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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

ウォルマートvsトランプ大統領ー「高関税政策」は何のため?

2025年06月02日 21時53分34秒 |  〃  (国際問題)

 トランプ大統領がウォルマートを批判したというニュースがあった。ウォルマートは「世界一の売上高」を誇る(Amazonは2位)「世界一のスーパーマーケットチェーン」であり、今調べたら「世界一の同族経営企業」でもあるそうだ。なお、本社はアーカンソー州ベントンビルという小都市に置かれているというのも今知った。マスコミ報道によれば「ウォルマートのジョン・レイニー最高財務責任者(CFO)は15日、米CNBCのインタビューで、トランプ関税の影響を受けた商品が店頭に並ぶ5月下旬から値上げに踏み切る方針を表明していた」とのことである。そりゃまあ、そうするしかないだろうと思うけど、これにトランプが噛みついた。

(トランプがウォルマートを批判)

 トランプ大統領は「同社は関税を受け入れるべきで、顧客に一切転嫁すべきではない」とし、「チェーン全体で価格を上げる理由を関税のせいにするのはやめるべきだ」と批判したというのである。さらにトランプ大統領は、「同社は昨年、予想をはるかに上回る数十億ドルを稼いだ」と指摘して「同社が(多くの商品を輸入する)中国との間で、関税を食べる(受け入れる)べきだ」とし、顧客に関税コストを転嫁すべきではないと批判したと書かれている。何が言いたいのか不可解な発言だ。

 常識的に理解すれば、「ウォルマートは儲かっているんだから、関税分を自社で負担せよ」と言うことか。しかし、そうなったら、「中国製品の小売価格は変わらない」ことになるから、消費者は安い中国(など外国)製品を買い続けてしまうじゃないか。そもそも「高関税政策」というのは、「高い関税を掛けて、意図的に外国製品価格を値上げさせて、国内製品の需要を増やす」のが目的のはずである。外国製品の小売価格が上がらないんだったら、誰もアメリカでの生産を増やそうなどと思わない。

 大統領が本来言うべきことは、「外国商品は値上げされても、国産品は関税と無縁だから値上がりしない」「アメリカ人は国産品を買え」のはずである。もちろん現在の商品は、電機製品(スマホやパソコンも電気機械)の部品を完全に国内で生産することは不可能なんじゃないか思う。アメリカのような巨大な資源国でも、やはり完全に国内産というのは無理だと思う。だから、国産品も次第に値上げせざるを得なくなるだろう。それでも価格競争力を人為的に操作するのが関税なんだから、トランプ大統領は関税の意味を理解しているのかどうか怪しくなる。僕が思うにトランプは「関税のせいで物価が上がった」と言われたくないのだろう。

(鉄鋼製品に50%の関税)

 トランプ大統領は今度は「鉄鋼製品に50%の関税を掛ける」と突然言い出した。中国との関税競争もそうだけど、トランプ関税はほとんど「支離滅裂」になりつつある。恐らく「トランプ関税」は経済政策ではないのである。だから関税の経済的影響などを真剣に考えても、突然また大変更になってしまう。じゃあ何なのかというと、「脅迫の手段」である。まあ「ディール」と呼んでもいいけれど。高関税を突きつけて相手国の譲歩を引き出す手段でしかなくて、現実の物価に影響するなどあってはならない。しかし、外国企業がアメリカ国内で生産すれば商品価格は高くならざるを得ない。だから外国で作るようになったわけだし。

 どうもトランプ大統領を普通の意味での「資本主義者」あるいは「市場経済主義者」と考えるべきじゃないのかもしれない。「国家主義者」として、「市場」よりも「大統領」の方が上なのである。例の日本製鉄のUSスティール買収問題も、別に日鉄の肩を持つわけじゃないけれど、大統領が決めるようなことなんだろうか。恐らく日米交渉もしばらく停滞するだろうと思っている。なぜなら6月14日、トランプ大統領の誕生日(にして陸軍記念日)に行われる「大軍事パレード」で頭がいっぱいだろうから。この日、ついにアメリカは中国やロシアと同じ権威主義手国家であると世界に宣言することになるのだろう。

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