公立小中学校に入学する際に通学区以外の学校を選択できるという学校選択制。東京23区中19区が実施していますが、東京都杉並区が初めて廃止の方針を公表しました。これをどうみるのか、学校選択制にくわしい和光大学教授の山本由美さんに聞きました。
東京都杉並区は東京で初めて、学校選択制(学校希望制度)を2016年度に廃止する方針を決めました。現在区民からパブリックオピニオンを募集しており、6月の決定をめざしています。
10年目の批判
校長、PTA会長など学校関係者のアンケート (11年)では、継続希望の27・5%に対し、廃止38・1%、見直し34・4%と7割以上が否定的な評%を下しました。廃止理由では「地域とともに学校を作るため(49・2%)」が最も多く、「指定校変更を柔軟に運用して対応可(21・3%)」「学校間格差解消(9・8%)」が続きます。
区が推進する、学校と地域の連携を深める地域運営学校や小中}貫教育と、学校選択制は、理念的に相いれない制度である(25・5%)との見直し理由も多くありました。また、震災を経て、子どもの通学面での安全も一層強調されるようになりました。導入10年目にして、町会長など保守層も含む地域の批判がようやく明確な形をとったようです。
学校選択制の廃止で、新自由主義路線が完全に変更されたわけではありませんが、行政が地域の声を聞かざるを得なくなったことのインパクトは大きいといえます。
強力な対抗軸
学校選択制は、1990年代半ばから財界、政府の推奨を受け、200O年前後から東京、埼玉を中心に拡大しました。都内では23区中19区、26市中9市が導入し、07年の調布市が最後となりました。全国的にみても08年から学校選択制を入れる自治体は激減し、見直し、廃止が相次いでいます。
当初から、学校選択制は学校統廃合を推進する方策として利用され、小規検校を一層小規模化させ、学校と地域の関係を断ち切っていきました。00~08年に、東京では児童生徒数が増加したにもかかわらず、150校以上の小・中学校が廃校となりました。
しかし、各地で反対運動も起きています。保護者らが統廃合を阻止した新宿区などで、選択制 「見直し」が図られる一方で、いまだ選択制に固執している品川区、足立区は強行に統廃合政策を推し進めています。品川区は、統廃合の新しい方策である小中一貫校の全国モデルでもあります。
昨秋から、中央教育審議会で小中一貫教育についての審議が進められています。珍しく委員の対立がある中、推進派は小中一貫の「義務教育学校」法制化、すなわち普通の小・中学校と並列した″エリート校″づくりをめざす、いねば義務教育段階からの複線乞路線です。各地で高額な予算をかけてつくられた施設一体型小中一貫校は晴れて″エリート校″になれる。
それに対しても、杉並区の、子どもの成長発達にとって必要な学校と地域の結び付き、平等な公立学校を支持した力の存在は、強力な対抗軸となるでしょう。(しんぶん「赤旗」4月27日付より)