたい。妹と同じ国籍になりたい」。控訴審の法廷でマサミさんは訴えた。
 日本国籍が必要な警察官になる夢を持つマサミさん。判決後の会見で「うれしくて
言葉にできない。日本人でしかかなえられない夢をかなえたい」と笑顔をみせた。直
美ちゃんも「お姉ちゃんと一緒の国籍になってうれしい」とほほ笑んだ。
 同じく日本国籍が認められたジュリアンさん(14)の母チャーレッテさん(4
6)は「親の都合で結婚しないで子供を産んで、娘に申し訳ない気持ちでいっぱいで
した。今日やっと日本人になって幸せで安心です」とほっとした表情をみせた。

 ◇実情踏まえた判断--棚村政行・早稲田大大学院教授(家族法)の話 
 画期的な判決で、婚外子差別を禁じた国際人権B規約や子どもの権利条約を尊重し
た判断だ。価値観の多様化やグローバル化の中で国際的な家族が増えている日本の実
情を踏まえている点も妥当。重要な権利でもある国籍について、結婚しているかどう
かという親の事情で差別するのは問題だ。婚外子差別の合理性を問う判決で、民法の
相続分の差別などにも大きな影響を与えるだろう。

 ◇国籍取りに行きたい--マニラ在住の母子も歓迎 
 【マニラ矢野純一】フィリピンでも判決を歓迎する声が上がった。「すぐにでもこ
の子を(国籍取得のため)日本に連れて行きたい」。マニラ近郊に住むエロイサ・ス
エリイラさん(37)はリュウタロウ君(6)の手を握りしめた。
 01年に興行ビザで日本に渡り、常連客の日本人男性(59)と知り合い、妊娠し
た。ビザの期限切れ前に帰国し、リュウタロウ君を出産した。しかし、男性の妻は離
婚に同意せず、男性は子供の認知だけしかできなかった。
 「今の生活を抜け出したい」とエロイサさん。実家に居候する代わりに、両親や兄
弟の子供ら計10人の食事や身の回りの世話をする生活だ。自由に使える金もなく、
肩身の狭い暮らしをしている。
 エロイサさんが、日本行きを希望するもう一つの理由を話してくれた。今年1月電
話で男性ががんを患い余命1年と知った。「子供の将来と男性のためにも早く日本行
きが実現できれば」と話した。
 フィリピンのNPO「新日系人ネットワーク」の川平健一専務理事によると、同国
内で確認できた日本人とフィリピン人の間に生まれた子供は約700人。うち約2割
は父母が婚姻していないが、フィリピンの出生証明書には日本人父の名前があるとい
う。
毎日新聞 2008年6月5日 東京朝刊
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婚外子国籍確認訴訟:国籍法違憲判決(その2) 家族の結びつき、重い

 ◇「婚姻要件」主要国では異例 
 国籍制度には、親と同じ国籍を得る「血統主義」と、生まれた国の国籍を得る「生
地主義」がある。日本は血統主義を採用し、単純な「血のつながり」だけでなく家族
の結びつきを重視してきた。
 1950年施行の国籍法は父系優先主義で、出生時に日本人父と法律上の親子関係
がある子は国籍を得るが、日本人母と外国人父の子には「帰化」しか認めていなかっ
た。84年に法改正され、現行の父母両系主義が採用された。外国人定住者や国際結
婚の増加も背景にあり、日本人母と外国人父の子に常に国籍が認められるようになっ
た。
 この際に設けられたのが3条1項で、両親の婚姻が出生の前か後かで日本人父の子
の国籍に差が生じないようにするためだった。しかし、生後認知の子を婚姻の有無で
区別することには、国会審議でも疑問が示され、国連子どもの権利委員会が懸念を表
明した。
 国は「父母が婚姻している子の方が父とのつながりが強く、法律婚尊重主義が国民
感情に沿う」と説明。(1)父の認知があれば「帰化」の許可条件が緩和される
(2)婚姻要件を外すと、不法滞在の外国人母が偽装認知で子の日本国籍を得て、違
法に在留特別許可を受けるケースが増える--とも主張した。
 主要国のうち、日本と同様に血統主義を採用しているのはフランス、ドイツ、イタ
リア、ベルギーなどだが、婚姻要件は必要としていない。米国やオーストラリアなど
は生地主義を採用している。

 ◇「多様化」を考慮 
 国籍法3条1項の規定を巡っては、最高裁第2小法廷が02年に出した判決でも、
合憲性に強い疑問が示されていた。今回と同様に、婚姻関係のない日本人父とフィリ
ピン人母の子が日本国籍を求めた訴訟で、小法廷は請求を退けたものの、5人中3人
の裁判官が補足意見で3条の規定を疑問視した。
 うち2人は「国際化と価値観の多様化で家族の在り方は一様でなく、婚姻で親子関
係の緊密さを判断するのは現実に合わない」と、違憲の疑いが極めて濃いと指摘し
た。別の1人も「合理性に疑問がある」と述べた。
 今回の大法廷判決はこの判断に沿ったものとも言え、「家族生活や親子関係に関す
る意識の変化やその実態の多様化を考慮すれば、日本人父と外国人母の子が、両親の
婚姻で日本との密接な結びつきを認められるというのは、現在の実態に合わない」と
指摘している。
 さらに(1)諸外国は婚外子への差別を解消したり、認知による父子関係成立で国
籍を認めている(2)同じ婚外子でも、出生前に認知されていれば国籍が認められる
--ことも違憲判断の理由とした。
 判決は裁判官15人中9人の多数意見だが、国籍法がもたらす婚外子差別の憲法判
断では、「違憲」が12人で「合憲」の3人を大きく上回った。婚外子差別が問題視
される中、司法も社会情勢や国際的な潮流を意識したとみられる。
毎日新聞 2008年6月5日 



記事はまだまだつづきます。

毎日新聞は、関連の記事が多いので、社説と解説は、
各社のきょうの【社説】の記事といっしょに紹介します。


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