尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

助成金、立民2議員は「問題なし」、むしろ使うべき制度である

2021年12月15日 22時32分25秒 | 政治
 自民党前議員の石原伸晃氏の事務所が新型コロナウイルスによる「雇用調整助成金」を受けていたと報道された。批判が強くなって、その直前に「内閣官房参与」に任命されていたが、それを辞任することになった。環境副大臣を務める大岡敏孝衆議院議員(滋賀1区)も受給したということで、野党が国会で追及してる。その後、昨日になって立憲民主党の2議員が「新型コロナウイルスによる臨時休校対策の助成金」を受けていたと報道された。報道ステーションを見ていたら、最後にこのニュースを報じて大越キャスターが「立民よお前もか、の感じです」とコメントしていた。ネット上では「巨大なブーメラン」などと言われているらしい。
(立民2議員の「臨時休校対策助成金」のニュース)
 しかし、僕にはそれが問題だとは思えない。むしろ「使うべき助成金」のように思う。ちゃんと本質を考えずに、「印象」で論じてしまってはいけない。まず、石原氏などの「雇用調整助成金」だが、これは確かに議員事務所が受給するのは問題だろう。この助成金は以下のようなものである。「経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練または出向を行い、労働者の雇用維持を図った場合に、休業手当、賃金等の一部が助成されます。 新型コロナウイルス感染症にともなう特例措置により、支給対象となる事業主や助成率など、多くの拡充措置が図られています。」

 「政治活動」も事業活動には違いないだろうが、もともと利潤獲得を目的とした活動ではない。新型コロナで労働者(秘書等)が休業を余儀なくされたとしても、そのために議員事務所の収入が減ったわけじゃないだろう。もちろんコロナ禍で政治資金パーティが開けず、前年に比べて事務所の収入が減ったかもしれない。しかし、労働者(秘書)を雇う原資は、公設秘書の場合はもともと公費だし、私設秘書の場合も政党助成金など公費がもとになっているはずだ。だからコロナ禍のため秘書を削減するといった事態は想定しがたい。この雇用調整助成金は「雇用維持」のためのものだから、議員事務所が助成を申請するのは明らかにおかしい。

 一方で、立憲民主党の阿部知子岡本章子2議員が受給していたのは、「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」だと報道されている。これを調べてみると、「令和3年8月1日から同年12月31日までの間に、以下の子どもの世話を保護者として行うことが必要となった労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く)を取得させた事業主を支援します。」となっている。条件は二つあって「1.新型コロナウイルス感染症に関する対応として、ガイドラインなどに基づき、臨時休業などをした小学校など(保育所等を含みます)に通う子ども」と「2.新型コロナウイルスに感染した子どもなど、小学校などを休む必要がある子ども」である。(「令和3年」は今年の情報で、前年のものを申請したのだろう。)

 2020年2月末に、安倍元首相は「全国一斉休校」を要請した。その措置は明らかにおかしかったし、僕はそのことをブログで批判したが、今はそれは書かない。そのため全国の学校がほぼ一斉に休校となって、子どもたちが平日も家庭にいることになった。中学生なら家で過ごすことも出来るかもしれないが、小学校低学年(幼稚園、保育園を含む)の子どもを家に置いておくことは無理だ。親が家にいる必要があるが、父親でも良いわけだが、実際には母親は仕事を休んで対応することが多かった。もともと家庭にいた女性もいるだろうが、現代では多くの女性が賃労働で働いていて、急に休校になって大混乱になったのは記憶に新しい。

 議員事務所で働いている人はどういう人だろうか。いずれは政治家になろうと意気込んでいる人もいるだろうが、議員の所属政党に親近感はありつつも、会社や役所と同じように「雇われてサービスを提供するだけ」という人も多いだろう。共産党議員は党員が秘書になるらしいが、そういう場合でも「議員と雇用関係」にある。国民の代表である国会議員の活動を支えるために、秘書は不可欠である。だから公費で雇用する「政策秘書」などもいる。しかし、一般的に言われることでは、地元の事務所などで「私設秘書」も置かないと政治活動が円滑に進まないという。

 そういう重要な秘書も多くは中高年男性ではないかと思うが、今回女性議員が助成対象だったのを見ると、育児世代の女性を事務所で雇っていたのだろう。そういう人が休校でどうなるか。テレワークで対応できることもあるだろうが、秘書という仕事の性格上事務所に行かないとダメな仕事も多いと思う。秘書も当然「有給休暇」はあるだろうが、1ヶ月2ヶ月と続けばそれでは対応できない。夫が交代で在宅するとか、祖父母世代に援助を頼むか、事務所に子どもを連れて行っちゃうか。それぐらいしか思いつかないが、これをきっかけに辞めざるを得ないとか、そんなこともあったかもしれない。

 しかし、コロナを理由に秘書を首切るなんて、あってはならない。特に立憲民主党の議員は、存在理由に関わるだけにそんなことは出来ないだろう。じゃあ、どうすればいいんだろうか。雇用を継続するとして、その間の給与はどうするのか。公設秘書はもともと国費で出ているし、私設秘書の場合も(出所をたどっていけば)政治活動を支える政党助成金などから出ているだろう。そうすると、そのまま雇用を継続して給与を支払うのは、「勤務実態がない秘書に公費で給与を支払う」ということにならないか。かつて多くの議員が立件され、旧民主党でも山本譲司、辻元清美等が立件された。立民議員はそのことを忘れてはいないだろう。

 だから、「臨時休校対策の助成金」だから良いという以上に、この助成金を使わなければかえって不正とみなされかねないのである。「誤解を招く」から返金すると立憲民主党は言っているようだが、誰がどのように返金するのだろうか。事務所としてただ国庫に戻すだけでは、勤務実態がなかった秘書に事務所がお金を渡したことになってしまう。だからといって、その間の給与分を今さら秘書に戻させるなんてことは出来ないだろう。「誤解」をちゃんと正すように努めるのも政党の仕事だ。この場合は「臨時休校助成金を使わないといけないケース」ときちんと説明するべきではないのか。

 (なお、ここでは女性秘書が家にいざるを得ないというケースを想定したが、実際がどうかは判っていない。シングルファーザーかもしれないが、やはり「育児世代の女性」が休校で家にいたケースが多いのではないかと思う。)
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