学校ではどのぐらいの時間、学習を行っているのだろうか。ここで言うのは、「授業時間数」の問題である。行事だって部活動だって「学習」に違ないけれど、「ゆとり教育」について書いているのだから、時間数を問題にするのである。毎年毎年、祝日の曜日が違うし、学校行事の置き方でも違ってくる。だけど、タテマエ上「これだけ学習しなくてはいけない」というのは、決められている。
それを定めているのは、「学習指導要領」である。国会で議決されたものではなく、文部省(文部科学省)の「告示」に過ぎないが、官報に掲載される。裁判で争われた結果、「法的性格」があると最高裁が判決している。だが、そうなったのは1958年告示、1961年度から小学校、1962年度から中学校で実施されたものからである。今書いたように、指導要領は告示から実施まで時間差がある。告示されても、それに対応した教科書がないと授業できないからである。告示を受けて、教科書会社が新しい教科書を作り、文科省が検定し、各教育委員会等が採択する。こうして告示から数年後、ようやく採択翌年の新入生から、新要領に基づく教育が始まるわけである。
学習指導要領に関しては、国立教育政策研究所のHP中にある「学習指導要領データベース 」にすべて掲載されていて、戦後教育に関する重要な情報源になっている。ところで、法的性格を帯びたのは「1958年告示」からと今書いた。ではそれ以前はどうなっていたか。「学習指導要領(試案)」となっていて、各学校の自由裁量が認められていたのである。戦前戦中のガチガチの皇国史観教育が敗戦で崩壊し、教育体制も大きく変わったわけである。1951年実施の中学校指導要領では、外国語が選択授業であり、美術ではなく図画工作、技術・家庭ではなく職業・家庭などとあって、もう誰も覚えていない戦後直後の中学の様子をうかがわせる。
以下、中学を中心に見る。小学校、高校を全部見ると、大変すぎる。資料的な性格が強い記事だから、あまり詳しすぎてもいけない。先に書いたデータベースで調べることができるので、関心のある人はそっちで。ところで、一回目に書いたように、「年間35週」というのは変わらない。だから、土曜に授業があった時は、週に32コマの授業が入っていた。(週に2日は5時間授業とする。)そうすると、年に最大1120コマの授業が可能となる。中学3年間では総計3360コマとなる。
最初に「総授業時間」を見る。
①1958年告示の指導要領 (道徳を除き、1962年実施)
年間授業数は、1120コマ以上。3年間で3360コマ。
②1969年告示の指導要領 (1972年実施)
年間授業数は、1,2年が1190コマ、3年が1155コマ。3年間で3535コマ。
③1977年告示の指導要領 (1981年実施)
年間授業数は、1050コマ。3年間で3150コマ。
④1989年告示の指導要領 (1992年実施)
年間授業数は、1050コマ。3年間で3150コマ。
⑤1998年告示の指導要領 (2002年実施)
年間授業数は、980コマ。3年間で2940コマ。
⑥2008年告示の指導要領 (2012年実施)
年間授業数は、1015コマ。3年間で3045コマ。
以上の数字を見ると、昔はずいぶん勉強させられていたんだなあと思う。特に②の主に70年代の授業は、水曜を除いて6時間授業をしていたということである。数字だけ見ると、確かに2002年実施の「980」が一番少ない。だけど、このときから土曜は休日になったことを考えると、水金を除き6時間授業ということだから、常識的な数字になっている。
何と言っても、一番目につくのは、③の時期、つまり80年代の授業である。②の時期が多すぎたとしても、①に戻すのではなく、一気に「1190」(1,2年の場合)から「1050」に減らした。140時間の減だから、週当たり4時間も授業が減ったのである。それは何故か、実際はどうだったかというのは、今後別に検討する。簡単に言えば、戦後教育史における「一番のゆとり教育」はこのときだったのである。
ついでに、各教科の授業時間数を見ておきたいのだが、長くなるのでやめておく。あえて社会科だけについて書く。数字は上に書いた指導要領と同じ。
①455時間(週当たり、1年=4、2年=5、3年=4)
②455時間(週当たり、1年=4、2年=4、3年=5)
③385時間(週当たり、1年=4、2年=4、3年=3)
④350~385時間(週当たり、1年=4、2年=4、3年=2~3)
⑤295時間(週当たり、1年=3、2年=3、3年=年間80)
⑥350時間(週当たり、1年=3、2年=3、3年=4)
これを見ると、「ゆとり教育」というのは、つまりは「社会科の授業を減らす」ということなんじゃないかと邪推したくなる。若い世代が、政治や経済、歴史などの「常識」を知らないと非難されるのは、「ゆとり教育」だからではなく、社会科の授業を削減した結果なのではないだろうか。もちろん、それは「政府の目論見」であり、若い世代の選挙投票率低下などで、「効果が上がった」とも言えるのだろう。
それを定めているのは、「学習指導要領」である。国会で議決されたものではなく、文部省(文部科学省)の「告示」に過ぎないが、官報に掲載される。裁判で争われた結果、「法的性格」があると最高裁が判決している。だが、そうなったのは1958年告示、1961年度から小学校、1962年度から中学校で実施されたものからである。今書いたように、指導要領は告示から実施まで時間差がある。告示されても、それに対応した教科書がないと授業できないからである。告示を受けて、教科書会社が新しい教科書を作り、文科省が検定し、各教育委員会等が採択する。こうして告示から数年後、ようやく採択翌年の新入生から、新要領に基づく教育が始まるわけである。
学習指導要領に関しては、国立教育政策研究所のHP中にある「学習指導要領データベース 」にすべて掲載されていて、戦後教育に関する重要な情報源になっている。ところで、法的性格を帯びたのは「1958年告示」からと今書いた。ではそれ以前はどうなっていたか。「学習指導要領(試案)」となっていて、各学校の自由裁量が認められていたのである。戦前戦中のガチガチの皇国史観教育が敗戦で崩壊し、教育体制も大きく変わったわけである。1951年実施の中学校指導要領では、外国語が選択授業であり、美術ではなく図画工作、技術・家庭ではなく職業・家庭などとあって、もう誰も覚えていない戦後直後の中学の様子をうかがわせる。
以下、中学を中心に見る。小学校、高校を全部見ると、大変すぎる。資料的な性格が強い記事だから、あまり詳しすぎてもいけない。先に書いたデータベースで調べることができるので、関心のある人はそっちで。ところで、一回目に書いたように、「年間35週」というのは変わらない。だから、土曜に授業があった時は、週に32コマの授業が入っていた。(週に2日は5時間授業とする。)そうすると、年に最大1120コマの授業が可能となる。中学3年間では総計3360コマとなる。
最初に「総授業時間」を見る。
①1958年告示の指導要領 (道徳を除き、1962年実施)
年間授業数は、1120コマ以上。3年間で3360コマ。
②1969年告示の指導要領 (1972年実施)
年間授業数は、1,2年が1190コマ、3年が1155コマ。3年間で3535コマ。
③1977年告示の指導要領 (1981年実施)
年間授業数は、1050コマ。3年間で3150コマ。
④1989年告示の指導要領 (1992年実施)
年間授業数は、1050コマ。3年間で3150コマ。
⑤1998年告示の指導要領 (2002年実施)
年間授業数は、980コマ。3年間で2940コマ。
⑥2008年告示の指導要領 (2012年実施)
年間授業数は、1015コマ。3年間で3045コマ。
以上の数字を見ると、昔はずいぶん勉強させられていたんだなあと思う。特に②の主に70年代の授業は、水曜を除いて6時間授業をしていたということである。数字だけ見ると、確かに2002年実施の「980」が一番少ない。だけど、このときから土曜は休日になったことを考えると、水金を除き6時間授業ということだから、常識的な数字になっている。
何と言っても、一番目につくのは、③の時期、つまり80年代の授業である。②の時期が多すぎたとしても、①に戻すのではなく、一気に「1190」(1,2年の場合)から「1050」に減らした。140時間の減だから、週当たり4時間も授業が減ったのである。それは何故か、実際はどうだったかというのは、今後別に検討する。簡単に言えば、戦後教育史における「一番のゆとり教育」はこのときだったのである。
ついでに、各教科の授業時間数を見ておきたいのだが、長くなるのでやめておく。あえて社会科だけについて書く。数字は上に書いた指導要領と同じ。
①455時間(週当たり、1年=4、2年=5、3年=4)
②455時間(週当たり、1年=4、2年=4、3年=5)
③385時間(週当たり、1年=4、2年=4、3年=3)
④350~385時間(週当たり、1年=4、2年=4、3年=2~3)
⑤295時間(週当たり、1年=3、2年=3、3年=年間80)
⑥350時間(週当たり、1年=3、2年=3、3年=4)
これを見ると、「ゆとり教育」というのは、つまりは「社会科の授業を減らす」ということなんじゃないかと邪推したくなる。若い世代が、政治や経済、歴史などの「常識」を知らないと非難されるのは、「ゆとり教育」だからではなく、社会科の授業を削減した結果なのではないだろうか。もちろん、それは「政府の目論見」であり、若い世代の選挙投票率低下などで、「効果が上がった」とも言えるのだろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます