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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

容認できないアメリカのイラン攻撃、今後の推移は想定不能

2025年06月22日 21時58分19秒 |  〃  (国際問題)

 アメリカイランの核施設を攻撃した。今日は都議選で、明日は沖縄県の「慰霊の日」なので、別の記事を用意していた。しかし、恐らく本年最大のニュースが起きた以上書かずにおれない。2025年6月21日夜(アメリカ時間)にトランプ大統領が発表したが、日本では22日(日曜)の朝午前9時過ぎに報道された。トランプ大統領がSNSに投稿したという速報で、イランは現在サマータイムで日本との時差は4時間半だという。だからイランへの攻撃は現地時間で真夜中頃だったのではないかと思われる。

 これに先立って13日にイスラエルがイランを攻撃していた。その時点でアメリカとイランは15日に核協議を行う予定になっていた。また15日からカナダでサミットが開催されることにもなっていた。そのためアメリカはイスラエルにイラン攻撃の自制を求めていたと報道されていた。しかトランプ大統領がイスラエルを批判したという話はなく、逆にアメリカも攻撃に加わるかも知れない、降伏せよなどと投稿したうえで、19日には攻撃是非を「2週間以内に判断」としていた。実際の攻撃はその2日後だった。

(「2週間以内に判断」)

 この経緯をイラン側から見れば、明らかに「最初からイスラエルアメリカはグルだった」としか見えないだろう。当初核協議が予定されているから攻撃はないだろうとイランを油断させる日程を設定した。さらに「2週間」とか「ディール」など今後の交渉が可能であるかのように言って、世界に「攻撃があるとしてもまだ先」と思わせておいてさっさと攻撃した。今回は明確な形での「最後通牒」がなかったのである。イラク戦争時でも一応あった「何日までに何をせよ」という通告が(表に出ている形では)なかったのである。これでは「真珠湾攻撃」を非難出来なくなるんじゃないか。トランプ流の無法ぶりが際立っている。

 もちろん「最後通牒」があれば認められるということではない。今回の攻撃自体が示しているように、「アメリカの自衛権行使」としてイランを攻撃するなどあり得ない。「イスラエルの自衛権行使」も認められない。イランが核兵器を開発したとしても、イスラエルは事実上の核兵器保有国だとされている。自分が先に核兵器を(国際的には認められない形で)開発しておいて、対立国が核兵器を開発することを批判できるはずがない。それなら自国が何で核兵器を持っているのか、その理由が理解できない。

(攻撃されたイランの核基地)

 ところでイランは核兵器を開発していたのだろうか。原子力発電には必要のない高濃度のウラン濃縮を進めていたのは事実なんだと思う。しかし、今直ちに核兵器を開発できる段階にはなっていなかったと思われる。だが今後技術が「進展」すれば、イランが核兵器を保有するという事態が起きた可能性はある。だけど、そうだったとしても「予防措置として事前的に他国を攻撃する」ことは許容できない。それが許されるなら、イランだって「ハマス」だってイスラエルを攻撃する権利が生じるはずである。

 今回非常に心配されたのは、アメリカの攻撃があれば大規模な核廃棄物の飛散、さらに「メルトダウン」事故のようなことが起きるのではないかということだ。今のところ、周囲の放射線量の数値には変動はないと報道されていてホッとする。イラン側によれば、攻撃に先立って核物質は別の場所に移動させていて無事だったということだ。それが本当ならイランも攻撃を予想していたことになるし、アメリカも移した先を突きとめて攻撃しなければ今回やったことの意味が薄れてしまう。今後も続くのである。

(イランの指導者ハメネイ師)

 これから一体どうなってしまうのだろうか。一つはイランの対応。次にアメリカ国内の反応。最後に「世界史的な影響」とでも言うべきもの。アメリカ国内を先に考えると、「MAGA派」は「トランプは中東で戦争を始めないと公約して当選した」などとけん制していたが、始まってしまったら支持せざるを得ないだろう。アメリカの宗教右派などはいろいろ言ってもトランプを支持する以外の選択肢がなく、トランプもそれを判っていて「俺様に付いてくればいいんだ」ということだろう。共和党内強硬派ももちろん支持。民主党もなかなか批判に踏み切れないかもしれない。アメリカが泥沼に入り込まない限り、今までも反戦運動は難しかった。

 一方のイランの対応がどうなるかは読み切れない。「イスラム体制存続の危機」なので、体制存続を最優先するならさっさと「恭順の意」を表明して、核開発を一切放棄するということもありうる。しかし、そのような判断が出来る体制なのか疑問もある。今までロシアにドローンを提供するなど、まさか自分が攻撃されるとは思ってなかったのかもしれないが、だからといってロシアは口先批判以上のことをするはずがない。軍や革命防衛隊幹部がイスラエルのピンポイント攻撃で死亡していて、有効な反撃が出来るか。それにしてもモサド(イスラエルの諜報機関)恐るべし。その余りにも「見事」な情報収集には恐怖を覚えるしかない。

 「ホルムズ海峡封鎖」で世界恐慌、株価大暴落などは起こりうると読んで置いた方がいい。イランもアメリカ軍基地を攻撃したいところだが、クウェートやカタールなどにある米軍基地を攻撃は出来るけど、基地がある国を攻撃すればアラブ諸国との関係が悪化してしまう。今回は米軍基地からの攻撃ではないので、難しいところ。アメリカが大国イランに地上侵攻することは考えにくいが、今後欧米でのアメリカ大使館やアメリカ関係施設へのテロは十分警戒しているんだろうが、要注意。

 ところで、このイラン攻撃は大きく世界史を変える可能性がある。僕はイラン・イスラム体制を支持する者ではないが、だからといって他国が攻撃して良いわけがない。「国際法違反」の最たるものだが、もうそういうことを議論出来なくなるかもしれない。ロシアもアメリカも勝手をして良いなら、中国だって良いはずだと中国指導部は考えるのか。イランの体制を崩壊させたら、今度は「北朝鮮」はどうなるのか。世界は完全に「帝国主義時代」に逆戻りするのか。それでも「国際連合」など世界秩序の枠組はないよりは良いのか。今後の想定は安易には出来ず、成り行きを注視していく以外のことは我々には出来ない。


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