尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

神田松鯉の「乳房榎」ー浅草演芸ホール7月中席夜の部

2020年07月18日 17時26分59秒 | 落語(講談・浪曲)
 緊急事態宣言解除後、映画館には行ってるけど寄席や劇場には行ってない。僕が見たい演劇は、おおむね新宿や渋谷以遠(自宅から見て)の夜公演が多い。どこかで食べなきゃいけないし、家に着くのが遅くなる。しかし、浅草演芸ホールの7月中席(後半)の夜公演はトリが神田松鯉の怪談噺連続長講だから、家から近いしどうしても聞きたくなって出掛けてきた。

 客席は一席ずつ空けて座れないようになっていた。神田伯山も出るし、客席半分は入れない前提での「ほぼ満員」になったが、他の寄席より広いから「密」な感じはあまりない。9時に終わって、つくばエクスプレスを使ったら9時40分に自宅に着いた。これは東京感覚ではものすごく早い。先に軽く食べて、帰りは外食しないで帰る。これなら心配は少ない。

 なんと言っても神田松鯉(しょうり)先生。人間国宝認定以降、何回か聞いてるが素朴な語りに乗せられてしまう。今回は5夜連続の怪談噺で、本来なら梅雨明けしている頃である。今年は梅雨が長く、各地で被害が起きている。東京も久しく太陽を見ていない。本来なら「猛暑の五輪どうする」と息巻いていた時期だが、どっちも外れるとは年初には予想できなかった。しかし、梅雨寒の多湿感も怪談向きだと松鯉先生は言う。
(神田松鯉)
 「番町皿屋敷」や「お岩誕生」などもある中で、「乳房榎」に行ったのは圓朝の原作を読んでいて、板橋にある「乳房榎」も見に行っているからだ。しかし、乳房榎(という木がある)は直接は出て来なかった。悪党が絵師の先生宅に入り込んで、先生が長い仕事を頼まれている間に、留守宅の奥方を手込めにする。そこから恐怖の犯罪と因縁話が始まる。悪党が師匠をあやめた後で、突然灯りが消えて懐中電灯で演者だけが浮かび上がる。怪談らしい趣向。

 今回は落語家も出ているけれど、松鯉門下の3人が講談を披露する講談中心のプログラム。最初が神田阿久鯉で、江戸時代に怪盗に憧れた少年の話。中入り前に神田伯山の「万両婿」で、15分圧縮ヴァージョンは筋を知ってると今ひとつか。前に聞いてるから。「大岡政談」の一種である。途中で救急車の音が聞こえて「うるせえな」とか言いながらやってた。熱演だから客席には受ける。中入り後に神田鯉栄の次郎長もの。阿久鯉と鯉栄は、伯山の姉弟子にあたる女性講談師だが、持ち味が少し違う。伯山もいいけど、この二人がだんだん楽しみになってきた。しかし、やっぱり何となく乗せられてしまう松鯉先生が一番聞きたくなる。

 ねづっちの謎かけ、北見伸&スティファニーのマジック、鏡味正二郎の大神楽(曲芸)なんかも、いつ見ても受けている。僕も面白くて大好き。実は初めての「ザ・ニュースペーパー」、真打間近の「成金」メンバー春風亭昇々も面白かった。浅草演芸ホールはプログラムが充実していて、一度行ったらまた行きたくなった。これで3千円、4時間楽しめるって、他の芸能に比べてもコスパがいいし、マスクして見ているのも思ったよりは辛くなかった。
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