みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

読書日記:今上野千鶴子さん「とかく女子は生きづらい?」/竹村和子さん遺著『境界を攪乱する』

2013-10-17 20:15:44 | ジェンダー/上野千鶴子
竹村和子さんの遺著、『境界を攪乱する』(岩波書店)を読み終えました。

解説を上野千鶴子さんが書いてみえて、
5月の刊行時にWANサイトでも紹介され、
上野さんの解説「あなたを忘れない」もアップされたので読みたいと思っていた本です。

『境界を攪乱する』


   『境界を攪乱する――性・生・暴力』: 竹村 和子: 本
岩波書店

あなたを忘れない 彼女は倦まずたゆまず,たえまない境界の攪乱に参入し, 文化の共約可能性についての オプティミズムともペシミズムとも,両方に距離を置く, 悲観と客観,絶望と希望の隘路をたどりながら……. 上野千鶴子(本書解説より)

編集部からのメッセージ
 精緻で鋭利な思考で,21世紀のフェミニズム批評を牽引した竹村和子さん.2011年12月のその急逝の報は,大きな衝撃を与えました.ジュディス・バトラーを始めとするフェミニズム理論・現代思想のすぐれた紹介者であり,『フェミニズム』『愛について』などの書で自らの思索を広げ深め,海外の第一線の思想家とも対等に議論できる希有な人材として,国際的にもさらなる活躍が期待されていた中での訃報でした.
 本書は,その遺稿を集めたものです.著者の関心の広がりと深まりと軌を一にする,「セクシュアリティ」「フェミニズム理論」「バトラー解読」「生政治と暴力」の4部に分かれ,資本主義と異性愛主義の抜き差しならぬ関係を精神分析を援用して曝き,生政治にあまねく覆われた現代社会における,フェミニズムの困難な位置に迫ります.バトラーら欧米の理論家と濃密な対話を重ねた著者は,翻訳の可能性=不可能性をも見据えていました.それでもなお,「境界」の危うい裂け目を生きる夢を棄てませんでした.思索がそのまま自らにはね返る息詰まる場で,読み・書き・考える意味,性と生のありようを,根底まで突き詰めようと格闘した言葉の数々がここにあります.
 編集は,上野千鶴子さん.竹村さんの仕事の最高の理解者が,残された約50篇の論考から16篇を精選し,「竹村和子とは誰か?」――竹村さんの思索のあとを犀利に解き明かしながら,深い哀惜の情のこもった竹村和子論を書いています.

著者紹介
竹村 和子(たけむら かずこ)

1954年--2011年.お茶の水女子大学大学院修士課程修了,筑波大学博士課程退学.博士(人文科学).香川大学,成蹊大学,筑波大学を経て,お茶の水女子大学大学院教授在任中の2011年12月逝去.専門は英語圏文学,批評理論,フェミニズム/セクシュアリティ研究.単著,『文学力の挑戦』(研究社,2012),『彼女は何を視ているのか』(作品社,2012),『愛について』(岩波書店,2002),『フェミニズム』(岩波書店,2000).訳書,スピヴァク/バトラー『国家を歌うのは誰か?』(岩波書店,2008),J・バトラー『触発する言葉』(岩波書店,2004),『アンティゴネーの主張』(青土社,2002),『ジェンダー・トラブル』(青土社,1999),トリン・T・ミンハ『女性・ネイティヴ・他者』(岩波書店,1995)ほか多数.・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・・・


 竹村和子さんから、贈り物 『境界を攪乱する--性・生・暴力』が公刊されました
(2013年05月18日 カテゴリ: B-wan 特集 竹村和子さんへの想い, 特集 )
 


   あなたを忘れない ちづこのブログNo.47  
竹村和子さんの最後の遺著、『境界を撹乱する』(岩波書店)が本日刊行。編集と解説はうえの。彼女の作品はこれ以上1点も増えない。時間が経つにつれて不在が心に沁みる。帯には「あなたを忘れない」…彼女の論文タイトルを解説のタイトルにもらった。解説は、自分でいうのもなんだが、力が入った。
以下は解説の冒頭から。再録を版元に許可していただいた。続きを読みたい方は、本を求めてほしい。・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下略)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(2013年05月15日 WANちづこのブログ) 


WANサイトには、「上野千鶴子『ケアの社会学』を語る」もアップされました。

上野千鶴子『ケアの社会学』を語る~『ケアの社会学 当事者主権の福祉社会』(2011年:太田出版)をテーマに上野千鶴子さんが語ります

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今週の火曜日の毎日新聞夕刊テレビ欄下の「読書日記」も上野千鶴子さんでした。

いつものことですが、とってもおもしろいです。

  読書日記:今週の筆者は社会学者・上野千鶴子さん とかく女子は生きづらい?  
毎日新聞 2013年10月15日 東京夕刊

 *9月17日〜10月14日
 ■女子をこじらせて(雨宮まみ著、2011年)ポット出版
 ■「AV女優」の社会学(鈴木涼美著、2013年)青土社
 ■女子読みのススメ(貴戸理恵著、2013年)岩波ジュニア新書


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 とかく女子は生きづらい。

 「こじらせ女子」の名をこの世にはやらせた雨宮まみの「女子をこじらせて」を、アラフォーの友人にすすめられて初めて読んだ。おもしろさにぶっとんだ。そしてもっと早く読まなかったことを後悔した。雨宮はフリーのAVライター。音楽評を担当する音楽ライターがいるように、毎月量産されるアダルトビデオの新作レビューを書いたり、女優や監督のインタビュー記事を書いたりを仕事にしている。それというのも、男から相手にされない「女子力」ゼロのスクールカースト最底辺にいた(と思いこんだ)青春時代に、下りるに下りられない「女子をこじらせて」しまったから、という。

 女の子が女に成長する過程には、必ず男の視線による値踏みという契機が入る。そのなかで男にとって商品価値のある女とそうでない女とが選別される。男の視線は重力のようにあたりまえに偏在しているので、それから逃れて女が自意識をつくるのは難しい。

 雨宮は自分が商品価値のない女だからこそ、AV業界に足を踏み入れた。逆にいつでも商品になれる可能性があるからこそ、その業界の謎に挑んだ若い女性社会学者がいる。鈴木涼美著「『AV女優』の社会学」だ。渋谷や新宿を歩いている女の子たちは、若くてかわいいだけでスカウトされる。「ことわる理由がない」という理由で、彼女たちはAV業界に参入する。そのなかで彼女たちは「わたしがAV女優でありつづける理由」を饒舌(じょうぜつ)に語る。ふつうの女の子が、SMやスカトロまでこなすプロの女優になっていく過程を、そこに立ち会った鈴木はたんねんに追っていく。そして「自由意思」こそが「業務の一部」として生産され、本人の自意識に組みこまれていく過程を描きだす。

 この過程はプロフェッショナリズムと呼ばれるものと酷似している。映画「ハンナ・アーレント」に触発されて、アーレントの著書「イェルサレムのアイヒマン」をつい読んでしまったが、そこでも「より効率的にユダヤ人を移送する」プロフェッショナリズムが淡々と語られる。

 その類似性は、むしろAV女優という職業が他の職業とたいして違わないことを証明する。人は偶然のきっかけから職場に入り、やがて熟練によって職業的アイデンティティーを獲得していくからだ。だが、AV女優の過去はコンビニのバイト経験のようにおおっぴらに語ることはできないし、履歴書に書くわけにもいかない。わたしには「ふつうの職業」としてのAV女優より、彼女たちを商品として消費する「ふつうの男」の欲望のほうがずっと深い謎だ。AV女優について語られた本はごまんとあるのに、AVを消費する男を論じた本はなぜこんなに少ないのだろう?

 女の子から女になる思春期のとば口で、身を切るような共感を味わえる書物のガイドが貴戸理恵著「女子読みのススメ」。著者は不登校経験のある若い女性社会学者。少女であったときの痛みを忘れないでオトナになったのがいまどきの女子たち。少し年長の女子たちによる「女子会2・0」(NHK出版)もおもしろい。ここでも千田有紀、水無田気流(みなしたきりう)というふたりの若い女性社会学者がリードしている。

 生きづらい女子のために私も「女たちのサバイバル作戦」(文春新書)を書いた。帯に「総合職も一般職も派遣社員も、なぜつらい? 追いつめられても手をとりあえない女たちへ」とある。担当編集者の30代女子が書いてくれたものだ。実感が迫る。

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 筆者は上野千鶴子、福地茂雄、西加奈子、苅部直の4氏です。
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 ■人物略歴 ◇うえの・ちづこ

 東京大名誉教授、認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク」理事長。「おひとりさまの老後」など著書多数。


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10月16日(水)のつぶやき

2013-10-17 01:11:39 | 花/美しいもの

発達障害とモラハラ、DV 秋月ななみ | WAN:Women's Action Network wan.or.jp/reading/?p=123…

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