みどりの一期一会

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「安倍政治」問う機会に 衆院21日解散へ/「いきなり解散」の短絡/争点は「安倍政治」そのもの

2014-11-19 19:24:29 | ほん/新聞/ニュース
初霜がおりた寒い朝でした。

降ってわいたような解散・総選挙で、
こころのなかも寒々としています。

大義なき解散、と言われていますが、
まさに安倍晋三による「選挙の私物化」です。

安倍晋三首相の、衆院を解散表明から、
一夜明けた、新聞各紙の社説です。

  「安倍政治」問う機会に 衆院21日解散へ
中日新聞 2014年11月19日

 安倍晋三首相が衆院を解散することを表明した。消費税再増税の先送り決断の是非にとどまらず、二年間にわたる「安倍政治」を問う機会としたい。

 二〇〇五年、郵政民営化を掲げて衆院を解散、圧勝した小泉純一郎元首相を意識したのだろうか。

 安倍首相がきのう夜、首相官邸で記者会見し、一五年十月に予定されていた消費税率の10%への再増税を一七年四月に延期することを決断し、衆院を二十一日に解散すると表明した。

 総選挙は十二月二日公示、十四日投開票の日程で行われる。

増税先送りを大義に
 税は民主主義の根幹だ。首相の「重い決断をする以上、速やかに国民に信を問うべきだ」との説明も理解できなくはない。

 ただ今回は増税ではなく増税先送りの決断だ。消費税増税を決めた当事者である民主党も先送りに賛成で、あえて国民に是か非かを問うにしては切迫性は乏しい。

 政治空白をつくるべきでないとの主張にも一定の説得力はある。

 とすれば、首相がこの時期に解散する理由は、むしろ別にあると考えた方がいいのではないか。

 九月の内閣改造で入閣した小渕優子前経済産業相と松島みどり前法相が有権者への利益供与疑惑で同じ日に引責辞任した。ほかにも閣僚の政治資金問題が取り沙汰され、内閣支持率は下落傾向だ。

 来年以降、集団的自衛権の行使容認を受けた安全保障法制整備や原発再稼働など、国民の反発が必至の課題が続く。さらなる支持率低下は避けられまい。

 その一方、野党側は選挙態勢を十分整えているとは言い難い。

 自民党にとって年内解散の方が議席減を最小限にとどめられる。与党で過半数を維持すれば来年九月の自民党総裁選での再選、政権延命を確実にできる-首相側はそう考えたのだろう。

格差拡大は経済失政
 増税先送りという「解散の大義」は政権側の言い分にすぎない。私たち有権者は大義に惑わされず、二年にわたる安倍政治を冷静に検証し、貴重な一票を投じたい。

 まずは、経済政策である。
 消費税再増税の先送りは当然としても、そもそも首相の経済政策「アベノミクス」の内側に誤りがあったのではないか。それを継続するか否かは大きな争点だ。

 経営者寄りの政策は企業や富裕層を富ませたが、雇用者の平均年収や正規雇用者数は減り続け、経済格差は拡大している。

 経済弱者に冷たい雇用、社会保障政策も、消費活動を支える中間層を細らせた。個人消費に支えられる国内総生産(GDP)が落ち込むのは当然だ。消費税増税後の反動減対策である五・五兆円の経済対策の効果も十分でなかった。

 経済だけではない。
 安倍内閣の二年間を振り返ると特定秘密保護法の成立強行や原発再稼働の推進、歴代内閣が積み重ねてきた憲法解釈を、一内閣の判断で変えた集団的自衛権の行使容認などが、やはり思い浮かぶ。

 いずれも国民の反対意見を顧みず、強権的手法で推し進めたものばかりだ。

 その一方、国民と約束した「身を切る改革」は手付かずだ。

 私たちは、国民代表である国会議員の安易な削減には反対だが、年間三百二十億円の政党交付金や議員一人当たり年間千二百万円が支給される文書通信交通滞在費など、削れる部分はあったはずだ。

 国会に加えて、行政改革や歳出削減など政府の「身を切る改革」にも、首相は指導力を発揮したと胸を張って言えるだろうか。

 今開かれている臨時国会はどうだろう。

 地方創生と女性の活躍推進が最大の課題と言いながら、女性活躍推進法案は廃案となる見通しだ。

 政権が重要法案と位置付けていたものを棚上げしてまで解散を急ぐのは、政権の成果よりも解散時期を優先させた証左でもある。

 今回の衆院選では、自らの「延命」を優先する首相の政治姿勢も含めて、問われるべきだろう。

低すぎる勝敗ライン
 今回の衆院選は過去二回のように、政権交代が現実味を帯びるような世論の盛り上がりは感じられない。その中で、首相は「勝敗ライン」を自民、公明両党での過半数獲得とした。政権維持優先のあまりにも低い設定である。

 そんな政権側の思惑に動じることなく、安倍内閣の二年間をしっかり検証し、各党が掲げる公約と比較検討することが必要だ。

 首相が信を問うとした経済政策はもちろん、私たちの命と暮らしにかかわる社会保障、安全保障や原発政策にも特に注目したい。

 各党の公約を整理・吟味し、有権者の選択に資する判断材料を提供するのは新聞の役割だ。その責任を果たすことが、揺らぐ新聞の信頼を回復する道と信じる。 


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  社説:首相の増税先送り―「いきなり解散」の短絡
2014年11月19日 朝日新聞

安倍首相が、来年10月に予定されていた消費税率再引き上げの先送りと、21日の衆院解散を表明した。

 おととい発表された直近の国内総生産(GDP)の実質成長率は、年率換算で1・6%の減。事前の民間予測を大きく下回った。

 首相はこれを受け「15年間苦しんできたデフレから脱却するチャンスを手放すわけにはいかない」と判断。ただ、18カ月間の先送り後の再延期はないと断言し、その政策変更の是非を総選挙で問うという。

 確かに2期連続のマイナス成長はショッキングだ。ただ、もとより景気悪化による増税の先送りは消費増税法を改正すれば認められるし、民主党もその判断は受け入れている。

 国会審議をへて法改正し、アベノミクスの足らざる部分を補う。安倍政権がまず全力で取り組むべきことである。

 その努力をする前のいきなりの衆院解散は、短絡に過ぎる。別の政治的打算が隠されていると考えざるを得ない。

■解散に理はあるか
 首相はきのうの記者会見で、「なぜ2年前、民主党が大敗したのか。マニフェストに書いてない消費税引き上げを、国民の信を問うことなく行ったからだ」と解散の意義を強調した。

 民主党は09年の衆院選で消費増税はしないと訴え、政権を奪った。ところが新たな財源を生み出せずに政策転換に追い込まれ、党の分裂と前回衆院選での大敗を招いた。

 民主党の失敗についての首相の見方はその通りだろう。だが、今回の首相の姿勢とは同列には論じられない。

 首相の解散権行使が理にかなうのはどういう場合か。前の選挙では意識されなかった争点が浮上した時、または首相と国会との対立が抜き差しならなくなった時というのが、一般的な考え方だ。

 今回はどうか。12年夏の「社会保障と税の一体改革」の民主、自民、公明の3党合意に基づく消費増税法は、2段階の消費税率引き上げを定めつつ、景気が悪化した時の先送り条項も設けている。

 3党がそろって国民に負担増を求める代わりに、定数削減などの「身を切る改革」を断行する――。安倍氏と当時の野田首相とのこの約束が問われた2年前の衆院選で、自公両党は政権に復帰した。

 昨夏の参院選でねじれも解消し、首相の政権基盤は安定している。9月に内閣改造もしたばかりだ。それでも任期4年の折り返しにもいたらぬ衆院議員の身を切る前に「首を切る」。あべこべではないか。

■国民の思い逆手に
 増税は、政治家にも国民にもつらい選択である。

 消費増税で得られる財源は、子育てや年金などほぼすべての国民に関係する社会保障関係費にあてられる。それがわかっていても、「増税はいや」というのは自然な感情だ。

 実際、今月の朝日新聞の世論調査では、来年10月の税率引き上げには67%が反対と答えた。同時に、それで社会保障に悪影響が出ることを不安に感じると答えた人が66%もいる。国民の複雑な思いを表した数字だ。

 仮に消費税だけが問われる選挙なら、有権者が首相の判断を覆す一票を投じる動機は弱くなる。「景気対策」という名の付録がつけばなおさらだ。

 それを知りつつ、あえて先送りの是非を問うなら、ポピュリズムとの批判はまぬがれない。

 財政再建を重視する勢力の反対で、増税先送りの法改正はできそうにないという状況になって、初めて衆院解散の理屈が立つというものだ。

■「信を問う」の本音は
 首相は昨年の特定秘密保護法案の審議や今夏の集団的自衛権の容認をめぐる議論の過程では、国民の審判を仰ぐそぶりすら見せなかった。

 表現の自由や平和主義という憲法価値の根幹にかかわり、多くの国民が反対した問題であるにもかかわらずだ。

 国論を二分する争点は素通りし、有権者の耳にやさしい「負担増の先送り」で信を問う。政治には権力闘争の側面があるにせよ、あまりに都合のよい使い分けではないか。

 首相は先の通常国会で、憲法解釈の変更について「最高の責任者は私だ。そのうえで私たちは選挙で国民の審判を受ける」と答弁した。「選挙で勝てば何でもできる」と言わんばかりの乱暴な民主主義観である。

 来年にかけて安倍政権は、原発の再稼働や集団的自衛権の行使容認に伴う法整備など、賛否がより分かれる課題に取り組もうとしている。

 世論の抵抗がより強いこれらの議論に入る前に選挙をすませ、新たな4年の任期で「何でもできる」フリーハンドを確保しておきたい――。

 そんな身勝手さに、有権者も気づいているにちがいない。


  社説:首相 解散を表明 争点は「安倍政治」だ 
毎日新聞 2014年11月19日 

 安倍晋三首相が消費増税を1年半延期し、21日に衆院解散に踏み切る考えを表明した。衆院議員任期の半分、2年を残しての解散である。

 実に不可思議な展開だった。

 安倍首相が国際会議で外国を訪問している最中に、消費増税の先送りを大義名分にした年内解散論が急浮上した。そして首相の帰国を待たずに12月2日公示、14日投票という総選挙日程が既定路線になった。

 消費税率は今年4月の8%に続き、来年10月には10%にすることが法律に明記されている。ただ、首相は景気への影響を見極めるとして、12月初旬に出る7〜9月期の国内総生産(GDP)の確定値を待って最終判断すると話していた。

 ◇自らの政権戦略を優先
 ところが、実際には有識者からの聞き取り作業も終わらないうちに先送りを決めていた。初めに結論ありきで、自らの政権戦略を優先させたのではと疑わざるを得ない。

 争点設定の仕方にも無理がある。

 首相は記者会見で「重い決断をする以上、速やかに国民に信を問う」と述べた。しかし、新たに増税を求めるのならまだしも、すでに確定している増税の先送りを争点にすえるやり方は、増税への国民の忌避感に便乗しようとの思惑が感じられる。

 確かに経済は生き物であり、機械的に扱うと判断を誤る。17日に発表された7〜9月期のGDP速報値は予想を覆すマイナス成長となり、「増税できる環境にない」との意見には耳を傾ける必要があろう。

 だが、成熟した資本主義国の日本にとって、かつてのような右肩上がりの経済成長は期待できない。政治家の役割は、富の配分よりも、負担のあり方について国民的合意を形成する方に比重が移っている。

 2年前の8月、民主・自民・公明の3党合意に基づいて、消費税の2段階増税を柱とする税と社会保障の一体改革関連法が成立した。

 毎日新聞の世論調査の推移を見ると、かつては増税への賛否がほぼ半々だったのに、このところ、7割前後が「反対」に回り、「賛成」を大きく引き離す傾向にある。

 4月の税率引き上げが家計に重くのしかかっているのは事実だろう。ただ、安倍政権が発足当初から一体改革の必要性を国民に説いてきたかというと、そうでもない。

 3党合意の当事者である谷垣禎一自民党幹事長や山口那津男公明党代表が、表立った議論を避け、首相に同調したことも不可解だ。与党が方向転換したことで、民主党も増税反対に変わった。3党合意が事実上崩れ、税制や社会保障の議論に党派的な打算が働くことを危惧する。 
 疑問がつきない今回の解散だが、首相が最も有利なタイミングで解散を図るのは政治の常でもある。総選挙が確定した以上、日本の政治を総点検し、過ちがあれば正す、リセットの好機にしなければならない。

 自民党は2012年暮れの総選挙で294議席を獲得し、政権に復帰した。議席では圧勝だが、比例代表の得票は、野党に転落した09年よりも大幅に減らしている。民主党が自壊した結果、相対的に自民党を浮上させたのが前回選挙だった。

 安倍政権にも当初はその自覚があった。ところが、昨年7月の参院選で勝利し、長く続いた衆参のねじれを解消すると、強引な政権運営が目立つようになる。

 ◇戦後70年に向けた審判
 政府による過剰な情報統制に直結する特定秘密保護法の制定や、集団的自衛権をめぐる憲法解釈変更の閣議決定はその典型だ。

 内閣法制局長官やNHK会長の人事に見られたように、自らと価値観の近い人物を当該組織のトップに送り込み、支配力を強めようとする手法も安倍政権で目に付いた。

 エネルギー政策では、民主党政権が打ち出した「脱原発依存」を継承すると言いながら、原発回帰が進んでいる。適正な電源構成はいかにあるべきか、全体像が示されないまま来年初めには原発の再稼働が見込まれる。原発の輸出にも積極的だ。

 来年は戦後70年の節目だ。安倍首相の周辺では、過去の侵略を認めた1995年の村山富市首相談話を上書きする形で新たな首相談話を求める声がある。もしも歴史修正主義的な認識を発信することになれば、日本は国際的に孤立してしまう。靖国神社参拝の是非も問われよう。

 他方で安倍政権は06年から6代続いた「1年ごとの首相交代」という悪弊から脱却し、日本の政治を安定させた。頻繁な外国訪問も日本の存在感を高めたのは間違いない。

 これら安倍政権にまつわるすべての特徴が、総選挙で問われる。最大の争点は、安倍政治である。

 与党に比べて野党は選挙準備の遅れが目立っている。政権選択であるのに、与党に代わる受け皿を用意できなければ政党政治は機能しない。今後、公示までに選挙協力や野党再編の動きが本格化するだろう。その際には、野合と言われないよう、大きな基本政策を共有できるよう努力してほしい。

 安倍首相は今年2月、憲法解釈をめぐって「審判を受けるのは法制局長官ではなく私です」と答弁した。最大の審判の場が総選挙である。



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